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世界中が熱視線を送るラウドミュージックの旗手Paledusk
ジャンルもカテゴリーも超越したカオスで多幸感あふれる
唯一無二の進化系バンドサウンド

1曲の中にヘヴィメタルやハードコアをベースに、ヒップホップやエレクトロ、ポップスからジャズetc.とさまざまな音楽を取り込み、圧倒的なセンスで鳴らすPaledusk。すでに日本のラウド音楽リスナーや海外の音楽ファンの間でも人気沸騰中の彼らが、約4年ぶりにEP『PALEHELL』をリリース。CrossfaithのKenta Koieを客演に迎えた『Q2 feat. Kenta Koie from Crossfaith』や『NO!』など、バンドにとってマイルストーンといえる楽曲の再録とストレートなヘヴィロックで度肝を抜く新曲『PALEHELL』。そして、インタビューでKaitoが語っているように、これまでのバンドの音作りに一区切りをつける壮大な『RUMBLE feat. Masato from coldrain』などの全7曲。初めてPaleduskに出会うリスナーも、古参ファンも大満足に違いないこのEPを携え待望のジャパンツアーも決定。バンドの集大成でもあり新たな章の幕開けでもある胸踊る新作についてKAITOにじっくりと語ってもらった。

楽曲もMVもツアーも全世界へ向けて発信しています




――
SNSをはじめラジオやテレビ番組でもPaleduskの名前や楽曲を耳にする機会がぐんと増えました。これまでPaleduskを聴いていたリスナー以外にもPaleduskの存在や音楽が広がりつつあるのをご自身でも感じていますか?

「そうですね。ありがたいです。そのためにやってきましたから」

――前作『HAPPY TALK』(2020年)以来約4年ぶりのEP『PALEHELL』が2月21日に発売されました。前作から今作までの間に海外のレーベルと契約したり、サポートドラムだったBOBさんが正式加入したりバンドに変化もありました。そのあたりをどんなふうに感じていますか?

「前作から今作までの間だと、まずコロナがありましたよね。僕らに関わらずその時期は曲を出してもライブが出来ないし僕らはアコースティックミュージックじゃないので、聴きに来た人たちがわちゃわちゃになって初めてショーケースが成り立つバンドだから、それが奪われた時に作品や曲を出すよりも僕ら的にはいいものをいい環境で出したい。それを考えていたらこんなに時間が空いてしまいました(笑)。実は前のEPを出した時にアメリカツアーやヨーロッパ、オーストラリアでもライブをやる話があったけど表に出ることもなく無くなったものもたくさんありました。とはいえ本格的に海外に出て行けるようになったのもこの3、4年の間の変化だし、自分たちの発信の仕方において日本と海外を分けて考えることをしなくなったのも変化のひとつですね」

――というと?

「もともと、これは日本向けの曲で、このコンテンツは海外向けで、みたいな考えはなかったけど、楽曲においてもMVやツアーにおいても全世界へ向けて発信している意識で取り組むようになった感はあります。お客さんの分母が1億から70億になった感じですね。メンバーチェンジもあったし、こうやってメディアのインタビューがあったり僕らのことを知らない人に届く機会を与えてもらえるようになって、Paledusk=単なるメタルバンドというんじゃなく、みんなが過去に見たことがない、聴いたことがない音楽を鳴らすアーティストとして扱ってもらえるようになってきて、届き方も変わってきているんだと思います」

――届き方が変わってきていることに関してはPaleduskがもともと持っている音楽性の幅広さも関係しているように思います。ヘヴィメタルやメタルコアを根底に持ちながら、1曲の中にこれでもかというほど展開があったりヒップホップやテクノ、EDMやフュージョンまで多彩な要素が溶け込んでいて初めて耳にする人でも入り込める入口がたくさんある。これまで4人がどんな音楽を聴いてきたのか興味を引かれます。

「僕ら4人の1番コアになっているルーツの音楽は結構バラバラで。曲を書いているDAIDAIはハードロックが好きで僕はハードコアが大好き。BOBはメタルっぽいのが好きだしTSUBASAはハードなのもポップスも好き。そういう4人がバンドをやっていて、DAIDAIが持ってきた曲をみんながかっこいいと思った時点でどのジャンルが好きな人でも聴けるものなんだろうなというわかりやすい構図があって。もちろんルーツがそうってだけで僕もヒップホップもテクノもポップスも好きだし、メンバーもいろんな音楽を聴いています。別々の入口から入って今は同じ部屋にいて共存できているってことは、よその部屋の人も聴けるんじゃないかって気はしますよね」

――バンドとして、"こういうものをやる"、逆に"こういうものはやらない"というルールみたいなものはあるんですか?

「特には......ていうか最初は日本語を歌うつもりもまったくなかったし、英語のみでやっていこうみたいに思っていたわけでもないし。日本語を歌うとかラップみたいなことやったりとか、メロディーをつけてシャウトしたりとかも、やるとかやらない以前にできなかったから。けどDAIDAIが曲を持ってきて、当たり前のように"ここはこうやって歌って"とか、"ここはこういうのが欲しい"とか、俺ができもせんことをめっちゃ言ってくるんでもうやるしかないから」

――あははは!

「命令とかじゃないですよ。それがこのヴァースの1番いい表現方法なんだったらやんなきゃってことですよね。これは歌の話ですけど、音楽においてこれはやらないみたいなことは特になくて、かっこよくなかったらやらないぐらいですね」

――新作『PALEHELL』のことを聞かせてもらう前に、昨年5〜8月に行われたツアーのタイトルが『INTO THE PALEHELL TOUR』でしたよね。その頃からタイトル曲『PALEHELL』はできていたんですか?

「いえ、全然(笑)。ツアータイトルは、 "こういうのがいいんだけど"というのを持っていったらみんなが"いいよ"でOKしてくれて、『PALEHELL』というタイトルは次の曲で使いたいなとその頃には思っていて。曲がまだないのに(笑)」

――(笑)。

「一見してPaleduskの曲だとわかるタイトルだと思ったし、ツアータイトルをつけた時には、ツアー中に『PALEHELL』という曲と、他に何曲かリリースしてファイナルを迎えれたらいいんじゃね?とかイメージしていたけど制作が追いつきませんでした。結局曲ができたのは去年の終わり頃だったかな」

――ツアータイトルにもその時なりの意味を持たせているんだろうなと想像しますが。

「そうですね。わかりやすく言えば『PALEHELL』=Paleduskの地獄みたいなこと。2021年頃って今よりコロナ真っ只中でしたよね。みんなも世の中も今以上に錯乱してて、何が正解か不正解かも定かじゃない中にもかかわらず、無意識のうちに正解が決められているような空気があって。僕らはサラリーマンじゃなくバンドマンで、自分がやりたいことをやるためにバンドをやっている。だからその年の10月にライブをやったらそれがもうネットでめっちゃ炎上して」

――はい。

「その時に、"Paleduskはもう終わった"みたいな声もあったんですけど、結局その炎上のパワーが凄すぎてそこで初めてPaleduskの名前を知った人がいっぱいいて、その後にやったツアーはブワッとチケットが売れるようになったんですよ。俺としては悪いことをして炎上したとはまったく思ってないし、外側だけを見ている人からは地獄のような状況に見えていても、自分たちはそんなことはなくて。同じ1つの出来事でも外側と内側からではまったく違って見えることもあるし、そういう二面性みたいなのをツアーのタイトルにつけたかったんですね。誰かにとっていらないものも誰かにとってはめっちゃ欲しいものだったり。そういうモノを自分でチョイスしていった方がいいんじゃない?という感じもあります」

――不要不急という言葉が蔓延しましたが、他人にとっては不要でも自分にとっては絶対に必要なものがあるというのはコロナでものすごく実感しましたね。

「そうですよね。これは何度も話しているんですが、その炎上中にSiMとちょっと微妙な距離感になったりもして。けど、INTO THE PALE HELL TOURにSiMに絶対出てほしくてオファーしたら出てくれたんですね。その出来事があったことで前より深く仲良くなっている人たちもいるから、 その意味で中へ入っていく入口という意味でINTOだし、PALEHELLというものをこれ以降掲げたいなというのは決めてましたね」





『RUMBLE feat. Masato from coldrain』はPaleduskの第1章の終曲



――その『PALEHELL』(M-1)ですがストレートなヘヴィロックを鳴らしていることに新しさも感じつつ、生の現場で聴いた時に会場がどれだけ沸き立つか想像できます。曲の最後の日本語詞で"この地獄を笑って"と呟くように歌われていますが、開放感のある曲ですごくパワーを感じます。新しいアンセムの誕生だなって。

「ありがとうございます」

――コンポーザーのDAIDAIさんからこの曲に関してはどんなオーダーがありましたか。

「"こういうふうに歌って"とかのディレクションみたいなのは常にあるけど、"絶対にこうしろ"とは言ってこなくて、話していく中で向こうのアイディアをこっちのアイディアが凌駕する瞬間を楽しみたい人なんですね。ただあの人はちょっと凄くて作るものも出している音も普通のミュージシャンとはレベルが違うんですよね。歌詞には載ってないけど最後のラララ〜のところはTHEE MICHELLE GUN ELEPHANTの『世界の終わり』ですね」

――そうですよね。

「メンバーもみんなチバ(ユウスケ)さんをすごいリスペクトしてるし、それは絶対やりたくて。メロディーもそのまま持ってきているんですけど、そこから曲の形が決まっていきましたね。音楽ってそういうカルチャーじゃないですか。リスペクトしている曲をサンプリングしたりオマージュとして引用したり。歌詞はどの曲も全部僕が書いていますが、詞についてはDAIDAIは何も言ってこないですね」

――歌詞は全部KAITOさんに任されているんですね。

「テーマぐらいは聞くこともあるけど、基本的にはそう。『RUMBLE feat. Masato from coldrain』だけは珍しくタイトルまで彼に決められていましたね」

――『RUMBLE feat. Masato from coldrain』も最後に日本語詞のパートがありますね。

「はい。日本語を入れると日本のリスナーからはセルアウトしてると思われるかもしれないけど、真逆で。日本人だしネイティブな言語は日本語なんで、海外に行くならなおのこと日本語を歌いたいと思っていて。俺もペラペラではないけど一応は英語も喋れるので、英語を放棄しているわけじゃないんですよ(笑)。海外のリスナーからすれば、よその国からきて第一言語じゃない英語を勉強して歌っている奴らが歌う母国語って、たぶん意味は分からなくても伝わるものはあると思うんですね。それはライブをやっていてすごく思う。日本人はもちろん言葉が分かるわけで、ただ『RUMBLE feat. Masato from coldrain』に関してはこんな長い曲でガチャガチャしてて繰り返しのパートもない中で、聴いている君たちももう頭疲れとるやろうから、ここらで日本語をどうぞみたいな感じで書きました(笑)」

――あははは!

「海外に行きたいと思えば思うほど、日本語を入れたくなってきた感じですね。最初は日本語の歌詞を歌うことがめっちゃ恥ずかしかったんですけど、初めて『TOPPA』(2021年)で試しに歌ったらわりといいやんって。気づいたらほとんどの曲で日本語詞が入るようになりましたね。今は英語9に対して日本語1ぐらいの割合ですけど、いつか日本語だけの曲ができるかもしれない。わからないけど」

――さっきも言いましたが、『RUMBLE feat. Masato from coldrain』も『PALEHELL』同様バンドにとっての新たなアンセムであり、ライブでフロアがぐっと沸いてお客さんが歌っている画が浮かびますよね。

「そこは重視していて、曲をリリースする上でバンドとしてウェイトを置いているポイントはライブで活きていく曲であることなんですね。結局僕らはネットミュージックでもなくて、ライブハウスに出たりギグをして初めてその曲が完成する。音源が最高であるのはもちろんで、"やっぱライブの方がいいわ"とならないようなことはしたくない。それは4人とも思ってるんじゃないかな。まだ全然これからですけど、一応このジャンルの中ではちょっとずつ人を集めるようになってきたのも、ここまで地道にライブに重点を置いてやってきているからかなと思います。だからそう言ってもらえたら嬉しいですね。

――2月後半から3月いっぱいは海外ツアーですね。

「2月はCrossfaithのオーストラリアツアーに帯同して、3月はヨーロッパを回って日本でライブをやるのは4月のフェスが最初です。『RUMBLE feat. Masato from coldrain』も去年の10月にリリースしたけどその直後にアメリカツアーが始まったから日本で最初に演奏したのは11月の『NEX_FEST 2023』だったんですね。ブリング・ミー・ザ・ホライズンがキュレートするフェスでMasato(coldrain)さんも呼んで日本初披露はそのライブと決めていて。ただアメリカツアー中にメンバーで、これはちょっと失礼な言い方だけど、"アメリカで(『RUMBLE』を)練習しとかなヤバくない?"ってなってアメリカツアーの後半に10何回演奏してきました(笑)」


――あははは!

「今年は4〜7月は日本とアジアを回る予定で、『PALEHELL』も日本に帰ってくるまでにオーストラリアとヨーロッパで30回ぐらいライブでやってくるから、日本で歌う頃にはかなり仕上がってますね。日本のお客さんはもうちょっとだけ指くわえて待っててください(笑)」

――『NEX_FEST 2023』での『RUMBLE feat. Masato from coldrain』はYouTubeで公開されていますね。あの映像は自分も何回見たか分からないぐらいで、KAITOさんのMCも含めて感極まる瞬間があります。

「本当ですか。でもここだけの話、あのMCで俺は何を喋ったのかマジで覚えてなくて(笑)。昂りすぎて空回りしてて、まあそれも込みでいいのかなと思います。 3〜4年ぐらい経ってもう少し大人になって見返したら結構恥ずかしいんだろうなと思います」

――ライブならではですね。あの映像を観た時に、サブスクで聴いても音楽に魂は宿っていますがやっぱりその場の空気や熱量も含めてライブで音楽を浴びることが醍醐味だと思いました。『RUMBLE feat. Masato from coldrain』も高揚するのと共に、ベタな言い方ですが顔を上げて進んでいこうと思える力が湧いてくるというか。曲の始まりと最後では全く印象が違うというカオスな魅力もありつつ(笑)。

「そうですね。Paleduskってカオスな楽曲の印象が強いと思うし、僕は世界で最初にPaleduskの楽曲を聴くリスナーなんですよね。まだデモの段階の、歌詞がない曲を聴くわけだから。そこでDAIDAIが何を言ってくるかがすごく大事だと思うんですけど、『RUMBLE feat. Masato from coldrain』を作った時はその次の『PALEHELL』は超ストレートに行きたいみたいなのは決めていたんですね。ただ普通に考えて、あれだけカオスな『RUMBLE feat. Masato from coldrain』を出したら、"次はさらにどんなカオスでくるんだろう?"っていうところにみんなが引っ張られるんじゃないか。それを裏切っていくのが面白いみたいなことはDAIDAIも言っていたんですね」

――ああそうですね。

「『RUMBLE feat. Masato from coldrain』は言ってみればPaleduskの第1章的なところの終わりの曲なんです。『RUMBLE feat. Masato from coldrain』は1曲の持つ幅も、ボーカルの難易度もたぶん今までで1番だと思う。時代に逆行した曲の長さだと思うし、1曲の中でいろんなことをやらなきゃいけない曲なんですが、さっき言ってくれたみたいにアンセム的な要素があったり、繰り返しがないのに合唱できたり不思議な曲で。Paleduskがこれまで9年ぐらいやって築いてきたここまでの道のりにいったん区切りをつけて、ここから次へ出ていく。この先もまたさらにめちゃくちゃにカオスなことをやっていくと思うけど、一つの区切り的な意味で」

――Masatoさんと一緒にやるということも最初に決まっていたんですか。

「それは前提としてありました。僕が今26歳なんですけど、20歳ぐらいの時からcoldrainはツアーに呼んでくれていて、いろんなバンドがPaleduskをフックアップしてくれた中でたぶんcoldrainが最初だったんじゃないかな。"次は曲を一緒にやりたいです"って言ったら"いつでもやろう"って言ってくれたんですけど、"いつでもやろう"だからこそいつでもじゃなく、"今だ"って時にやりたかったんですね」

――バンドにとって大切な時にやろう、ということですね。

「そうです。これもよく話しているんですけど、僕が中学3年でDAIDAIが高校3年の時に僕は彼がやっていたバンドのファンでよく聴きに行っていて、DAIDAIのバンドのライブの翌日にcoldrainのライブがあって、そこでDAIDAIと僕は初めて喋ってそこから仲良くなったんですね。そういうこともあってPaleduskが次の章に行く局面であればMasatoさんの存在はかなり重要で、『RUMBLE』はMasatoさんがいて初めて成立する曲だと思ってます。それで、ハチャメチャかつまとまりのない楽曲がPaleduskなんだというこれまでのカラを破るのがストレートなヘヴィロックの『PALEHELL』で、この先さらに自由度が高くなるためのターニングポイントとしてこの2曲が対をなして成り立っている感じがしますね」

――最後に収録されている『Q2 feat.Kenta Koie from Crossfaith』(M-7)は新たにCrossfaithのKoieさんを迎えた再録ですね。

「『Q2』は長年PaleduskのスタッフだったMasaくんが2020年3月に亡くなった後、彼に向けて書いた曲です(オリジナルの『Q2』は2020年発売のEP『HAPPY TALK』に収録)。MasaくんはもともとCrossfaithとスリップノットが大好きで、Crossfaithとツアーをやった時はMasaくんはドライバーでついてくれて、"次はスリップノットと一緒にやってほしい"と話していて、その2組は彼の中で大きな存在だったんだと思う。彼が亡くなった2020年3月はスリップノット主催の『ノットフェス・ジャパン2020』が開催予定でPaleduskは出演することになっていました。ただ2020年のその頃って日本でもコロナが広がり始めていて、『ノットフェス・ジャパン2020』は2023年に延期になり、もともとフェスが開催されるはずだった時期にMasaくんの葬儀があって」

――そうなんですね。

「なぜ今回Koieくんに『Q2』を歌ってもらったかというと、葬儀が終わった後にMasaくんのSNSが残っていることに気づいて、遡っていったら1番最初の投稿がCrossfaithのライブで出待ちしてKoieくんと一緒に撮った写真だったんですね。KoieくんはMasaくんとも話したことがあるしMasaくんが亡くなる前にもすごく心配して連絡をくれて。今回再録するにあたってKoieくんに歌ってもらいたいという意図も伝えて、新たに歌詞も書いてもらいました。この曲は今のところMVは撮っていませんが、もともと2020年に作った時点でバンドにとって重要な曲なので、今回の再演を経てこの先またどんなふうにこの曲が意味をなしていくのか楽しみでもありますね」

――歌詞中に『COCO』や『PALE HORSE』『BLUE ROSE』『NO!』とこれまでの曲のタイトルが散りばめられていますね。

「そう。この曲は福岡にいた頃にできた曲で、歌詞自体は等身大なんですけどちょっとファンタジーっぽく書いているというか。一見ラブソングっぽく捉えられる歌詞なんだけど実際は全然ラブソングではなくて」

――というと?

「当時はうちの実家の車庫に機材とか物販とかを全部置いていて、たとえば大阪でライブがあって昼に会場入りだったら、前の晩に実家に集まって夜中2時頃にハイエースで出発する。前乗りしてホテルに泊まるお金もなかったんで、寝ながら移動して朝になって大阪に着いたら清水湯に入ってライブハウスに向かうっていう生活で。歌詞の最初に出てくるfightというのはライブのことを指していて、"I get to see you before the fight"というのは、ライブの前に君と会えてという意味。"holy night"というのはハイエースで夜中に移動しているからそのことを言っていて、それが俺の求めるものでありそれだけで俺は満たされるってことなんですね。フックのCall me nowはそのまんま"電話して"ってことだし、I cannot stop thinkin of youもストレートに"君のことを考えるのをやめられない"。Let's warm ourselves up=温め合おうよ、ってこれだけ見たらマジで完全にラブソングかと思いますよね(笑)。実際はハイエースが走っている時間は基本的に夜で普通に寒いんで、"そっちの布団を貸して"とか"もう一枚ブランケット持っていこうぜ"みたいなことをずっと言っていたからそのことを書いていて」

――本当に当時のバンドのことが歌になっているんですね。

「そう。けどこういうことを知らなければラブソングに聴こえるだろうし、俺自身は恥ずかしくてラブソングは書けないからこういう機会しかないなと思って(笑)。I know You know〜Actually,I was going to write〜のところは、"実際はラブソングとは意味合いが違うけど、Masaくんやったらわかるやろ?"みたいなことを書いていますね。これまでこういう話はあまりしたことなかったんですけどね。この曲はあの時にしか絶対書けんかったし、これを書いた時の俺は頭が良かったんだなって思いますね(笑)。めっちゃいい歌詞を書いているなって」



しょぼいライブをしたら二度とここへ来ることはできない
そのしびれる感じが海外のライブでは常にある。滾ります



――『NO!』(M-6)も再録になりますね。

「『NO!』(M-6)は2019年の曲で、今Paleduskを知ってくれている人たちの大半が感じてる"Paleduskっぽさ"の入り口になっている曲なんですよね。それまでの曲もMVの映像も自分たちではクオリティーの高いことをやっている自信はあったんですけど、全っ然当たらなくて、僕もDAIDAIも投げやりになっていて。もう自由にやってみるかってことで『NO!』はそれまでの逆をやりました。MVでは演奏シーンもないし曲も2分にも満たないし、メタルやハードコアをやるバンドとは思えないMVなんですけど、そうやって自由にやったものが当時の僕らの規模からしたらバズったんですよね。この時はまだ海外のレーベルとも契約してなくて、海外でライブをやってみて分かったんですが、海外のリスナーはマジでこの曲を知らないんですよ。だから新曲の感じでいけるやん、ラッキー!みたいな(笑)」

――『NO!』もバンドの突破口というか、扉を開けた曲だったんですね。

「完全にそうですね。今回の再録は僕がやろうって言ったんですが、アレンジもしていないし同期も足していない。『NO!』と『Q2』は何も変えずにやりたくて。今回は全世界共通で同じ盤がリリースになるので、今回の『NO!』は特に海外向けに収録しました。日本のリスナーは今でも『NO!』を聴きたくてライブに来ている感じがあるし、お前らがわかってくれているのはわかっとるけん、オッケーあざす。って感じで(笑)」

――海外といえばいろんな国で数多くライブを経験されていますが、いかがですか?

「やっぱ滾りますよね。日本よりも音楽のベースが大きくて、音楽ファンも多い代わりにバンドもたくさんいて、そんな中で渡航費やホテル代とかいろんなものを払ってまでわざわざアジアのバンドを連れ回してくれて、これでPaleduskが母国にいる奴らや他と同じクオリティだったら誰も呼んでくれないと思うんですよね。"こいつらにしかないものがある、だから呼びたい"と思われないと。日本がつまらないわけではなくて、1回のツアーでしょぼいライブをしたらもう二度とここへ来れないんじゃないかというしびれる感じが、海外では常にある。昔は日本でも人気になりたくてなりたくて悔しかったのに、今は日本だとライブでSEが流れただけでお客さんが喜んでくれて。それはめっちゃ嬉しいんです。ただ海外とかってお客さんたちが客席でマジでこんな感じ(腕を組んで仁王立ちする恰好)で見ていて」

――なんとなく想像できます。

「そうやって最初は腕組んで見ていたやつを、最後は物販買わせて帰らせなきゃいけないとなったら、これはちょっと強い言い方になるけどもう音楽で殺してやる気でやりますよね。ただ日本はそういう感じではない。それは調子に乗って言ってるわけじゃなくて、日本は次のフェーズにいるだけで。人が頑張って働いて旅行で出かけるところへ俺たちはライブをやりに行って、1円でもお金をもらって帰るっていうのは自分たちにとってものすごく大きな自信にもなるし、日本人でもできるよっていうことを証明したい。それは簡単じゃないし俺たちもまだまだだし、それこそcoldrainとCrossfaithが若い頃の僕らに見せてくれたように僕らを見て次に、若いバンドがそうなっていったら嬉しい。だから行き続けたいし、最終的に日本と海外で同じスピードで同じキャパでできたら最高ですね。日本でそれができるのはBABYMETALぐらいじゃないかな。僕らはいい意味でどっちでも超巨大じゃないからこそ、同じスピードで歩んでいける可能性が高いからそれができたらいいなと思いますね」

――バンドで成し遂げたいことは何ですか?という質問をしようと考えていたんですが、そのあたりになりますか。

「成し遂げたいこと......100の自信と信頼を、自分たちの身内と自分たちの出している音に持っていたい。今は自信がないとかじゃなくて、99と100ってやっぱりすごく違うと思うんですね。100%になっていった時に出せるPaleduskの音とか、100%のショーができるようなった時にどこまで行けるのか。僕はバンドを作った人間でもあるけどPaleduskの1ファンでもあるのでそれを見届けたいし、いつか海外のフェスでヘッドライナーをやりたい。全出演者の一番上に一番大きくPaleduskのロゴが載る、それができるのは限られたバンドだけだと思う。そこに行けるまで死ぬほど修羅の道だと思いますが、諦めるには早いので頑張ります」

――期待しています。最後に、ぴあ関西版WEBで初めてPaleduskを知る人にメッセージをお願いします。

「ここで知ってくれる人って、もう本当に音楽をディグりまくってる人ですよね。僕も音楽好きだけど学生の頃は今みたいに情報がインスタントじゃなかったから、たぶん今よりも常にディグっていたと思う。ここにたどり着いてくれた人だったら早くPaleduskのライブに来た方がいいし、来たらもっと音楽を好きになれると思う。よろしくお願いします!」

Text by 梶原有紀子




(2024年3月11日更新)


Check

Release

 

EP『PALEHELL』

《収録内容》
01.PALEHELL
02.SUPER PALE HORSE feat. CVLTE
03.TRANQUILO!
04.RUMBLE feat. Masato from coldrain
05.Iʼm ready to die for my friends feat. VIGORMAN
06.NO!
07.Q2 feat. Kenta Koie from Crossfaith
全7曲

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Profile

メンバーはKAITO(vo)、DAIDAI(g)、TSUBASA(g)、BOB(ds)。メンバー全員が福岡出身で、2015年より本格的にライブ活動を開始。結成時からのオリジナルメンバーはKAITOとTSUBASA。2017年、アメリカ留学から帰国したDAIDAIが加入。2023年にサポートドラムだったBOBが加入。作品は2015年に1stEP『obsidian』リリース以降、ラッパーのHideyoshiをフィーチャリングした『SLAY!! feat.Hideyoshi』(2022年)やVIGORMANとの『I’m ready to die for my friends feat.VIGORMAN』(2023年)など配信リリースも多数。DAIDAIはコンポーザーとしてブリング・ミー・ザ・ホライズン『DArkSide』の編曲や、リル・ウージー・ヴァート『The END(Feat.BABYMETAL)』の作・編曲やアニメ『マッシュル-MASHLE-』主題歌だった岡崎体育『Knock Out』の編曲、星熊南巫(我儘ラキア)のプロジェクト、DEATHNYANでFortniteのロビーミュージックを手がけるなど国内外のさまざまなアーティストの楽曲を手掛けている。バンドとして2019年からはアジアを中心とした海外での活動も精力的に行い、スペインやドイツなど海外の大型フェスにも多数出演。2020年にオーストラリアのGreyscale Recordsと契約したのを筆頭に、2021年にEU/UKのブッキングエージェントAvocado Bookingsと契約し、2023年にアメリカのSharptone Recordsと契約。2020年の5thEP『HAPPY TALK』以来約4年ぶりとなる7曲入りEP『PALEHELL』を2024年2月21日にリリース。4月22日新宿ANTIKNOCKを皮切りに『LOVE YOUR PALEHELL JAPAN TOUR』を開催。

Live

Paledusk pre.
[LOVE YOUR PALEHELL] JAPAN TOUR

【東京公演】
▼4月22日(月) ANTIKNOCK
【静岡公演】
▼4月24日(水) 静岡UMBER

PICK UP!!

【京都公演】

▼4月25日(木) 19:00
KYOTO MUSE
スタンディング-4000円(整理番号付、ドリンク代別途要)
[共演]ENTH
※未就学児童は入場不可。

【東京公演】★
▼5月29日(水) Spotify O-WEST
[共演]ENTH/他
【千葉公演】★
▼5月30日(木) 千葉LOOK
[共演]ENTH
【宮城公演】
▼6月3日(月) LIVE HOUSE enn 2nd
【奈良公演】
▼6月7日(金) NEVERLAND
【富山公演】
▼6月8日(土) Soul Power
【石川公演】
▼6月9日(日) 金沢vanvanV4
【神奈川公演】★
▼6月13日(火) F.A.D YOKOHAMA
[共演]ENTH

※ 5月29日(水)@渋谷Spotify O-WESTは"3マン"、その他公演は"全て2マン"での開催となります。
※ ★はENTHとのW Release Tourとなります。

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「THE BONDS 2024 -MAX SCREAM-」

〈OSAKA GIGANTIC MUSIC FESTIVAL 2024 SPIN-OFF〉
【大阪公演】
▼4月18日(木) 18:30
Zepp Osaka Bayside
1Fスタンディング-4900円(整理番号付、ドリンク代別途要) 2F指定席-5500円(ドリンク代別途要)
[出演]CVLTE/Survive Said The Prophet/Jin Dogg/Fear,and Loathing in Las Vegas/Paledusk
※未就学児童は入場不可。
[問]キョードーインフォメーション■0570-200-888

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【METROCK2024】「OSAKA METROPOLITAN ROCK FESTIVAL 2024」

【大阪公演】
▼5月11日(土)・12日(日) 11:00
堺市・海とのふれあい広場
Pコード:262-126
1日券-13000円
Pコード:781-145
2日通し券-25000円
2日通し券(南港発着)-25000円

[11日(土)出演]アイナ・ジ・エンド/4s4ki/Wez Atlas/EYRIE/神はサイコロを振らない/GLIM SPANKY/Kroi/SIRUP/SUPER BEAVER/Tele/トンボコープ/PEOPLE 1/平井大/プッシュプルポット/フレデリック/bokula./由薫/ラッキーセベン/ザ・リーサルウェポンズ/離婚伝説/WurtS/他

[12日(日)出演]THE ORAL CIGARETTES/かずき山盛り/キュウソネコカミ/9mm Parabellum Bullet/ケプラ/Saucy Dog/shallm/Chevon/-真天地開闢集団-ジグザグ/Chilli Beans./This is LAST/TOMOO/NIKONIKO TAN TAN/ねぐせ。/Novelbright/HYDE/04 Limited Sazabys/Paledusk/moon drop/ヤユヨ/レトロリロン/れん/他

※雨天決行(荒天の場合中断、中止させて頂く場合もございます)。小学生以上チケット必要。未就学児は保護者同伴に限り保護者1名につき1名のみ入場可。ただしエリア制限あり。出演者はいずれかの公演に出演。出演者変更に伴う払戻し不可。入場制限実施の可能性あり。開場時間・開演時間は予定のため変更の可能性あり。無料シャトルバスあり。公演内容に関する詳細はhttps://metrock.jpまで。
[問]キョードーインフォメーション■0570-200-888

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