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味園ユニバースで開催された、
関西の名物イベンターである清水音泉による
新イベント『Next To 湯(You)』ライブレポート

3月2日に味園ユニバースにて、関西の名物イベンターである清水音泉による新イベント『Next To 湯(You)』が開催された。約46年前のTHE POLICE『Next To You』という洋楽名曲が思わず浮かんで、ニヤリとしてしまう良きタイトル。湯がネーミングにかけられているのも清水音泉ならではだが、まず気になったのは客入れBGM。大体どのライブでも観客が会場に入場する開場中に何かしら音楽が流れているのだが、この日は単なるBGMでは無くて、より選曲に意識や意図という或る意味DJ的なメッセージが込められていた。先程のPOLICEでは無いが、はっぴいえんど・YMO・RCサクセションからユニコーン・電気グルーヴ・岡村靖幸やフィッシュマンズ・スーパーカー・中村一義など、1970年代・1980年代・1990年代を中心としたラインナップ。全ミュージシャン名と全曲名を書きたいくらいだが、選曲は清水音泉のイベント担当女史であり、彼女いわく、とにかく良い曲を聴いて欲しかったという。テーマとしてはオルタナティブということなので、型にはまらない新しい音。それは、この日のリーガルリリー・崎山蒼志・Helsinki Lambda Clubというラインナップからも納得ができる。で、開場中のことで、もうひとつだけ書いておきたいのは、味園ユニバース入り口から入り、階段をおりて、フロアに辿り着く直前にかけられた特大湯暖簾。お出迎え用として、Sign painterのマヤ女史(Bucket Signs)によって書き下ろされたが、デカいデカい富士山が描かれて、その上に『Next To 湯』という題字が乗っかる。元々キャバレーである味園ユニバース電飾とのマッチ具合もグッドであるし、何よりも観客皆様が視界に入った瞬間に興奮して喜び記念撮影をする姿が微笑ましすぎた。おもてなしとはこういうことなんだろうし、文化祭の学生お手製入り口を観た時の興奮や喜びという手作り感ならではの素敵な光景...。

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さぁ、役者も揃い、準備が整ったところで、いよいよ一番手の登場。下手にたかはしほのか(Vo.Gt)・真ん中に海(Ba)・上手にゆきやま(Dr)と並ぶ佇まいが凛としている。それぞれ衣装が赤黒白というのも際立つ。1曲目『GOLD TRAIN』。音が鳴った瞬間の重厚感...、無駄が削ぎ落されて一切無く研ぎ澄まされている。たかはしの飛び跳ねる姿も堪らない。続くは今年1月にリリースされたばかりの『17』。ポップに跳ねる音だけに『ロックンロールクロー』という言葉が合わさるところは、えも言われない気分になる。歪む音さえも弾んで聴こえてきて、とにかく良いとしか言えず、ひたすら体を揺らす。『ハイキ』をはさみ、『東京』ではソリッドさが増し、たかはしのギターを鳴らす音もザクザクっとした音色で聴き惚れる。曲終わり残響音そのまま『60W』へ。たかはしの高い声がたゆたうが、3人が一心不乱に音を鳴らし続けることで、またステージに残響音が...。気が付くとステージは暗くなり、ゆったり優しい音がギターでも爪弾かれていく『蛍狩り』。暗い照明のまま、ほのかに照らされるたかはし。中盤手前からの独白の様なポエトリーリーディング。言うまでも無く知っている曲だが、それでもゾクッとする...。暗いステージの後方には3つの光が照らされている。そうか...、蛍の光なのか...と勝手に想いながら、楽曲は壮大に終わっていく。

挨拶はあったものの本格的な初MCで、清水音泉のイベントに初めて出ること、味園ユニバースという銀河系の場所で歌っていること、だんだん暖かくなってきて春がまもなくとも話す。そこからの新曲が『春が嫌い』。このバンドは本当に信頼ができる。世の中、春が好きな人ばかりでは無いし、春が好きなのも自由だが、春が嫌いな人にも目を向けていてくれているようで、その寄り添いながら語りかける歌に泣けてくる...。残すは後2曲。海のベースが格好良すぎるイントロから始まる『1997』。ギターをかき鳴らして、右手をあげるたかはしがこれまた様になる。ゆきやまの的確なリズムビートを刻むドラムの引き締まった音の張り具合も高揚感を高めていく。ラストは『リッケンバッカー』。やはりギターをかき鳴らして、右手を前へとあげて回して、どんどん声を張り上げていく。普段のライブ以上に声の張り上げ具合を感じたし、『偽物のロックンロールさ』と歌いながらも、本物のロックンロールを鳴らしている姿に痺れまくる...。とんでもない一番手だからこそ、続く2組への期待も否応なく高まる。

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二番手は崎山。2002年生まれの彼だが、高校生の頃からメディア露出があり、ギターを弾く歌い手として強烈なインパクトを与えられたが、どこかまだ幼さを感じていたのも事実。そこから数年経ち、21歳ならば当たり前なのだが、1曲目『告白』を歌われた瞬間の少年では無くて青年の歌声にドキッとする...。はっきりとくっきりと澄んだ声が観客フロアに届く。リーガルとはまた違うシンプルに削ぎ落された真っ直ぐなグッドメロディー。上手のマーティ・ホロベック(Ba)・下手の守真人(Dr)というリズム隊が、崎山の歌声を一層に引き立たせる。2曲目『My Beautiful Life』ではドラムの独特のリズムがスタイリッシュであったし、ともかくボーカリストとして崎山の存在感が抜群である。かなり高めに飛び跳ねてギターを弾く姿にも目を奪われてしまう。

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出番を終えたリーガルや出番前のHelsinkiのメンバーたちが関係者エリアからライブを観ているのも、対バンを観ている感があって、とても良い。ライブレポートを書きながらも、ついついお酒を呑みながら観たいなと思っていたら、崎山が『観客フロアでプシュッとした音が聴こえて、自分もライブ後にそれが楽しみだと言う。本当に青年に成長したんだなと変な場面で感激しながら、続く『舟を漕ぐ』のムーディーなギターに聴き入る。自由自在な軽やかなビートを楽しむが、中盤に入り、『Pale Pink』で守のドラムパッドから同期のビートが鳴り出して、一気にエレクトロニカなダンスミュージックへと変幻自在に音像がメタモルフォーゼしていく様子には驚愕しか無かった...。引き続き『プレデター』でも踊れる雰囲気を醸し出していき、全体像としての引き出しの多さに感嘆してしまう。エレクトロニカなサウンドは『I Don't Wanna Dance In This Squall』でも鳴らされ、崎山はギターを持たずハンドマイクで歌う。マーティがベースを置いて弾くシンセベースも良い味を出しまくっている。ギターボーカル・ベース・ドラムというミニマムな構成ながら、その音の多種多様性にはたまげるしかない。

去年12月にリリースされたばかりの『しょうもない夜』はファンタジックで浮遊感を漂わすも、激しいビートにも突入して、ヴォコーダーがかかった様な崎山の声も気持ち良すぎる。緩やかさもリズミカルさも持った『通り雨、うつつのナラカ』から『燈』へ。1曲目からずっとそうだが、何しろ歌が届きまくる。そして中盤からの流れだが、やはり踊れる。あっという間のラスト『Samidare』の前に、入り口の超特大暖簾について触れ、『めちゃくちゃ格好良いから持ち帰りたいくらいです』と話す。演者が観客フロアの、それも入り口にある超特大暖簾を把握して心から賞賛する言葉は、イベントの素晴らしさを表現してくれていて、何とも言えない程に嬉しかった。そして、最後まで熱狂しながら、観客の手を振る姿が印象的だった。

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三番手の大トリは最年長でもあるHelsinki Lambda Club。Helsinkiが魅力的なバンドであることはわかりきっていて、大好きだからこそ、これだけ若者たちがぶちかましてきた後に、どう立ち向かうのかが、誠に気になっていた。しかし、彼らはナチュラルにステージへと楽しそうに登場してくる。

『リーガルも崎山君もむっちゃ良かったですね。だいぶいい湯になってますけど、そのままお願いします』

何だかよくわからないけど、この橋本薫(Vo.Gt)の第一声を聴いた時に何も考えずに、ただただ心身ともにHelsinkiの音楽に委ねたら良いと確信ができた。その通り1曲目『引越し』は緩やかで穏やかで浮遊する心地良さでありながら、ポップでキャッチ―で一気に会場を包み込む。大トリで気合いは入っているはずなのに、この肩の力の抜けた...、この力みの無さは何なんだ...。どっしりと構える姿は威風堂々であり、もはや貫禄すら感じる。それでもナチュラルという大前提には変わりない。続く『ミツビシ・マキアート』からはグイッとギアが入り、稲葉航大(Ba)はグルグル回りながら暴れている。ロックンロールを聴いているなと大満喫ができる。その勢いは『台湾の煙草』にも引き継がれて、跳ねまくっていく。『Chandler Bing』では打って変わって、ちょっと重たさを感じながらも緩やかな曲調で、橋本の『みなさん湯加減どうですか? 気持ち良く踊りましょ』と語りかけてきた意味がよくわかる。

『すごく良いイベントですね。暖簾とかこだわって、みなさんを迎え入れる準備をしているイベントですね。熱々も良いけど、ぬるいくらいも好きですよね?』

『長風呂ができるからね!』

この橋本と稲葉のやり取りは、自分たちの立ち位置をよく理解していて、とても好感が持てた。3組全てがごく自然な感じで主催の清水音泉について触れたが、特に清水音泉と付き合いが長いHelsinkiは、まるで取扱説明書の如く、清水音泉のイベントについて話せていて、やはり好感しか持てなかった。その後も5月4日・5日に泉大津フェニックスにて開催される清水音泉主催野外イベント『OTODAMA~音泉魂~』について、Helsinkiと崎山が出演すると告知して、出演者面子も凄いし、絶対に楽しいと太鼓判を押す。

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『眠ったふりして』から『収穫(りゃくだつ)のシーズン』の流れもそうだったが、Helsinkiはポップキャッチ―感と浮遊感の合わせ具合が絶妙であり、その中でも『収穫~』は5月5日に『OTODAMA』出演するフィッシュマンズを彷彿させる様な感覚があり、もはや名人芸とでも呼びたくなるくらいに絶品であった。浮遊感の中に潜む気合いの入った咆哮には、フィッシュマンズや清水音泉にも通じる闘魂をも感じられた。そんな全てを持ち合わせたものがロックンロールなのかなと勝手に頭を巡らしながら、軽快で可愛らしさもあるロックンロールビートな『午後葵』で踊る。

『最後はちょっと熱いお湯で!』

橋本のワンツースリーフォーなカウントが響き、稲葉が歌い出し、橋本も交互に歌う『ロックンロール・プランクスター』。『ハイディハイディホー』というフレーズを自然に口ずさんでしまう。満足しかないラストナンバーだが、まだまだ音楽の湯につかりたいと想ったのは私だけでは無かっただろう。

『いい日ですね、まじで。いい日の時に言葉って出ないんですよ。「OTODAMA」楽しみです。まじで良い面子ですよね。良いフェスです』

何度言うんだよ、でも何度も言いたくなるよねって、こちらも理解ができてしまう橋本の清水音泉への強い気持ち強い愛。もしかして『Next To 湯(You)』って、次の湯である『OTODAMA』へ繋がる意味合いもあるのかなと、ふと想ってしまった。いつか今宵の3組全組が『OTODAMA』という湯につかるところも観てみたい。

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アンコールナンバーは『シンセミア』。2015年リリースの1stミニアルバムという原点をラストのラストで聴けたのは喜ばしい。この頃から衝動と浮遊を早くも持ち合わせていたのだと感激に浸りながら踊っていた。あぁ~、いい湯だった...、これ以上の言葉があるだろうか。それでも、まだまだ、いい湯につかりたい人は、もう言わなくてもわかるだろう、5月4日・5日の湯につかりに行って下さい。そうそう観客が帰る時の客出しBGMですが、もちのろんでTHE POLICE『Next To You』! おあとがよろしいようで。

Text by 鈴木淳史




(2024年3月15日更新)


Check

Set List

●リーガルリリー
01.GOLD TRAIN
02.17
03.ハイキ
04.東京
05.60W
06.蛍狩り
07.春が嫌い
08.1997
09.リッケンバッカー

●崎山蒼志
01.告白
02.My Beautiful Life
03.舟を漕ぐ
04.Pale Pink
05.プレデター
06.I Don't Wanna Dance In This Squall
07.しょうもない夜
08.通り雨、うつつのナラカ
09.燈
10.Samidare

●Helsinki Lambda Club
01.引っ越し
02.ミツビシ・マキアート
03.台湾の煙草
04.Chandler Bing
05.バケーションに沿って
06.眠ったふりして
07.収穫(りゃくだつ)のシーズン
08.午時葵
07.ロックンロール・プランクスター
EN.シンセミア

Live

「OTODAMA’24~音泉魂~」

PICK UP!!

【大阪公演】

▼5月4日(土・祝)・5日(日・祝) 11:00
泉大津フェニックス
1日券-8800円(整理番号付)
学割1日券-6600円(当日要顔写真付身分証明書、整理番号付)
1日券-8800円(整理番号付)
学割1日券-6600円(当日要顔写真付身分証明書、整理番号付)
2日通し券-16500円(整理番号付)

[4日(土・祝)出演]a flood of circle/打首獄門同好会/ORANGE RANGE/クジラ夜の街/クリープハイプ/SAKANAMON/サンボマスター/シャイトープ/四星球/超能力戦士ドリアン/帝国喫茶/Hakubi/バックドロップシンデレラ/フレデリック/My Hair is Bad/ヤバイTシャツ屋さん/Lucky Kilimanjaro/ルサンチマン/キュウソネコカミ(湯上がりアクト)

[5日(日・祝)出演]EGO-WRAPPIN’/OKAMOTO’S/奥田民生(MTR&Y)/オレンジスパイニクラブ/くるり/GRAPEVINE/Cornelius/崎山蒼志/清水ミチコ/STUTS/台風クラブ/never young beach/ピーズ/羊文学/フィッシュマンズ/Hedigan’s/Helsinki Lambda Club/POLYSICS/フラワーカンパニーズ(湯上がりアクト)

※雨天決行、荒天中止。
※中学生以下入場無料。保護者1名につき、同伴の中学生以下1名まで無料で入場可能です。2名以降の小中学生は、有料ですので学割1日券を購入ください。ただし、未就学児は安全面の理由により、保護者1名につき2名以上の入場はご遠慮ください。
※学割1日券は、高校・専門学校・大学・大学院生が対象となります。入場時に年齢確認が出来る顔写真付きの身分証明書(学生証など)の提示が必要です。
※再入場可。
※その他、詳しくはイベントHPを必ずご確認ください。https://shimizuonsen.com/otodama/24/
[問]清水音泉■06-6357-3666

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リーガルリリー

「Regallily “LIVE HOUSE TOUR 2024”」
【大阪公演】
▼3月31日(日) 18:00
梅田クラブクアトロ
一般チケット-5000円(整理番号付、ドリンク代別途要) 学割チケット-3000円(当日要学生証、整理番号付、ドリンク代別途要) 17歳チケット-1700円(当日要身分証、整理番号付、ドリンク代別途要)
※未就学児童は入場不可。小学生以上は有料。
[問]GREENS■06-6882-1224

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崎山蒼志

「band tour 2024 "春の滲み"」
【大阪公演】
▼4月14日(日) 17:00
umeda TRAD
全自由-5000円(整理番号付、ドリンク代別途要)
※未就学児童は入場不可。
※出演者が許可した場合を除き、写真撮影、録音・録画禁止。
[問]清水音泉■06-6357-3666

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Helsinki Lambda Club

「w.o.d. presents “TOUCH THE PINKMOON”」
【大阪公演】
▼4月19日(金) 19:00
梅田クラブクアトロ
オールスタンディング-4800円(整理番号付、ドリンク代別途要)
[ゲスト]Helsinki Lambda Club [DJ]DAWA/Ken Mackay
[問]GREENS■06-6882-1224

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