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“嘘はつかずに妄想する”
神戸出身のラップ・ユニットNeibissが自然体で歌う、日常と空想

ビートメイカー、DJ、ラッパーのratiff(ラティフ)とラッパーのhyunis1000(ヒョンイズセン)からなるNeibiss(ネイビス)が、フルアルバム『Daydream Marker』をリリースした。ともに2000年生まれで神戸市出身の2人は、高校生の時に出会って2018年にNeibissを結成、2020年に『Heaven』でデビューした。2022年10月にリリースされたEP『Space Cowboy』にはtofubeatsや、パソコン音楽クラブ、E.O.Uがトラックメイカーとして参加。今じわじわと知名度を上げている新進気鋭のラップ・ユニットだ。今作には、昨年リリースしたシングル『SURF’S UP』『BOSSA TIME』『FLASH』をはじめ、Campanellaを客演に迎えた『4 season feat. Campanella』を含む全12曲が収録されている。今回は、ぴあ関西版WEB初登場のratiffとhyunis1000に、今作についてたっぷり話を聞いた。5月6日(月・祝)には大阪で初のワンマンライブを開催する。これからの躍進が期待されるNeibissを、今のうちにチェックしよう。

遊びの感覚を持ち続けたまま、活動していきたい



――最近のNeibissを取り巻く環境はどんな感じですか?昨年7月に"良い波乗るぜ"と歌うシングル『SURF'S UP』を出されていて、まさに良い波に乗っているのかなと。

ratiffNeibiss67年やってて、だんだん良くなってる実感はあって。良い波来てるんじゃないかという感じ」

hyunis1000"言っちゃえ"って感じ」

ratiff「そういうことを歌詞で入れられる自信がついてきたというか。ずっと自分らで活動してたんですけど、tofubeatsさんやパソコン音楽クラブさん、ヒップホップじゃない人たちからも徐々に受け入れてもらえるようになってきて。『SURF'S UP』は結構"自信あります!"と言い切れるぐらい、自信がついてきたのかもしれないです」

ーーそれはどういうところから感じますか?

hyunis1000「お客さん3人の会場がなくなった感じです」

ratiff「確かに! ライブで盛り上がってくれる人や、好きですと言ってくれる人が前よりちょっと増えて、見てもらえる幅が広がりました」

――最初Neibissを組んだ時、"ここを目指そう"みたいな目標は決めてたんですか?

ratiff「最初は本当に遊びでやってて、徐々にデカいフェス出たいと思うようになっていったかな。そりゃちゃんと売れたいとかはありますけど、1個ずつ着実にステップアップして、長く続けていきたいです」

hyunis1000「今も遊びの延長でやってる感じが大きくて。仕事になったら嬉しいけど、遊びでどこまでいけるかというのもあるし、遊びの感覚がなくなったら多分ダメやなって」

――それこそパソコン音楽クラブさんも、遊びと仕事の間のスタンスで活動されていて。良い先輩が近くにいらっしゃいますね。

hyunis1000「僕らもそうなれるかもな、みたいな気持ちになってきました」

――tofubeatsさんとはどういうお話をされるんですか?

ratiff「僕は音楽面の悩み相談ばっかですね。tofubeatsさんも理論的に考えるところと感覚的なところを持ち合わせてる方なので。明確なアドバイスではなくて、"まあまあ、ここをこうしたらいいんじゃない?"とか、ゆるい感じで提案してくれるので話しやすくて。でも"最近の新譜これ良かった"とか、他愛ない話ばっかしてるかもしれないですね」

――可愛がってもらってるんですね。

ratiff「ありがたいことに。年も10個近く離れてて、いきなりこんなフックアップしてくれるのは多分あまりない例だと思うんですけど」

――地元が同じ神戸なのは大きいですよね。

ratiff「関西の先輩で、喋っててもノリが一緒なので、すごく安心します。相方も実家が近かったみたいで」

hyunis1000"あそこでご飯食べてたんですね"とか、"そこのハードオフに行ってたんですね"とか、"めっちゃ高校近いです"とか」

――横の繋がりも広がっているのかなと思いますが。

ratiff「横がそんなにないんですよね(笑)。ちょっと年上の人の方が仲良くなりやすいというか」

――可愛がられる体質なんでしょうね。

ratiff「嬉しい体質です(笑)」



Neibissが楽しいのは、2人で制作に向き合えるから



――前作『Space Cowboy』はトラックメーカーの方が大勢参加されていましたが、今回は全トラックratiffさんが手がけたということで、"次にどういう作品を作ろう"みたいな方向性はあったんですか?

ratiff「それまで僕がトラックを作って、ヒョンと2人でリリックを乗せる感じだったんですけど、それを1回やめて『Space Cowboy』の時にtofubeatsさんたちの力を借りてやってみたら、結構良くて。今までのNeibissはアップテンポな楽曲やダンスミュージックっぽいニュアンスの曲があまりなくて、どちらかというとゆったりした曲調が多かったんですけど、『Space Cowboy』以降、今までやってなかったことをトラックで反映させたら面白いかなと。あと個人的には『Space Cowboy』で知ってくれた人たちに、2人だけでも曲が作れると再度提示したかったかもしれないですね」

――作品を経て、自分たちのカラーを広げていこうというところですか?

ratiff「そうですね、今ちょっと広げつつ。お互い普段からクラブやDJイベントに遊びに行ってて、聴く音楽のジャンルも毎週違うぐらいの勢いなので、そこから吸収して、自然にアウトプットの幅が広がっています」

――日頃トラックは作っておられるんですか?

ratiff「前より頻度は減りましたけど。今回のアルバムは自分的にまとまって何か作りたい気持ちがあって、毎週毎週ヒョンの家に集まって、"このトラックどう?"と言いながら、あんまりだったらボツにして、みたいなのを繰り返していった感じですかね」

――アルバムを作り始めたのはいつ頃ですか?

ratiff「『Space Cowboy』のリリース後から、徐々に年をまたいで2人で集まって。作ると言いつつも本当に遊びなんですけど、ビートをかけてだらだら喋って。その中でアルバムにする曲を絞っていきました」

――その間にどんぐりずとの『DOMBIESS』もあったり、ヒョンさんが骨折されたり。

hyunis1000「知られてる(笑)」

――ニュースになってました。ソロ活動も並行しつつの制作だったんですね。

ratiff「ヒョンは昨年11月にアルバムを出して、僕はシングルをリリースしてます」

――ソロとNeibissでは、言いたいことや表現したいことが違うんですか?

hyunis1000「ちょっと違いますね。けどこれからはできるだけ一緒にしようと思うんです」

――それはなぜですか?

hyunis1000「ソロはもうちょっと内面的になっていくんです。でもNeibissは人を楽しませようと思って作ってるので、その違いやと思います」

――ratiffさんは?

ratiff「僕はNeibissとそんなに変わんないかもしれないですね。けどNeibissが楽しいのは、ヒョンがビートに対してどう乗せてくるか。それが2人で作ってる感があるので。ソロは人の意見を取り入れずにやるので、どこで完結したらいいかわからない」

hyunis1000「最近は"音の展開をこうしてみたら"とか、"ここでラップを入れて歌を入れよう"2人で話し合いながら作るので、できた時の感覚がすごく楽しみです」

ratiff「今回のアルバムは毎週1曲作るみたいなスピード感で、次集まった時に修正したい場所を修正して作ってたんですけど、結構どれも"うわ、キタ!"みたいな感じでできたかなって」

――1週間で1曲って、制作スピードが早いですね。

ratiff「トラックは準備しといてヒョンの家でかけて。2人ともリリックは1日で書けるので、別々の部屋で書いて。前まではデータの送り合いで、僕が録音したものをヒョンに送って、ヒョンが空いてるところを埋めるやり方だったんですけど、『Space Cowboy』から2人で集まって作るようになって、それが結構やりやすくて」

hyunis1000「今回は初めて期限が決まっていたので、週1で集まらないと間に合わなくて。やってみたら意外とできるやんということで、そういうペースになりましたね」

ratiff「今思い出したけど、『Space Cowboy』でtofubeatsさんのトラックに対して、何個かボツったりしたよな。tofubeatsさんのマネージャーのCE$(セス)さんにサビやラップの展開を聴いてもらって。CE$さんは今回のアルバムでもトータルディレクターをしてくれて。『Space Cowboy』の時は結構難航したというか、何回か"わからん!"みたいになりましたけど、今回はスムーズにいきました」

hyunis1000「しかもtofubeatsさんのビートだから、中途半端なことはできないというプレッシャーがあったけど、今回は良い意味で気を抜いてできました」

ratiff「僕も自分のビートなので、どんな変なことを歌おうが別にいいかなというのはあったかもしれないですね(笑)」

――Neibissらしくできたんですね。

ratiffhyunis1000「そうですね」



嘘はつかない、大きくみせない。自然体のラップを歌う



――アルバムのテーマは決まっていたんですか?

ratiff「元々コンセプトがあったわけじゃなくて、曲ができてきたのを最終後付けでコンセプトがあったふうに見せてます」

――タイトルも後でつけたんですか?

ratiff「そうです。最初は惑星とか、Space Cowboyが宇宙に向かってるみたいなテーマやったんですよね。全部空想の話やし、どこかの惑星に着くのか島に着くのか、"なんたらプラネット"みたいな名前にしようかとなって」

hyunis1000「最初"フォースプラネット"とか言ってて、でもちょっとダサいなって」

ratiffB級映画みたい(笑)。で、浮遊感のあるトラックと曲が多いので、ヒョンが『Daydream Marker』とつけてくれました。昼寝で見た記憶を11個マーカーで記していくみたいな意味ですよね」

hyunis1000「そんな感じです」

――アートワークを手がけたwackwackさんが、"背伸びしてない等身大の20代のヒップホップだ"と絶賛されていましたね。

ratiff「肩書きにしたい(笑)」

――等身大というのは、意識されてました?

ratiff「でも、元々2人ともそういうタイプというか。ヒョンも初めて会った時、自分を大きく見せようとせずに自然体のまま歌ってる感じで。ヒップホップってフレックス("見せつける"という意味のスラング)と言って、高い車を買うとか金のチェーンを巻くとか言うんですけど」

hyunis1000「それにちょっと違和感を感じてる」

ratiff"それをやったら何なんやろな?"みたいなのが、多分2人ともあって。ヒップホップという言葉は、生活や人生、色々なものに置き換えられるじゃないですか。日常的なことを歌ってても、ヒップホップというジャンルに昇華できる。お互いそんなに大きく見せたいと思わないタイプなので、それが自然に曲に出ているのかもしれないですね」

hyunis1000「それに、そのスタイルが良いと言われるようになってからは、より意識して肩の力を抜くようになりました。らしくなさが出る時がわかるようになって。無理してる時は落ち着こうというか、"無理せんとこう"みたいな」

――自分たちの等身大がわかっている。

ratiff「徐々にですけどね。まだ全然わかってないっちゃわかってないし。今まで通りやりつつ、変化していけたらという感じではありますね」

hyunis1000「嘘はつかずに妄想はする」

ratiff「そうですね。嘘はつかない」



性格の異なる2人が紡ぐ、それぞれの日常



――2曲目の『FAMILY RESTAURANT』もまさに日常を歌っていますよね。どこか、大衆的な音楽に対する風刺的な意味合いも感じられました。

ratiff「僕個人は、ファミレスってどこ入っても一緒で、メニューもほぼ一緒みたいなところと、今のヒップホップシーンの"何かもう全部一緒やーん"とか、"もっと楽しい感じにやれたらいいのにな"と思うところがあって、それをうまく曲にしたかったりしました。あと、ヒョンと僕がファミレスにめっちゃ行くので、それを普通に書いた感じですね」

hyunis1000「デニーズでビール飲むの好きです(笑)」

ratiff「地方でライブ終わりだと居酒屋やってないこともよくあるけど、ファミレスは深夜までやってるから」

hyunis1000「でも、そういう風刺的なこと歌ってたんや」

――ヒョンさんは違う感覚で書いていたんですか?

hyunis1000「僕は家族がバラバラになってるので、ファミリーレストランに行くけど<ファミリーレス>。ちょっとシックに言葉遊びしました。<頼んでもない飯>は、頼んでもないことをしてきたり、言ってくる人もいて、そういうのもいらんからという例えです。自分がした注文だけをくれと」

――実際にそういう出来事があったわけじゃなくて。

hyunis1000「あった気がしますね、注文ミス。ちゃんと言っていこうということですね」

――最後が銅鑼の音で終わるのは、神戸の中華街的な?

ratiff「あははは!(笑)」

hyunis1000「これは、ただただ笑えるんじゃないかって」

ratiff"中華やん"というね(笑)。この曲は僕、作った時から1曲目の想定をしてて。トラックもめっちゃ高速で、でもバーンと強制的に終わらせたくて、最初爆発音か何か入れようかと思ったけど、"銅鑼めっちゃおもろいやん!"となって。その後に女の人の声で<What the fuxx is this?>と入ってるんですけど、あれはスラングっぽく"何これ?"と言ってるんですよ。なのでヒョンのリリックの注文ミスにも繋がるなと」

hyunis1000「笑かしにきてるっすね。面白い」

――次の『Take It EasyM-3)』もリリックは攻めてますよね。

ratiff「これはヒョンのリリックが結構すごいですね。毒を言うというか」

hyunis1000「ちょうどその時考えてたことを書きました。ちょっと危ないこと言ってるかも」

ratiff「思想的なことを言ってる。"気楽にいこうぜ"とサビで回収する感じですね」

――あと<ratiffは案外気楽>というリリックが気になりました。

ratiff「掛け合いみたいにしたかったんですけど、ヒョンのリリックは結構刺す感じだったので、俺は楽観的な感じでいっかな、みたいなニュアンスで書きました」

――ratiffさんご自身は気楽なタイプなんですか?

ratiff「まあ、まだポジティブな方ではあると思いますね」

――お2人は性格も違うんですか?

ratiff「全然違うっすね」

hyunis1000「僕は考えすぎて疲れる時があるので、ratiffの気楽な感じに助けられてます」

――<脳内のキャパがもう爆発寸前>はどちらが書かれたんですか?

ratiff「そこからは僕のリリックですね。僕も結構考えるタイプではあるんですけど、お酒飲むとかタバコ吸いまくるとか、To Doリストが溜まっていくとか、そういうのが日常的にめちゃくちゃあって。途中で"普通に働いてたら働いてたで嫌かも"みたいなことを書いてるんですけど、"気楽にいきたいよね"ということを、もっとリアルに言いたかった」

――<バイバーイしないとこんな生活>とか、共感できる部分かなと思います。

ratiff「毎日思ってます、そういうのは(笑)」



2
人の映像を作り、話し合ってそれをリリックに昇華



――『SURF'S UPM-4)』はアルバムでも良い存在感を出していますね。

hyunis1000「これは夏前に"夏の曲作りたいよね"と話してて。2人ともあったかい季節が好きでテンションが上がってるので、作った曲ですね」

ratiff「だいぶテンション高いもんね」

――<その先には何? とてもなくビッグな波が>というリリックが良いですね。

ratiff「さっきの話じゃないけど、だいぶ大きめに出てみました(笑)。と言ってもポジティブで、"お金が欲しい!"とかじゃなく、何かわかんないけど壮大なキラキラした未来みたいな意味ですね」

hyunis1000「嬉しくて泣いてるもんな(笑)」

ratiff「感極まっちゃった感じですね(笑)」

――ライブで歌ってると、ビッグウェーブに乗ってる感覚になりますか?

ratiff「アップテンポで爽やかで、ライブでやる時すごく楽しいかもしれないですね」

hyunis1000ratiffのベースラインが波に思える。"ブーン"って鳴ってるんで、それを見ながらやってます」

ratiff「最高っす。嬉し涙まではまだいけてないですけど、汗だくではやってます」

――『BUBBLE FACTORYM-5)』も、自分たちの遊び場が広がってる感覚で、勢いが増しているような。

ratiff「多分、このアルバムで1番最速でできたかもしれない。ヒョンの入院中に書いたっけ?」

hyunis1000「車椅子に乗ってる時に送られてきて。ほんまにすぐできましたね」

ratiff「これは僕的には、ラップで言いたいこともそうですけど、どちらかというとフロウやリズム感の気持ち良さを意識した曲かもしれないです。タイトルも全然がっちり決まってなくて、本当にフリースタイルに近いぐらいのノリで僕が勝手につけて」

――後ろで鳴ってる空耳的な声は?


ratiff
「あれはサンプリングなんです。中国か韓国の女性たちの喋り声なんですけど、めっちゃリズミカルに聞こえる。意味はあんまないですね。空耳アワード的な感じで、皆さんで解釈して楽しんでもらって」

hyunis1000「俺はその言葉を日本語に変えるとしたら、<みなさんこんにちnice 2 me to u>だと思って」

――それでここに入ってるんですか!

hyunis1000「よく"音が喋ってるかも"と感じることがあって、その音が何かを伝えたいか空想して考えるんですけど、そのビートだったんです」

ratiff「すげえ、知らなかった」

――面白いですね。『FLASHM-6)』はライブで聴いたらカッコ良いだろうなと。でもシリアスですよね。

ratiff「シリアスで、だいぶSFチックですね。最初作った時は『ET』とかの話してたよね」

hyunis1000「僕がめっちゃSF好きで、そういう曲を作りたくて」

ratiff「僕は『ET』の薄暗くて霧がかかってて、匂いも変で、光るけどずっと薄暗いみたいなのをやりたかった。ずっと走ってる感じというか」

hyunis1000「夜やけど明るいみたいな」

ratiff「ちょっとクラブチックでもある曲ですね。めちゃくちゃコンセプトを決めたというよりは、2人で色んな映画を投げたりして作ったかも。あと個人的には、RIP SLYMEがドラムンベースを結構やってて、"いいなあ"というので取り入れてみました」

hyunis1000「面白い作り方をしたかもですね。2人で映像を見たわけじゃないけど、2人の映像を作って話し合ってそれを歌詞にした。霧の中で光が見えてて、それをUFOと言わずに表現しようみたいな。ほんとは見えてないけど見えちゃってるみたいな。実は『KOBE MELLOW CRUISE』の影響が結構あって。地元の神戸なんですけど、色んな街からヒップポップ好きな人が集まってきて。それがなんかすごいUFOで連れてこられたみたいな。"あんな大勢の人どこにいたん?"みたいな」

ratiff「ある意味宇宙人ぽくもある」

hyunis1000"そういう世界に来てしまった"みたいな感じになって。普段おらんような人たちがめっちゃ来てて、SF感があった」

ratiff「確かに。めっちゃおもろい、その視点」




楽曲を作るために『浦島太郎』をちゃんと見る



――『BOSSA TIMEM-8)』はちょっとRIP SLYMEからの影響を感じますね。

ratiff「これはめっちゃ意識したというか、RIP SLYMEのトラックを作ってるDJ FUMIYAさんが、ギターのカッティングのサンプリングみたいな、余韻を残さずにチャチャチャチャって切りまくる手法をやってて、自分でもやってみたいなと思って。今の日本語ラップシーンやヒップホップの軸ではあまりないなと。誰もやってないことをやりたかったので作りました」

――『dig up dig downM-10)』も韻がリズムになって気持ち良いですね。

hyunis1000「お宝探しの曲ですね。"ガラクタだけど宝物"みたいな曲を作ろうって」

ratiff「色んな視点でお宝のことを言ってます。ヒップホップでもレコードをディグると言うんですけど、僕は恋愛とかでも"君のこと深く知りたいけどわかんない"みたいな、色んな例えにして作って。最初は『ディグダグ』という地下に潜っていくレトロゲームがあるんですけど、その映像を流して作ったかもしれないですね。ちょっとファミコンっぽい、チップチューンっぽいトラックだったので、コミカルにサビは冒険っぽいことを歌って、リリックはディグについて歌ってるかもですね」

――お互いが共有できるイメージを流しながら作るのが面白いですね。

ratiff「それは結構やりますね。前作『Space Cowboy』に収録の『Beautiful Dream』は、『浦島太郎』を2人でちゃんと見るという(笑)」

hyunis1000「『浦島太郎』と映画『うる星やつら2 ビューティフル・ドリーマー』ね」

ratiff「『ビューティフル・ドリーマー』が結構『浦島太郎』をぐわって広げたような話なんです。遊びの延長なので、その方が曲が作りやすいですね」



何度も繰り返し聴ける1枚になった



――最後の『Looking 4uM-12)』は初のラブソングだそうですが、作るに至った経緯は?

ratiff「僕がトラックを作った時に、自分の中で"キター!"となって。曲調的にもめっちゃラブソングっぽいなと思って、ヒョンに投げたらそのままこのバースが返ってきて。一緒に書いたんじゃなくて、バースを埋める作業だったんですけど」

hyunis1000「トラックが良すぎて。昔聴いてたような曲で、"こういうのやりたかった"と思って」

ratiff「ちょっとオルタナティブロックっぽい、マック・デマルコやスティーヴ・レイシーみたいな緩いロックっぽい感じのトラックで。その時ヒョンがすげえ"ラブな感じ"やったんで、僕が逆に"全然恋愛うまくいってない"みたいなことを歌おうかなと。これも結構スムーズにできた気がします」

――ヒョンさんに"ラブソングっぽい曲"と言って投げたんですか?

ratiff「いや、何も言わずに投げました」

hyunis1000「ただただ僕がラブくなってて。素直にそれを歌おうと思って、リアルにラブく歌いました」

ratiff「ヒョンのリリックでも結構珍しいというか、感情がそのまま出たよね」

――ラブソングを作ってみて、どんな気持ちになりました?

hyunis1000「スッキリ。ちょっと恥ずかしさはあるっすけど。あと改めて"初のラブソングを作った"みたいなのがめっちゃ恥ずいです(笑)」

ratiff「自分らの良くないところというか、素直にラブとか言ってない。ラブソングやけどラブソングと言いたくないから、タイトルも『Looking 4u』にして」

――でも恋愛だけじゃない捉え方もできるのかなという。

ratiff「ヒップホップだと、ヒップホップそのものに対して愛を歌う曲も多くて。PUNPEEさんとSTUTSさんの『夜を使いはたして』とかも、ヒップホップに向けて歌ってる。そういうニュアンスですかね」

hyunis10002人が仲良くなるキッカケがオルタナティブロックだったので、原点回帰感がありますね」

――そう思うと、2人のラブソングという感じもしますね。

ratiff「あー、出会ってNeibissをやって、音楽にハマっていって」

――そういうところでの相思相愛感、友情ソング。

ratiff「そういう捉え方もできる。お任せします(笑)」

――今作はすごく良いアルバムになったんじゃないでしょうか。

ratiff「自分でも結構何周も聴いたんですけど、普段聴けるのがいいかもしれないですね。ミックス・マスタリングをしてくださった得能(直也)さんと話して、最近のヒップホップはわざと音圧をめちゃくちゃ出すのが流行だと。けどそういうのは飽きやすいからと。音圧が前に出すぎると繰り返し聴かないし、1発目の衝撃が良くても長く聴くものにはならない。なので全体的に質感をちょっと柔らかくしてもらったんですよね。それが結構良くて、時間も30分ぐらいなので、さくっと繰り返し聴ける1枚になったかなと思います」

hyunis1000「今までに比べて、音もラップも進化できた作品だと思います」

――56日(月・祝)には心斎橋CONPASSで初の大阪ワンマンライブがありますね。

ratiff「ずっとワンマンしたかったんですけど、なかなか形にならなかったし、自信もそんなになかった。でも今回アルバムを出せて、今1番良いタイミングなんじゃないかな。僕はもう毎日考えるぐらい、ずっと緊張してます。でも楽しみなのと、今まで出してライブでやってない曲がいっぱいあるのでそれをやりつつ、自分らが1番楽しめたら。それを見てお客さんも楽しんでもらえたらいいなと思ってます」

hyunis1000「全然やってこなかった曲もあるので、時間を遡って4年ぐらい前の昔の自分らに会える感じが楽しみですね。念願のワンマンなので、もしかして嬉し涙が......

ratiff「おお!」

――出るかもしれない! 例えば今後一緒にやってみたい方はいらっしゃいますか?

ratiff「芸人さんとライブやってみたいです。ヒップホップ好きな人も多いと思うから。個人的には霜降り明星さんと令和ロマンさん。芸人さんで誰か知ってくれてたら熱いよな」

hyunis1000「夢がありますよね」

Text by ERI KUBOTA




(2024年3月22日更新)


Check

Release

Neibissらしさが存分に発揮された最新アルバム『Daydream Marker』配信リリース中!

【収録曲】
01. Daydream Marker
02. FAMILY RESTAURANT
03. Take It Easy
04. SURF’S UP
05. BUBBLE FACTORY
06. FLASH
07. Soulful World
08. BOSSA TIME (interlude)
09. BOSSA TIME
10. dig up dig down
11. 4 season feat. Campanella
12. Looking 4u

視聴はこちら

Profile

ビートメイカー/DJ/ラッパーのratiff(ratiff)とラッパーのhyunis1000(ヒョンイズセン)の二人組。共に2000年生まれ、兵庫県神戸市出身。Nerd Space Program。2018年に結成、2020年01月「Heaven」でデビュー。2022年10月にtofubeats、パソコン音楽クラブ、E.O.Uが参加したEP「Space Cowboy」をリリース。11月には、Campanellaとパソコン音楽クラブを迎え、WWWにてリリース・パーティー「Neibiss Space Cowboy Release Party」を行った。2023年5月17日にどんぐりずと「DOMBIESS」をリリース。二組が出演するMVも公開され、話題となっている。また、自らの所属するクルーNerd Space Programでの活動やソロとしてのリリースも活発に行うなどあらゆるカルチャーを巻き込み注目を集めている。2024年2月14日アルバム「Daydream Marker」をリリース。

公式サイト
https://music.spaceshower.jp/artist/12599934/

Live

「Neibies 1st One Man Show」

PICK UP!!

【大阪公演】

▼5月6日(月・祝) 17:30
CONPASS
スタンディング-3800円(整理番号付、ドリンク代別途要)
※未就学児は入場不可。
[問]夢番地■06-6341-3525

チケット情報はこちら


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