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“自分自身もバンドとしても、いろんなことを乗り越えて強くなった”
リスタートを切った、Mr.ふぉるての決意と覚悟

稲生司(vo&g)、阿坂亮平(g)、福岡樹(b)、吉河はのん(ds)からなる4ピースバンド・Mr.ふぉるてが、2ndフルアルバム『音生 -onsei-』をリリースした。稲生の喉の不調と吉河の活動休止を乗り越え、一層絆を深めた彼らにとって、今作はバンドとして気持ち新たに“リスタートする”という意味合いと、“このメンバーで音楽と生きていくんだ”という決意が込められた1枚となった。また、今作ではギターの阿坂が作曲・編曲を手がけた曲も2曲収録されており、クリエイティブな面での飛躍と成長も感じることができる作品にもなっている。今回は、昨年10月ぶりに登場してくれた稲生と阿坂のふたりに、新作アルバムについてたっぷり話を聞いた。現在全国ツアー中の彼ら。4月と5月には兵庫・大阪・奈良でライブが行われるので、こちらも楽しみにしていよう。

新しい1歩を踏み出すタイミングで、皆と音と生きていきたい


――前回の取材の時、"すでに良い曲ができている"と嬉しそうに教えてくださいましたが、それがついに完成したということですね。"音と生きる"という覚悟がタイトルからも楽曲からも伝わってきて、まさに今のふぉるての生き様を表すような1枚だと思います。『音生-onsei-』というタイトルは、稲生さんが提示されたんですか?

稲生「いつも全部曲が出来上がってから、最後に僕がアルバムのタイトルをつけるんです。一昨年重い喘息を患って、それでも今までみたいにいろんな感情を曲にしていきたいなと思ったのと、はのんちゃんが半年間活休して、去年の9月末にライブに復帰してくれて、皆が足並み揃ってまた新しい1歩を踏み出すタイミングで、皆と音と生きていきたいなという意味を込めて『音生-onsei-』というタイトルにしました」

――阿坂さんはこのタイトルを聞いた時はどう思いましたか?

阿坂「本当にスッと受け入れました。もちろんメンバーなのでストーリーも全部わかっているし、このアルバムにふさわしいタイトルだなと思いました」

――"音と生きていく"という気持ちは、4人それぞれ持っているところはあったんですか?

阿坂「皆多分、"おじいさんおばあさんになっても音と生きられてたら幸せだな"という感じだと思います」

稲生「別にお互い最初からそんなことは話してないんですけど、 "言わなくてもわかるでしょ"みたいな空気はバンドの中にありましたね」

――前回の取材で、"今1番メンバーの仲が良いと思う"ともおっしゃっていて、絆は強固になっていると思いますが、バンドとしての覚悟も決まってきた感じでしょうか。

阿坂「音楽を続けるために売れたいという気持ちは、皆どんどん強くなってて。でっかい家に住みたいとか、そういうことじゃないと思うんですけど、やっぱり音楽を続けていくためには、結局音楽でご飯を食べられないといけない、ということを現実的に感じてくる年齢やキャリアではあるので。皆音楽に対しての向き合い方がどんどん変わって、真剣にというか、今までも真剣だったんですけど、本気度が今までとは全然違うなと感じます」



"Mr.ふぉるて感"はちゃんと残しつつ、大衆性を帯びた作品ができた


――今作はそのメンタルで辿り着いたアルバムということなんですね。制作はツアー中からされていたんですよね。

稲生「シングル『無重力(2022年12月リリース)』の時から考えると、1年ぐらいかけてアルバムを作っていました。だいぶ長く時間を使ったなと思うんですけど、その分細かく話し合いながら進められていったので、1曲1曲すごくクオリティの高いものができて、結果的に自分たちにとって本当に納得のいくものになりました」

――キャリア2枚目のフルアルバムですが、1stフルアルバム『Love This Moment(2022年3月リリース)』から意識したことはありますか?

阿坂「1stフルアルバムは、自分らのやりたいことや、自分らがイメージしたMr.ふぉるてをストレートに出したイメージなんですけど、今作は色んなことを経て、お客さんとも向き合ったというか。お客さんが求めていることに対して、僕らも一方通行じゃなく、ずっと一緒に楽しめたらいいなという想いで作りました。ただ自我を押し付けるだけの音楽じゃなくて皆を巻き込めるような......簡単に言うと、ポップスみたいなものにフォーカスして作れたなと思ってます」

――大衆性というか。

阿坂「はい。"Mr.ふぉるて感"はちゃんと残しつつ、大衆性を帯びた作品ができたので、とても満足してます」

稲生「僕は歌詞に"君と僕"を使うことが多いんですけど、1stに比べて2ndの"君と僕"の距離感は、前よりすごく縮まった内容の曲が多いと感じていて。あと、前は寄り添うだけの優しい曲ばかりだったんですけど、例えば1曲目の『涙の行方』(M-1)とかは、歌詞が疑問系で終わっていて、相手に託すようなチャレンジをしたり。あとはインディーズの頃に出した『sweet life』(2021年リリース)という盤に『トライアングル』という曲が入っていて、<悲劇を止められず歌うことしか出来ないけどね>という歌詞があるんですけど、僕は自分自身もバンドとしても、色んなことを乗り越えて強くなったよということを表現したくて、今作の『Chaplin』(M-10)で<君の日常に潜む悲劇は倒すから>と書いていて。さらに寄り添いつつも、自分たちはちゃんと強くなっていると表現している曲が多い気がしますね」

――歌うことしかできなかったバンドが、守れるようになったと。実際ライブでのお客さんとの距離感もぐっと近づいていますよね。

稲生「ライブは物理的な距離があるし、最前のお客さんと後ろのお客さんじゃ全然距離も違うと思うんですけど、基本的に僕は距離は関係なく、曲の中と同じぐらいの距離感にずっといたいし、届けたいという気持ちはあるので。音楽のもっと深いところで、心で繋がっているような感覚をライブでも歌詞でも表現したい。そういうところで歌詞の中でも距離が縮まってるんじゃないかなと思います」



自分と似た人に対して、ヒーローでいたい(稲生)


――先ほどのお話にも繋がると思うのですが、稲生さんは以前"ヒーローになりたい"という願望があるとお話くださって。人間は少なからず誰かの役に立ちたいという欲求があると思いますが、今作の歌詞を読んで、稲生さんは結構そこが強いのかなと感じました。愛情表現として"支えたい、救いたい"という気持ちがあるのかなと。

稲生「周りから見たら"それ本当?"と思われるかもしれないですけど、僕は暗いニュースを見たりすると、自分のことのように苦しくなっちゃうというか。性格的に深く飲み込みすぎちゃうことが昔からよくあるんです。だからやっぱり、映画の中の大きいヒーローとかよりも、もっと近くにいる人の存在の方が救いになると僕は思っていて。僕は孤独を感じやすい人間なので、自分と似た人に対してヒーローでいたい感覚が、今回すごく強く出てるのかなと思ってます」

――『涙の行方』の<生きづらい そう感じる時間もあるだろう でも 一緒に生きようね>というところは、ステージでおっしゃっていることでもあるし、今言っていただいたメッセージが全部詰まっていると感じます。『涙の行方』は本当に寄り添う楽曲ですが、オケは結構情熱的ですね。

稲生「これはスタジオで、アレンジャーさんを含めた皆でそれぞれの引き出しからアイデアを出しつつ、リズムから作っていった楽曲なので、すごく思い入れが強い1曲です。出来上がった瞬間に、"これは絶対アルバムの1曲目だね"と満場一致でした。ドラムのリズム的に幕開けみたいな感じがあるし、自分的にもアルバムのこの位置がしっくりきましたね」

阿坂「歌詞と対極にあるようなオケの熱量で、それが逆に良いなと思ってて。ギターも同じようなフレーズがループしてるんですけど、それも面白いなと思ってます。すごくカッコ良い楽曲になりました」

――ギター、カッコ良いですね。

阿坂「ありがとうございます。ギターを弾いて作ったというよりかは、歌を歌うような感じでフレーズを考えて作ったんです。初めての制作方法で新鮮でしたね」

稲生「ざっくりオケが出来上がった後に、"ギターソロどうする?"となって。デモで亮平くんがギターソロを鼻歌で歌って録音してて、それをギターで弾いてるので、かなり歌っぽいギターソロだよね」

――そういう作り方にトライしてみたんですか?

阿坂「僕がリスペクトしてるギタリストは、歌のようなギターラインを弾く方で、僕の理想も人間の声に近いギターのトーンなので。フレーズも人間が歌うようなラインで考えられたら温かいものになるなと思って、そういう制作方法にしてみました」

――ちなみに、リスペクトされてるギタリストというのは?

阿坂「SOMETIME'SというバンドのTAKKIさんです。TAKKIさんのギターフレーズは、ロジカルなんですけど感性が感じるところもあってすごく心にくるので、僕もそこをリスペクトしています」



自分の音楽への考え方も、イメージを具現化する技術もどんどん進化してる
(阿坂)



――今回は阿坂さん作曲の失恋ソングが2曲収録されています。『明晰夢』(M-4)も『こがれ』(M-7)も、メロディーがめちゃくちゃ良いですね。

阿坂「ありがとうございます」

――『こがれ』では、まさに"歌うようなギター"が表現されている気がします。

阿坂「『こがれ』は、イントロと間奏、ソロ、アウトロという4セクションにギターが入ってしまっていて」

稲生・筆者「入ってしまっていて(笑)」

阿坂「冷静に考えたら、ちょっと入れすぎだなと思ったんですけど(笑)。今までの自分だったら、アウトロとイントロはほぼ一緒にしてたところを、今回はちゃんとこだわり抜いて楽曲に合うようなテーマを弾いたり、テーマは同じだけどそのテーマから派生した別のフレーズを作れたり、一貫したものはありつつも、歌詞のストーリーに対して始まりとエンディングを変えることができたりしました。ギターフレーズを考える力も、前回よりは成長してるのかなと思います」

――アレンジ力もご自分の中でレベルアップしたなと思われますか?

阿坂「そうですね。メジャーデビューしてからNumaさんというサウンドプロデューサーの方に師事して一緒にお仕事をさせてもらったり、僕個人的にも他のバンドのサウンドプロデュースやアレンジを始めてて。他のお仕事からもらったインプットを、今回ふぉるてでも最大限に使って。自分の音楽に対する考え方も、イメージしたものを具現化する技術もどんどん進化してるなと思います」

――他のメンバーさんに求めるレベルも高くなってると思います?

阿坂「そうですね。本当に半分パワハラみたいになっちゃうんですけど(笑)。ベースの樹くんには『日常の少し先へ』(M-9)で200テイクぐらい録ってもらって」

――え!? すごい。

阿坂「もうそれこそNumaさんも皆も帰っちゃって」

――1日で200テイク録ったんですか?

阿坂「そうです。レコーディング中はクリックにピッタリ合わせるんじゃなくて、クリックに対してどのぐらいズラして録るか、俺の中でしっかりイメージがあったんです。だけど、そのズレを共有するのにすごく時間がかかって。樹くんにはめっちゃ申し訳ないんですけど、全然OKが出なくて。でも最後まで文句も言わずやりきってくれて、すごく良いフレーズが録れました」

――ドラムも難しいフレーズがたくさんあったとラジオで吉河さんがおっしゃっていました。

阿坂「僕はヒップホップが好きなので、『日常の少し先へ』で、サンプリングの手法でアレンジをするパターンも採用していて。サンプリングしたドラムループが、ブラックミュージックのゴスペルから持ってきたもので、それをはのんちゃんの技術で表現してもらったんですけど、タイムやグルーヴを掴むのが難しくて苦戦させてしまいました(笑)」

――なるほど。編曲者としても作曲者としても、着実に力をつけておられる感じですよね。

阿坂「僕の求めるものに対して、本当に樹くんとはのんちゃんの技術がどんどん上がっていって、僕の想像よりも高いクオリティでレコーディングしてくれることもあるし、信頼度が増していってますね」

――皆で一緒に上がっていってる感じですね。そんなメンバーを見て稲生さんはどう思っていますか?

稲生「僕も亮平くんが作った曲をレコーディングする時はすごく怖くて」

阿坂「怖い?(笑)」

稲生「亮平くんがどれだけ求めてるかを、僕はもうすごく理解してるつもりではいるので、自分で"今のテイクダメだったな"と思うと、案の定"もうちょっとやってみようか"という返答が来て。レコーディングの時間は限られているので、うまく表現できないとかなり焦るし。でも、"うわ、怖いな。次でキメないと"みたいな焦りが良いプレッシャーにもなって良いテイクが録れることがあるので。1人のアレンジャー・作曲者として、自分の力になることをアドバイスをくれる感じがします。これからの自分の作曲にも活かせたらなと思ってます」



作曲家・阿坂亮平のルーツとこだわり、夢


――『明晰夢』はすごくポップで、阿坂さんご本人も"SEKAI NO OWARIっぽさがある"とおっしゃっていましたが、イントロの開ける歌い方やメロディーラインは確かにそうだなと思いました。

阿坂「実は全然無意識なんです(笑)。先ほど言ったように、今回のアルバムは大衆性というものにすごくフォーカスして、曲を噛み砕いて、この日本に溢れる色んな楽曲をアナライズして、ポップスというものを自分の中にインプットしたつもりだったんですよ。同時に"Mr.ふぉるてはどういうものなんだろう、皆から見たMr.ふぉるてってどういう存在なんだろう"と考えてて、その折り合いをつけて楽曲を作ったら、結局自分のルーツになったというか(笑)」

――『明晰夢』も『こがれ』も、歌は綺麗に立って聴こえてくる上に、オケも凝っているなと感じました。

阿坂「歌をフォーカスさせるために、司くんが歌っている時はなるべく他のメロディーを入れないようにしてて。コードの組み合わせ方にこだわりがあるんですけど、そこを喋ると話がマイナーになっていくので(笑)。オケに対して司くんをどこまでフォーカスできるかというところで、めちゃくちゃ頑張りました」

――なるほど。そういう曲だと、歌うのは気持ち良いですか?

稲生「そうですね。亮平くんが作る曲は歌っていて気持ちが良いんですけど、今まで結構色んな音が鳴ってる中で歌っていたので、やっぱり少し不安はあるんですよ。"今まであった音の壁がないな"と感じる時もあるんですけど、きっとそう感じてるのは自分だけで、多分聴いてる側からしたらすごく心地良いサウンドなので、頑張って慣れないとなって」

阿坂「(笑)。俺はいつか、司くんの声だけで楽曲を作るのが夢なので」

稲生「大丈夫か、それ(笑)」

阿坂「例えば声でコードを作ったり。元々は司くんの声に惚れてバンドが始まったので、いつか司くんの声だけで完結するものを作りたいなと思ってます」

稲生「想像できない(笑)」

――楽器パートを声でやるということですよね。そういうアイデアが湧いてくるほどに、創作意欲が高まっていると。

阿坂「そうですね(笑)」

――歌詞も素敵ですね。阿坂さんもお気に入りの<もしも この世界に 魔法なんてものがあるのなら>というフレーズは印象的です。

阿坂「ファンタジー要素もありつつ、"皆が思ってたけど文章にできなかったようなことがこんなに綺麗な文章で書けるんだこの人は"と思いましたね」

――歌詞はポップなメロディーに寄せたそうですね。

稲生「あと亮平くんが仮歌詞を書いてきてくれるので、そこからワードを引っ張ってきたりします。『明晰夢』は仮歌詞に<魔法>という言葉が入っていて、亮平くん的には"切ない気持ちを歌った曲だ"と言っていたので、<魔法>と<切ない>を組み合わせてどんな言葉が書けるだろうと自分なりに考えたら、この言葉が出てきて。そこからどんどん広げていった感じです」

――仮歌詞はどのぐらいのボリュームなんですか?

稲生「ワンコーラス分くらい?」

阿坂「本当に寄せ集めた言葉を羅列してる感じで、ざっくりコンセプトだけ決めて、適当な文章で書いてるだけなんですけど、それを司くんが綺麗にストーリーにしてくれる感じですね」



昔と今の自分のギャップとの戦いを描いた『18番目の春が過ぎて』


――『18番目の春が過ぎて』(M-6)の歌詞は結構辛辣で、サウンドもノイジーでロックで、インパクトが強い1曲です。Bメロの<18度目の春が過ぎて 難しいが当たり前になっていった>の部分だけ、19歳の時に書き変えられたとか。

稲生「そうですね。あとは20歳超えてから書きました」

――"難しいが当たり前になっていった"体験があったんですか?

稲生「僕はあまりコミュニケーションが得意じゃなかったり、人の目を見て喋れなかったりするんですけど、大人になったらそれがなくなって、もっと楽になると思ってたんです。でもそんなこともなくて、歳を重ねていくにつれて、人と関わることが怖くなってしまったり、知りたくなかったことを知ったり。10代の頃に悩んでた時の方がまだ楽だったなと思う自分がたまにいて。悩みが膨らむと周りも見えなくなるし、これも歌詞に書いてるんですけど、隣の芝生よりも過去の自分の芝生が青く見えたり。僕は、幸せな過去の幸せな気持ちや、楽しかった思い出にばかり縋ってしまうタイプで、普段から前に進むために時間が必要な性格なんですけど、過去に縋りついても生きていけないし、昔と今の自分のギャップとの戦いを描きたくて書いた曲です」

――今もそう思うことが多いですか?

稲生「そうですね。歳を重ねた分、楽しいこともたくさんあるんですけど、例えば皆でご飯を食べて、帰り道で1人になった瞬間、"さっきあの人に言った言葉はこれで良かったのかな"とか、いろんなことを考えちゃうんです。そういうことが普段の自分にたくさんあって、それを吐き出すために書いた曲です。今までも弱音は吐いてきたけど、自分の真っ黒な部分はあまり人に見せたくないなという気持ちは正直ありつつ、でも大切な人には知っててほしいという矛盾もあって。うまく吐き出せないかなと思って、曲と歌詞にしました」

――書いた時は勇気が要りましたか?

稲生「自分もたまに愚痴を吐き出しちゃうことがあるんですけど、愚痴を吐いても別に解決しないし、自分の黒い部分を出すのは勇気が要りましたね。わがままに殴り書きました」

――<自暴自棄の夜>という歌詞もありますね。でも<いつかは上手くいく>と言い聞かせて、諦めていないですよね。

稲生「楽しい思い出を繋げて生きてくのが、自分の一番の理想の生き方なんです。嫌なことも途中途中にあるけど、全部幸せなことを繋げて生きていけたらいいなというので、それも歌詞には書いてるんですけど」

――<「思い出のようにあたたかい日々を僕は今に繋げたい」>ですね。

稲生「はい」

――そこにあのノイジーなイントロですもんね。

阿坂「Numaさんと僕が別々でイントロを作って組み合わせたら、めちゃくちゃカッコ良くなったんです。オケのアレンジは、バンドメンバーとはのんちゃん、樹くんとスタジオで一緒に作って。結果論ではあるんですけど、大人になっていくにつれて感じる理想とのギャップ、世の中とのズレで生じた歪みが、バンドサウンドの歪みとリンクして、歌詞の内容に合った楽曲になったと思います。ギターフレーズも『エンジェルラダー(2021年リリース)』から引用したりしました」



喜劇王・チャップリンのような人でありたい


――『Chaplin』は今作に入っていることで意味が深くなる曲だなと感じましたが、制作の中でいつぐらいに出来たんですか?

阿坂「後半だよね」

稲生「ツアー中に曲を作っていると、"今までの自分の曲に勝てるのかな"となってきて、自分の中で納得のいく曲が書けない状況が続いたんですけど、急に夜中にイメージが浮かんで、ワンコーラスだけ30分で書いた曲です。"自分の歌いたかったことは、これかもしれない"と思えて。あとそのタイミングで、いつもニコニコ笑ってる友達が泣いてて"どうしたんだろう"と思って。もしその子がすごく辛い状況だったら、どんなに優しい言葉をかけてもきっと歪んで受け取っちゃうし、変に言葉をかけるのも音楽を勧めるのも嫌だなと思って、"ゆっくり休んでね"と言ってお別れしちゃったんです。自分は映画を観るのが好きで、サイレント映画の喜劇王であるチャールズ・スペンサー・チャップリンが、セリフもなしで人のことをコメディで笑わせていて、"自分は友達にとってこういう人でいたいな"と思ったことがあって。それで自分とチャップリンを重ねて書いた曲です。さっきも言ったけど、自分自身も弱ることはあるけど、今なら強くいれるという気持ちや、バンドとしても強くなったことを表現したくて、昔の歌詞を少し変えて引用して使ったり。あと<おつかれさま>という言葉を入れたのは、知ってる人から言われるのももちろん嬉しいけど、知らない人から言われても嬉しい言葉だなと僕は思って。業務的な"お疲れ様です"じゃなくて、居酒屋で店員さんに"今日もお疲れ様です"と言われただけで、"今日頑張って良かったな"と思える気がしてて。漢字よりもひらがなの方が優しさを感じてくれるんじゃないかなと思って、わざとひらがなで書いてます」

――チャップリン自身が、割と悲劇的な人生を送ってきた方ではありますよね。

稲生「僕、曲を書く時に改めてチャップリンの作品を見返して。人物についてもいろいろ調べて、本当にすごい人だなと感銘を受けて。チャップリンのいろんな気持ちを想像しながら歌詞を書いてましたね」

――オケはどのようにできていったんでしょうか。

阿坂「司くんから曲が送られてきてからレコーディングまでの時間がなくて。スタジオをお借りして、ほぼ家でやってる感じでDTMで編曲しました。歌詞とメロディーが送られてきた時に、頭の中にこのアレンジがバーンと浮かんだというか、自分が今まで培ってきた技術や知識じゃなくて、自然に歌詞とメロディーに引っ張られて作業していった感じでしたね」

――この曲をアルバムの最後に添えた理由は?

稲生「1人で曲を作ってる時、"これは絶対最後に入れたい"と勝手に思って。すごく壮大なアレンジになったので、フィナーレにふさわしい感じがして、メンバー全員一致で最後になりました」

――そこから続くインスト曲『音生 -onsei-』(M-11)は、阿坂さんが居酒屋での音声も入れたそうですね。

阿坂「司くんの挫折やはのんちゃんの活休があって、メンバーの仲もすげえ悪くなって、1回Mr.ふぉるてが終わりかけたんですけど、そこからまた集まってリスタートを切るタイミングで、皆で居酒屋に行って遊んだりして、どんどんグルーヴも良くなって。"ここからもう1回始めよう"となった時、このアルバムにもそういう意味を持たせたいなと思って、居酒屋の乾杯をこっそり録って入れました」

――本当に名盤だと思います。そして今作を提げた全国ツアーが5月まで続きます。最後に意気込みをお願いします!

稲生「アルバム自体もすごく進化が感じられたと思うんですけど、ライブも音やいろんなことにこだわってやりたいと思ってるので、ライブに来て、さらにアルバムを深く感じてもらえる空間にしたいです」

阿坂「楽しい曲もあるので、皆で踊ったり歌ったりして、嫌なことを忘れられるような1日になるライブを皆で作れたらなと思ってます」

Text by ERI KUBOTA




(2024年3月28日更新)


Check

Movie

Release

「これからの人生も音楽と共に生きる」という想いが込められた2ndフルアルバム

Album『音生 -onsei-』
発売中

【完全生産限定盤】(CD+DVD)
4400円(税込) VIZL-2272

【ビクターオンラインストア限定セット】(完全生産限定盤+フェイスタオル)
6600円(税込) VOSF-0000.

【通常盤】(CD)
3400円(税込) VICL-65917

《収録曲》
01. 涙の行方
02. I Love me
03. マールム -malum-
04. 明晰夢
05. 無重力
06. 18度目の春が過ぎて
07. こがれ
08. 克己心
09. 日常の少し先へ
10. Chaplin
11. 音生 -onsei-

《DVD収録内容》(完全生産限定盤特典)
「無重力」 Music Video
「マールム -malum-」 Music Video
「I Love me」 Music Video
「克己心」 Music Video
「幸せでいてくれよ」 Live at VICTOR STUDIO 2023/10/25
「あの頃のラヴソングは捨てて」 Live at VICTOR STUDIO 2023/10/25

Profile

2017年に4人それぞれが違う高校に通うメンバー集まり結成された、東京出身のロックバンド。結成当時10代を中心にSNSで爆発的にシェアされるなど支持を集め、その後楽曲リリースやライブを重ね、2021年にメジャーデビュー。全国ツアーはSOLD OUTが続出するなど、現在では各地の音楽フェスに名を連ねる注目のアーティストとなっている。

Mr.ふぉるて オフィシャルサイト
https://mr-forte.com/


Live

Mr.ふぉるて 2nd Full Album Release Tour 「音生 -onsei-」

【北海道公演】
▼3月29日(金) ペニーレーン24
▼3月31日(日) CASINO DRIVE

Pick Up!!

【兵庫公演】

チケット発売中 Pコード:260-229
▼4月5日(金) 19:00
チキンジョージ
スタンディング-4500円(整理番号付、ドリンク代別途要)
※4歳以上は有料、3歳以下は入場不可。
※バリアフリーでない会場もございますので、お手伝い等をご希望の方は事前にお問い合わせ先までご一報ください。
※開場時刻・開演時刻は変更させて頂く場合がございます。
※チケットの譲渡、転売行為は禁止とさせていただきます。非正規ルートで入手されたチケットは、全て無効となります。
※公演中の録音・録画・撮影・配信等の行為は禁止とさせていただきます。
※公演が延期・中止にならない限りチケットの払い戻しはお受けできません。
※会場内では、感染症予防のための措置や指示にご協力をお願いいたします。
※会場内外の映像や写真が公開される場合がございます。
[問]GREENS■06-6882-1224

【愛媛公演】
▼4月7日(日) 松山サロンキティ
【栃木公演】
▼4月12日(金) HEAVEN’S ROCK Utsunomiya VJ-2
【千葉公演】
▼4月14日(日) 柏PALOOZA
【愛知公演】
▼4月20日(土) ダイアモンドホール

Pick Up!!

【大阪公演】

チケット発売中 Pコード:260-229
▼4月26日(金) 19:00
なんばHatch
1Fスタンディング-4500円(整理番号付、ドリンク代別途要)
2F指定席-4500円(ドリンク代別途要)
※4歳以上は有料、3歳以下は入場不可。
※バリアフリーでない会場もございますので、お手伝い等をご希望の方は事前にお問い合わせ先までご一報ください。
※開場時刻・開演時刻は変更させて頂く場合がございます。
※チケットの譲渡、転売行為は禁止とさせていただきます。非正規ルートで入手されたチケットは、全て無効となります。
※公演中の録音・録画・撮影・配信等の行為は禁止とさせていただきます。
※公演が延期・中止にならない限りチケットの払い戻しはお受けできません。
※会場内では、感染症予防のための措置や指示にご協力をお願いいたします。
※会場内外の映像や写真が公開される場合がございます。
[問]GREENS■06-6882-1224

【静岡公演】
▼5月2日(木) LIVE ROXY SHIZUOKA
【奈良公演】
▼5月11日(土) EVANS CASTLE HALL
【東京公演】
▼5月17日(金) LINE CUBE SHIBUYA

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