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“ロックの歴史に忍び込ませられたと思えるほどの自信作ができた”
愛はズボーン、2年ぶりのフルアルバムで辿り着いた新境地

大阪を拠点に活動するバンド・愛はズボーンが4枚目のフルアルバム『MIRACLE MILK』をリリースした。バンド10周年の2021年10月に同時発売となったトリビュートアルバム『I was born 10 years ago. TRIBUTE』、カヴァーアルバム『I was born 10 years ago.~COVER~』以来約2年ぶりの今作は、言葉遊びと音遊びが詰まった、バンドとしても熱量高く制作に取り組んだ自信作。今回は金城昌秀(g&vo)とGIMA⭐︎KENTA(vo&g)にアルバム制作の話をじっくり聞いた。聴き込むと発見がたくさん見つかる、最高に楽しくてカッコ良い1枚を、ぜひ手に取ってほしい。

シングル『まじかるむじか』以降、高まったレコーディングへの意識


――今作は2年4ヶ月ぶりのアルバムですね。

金城「ざっくり言うとアルバムを作ってた2年間でした。僕はずっと自分の新しいアルバムが欲しかったんですよ。その方が自分の聴きたいものが作れるので。そういう時代に生きてたので」

――CDでアルバムを聴いてきた世代ですね。

金城「アルバム買う時のドキドキとかね。試聴機で1曲目と2曲目の冒頭ぐらい聴いて、良かったらほぼ即買いやけど、7曲目か8曲目どっちかだけ聴こうみたいな。全体像でなんとなく選んで、帰って全曲聴いたら、自分の予想通りの部分と、予想から外れて良い部分と悪い部分が自分の中で見えてくる、そういう音楽の聴き方で育ってきたので。サブスク反対とか全くないし、サブスクで十分楽しんでくれたらいいんですけど、自分の楽しみ方としてフィジカルの方が性に合ってる」

――なるほど。

金城「それこそ2年間、チームでいろんな会話をしました。シングルを連発した方が今の流行りとしてはいいんじゃないかとか。ただ僕は一貫してアルバムを出したいと皆に言い続けてて。メンバーも含めてアルバムを作らないと良いものにならないと思ってたし、言ってましたね。今回はそれが達成できたので良かったです」

――GIMAさんも同じような感覚ですか?

GIMA「基本的に愛はズボーンのリーダーとして金城くんが意思表示をして、そこに沿って考えて進んでいくんですけど、シングル『まじかるむじか』(2022年4月リリース)の時に、レコーディングの内容を改革して、音の録りをよりこだわるようになったんです。だんだん録りが良くなっていって、それをアルバムに詰めることを2年間やってた感じですね」

――納得いくまでやりきる感じだったんですか?

金城「今"録りたい"と言ったら録らせてもらえるありがたい環境ですけど、潤沢な時間と予算があるわけではないので、いっぱい考えたな。今まで通りの尺感のレコーディングだけど、どれだけ濃密にできるかめっちゃ考えて。ほんまに自分たちの意識が『まじかるむじか』のレコーディングからだいぶ変わりましたね」

GIMA「うん」

金城「カバーアルバムの時、10曲のカバーを僕1人がオーガナイズするのは労力的にも納期的にも無理やから、4人で分担しようと。1人2~3曲担当して、曲ごとに誰がイニシアチブを取るかも4人に分けたんですよ。仕切る人によってやっぱり曲の個性は変わるし、仕切り方が甘いから曲がダサくなるわけでもないんですよね。ドラムのトミちゃん(富永遼右/ds)は仕切るのがそんなに得意じゃなくて、だけど前向きに捉えてやってくれて。僕も今までついていく側の経験がなかったので、ついていく側の大変さもなんとなく経験できた。あと多分皆は、どういう言葉を使えば相手に自分の考えが伝わるのかというコミュニケーションが、めっちゃはかどったんですよ。それから満を持して『まじかるむじか』を録音して。示し合わせて"ここからレコーディングに力入れようぜ"とか1回も話してないし、2年もかかると思ってなかったけど、"カバーじゃなくて新曲プラスアルバムを作るんだ"という意気込みで、ドドドと進んだ感じはありましたね」



メンバー全員が回答者になって、曲を解読していく


――アルバムのテーマである"ミラクル・マジカル・ケミカル"のワードは、『まじかるむじか』の時からあったんですか?

金城「ありました。当時打ったイベントのタイトルが、東京が『MAGICAL EAST』、大阪が『CHEMICAL WEST』で、響きがカッコ良いからつけてたんですよ。だからマジカルとケミカルというワードは大事にしてて、先に『まじかるむじか』を出して。その時はまだミラクルという言葉はうっすらしかなくて、次に"『ケミカルカルマ』(2022年8月リリース)って曲を作っちゃおう"みたいな感じやったな」

GIMA「曲名先行で作りましたね」

――作詞はお2人でされていますね。

金城「『ケミカルカルマ』が久しぶりやったな。2人で喫茶店行ってな」

GIMA「"ケミカルカルマ"という言葉が第1段階にドンとあって、それを細分化して、"『ケミカルカルマ』とはなんぞや"と連想ゲームで出てくるワードを拾って、五感と組み合わせて」

金城「あとは笑えるかどうか。<ニコニコニコチン日本全国健康運動>が出てきた時、2人でもうめっちゃわろたな」

GIMA「公共の場でな。めっちゃ小さい声でクスクス笑って。しかも2人ともしばらく黙るねんな。ある程度メロディーがあるから、頭の中で考えるんですよ。1行考えるのにコーヒー飲んでタバコ吸って10~15分ぼーっとしてる2人組」

金城「歌詞2人で書くときはほんまそんな感じです。基本"言いたなる"歌詞を考えてますね」

――<明日から頑張るぞ>はどこから出てきたんですか。

GIMA「<明日から頑張るぞ>のところだけ、何を言えばいいんやろうみたいな。オチ的にストレートに投げかけるところなので。で、金城くんが出したんやな。でも意味をめっちゃ詰めて決めたんじゃなくて、"<明日から頑張るぞ>とかどう?それってどういうことや?"みたいな」

金城「自分たち的には『ケミカルカルマ』は、"ずっと頑張らなくていいよ"という応援歌なんですよ(笑)。だって、明日から頑張ると決めれば今日はもう寝ればいいし、明日になったら明日は今日なので、また<明日から頑張る>と言ったら、頑張らないでいいじゃないですか」

――確かに。

GIMA「ライブでは皆マジで<明日から頑張るぞ>って言うんですよ。日曜日の『ケミカルカルマ』は皆気持ちこもってますね(笑)」

金城「ほんまに<明日から頑張る>の意味で言ってもいいしな」

――サウンド面はどのように作っていくんですか?

金城「歌詞と同時進行です。最初にタイトルを僕が持ってきて、喫茶店で2~3時間ぐらいで曲を作るんですよ」

――はかどるんですか?

金城「はかどるし、皆にわかってもらうために、ギターとか持たずにノート1冊・ペン1本持って、ノートの1ページに『ケミカルカルマ』と書いて、イメージの絵を描いたり、GIMAちゃんの声に合う、リファレンスになる音源を探してばーっと書き出していって、その場でまとめて"次のスタジオの日までに聴いといて"と皆に送って。僕にしかわからない謎の説明書みたいなものができて、それを皆に見せながらスタジオで解読するみたいな。僕も回答者になりたいんですよね。全部僕が作って、皆に弾いてもらうだけというのはあまり面白くないというか。愛はズボーンは4人とも個性とマインドがあると思うので、僕は出題者兼回答者。あとの3人は回答者になって、スタジオの時は"よーいどん"でバーンて作る」

GIMA「あと僕は色がイメージ湧くんですよ。『ケミカルカルマ』は銀や紫の感じ。銀に紫が入ったらちょっと毒っぽくなるけど、鋭利な感じがして、感情のあまりない無機質な感じが出るとか。そう自分でイメージして、サウンドアプローチをする感じでした」



自分から出てくるものだけを突き詰めれば、お客さんが増えると信じている


――今回"新境地に足を踏み入れた"と資料にありますが、どういうところでそう思いますか?

金城「まずはトリビュートとカバーアルバムが終わった後の4人体制をフルに出せた。あと"マジカル・ケミカル・ミラクル"というワードに沿って楽曲を作るって、そんなにやったことなくて。今まで"愛はズボーン"というものを曲にしていた感じだったんですよ。でもそれって立ち返って考えてみると、"俺らはめっちゃおもろいけど、愛はズボーンのことを知らない人に向けるものじゃなくないかな"と思ったんですよね。例えば夏ソングとか恋愛ソングとか、お客さんとの間に入る架け橋のテーマが大きければ大きいほど、色んなミュージシャンの人がそこに向けて曲を書くじゃないですか。僕らは大きいものから1個選ぶ感じで、"マジカル&ケミカル"をテーマにしていました。最初はアルバムタイトルも"マジカル&ケミカル"だったんですよ」

――他のインタビューで、金城さんが "音楽で楽しませたい、言葉が刺さるようなものを作りたい"とおっしゃっていました。自分たちがやりたいことをやるよりも、リスナーさんに刺さるものを作るように、気持ちが変化したんですか?

金城「どっちも取りたい感じです。僕、結局自分から出てくるものを出して人に喜んでもらわないと成功しないと思っていて。僕はバンドで成功したいので。バンドで成功するにはどうしたらいいかをGoogleに聞いたら、アルゴリズムを乗りこなせとか、さっき言ったみたいな、大きなコンテンツに引っかかるテーマを作ってヒットさせれば一生食えるとか簡単に出てくるんですね。でもそれにトライしてみた時って、僕はうまくいかないです。そういうアプローチじゃなく売れるにはどうしたらいいか考えた時、ニッチなテーマでもいいから、自分がほんまに心から揺さぶられたり、魅力を感じるものを作ろうと。俺だって色々悩んだり、嬉しかったり悲しかったりする。その感情は絶対お客さんと共有できるから、ほんまのことしか書かない。自分から出てくるピュアな表現だけを突き詰めたい。だから僕の中のメイクマネーはそっちですね。自分から出てくるものだけを突き詰めれば、お客さんが増えると信じているし、それしかできないです」

――そういう想いもメンバーさんに共有するんですか?

GIMA「基本全部言ってくれます。楽しくバンドをやりたいというのは、金城くんがずっと言い続けてることで。今メイクマネーと言ったんですけど、多分楽しくバンドをやるためには、そこを突き詰めないと楽しくなれないので、皆で噛み砕いてやる感じですね」



どれだけ言っても言葉にならない感情を歌う


――資料によると、一番の推し曲は『ひっかきまわす』(M-2)なんですね。

金城「『ひっかきまわす』は、"ライブでガシガシやっていこうね"って気持ちもあります。"ひシリーズ"があるんですよ。ひっくりかえす、ひっぱられる、ひっかきまわす。ライブでめっちゃ強い曲がほしい時に"ひシリーズ"を作るんですけど、3部作堂々完成。でも俺、4作目思いついてもうて。"ひっくるめる"、気持ち良くない?」

GIMA「"くるめる"がいいね」

金城「ひシリーズは全部"口気持ち良い"んですよ。もしかしたら『スター・ウォーズ エピソード1』みたいな感じで、"ひっくるめる"作るかもしれん」

GIMA「3部作完結して戻るから」

――なるほど(笑)。

GIMA「皆どこから聴いていいか、わからんくならへんかな?」

金城「ややこしいからな。『スター・ウォーズ』は4・5・6見てから1見ないと。なので、"ひシリーズ"は1番推してるというのはありますね」

――今作で核になる曲は?

金城「アルバムの核はやっぱり『MIRACLE MILK』(M-3)ですかね」

――『MIRACLE MILK』に込める想いは強いですか?

金城「強いですね。さっき言ってたみたいなことだと思います。人から受けるものや既視感のあるものじゃなくて、ほんまに自分が欲しいものは、自分の中からしか出てこないという歌になってます。2番の<「結局自分なんですよ」って宮さんも言ってる 毎朝鏡にはジョブズが映るし それもこれも全部他人だってことも知ってる>というのが伝えたいところ。どれだけ自己啓発を学んでも、異人から名言もらって自分を高めても全部自分やし、それ言ってるのは他人やから、自分への戒めというか。あと歌詞書いてた時に、<宮さんも言ってる~全部他人だってことも知ってる>からサビにいくまでの一小節が全然埋まらなくて。ここで言いたいことって"うわーっ"て感じやねんなと思ってたんですよ。もう"うわー"やねんな。<うわー>でいいか、と」

――(笑)。

金城「自分の中でめちゃくちゃ探してたけど、どれだけ言ってもこの感情は言葉にならなかったという歌詞ですね」



メンバーの得意と気持ちの良い声域を活かした曲作りを


――今作で、特に聴いてほしいという曲を教えてください。

GIMA「誰にですか?誰かによって変わるよね」

――なるほど確かに! ......では、GIMAさんが1番届くと嬉しいなという人に。

GIMA「それやったら『最後のひとり』(M-6)にしときます。だって『最後のひとり』の主人公、1人やん。1人ぼっちの寂しさを持ってる人が『最後のひとり』を聴いたら、"1人ぼっちじゃないんだ"と思うはずなので、『最後のひとり』を届けたいですね」

金城「すごい。僕が届けたいことをわかってくれてる」

GIMA「悔し泣きか寂し泣きかわからんけど、"うう~っ"てなりすぎて、感情が溢れて涙が出る瞬間あるじゃないですか。そのギターを"泣いてるように弾いてほしい"と言われて」

金城「GIMAちゃん、ギターの音作りが得意なので、聴いてほしいです。僕の言う感情もすぐ飲み込んでやってくれて、プレーもめっちゃ良くて」

――優秀なギタリスト。

GIMA「ギタリストって初めて言われました」

――(笑)。ではボーカリストとして、歌ってて1番気持ち良い曲は?

GIMA「『まじかるむじか』の最後の<oh 魔法みたいなメロディも>。あそこはめっちゃブルースで、腹を絞り上げて出すパートなので、ライブで歌うのが気持ち良かったりしますね」

――自分の得意な歌い方なんですか?

GIMA「そうですね。結構声がしゃがれているので、それを活かせるパートでもあるので。トリビュートとカバーの時、自分の声や特性をメンバーで話し合ったんですけど、オリジナル曲でそれを1番出せたかな」

金城「"GIMAちゃんの声が綺麗に出て気持ち良く歌えるところ探そうや"みたいなので。GIMAちゃんはスナックで歌ったら、その場にいる全員を虜にできるんですよ」

GIMA「その曲は松田優作の『YOKOHAMA HONKY TONK BLUES』」

金城「で、ベースの白井(達也/b)くんが、"一番気持ち良いのは鍵盤のここからここやで"みたいに可視化してくれて。"これ以上はちょっと張ったら出るけど、KENTAっぽくない声になる"とか。俺、時々GIMAちゃんにもっと高いところを歌わそうと曲作ってきて怒られてるもんな」

――ボーカリストとして表現の幅が広がった感覚はありますか?

GIMA「ライブでは結構低いところで声を出して、無機質なやぼったい感じで、感情を込める時だけちょっと声を張り上げて、抑揚を大事にしてます。新境地の話ですけど、去年ライブでの立ち位置が変わったんです。前までは上手下手で僕と金城くんがいて、真ん中のドラムの前に白井くんがいるスタイルやったんですけど、去年の初めぐらいから僕がセンターになって。実はリードを金城くんが歌う曲の方が多いけど、僕はハンドマイクになったら、もう真ん中で踊らせてもらう。今までは視界45°の角度でライブしてたけど、今は180°見えてるので、ギターを弾く時は全員を見て。で、"もうちょっとで騒ぎたい"みたいな奴を指差して、"来いよ"っていう作業を1人ずつやってる」

金城「次アルバム作る時は、GIMAちゃんはギターも弾かへん曲作ろうか」

GIMA「歌って踊れるダンスビートがいいな」



自分の音源をこんなに聴いたのは初めて(金城)


――金城さんが一番聴いてほしい曲は?

金城「『NEW SNEAKER MEMORIES~album ver.~』(M-12)と『笑う光』(M-11)ですかね。その2曲を聴きたくてアルバムを1曲目から聴くムーブになるだろうと思って作ったんですよ。それに自分がまんまと引っかかって。前まで酔っ払ったら自分の曲とかあまり聴きたくなかったんですよ。けど今回のアルバムは初めて酔っ払っても"うわ、聴きてえ"ってなるんですよ。もう6周ぐらいしました。自分の音源をこんなに聴いたのは初めてですね」

――それほどに自信作というか。

金城「ですかね。歌の話で言うと、やっぱりその2曲のメッセージ性が強いのと、声が綺麗に出る場所を僕もついでに調べてもらって、その2曲は歌っててすごく楽しいし、気持ちも入りやすいので好きですね」

――『NEW SNEAKER MEMORIES~album ver.~』では、シングルver.にはない弾き語りが冒頭に追加されていますね。

金城「アレンジも全部録り直してます」

――最後に入れる体で、アレンジもやり直したんですか?

金城「そうです。"最後は『NEW SNEAKER MEMORIES』やけど、今出してるシングルの音源ではないのよ"みたいな話を皆にしたら、"わかるわ"となったんです。シングルはシングルで良いけど、オープニング感が強かったのでもっとドラマチックにしたいと。でも曲の持ってるメッセージ性やポテンシャルは崩したくないと。正直スケジュールもタイトやったけど、"録り直す?"と提案したら皆乗ってくれて。それから毎日のように居残りしながら『NEW SNEAKER MEMORIES』をどうしたらいいかと猛ダッシュで考えて。でも、皆見えてるものがほぼ一緒やったから早かったな」

――愛はズボーンの次を想起させる、前向きな終わり方ですね。

金城「『笑う光』もポジティブですけど、『NEW SNEAKER MEMORIES~album ver.~』は突き抜けてポジティブ。他の曲はネガティブを挟みながら自分を励ます曲ですけど、『NEW SNEAKER MEMORIES~album ver.~』は、11曲分のネガティブを全部ひっくるめて、そいつも抱えて飛んでいこうみたいな歌なので、うまくまとまったかな。特に終盤の靴紐のくだりで全部回収できてる気がしてて。靴紐って元は1本やけど、解けてる時は2つに分かれてるように見えるじゃないですか。ほどけて"僕らバラバラだよね"というのを、前の日の自分(金城がリードボーカル)と次の日の自分(GIMAがリードボーカル)が歌ってて。そもそも1本やから全部自分だということに繋がるし、"頑張ってNew Worldに行こう"というイメージで書きました」



意識的・無意識的に歌詞に散りばめられたリンク


――ちなみに、排水溝に何かを流す人がよく出てきますが、主人公は曲ごとにいるというよりかは、1人だったりするんですか?

金城「1人ですね。嫌なことを全部排水溝に流すんです。そこ触れてもらえてめっちゃ嬉しいです。『SPACE OUT !』(M-7)の<いつまで経ってもシンジくん気取り 逃げちゃダメ状態全部後悔>のシンジくんは『新世紀エヴァンゲリオン』の碇シンジくんなんです。エヴァンゲリオンのアニメオリジナルで、ミサトさんの家にシンジくんが来た日にミサトさんが"とりあえず嫌なこと全部お風呂で流してきちゃいなさいよ"と言うんですよ。で、シンジくんがお風呂に浸かりながら"お風呂で嫌なこと流せって言うけど、お風呂の方が嫌なこと思い出すんだよな"と言うんです。"わかるー!"となって(笑)。俺シャワーとか浴びてる時、すっごい嫌なこと考えるんですよ。ムカつくわとか、"あの時あいつああ言ったけど、あれ絶対違うよな"とかシミュレーションが始まって、だんだん腹立ってくる。それを排水溝に流すイメージ。主人公は、汗と涙と大切な何かを、誰にもバレないように排水溝に流したりしますね」

――ネガティブなものを流していくイメージですよね。

金城「そうですね。あと他にも曲同士がリンクする部分が結構あって。<スプーン曲げ>とか自分で意図してる部分もあるんですけど、全く意図してないところで見つけたのが、『笑う光』で<観たい映画をアルゴリズムが 簡単に見つけてくれる>という歌詞と、『MIRACLE MILK』で<何か月間もおすすめに上がる 『フォレスト・ガンプ』を久しぶりに見たら 何かが始まって人生が変わった ような気がしただけ>というちょっと寂しい歌詞があるんです。で、『NEW SNEAKER MEMORIES』の<おろしたてのブレイザー>は『バック・トゥ・ザ・フューチャー』のマーティ・マクフライが履いてるスニーカーの名前で、<成せば成る成さねば never complete!>も『バック・トゥ・ザ・フューチャー』のオマージュなんですね。『MIRACLE MILK』で『フォレスト・ガンプ』を観て、そんなに人生が変わらなかった主人公が、『笑う光』で"アルゴリズムでおすすめされるものなんてクソだ、好きなものを自分で探そうぜ"と言って『バック・トゥ・ザ・フューチャー』を観て次の世界に飛んでいくんですけど、『フォレスト・ガンプ』と『バック・トゥ・ザ・フューチャー』の監督が同じなんですよ」

――すごい!

金城「ロバート・ゼメキス監督。たまたまなんですよ。そこがリンクしたのが、酔っ払った帰りに聴いてた4回目ぐらいですね。"このアルバムやば!"となりました。これは10年20年経ってもちゃんと残ってる、普遍的なものなので」

――多分他にもリンクしているところはあって、リスナーに探してもらうのも面白いですよね。

金城「ほんまにそれはしてほしいです。もしかしたら僕も気付いてないのもあるかも」



音楽は一斉に空間で共有できる芸術で、自分を爆発させる唯一のツール(GIMA)


――改めて今作はどんな1枚になりましたか?

GIMA「高校生の自分がKINGKONG(アメ村のレコードショップ)に行って、このアルバムのジャケット見たら多分買うんです。で聴いて衝撃受けて、教室の隅っこで"しめしめ、俺だけがこのバンド知ってる"ってなると思うんですよね。そんな1枚かな」

――最高の褒め言葉ですね。

金城「僕はアルバム制作中に子どもが生まれたので、さっきもちょっと言ったけど、10年20年経っても恥ずかしくないものを作りたいってずっと考えてたんですよね。そういう作品ができました。子どもがこのまま健康に育って小学生ぐらいになった時に、"父ちゃんバンドやってたん?"と聞かれて、聴いてもらえるものしか作りたくない。普遍的なものしか扱わないとか、時代が巡ってダサくなる時代が来たとしても、また回ってこれるような偏った世界観を作れたし、10年後に恥ずかしくならないものができたと思います。もし今聴いてみて、あんまりやなと思ったら、多分それは周期が合ってないだけ。2年後ぐらいに聴いたらドハマりすると思うし、今ハマってる人が飽きてくれてもいいし、常にループさせられるロックの歴史の中に、この1枚を忍び込ませられたんじゃないかなと思えるほどの自信作ができました」

――そして、3月から6月まで続く全国ツアーが始まります。

GIMA「ライブハウスに来たことない人に来てもらえたらいいなと思ってて。俺たちのライブやと楽しくなれると思うし、飛び込んできてもらえたら、僕絶対ステージ上で見つけて"来いよ"ってやるので。ライブを見た後に"なんかわからんけどすごかった、楽しかった"と、言葉では言い表せないようなライブをし続けたいですね」

――キャリアも13年目になりました。ライブに対しての捉え方は変わってきました?

GIMA「ライブって僕が知る中で唯一、五感全部で感じられるもの。友達の絵描きが、"ライブペイントをしてても、耳で訴えかけたり音圧を伝えられない。でも音楽はそれを全部放出できる"と言ってて。音楽は一斉に空間で共有できる芸術で、自分を爆発させる唯一のツールや生き甲斐的なもの。そこは13年経っても全く変わってないですね」

――自信作の今作を、ライブでやるとなった時の意気込みは?

金城「もう今むっちゃ練習してます。鬼監督(白井)がおるんで。ちゃんとフィジカルとロジカルを整えてくれる人がいるから、僕らは乗っかれる。"難しくて弾かれへん"とか言うてられへんもんな」

GIMA「昨日思いついたんですけど、マウスピースに光を発せられるものを仕込んで、それを口につけてバーって口開けたら光がめっちゃ出るみたいなのを作りたい。ずっと作り方わからなかったけど、キャリアを重ねてその作り方がわかってきた」

金城「どんなキャリア重ねたん!?」

GIMA「どっかのタイミングでそれやりたいですね」

――それも要注目ということで(笑)。

金城「僕ら、ゲームのレベル上げで言うと、13年間もらったポイントをほぼライブにつぎ込んで、最近やっと音源に注ぎ込めるようになってきた。自分たちのステータスの中で突出してるのがライブで、ライブをするためにバンドをやってる。それは最初から変わってない」

GIMA「ウケたいですね」

金城「微妙なニュアンスの違いですけど、"ウケたいなー"と思ってやるより、"これウケるかなー"と思ってやりたい。"これはウケるでしょう"みたいな顔してライブした時は、全然ウケないですから。やっぱり自分たちがニヤニヤできることを常に考えるのが僕らの大事なところだし、ライブにステータスをベットしてきたからこそできること。だからGIMAちゃんには歯を光らしてもらいつつ、僕も何か考えます」

Text by ERI KUBOTA




(2024年3月13日更新)


Check

Release

これまで以上に言葉遊びと音遊びにこだわった4thフルアルバム

Album『MIRACLE MILK』
発売中 2500円(税別)
TGUY-018

《収録曲》
01. IN OUT YOU~Good Introduction~
02. ひっかきまわす
03. MIRACLE MILK
04. イッチーピーチ
05. ケミカルカルマ
06. 最後のひとり
07. SPACE OUT !
08. Strange Yellow
09. ヘルステロイド
10. まじかるむじか
11. 笑う光
12. NEW SNEAKER MEMORIES~album ver.~

Profile

金城昌秀(g&vo)、GIMA☆KENTA(vo&g)、白井達也(b)、富永遼右(ds)。2011年大阪にて結成、遊び心と自由な発想、型にはまらぬストレンジロックバンドfrom OSAKAアメリカ村。哲学的なリリックをリフレインさせてオーディエンスを躍らせる。愛はズボーンは独りで聴いても、みんなで聴いても味がする。2024年2月7日には4枚目となるフルアルバム『MIRACLE MILK』をリリース。3月から6月までアルバムを引っさげて全国ツアーを開催する。

愛はズボーン オフィシャルサイト
https://iwzbn.com/


Live

Pick Up!!

【京都公演】

チケット発売中 Pコード:261-281
▼3月17日(日) 17:30
Live House nano
前売-3500円(ドリンク代別途必要)
[ゲスト]ナードマグネット/ULTRA CUB
※チケットは、インターネットでのみ販売。店頭での受付はなし。1人4枚まで。発券は3/10(日)10:00以降となります。
[問]A.T FIELD■03-5712-5227

【広島公演】
▼4月6日(土) 広島・4.14
【岡山公演】
▼4月7日(日) 岡山ペパーランド
【北海道公演】
▼4月14日(日) KLUB COUNTER ACTION
【茨城公演】
▼4月19日(金) 水戸ライトハウス
【宮城公演】
▼4月20日(土) FLYING SON
【千葉公演】
▼4月21日(日) 千葉LOOK

Pick Up!!

【兵庫公演】

チケット発売中 Pコード:261-281
▼4月26日(金) 19:00
神戸 太陽と虎
前売-3500円(ドリンク代別途必要)
[ゲスト]有
※チケットは、インターネットでのみ販売。店頭での受付はなし。1人4枚まで。発券は4/19(金)10:00以降となります。
[問]A.T FIELD■03-5712-5227

【岐阜公演】
▼4月28日(日) yanagase ants
【静岡公演】
▼4月29日(月・祝) 静岡UMBER
【香川公演】
▼5月5日(日・祝) TOONICE
【愛媛公演】
▼5月6日(月・祝) Double-u studio
【福岡公演】
▼5月11日(土) 福岡Queblick
【大分公演】
▼5月12日(日) club SPOT
【愛知公演】
▼5月25日(土) HUCK FINN
【東京公演】
▼6月2日(日) SHELTER

Pick Up!!

【大阪公演】

▼6月9日(日) 18:00
LIVE HOUSE Pangea
[ゲスト]有
[問]GREENS
[TEL]06-6882-1224

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