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Chevonが音楽を通して現在の風潮に投げかけたいこと
「いろいろ言われて当然という履き違えた正義が
いろんな人を傷つけている」

2月に1stアルバム『Chevon』を発表し、7月から6都市をまわる初のワンマンツアー『冥冥(めいめい)』を開催するバンド、Chevon。Chevonの楽曲は、社会に対する疑問、世の中の不条理に対して声をあげる姿勢の大切さが感じられる。常識とされている物事、それぞれの正義、それらについて自問自答する必要性を投げかけてくる。今回はそんなChevonの谷絹茉優(Vo)、ktjm(Gt)、オオノタツヤ(Ba)に、楽曲作りの根底にあるものについて話を訊いた。

――1stアルバム『Chevon』は非常にメッセージ性の強い作品になりましたね。

ktjm「それはやはり歌詞を書く谷絹の一貫した考えがあらわれているからだと思います。逆にギターとしては、あえてその歌とぶつかるようなメロディを使うなど、反骨精神が出ることがあるんです。それがよりChevonらしさを際立たせているのかもしれません」

谷絹「曲によって、話、言い方、伝え方に違いをつけていますが、でも言いたいことは一貫しているんです。『Chevon』でも、自分が持っている信念を説明する上で『この歌詞ではこう言っているけど、ここではこう言います』と異なる表現をして。そうやってできた曲を並べてみると『自分が描きたかったことがこのアルバムから見える』となりました。そういう意味で、Chevonとはどういうバンドなのかが分かるセルフタイトルになっていると思います」

オオノ「曲を作る上では、情景の共有も大事にしました。『この曲をジャケットにしたらこういう絵だよね』『歌詞に出てくるこの人って、こういう性格かな』とか。そうやって曲の解像度をあげていったんです」

谷絹「『この曲がもし映画の主題歌だったら』とかね。あとみんなでその曲の季節や時間帯を想像したり。歌詞に書かれていない部分のイメージを三人で持ち寄るんです。これは私がかつて小説家になりたかったことや、舞台演劇をやっていた経験がつながっているのかもしれません」

――これはよく言われることだと思いますけど、やはりChevonは"なにか"と戦っているバンドなのかなって。それこそ収録曲にもワードとして出てきますが、常識であったり、当たり前とされている物事や考え方であったり。

谷絹「常識とかって、人それぞれの捉え方次第だと思うんです。極端な話ですが、たとえばまったく同じ罪を犯した芸能人がいるとして、片方はイジられておいしい感じになったら好感度が上がる。でも報道の仕方が良くなかったり、周りから白い目で見られたりしたら悪い印象になる。当たり前ですけど、見え方は第三者によって変わるもの。物事の善悪の判別は他人に委ねられ、そして多くの人がそれに流されていく。善悪について自分のなかでちゃんと判断できないと、いつか足元をすくわれる。そういう意味でも、常識とされることにも疑問符を打っていきたいんです」

――たしかに周りに流されて判断することは多いですよね。

谷絹「たとえば多くの人は『学校は辞めてはいけない』という考えに縛られすぎていますよね。でも辞めてみたらそれはそれで幸せな道に感じられるはず。周りの人はどうなのか分からないけど、自分が『幸せだ』『そうして良かった』と考えられたらそれでいい。だって幸せの捉え方はみんな違うんだから。誰かの意見に合わせることを否定はしません。それが必要なときもあります。でもまず自分で考えること、自分の幸せや正義を見つけていくことが大事ですよね」

ktjm「たしかに曲作りをする上でも、お互いに譲り合ったり、みんなの意見に乗っかったりする方が楽ですよね。だけどそういうことをしていても結局は普通というか、当たり前のものしかできない。そうじゃなくて、各々がかっこいいと思うことを組み合わせてやった方が、絶対に良いものができる。"かっこいいのてんこ盛り"というか。どこかにそれぞれのクセがないと引っ掛かりも少なくなり、個性に欠けてしまうので」

オオノ「あと僕たちは完全分業制でやっていて、他のパートへの信頼も強いんです。相手のことをあまり考えないというか、だからみんながかっこいいと思えることが、損なわれることなくちゃんと混ざり合っている。曲ができたときは『あ、みんなの思っていることがちゃんとぶつかり合いながらも混ざっている』という感じなんです。だからちょうどいい3人組なんですよね」

ktjm「『Chevonってこいつのこういうところがかっこいいんだよね』『こいつのこれを聞かせたいな』というのがあるんです」

――その一方で、自分たちは未熟や幼さを認めた楽曲が多いのも特徴です。

谷絹「精一杯やっているなら、未熟だとしてもかっこ悪いとは思わないんです。むしろ未熟さや幼さってそのときの衝動が出ていて、あとで同じことをやれと言われてもできないもの。だからその衝動を曲として残していきたい。そういう足りなさこそ自分の根っこを感じることもできて、それを認めることで少しずつ大人になっていけるんです」

――みなさんは自分のどういうところに、未熟さ、幼さを感じますか。

ktjm「自分の場合は趣味に没頭しすぎちゃうところ。ゲームとかやっているとのめり込んじゃいます。あとガチャガチャが好きなんですけど、ガチャガチャコーナーの横を通ると我慢できません。好きなガチャガチャは、小さい食べものを再現した商品。なぜか集めちゃうんです」

谷絹「私は忘れ物が多くて、整理整頓ができなくて、部屋が散らかっていて、あと出発まで残り数分ってときにいきなりレシートの整理をやり出すところ。呼んでいたタクシーがもうすぐ到着するタイミングで、レシートを整理したい衝動が抑えきれなくなったりして。家を出るぎりぎりの時間にお風呂へ入ったり。それで遅刻とかしちゃうので、『次は事前にちゃんと準備しよう』と心掛けるんだけど、どうしてもできない。それって確実に、自分のなかにある正義を挫いている、だから完全なる未熟者です」

オオノ「僕は二人と違って自分に未熟さや幼さを感じないんです」

谷絹「そう言っているところがすでに幼い気がするけど!」

オオノ「周りから『末っ子っぽい』とよく言われて。いや、実際に末っ子なんですけど。なんか人の優しさに甘えるのが上手いと自分でも思うんです。『きっと怒んないだろう』って、人のカバンからガムを取り出して食べたり。でもやっぱり怒られないんです。小さいときもお小遣いがなかったから、友だちのお小遣いで生活していましたし。今使っているベースもお借りしたものをそのままずっと使っています」

谷絹「彼の場合は、そういうことを自分のなかの正義にしちゃっているんですよね」

――でも、それこそ『Chevon』には、世の中にはそれぞれに正義があるということも歌われています。

ktjm「SNSとかを見るとそれが分かりますよね。YouTubeや生配信のコメント欄を見ても、『なんでこの人はこんなに叩くんだろう』とか。僕はそれで嫌な気持ちになりたくないから、自分の作品の動画も他人の動画もコメント欄はできるだけ見ないようにします。良いことではないけど、そういうアンチコメントもそれぞれの正義のあらわれなのかもしれません」

谷絹「そうだとしても、相手が同じ人間だということを分からずに自分の正義を攻撃性に変えて振りかざす人が多すぎます。先ほど、自分の正義を持つことは大事だと言いましたが、履き違えてはいけない。たとえば芸能人の方に対して『人気商売だからいろいろ言われて当然じゃないか』という考え方がありますよね。それは芸能人側が口にして成り立つことであって、コメントする側が言うのは間違っているし、危険。結果的にそれでいろんなの人たちが傷ついているし、最悪なことが起きてから反省しても遅い。自分の顔を隠して他人を傷つける状態にしないことが大事。そして誰かが声をあげていかないとそういう流れができない。だから私は、ひどいコメントが来たら長文で反論するようにしています」

オオノ「僕は逆になにを言われても大丈夫なタイプ。自分の考え方として、そういうことを書く人よりも、その時点ですごく幸せな生活を送っているはずだから。すべてにおいて勝利している。『こいつは全然楽しくない人生で、周りの人にも恵まれず、だからこういうひどいことを書いているんだな』って」

――Chevonの楽曲はそういうメッセージがちゃんと感じられるから、感動できます。7月からのワンマンツアー『冥冥』は、そんなChevonの考え方がじっくり味わえる内容になりそうですね。

ktjm「ワンマンツアーを経験した自分たちが、そのあとどうなるのかも楽しみです」

オオノ「絶対に成功させなきゃいけないし、ここからステップアップしなきゃいけない。階段を踏み外している暇はない。そんなワンマンツアーだと思っています」

ヤギ「まだまだ未熟な自分たちではあるけど、でもちょっと大人な雰囲気というか、そういう色気を感じてもらえる内容にもしていきたいです。『大人な2024年にするぞ』という部分で、『冥冥』がメインイベントになるのではないでしょうか」

取材・文:田辺ユウキ




(2024年3月22日更新)


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Live

初の全国ワンマンツアーライブ開催

『冥冥』(めいめい)
【北海道公演】

▼7月17日(水) cube garden
【宮城公演】
▼7月20日(土) 仙台Rensa
【東京公演】
▼7月22日(月) LIQUIDROOM
【愛知公演】
▼7月25日(木) 名古屋クラブクアトロ
【岡山公演】
▼8月7日(水) YEBISU YA PRO

Pick Up!!

【大阪公演】

Sold out!!
▼8月9日(金) 19:00
梅田クラブクアトロ
オールスタンディング-4500円(ドリンク代別途要)
※未就学児童は入場不可(小学生以上はチケットが必要)。
[問]キョードーインフォメーション■0570-200-888

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