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TiUインタビュー
一秒ごとに“心の海”を広げて作り出す表裏一体の音楽

2022年11月の活動開始以来、抜群の歌唱力とセンスで話題を集めていた覆面アーティスト・TiUが、昨年10月4日にメジャーデビューを果たし、その正体が俳優の藤原大祐だったことを明らかにした。さらに自身20歳の誕生日である翌10月5日には1stライブも行い、2023年12月からは3か月連続で新曲をリリース。しかも、2月22日(木)には東京、 3月1日(金)には大阪で開催するZepp公演も控え、快進撃は止まらない。そんな今大注目のTiUをもっと知るべく、たっぷりと話を聞かせてもらった。

―― まずは音楽のプロフィールについて。ピアノを2歳半で始めたんですよね?

「レッスンに行ってたんです。たぶん親が自分に合った習い事を探してくれて、僕がたまたまハマったのがスタートです。10歳の時に当時のピアノの先生が辞めてしまったので、(クラシックから)ジャズピアノに切り替えて。親が言うには、ピアノを弾けって言って練習させたことはなくて自主的にずっと弾いてたらしいです。音が出るものが本能的に好きだったんだと思います」

――やめたいと思ったことは?

「実は1回だけあるんですけど、それはピアノがイヤっていうより、サッカーを本気でやっていて、ピアノに時間を使ってられないっていう理由です」

――ピアノのほかに触れた音楽は?

「小学校の時に聖歌隊に入ってました。あとはカラオケですね。マニアなんです(笑)」

――何を歌っていたんですか?

「ランキングの上から順に。全部1位を取りたくて、取るまでやるんで結構な曲で僕が全国1位でした(笑)」

――すごい。もしかして絶対音感、ありますか?

「ありますね。でもカラオケ(の1位)は、たぶんそこまでやる人がいないんだと思います。だいたい普通に歌うと8位とかになるんですよ。で、(1位に近い)得点も出るから、これはいけるかもって思うじゃないですか。でも普通の人はそこから1位を狙おうって思わない。僕はそこで、もう1回やるわ!っていうので、次は3位とかになって、じゃもう1回って......」

――1位を取った曲は覚えていますか?

「back numberの『クリスマスソング』とか、レミオロメンの『3月9日』とか。あと当時はSEKAI NO OWARIの『RAIN』っていう曲がリリースされたころでランキングに入ってたんで、それでも取ったし......ほとんど取ってました」

――今もカラオケに行ったら1位、取るんですか?

「大人になってからはやってないですね。点数が出ないカラオケに行くんで」

――でももし行ったら(笑)?

「......行って、もし(1回目で)5位とか出たら、絶対1位取るまでやります」

――さすが(笑)。今、カラオケで歌っていたアーティストの名前は出ましたが、影響を受けたのはどんな音楽ですか?

「やっぱりライブを見てすごいなって思うのはブルーノ・マーズですね。1月の来日公演も見ましたけど、圧倒的にライブが楽しいんですよね。(英語なので)来てる人の全員が全員、言ってることが全部わかってるわけじゃないと思うんですけど、それでも全員が本当に楽しいのが伝わってくるんです。ハッピーなエネルギーが舞台上からだけじゃなく、隣の席からもすごく感じられるんですよ。それってなんかもう、会場全体でライブを作り上げてるなっていう。そういうライブができる人になりたいと思いますね」

――では楽曲制作のことも。コロナ禍に始めたんですよね?

「そうですね。実際にDTMで打ち込んでっていうことまでやろうと思ったのは、その時が初めてでしたね。本当は生の音で全部入れたいタイプなんで。ただ、やっぱり最初のデモは僕がDTMで作ってそこから......って感じになりますね」

――ちなみに音楽を仕事にすると決めたのはいつですか?

「もともと役者をやることになった時、いつか音楽をやりたいっていう話はしていたんです。だからこそ今の事務所に入ったんですけど、 実際に曲を作ってデビューしたいって強く思ったのは自粛期間中ですね」

――その自粛期間中にはいろいろと研究されたとか。

「ビルボードチャートのジャパンもワールドも見て、上から順に曲を全部、何十回、何百回って聴きました。やっぱりたくさんの人に届けたいので売れる曲を作りたい。だから売れてる曲と売れてない曲の違いって何だろう?って。売れてる曲って、曲の構成とか音の積み重ね方とか、わかりやすさがあると思うので、そういうのを学んでましたね。たとえばドラムパターンとかベースパターンとかをまずは知って、アレンジャーさんに渡すデモのクオリティをある程度まで上げてって。感情のままに全部を奏でられるように最初は理論的に学んだっていう感じです」

――表現の引出しを増やしたんですね。

「たとえばドゥルーンって音が欲しい時に、何がどう鳴ってんのかがわからなかったんですよ。だから何をどう鳴らすかを言語化できて、音として最初から入れられるようにしたいっていうのが目的でした。デモを送った時にチームのみんなを満足させたいんですよ。楽しませたい。まず弾き語りのデモをアレンジャーさんに送って曲にすることが多いと聞くんですけど、僕は最初にデモを送ったタイミングで感動させたいんです。ある種、チームが最初のお客さんだと思ってるんで。そこで、すごい曲を書いてきた!って思わせたいから、最初にアレンジも自分でしちゃう。でもそれが楽しいです」

――そうやって実力をつけ、昨年10月にはメジャーデビュー。それと同時に覆面での活動から顔を出しての活動に。ただ、今は素性を伏せたアーティストも多いので、そのまま活動する道もあったのでは?

「ちょっとバレつつあったし、ライブをメインに活動していきたかったので、堂々と(顔を出して)ライブができないっていうのが歯がゆくて。弾き語りの動画を撮っても、顔を隠さなきゃいけなかったり。ま、あの動画は楽しかったんですけど、一生あれでやっていくかっていったら......やっぱり歌ってるところを見てほしいっていうのがあったんです。それと、ミュージシャンだけでやってる人が、たまにチラッと一部だけ見えるのは全然いいと思うんですけど、僕がそうなった場合、あの役者の人だ!ってなる可能性があるんで、だったらしっかり顔を出そうと。ここで区切って新たなスタートとしてのメジャーデビューでしたね」

――たしかにライブでは表情も大事な要素の一つですね。

「(表情を出さない代わりに)映像を使ったりしておもしろいこともできるみたいですけど、マイク1本で勝負できるくらい、アカペラでもいけるくらいのアーティストになりたいので、それは僕には合ってないなって思います。だからこそ(音楽で勝負したいからこそ)、あえて顔を隠してたんで」

――YouTubeでライブ映像を拝見しましたが、表情も豊かでさすが俳優さんだなと思いました。演技と音楽の仕事はどのように両立しているんですか?

「表現としては別ものな気がしていて。まず役者は役をいただいているので、藤原大祐としての表現はほとんどしてない。もちろん僕の体が演じてるし、僕の声で演じてるし、結局は僕なんですけど、基本的には誰かほかの人間のフィルターを通しての表現になるんです。台本もあってセリフもストーリーも決まってるなか、そこにどう色を加えていくか。自分から一歩外に出た何かを借りて、それが(役と)交わるところが役作りな気がするんですけど、TiUは自分の内側を探していく......自分の"心の海"で釣りをしてる感覚なんですよ。それで釣れた言葉とかアイデアとかで音を作ってる感じ。全然釣れない時もあれば、めっちゃ釣れる時もあって、そうやって曲を作っていて。ただ、その"自分の輪"(役と交わる範囲・心の海)を大きくしていきたいっていう意味では同じですね。人間力が大きくなれば......失敗、成功を含めて経験を積んで、人間としての枠が大きくなれば、役と交わる面積が大きくなって役者としての幅が広がるし、"心の海"も広くなって、たくさんのものが釣れるだろうし。だからひとりの人間として経験を積んで、ピュアにいろいろなものを感じていくことが、役作りにも音楽にもつながってくるなって。アウトプットの仕方は(演技と音楽では)違うけど、インプットは人間としてやっていけばいいっていう。人生の一秒一秒が無駄にはならない感覚がありますね」

――すばらしいです。では次に2月14日発表の最新ナンバー「HERO JOKER」のことを。この曲は昨年12月から3か月連続リリースの第3弾で、強いビートで"I am Joker"というダークな言葉もある英語詞の曲。これまでと雰囲気が異なります。

「もうすぐ『TiU POP SHOW Ⅱ "We Are HERO We Are JOKER"』というタイトルでライブがあるんですけど、今回はそのテーマとして曲を作りたくて......。もともと僕自身、歌詞を気にしないタイプなんですよ。まずは音として楽しめて、グルーヴに体が揺れればいい。そこで興味を持ったらその先で歌詞を知ればいいっていうくらい。だから最初は意味がわかんなくていいから音を楽しんでよ!っていうことで、シンセのリフと英語詞で音だけでのれるようにして、MVの日本語のテロップで解釈もできるようにしようっていう感じです。1番では自分がジョーカー(I am Joker)、2番では自分がヒーロー(I am Hero)って歌っているんですけど、その自分とは誰なのか? 1番と2番では私とあなたの対象が変わっているのか、変わっていないのか⁇っていうのを考察できるようにしていて、人によって感じ方が変わったらいいなって。MVの映像もちょっと不思議な感じで、自分だけじゃない違う僕が出てくるんですよ。それが誰なのか?っていうのも考えながら見てもらえたらいいなと思います」

――ジョーカーとヒーローが示すもの、気になりますね。

「子どものころに憧れてたヒーローにはいつも敵となるジョーカーがいて、ジョーカーがいなきゃヒーローじゃない。ジョーカーもヒーローがいるからジョーカーで、その表裏一体の部分は自分の中にも世の中にもあると思うんです。 誰かにとっての正義も誰かにとっては正義じゃなかったりもするし。そういう二面性をヒーローとジョーカーに置き換えたくて、自分の弱さやダサさも歌詞に落とし込んで、ヒーローとジョーカーを僕とお客さんに置き換えて互いが必要としているっていうところでライブができたらなって感じです」

――正義の話は現代の社会問題にもつながりそうです。

「自分の正義が人にとっても正義かはわからないから、自分で自分のことをいい人だと思っていても、絶対ジョーカーの部分があると思ってて。たとえば、お金を稼ぐ人がいれば、その分だけお金を稼げない人がいなきゃおかしいじゃないですか。だから稼いで喜ぶ人がいれば、それだけ悲しんでる人もいるってことを理解して生きていかなきゃいけないっていう。TiUってずっとそうなんですよね。ハッピーな曲でも、ずっとそういうことをテーマに歌ってます。歌詞をよく読むと実はハッピーだけじゃなく、えぐいことも入れてるんです。たとえば『JUST SOMETHING BEAUTIFUL』っていう曲なら"1人泣けば1人勝つ世界"とか"正論は時に残酷になる"とか"栄光を求めるのが悪になる"とか」

――とても成熟した考え方ですね。そういう思考法や観念などはどうやって身につけているんですか?

「小さいころから自分の頭で考えることが多かったんですよ。いつも疑問の塊で、なぜこれってこうなんだろう?って。小3のころ、人ってどうして死ぬんだろうって考えたら泣いちゃった夜があって、その時は人間についてめっちゃ考えました。ちょうどその時に一番の親友も同じことを考えてて、俺たちで出した答えが、すでに海外の有名大学の学者が発表してた説と同じで、俺たちもこれだったわ!みたいな(笑)」

――え!

「人間が見ている世界が本当の世界なのか?っていう話です。もしかしたらある生命体が見てる夢なのかもしれない......みたいな説を俺たちも唱えてて」

――哲学的。

「でも今はもっとフィジカルで生きていこうって思ってます。もっとラフに感じたままをピュアに言葉として起こしていこうと。だから最近の曲はもう頭を使わずに、降りてきたままを言葉にしています」

――今後の変化も楽しみになりますが、そろそろライブについての話も。昨年の10月5日にビルボードライブ東京で初ライブがありましたが、いかがでしたか?

「役者はお芝居してる時は相手がいるけど、作品を顔が見えない人に届けているというか、誰が見ているかわからないというか。でも音楽は曲を出して聴いてくれた人がTiUのフォロワーになってくれて、その瞬間の感動が大きいんですよ。役者の時は1フォロワーずつ増えることはなく、(作品の影響で)ポンっていっきに増えるから、1人フォロワー増えた!っていうありがたみを改めて感じるんです。もう、チームみんなでめっちゃ叫んだし、フォローした人は誰だろう⁉ってなるくらい(笑)。そうやってインディーズでまずは1000人とかに知ってもらって......というところから、ついにできた初ライブだったんで、ようやくその一人ひとりに出会えたっていう喜びがあったし、あとはライブを通して意外と歌えるんだなっていう。やっぱりライブとレコーディングではのどのアプローチも発声の仕方も全然違うんで、ライブ用にトレーニングをしたんですけど、それがちょっと自信につながりましたね。まだまだなんですけど、これなら俺、いけるなっていう未来が見えて楽しめました」

――手ごたえがあったんですね。そして、さきほど少し触れたライブ「TiU POP SHOW Ⅱ "We Are HERO We Are JOKER"」が、2月22日(木)にZepp DiverCity(TOKYO)、3月1日(金)にZepp Osaka Baysideで行われます。初ライブより時間も長くなり、キャパシティも広がります。

「今回は僕を含め5人のバンドセットで挑むんですけど、ライブならではの生の音を届けたいですね。初めてTiUを見る方が多いと思うので、THIS iS TiU!っていうのをしっかり見せて、役者とアーティストのどっちつかずじゃないんだぞ! どっちも100%本気でやってんだぞ‼っていうのを、このライブでビシッとキメたいです」

――YouTubeの配信で、次のライブはみんなで歌いたいっておっしゃってましたね。

「そうですね。僕がライブしてるのを見るだけじゃなく、みんなでライブを......みんなでハッピーなオーラを作り上げられたらいいなって。それが夢の時間になって、また次のライブのために毎日頑張ろう!って思ってもらいたいし、僕はそう思ってます」

――ちなみに大阪公演は、昨年5月に配信した曲「NBDK feat. 梅田サイファー(peko, KOPERU & KennyDoes)」でコラボレーションした3人がゲストで登場。

「お世話になったし、本当に大好きなみなさんです。ダメもとでお願いしたら実現できたコラボだったんですけど、ようやく今回のライブでコラボが完成するというか。僕自身もすごく楽しみです」

――それでは最後に今後の目標を教えてください。

「今は本格的にTiUと藤原大祐が合わさって新しいスタートを切ったところなので、まずは今度のZepp でのライブを成功させて、さらに少しずつでもいいからキャパも大きくして、一歩一歩踏みしめながら応援してくださる方と一緒に進んでいければなって。今年は勝負の年だと思ってます!」

Text by 服田昌子




(2024年2月20日更新)


Check

Release

Digital Single
TiU「HERO JOKER」

Digital Single
TiU「Human Melody」

Digital Single
TiU「Baby Mind」

Profile

ティーユー…俳優としても活躍する藤原大祐の音楽プロジェクト。2022年11月に一切の正体を明かさずに、Co ProducerにJQ(Nulbarich)を迎えた「HAPPY HUMAN」をリリースし活動を開始。2023年5月に「NBDK feat.梅田サイファー(peko, KOPERU & Kenny Does)」、8月に「PLEASURE SONG」を立て続けて配信リリースし、2023年10月4日に1stEP「SHOW TiME」にてメジャーデビュー。世代やジャンルを越えて等身大の“MUSiC”を響かせるシンガーソングライター。

TiU オフィシャルサイト
https://tiumusic.com/


Live

TiU POP SHOW Ⅱ
“We Are HERO We Are JOKER”

【東京公演】
チケット発売中 Pコード:259-155
▼2月22日(木) 19:00
Zepp DiverCity(TOKYO)
指定席引換券-5500円(ドリンク代別途必要)
※4才以上チケット必要。3才以下でもお席が必要な場合は有料。
※チケットは、インターネットでのみ販売。店頭での販売はなし。1人4枚まで。当日、指定席券と引換の上ご入場下さい。引換は公演日当日18:00より引換窓口にてご来場順で行います。2名以上は、並びの席が用意できない場合あり。
[問]ホットスタッフ・プロモーション
■050-5211-6077

Pick Up!!

【大阪公演】

チケット発売中 Pコード:259-384
▼3月1日(金) 19:00
Zepp Osaka Bayside
全席指定-5500円(ドリンク代別途要)
※4才以上チケット必要。3才以下でもお席が必要な場合は有料。
※販売期間中はインターネット販売のみ。1人4枚まで。チケットの発券は、2024/2/23(金)朝10:00以降に引換となります。
[問]キョードーインフォメーション■0570-200-888

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