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鉄風東京の楽曲の登場人物はなぜいつも「一人」なのか
「誰かに気にかけてもらえない、
そんな大多数の普通代表として戦いたい」

2021年発表「外灯とアパート」が話題を集め、ミュージックビデオは2023年9月の時点で120万回以上の再生数を記録しているロックバンド、鉄風東京。9月13日にリリースされた1stミニアルバム『From』は、そんな鉄風東京の「居場所」を強く感じさせるものになっていた。活動拠点である仙台への想い、音楽を始めた頃の感情。自分たちにとってのルーツを楽曲として響かせている。そこで今回はメンバーの大黒崚吾(Vo&Gt)に同作のこと、そして梅田クアトロ(大阪)ほか全国7箇所で開催される『鉄風東京 presents「From 2MAN TOUR 2023」』について話を聞いた。

――『From』はそのタイトルからも「出自」を感じさせる作品になっていますね。

「鉄風東京を組んでから、現在に至るまでの時系列が感じられると思います。自分たちがどういう風に、なにを吸収してきたのか。1曲目『SECRET』は高校2年生のときに書いた曲ですが、当時はいろんな音楽を聴いて、自分が好きなバンドはどういうものから影響を受けたのかなどをよく調べていました」

――ルーツのような曲、ということですか。

「そうですね、『ここから始まっている』という感じです。『From』というタイトルがあらわすように、どこからきて、どこで育って、そんな自分たちの音楽は誰かにとってどういう"場所"になるのか。それをたどっていくと、最後の曲『FLYING SON』にたどり着く。この曲は、自分たちの居場所である仙台のライブハウス、仙台FLYING SONのことであり、また自分たちの現在地についても歌っています」

――地元、そして自分たちの活動拠点であるライブハウスへの想いが強く込められているのですね。

「仙台FLYING SONのことがなにより好きだから、仙台のことも好きなんだと思います。仙台はやっぱり東京などに比べると、バンドをやる人、観る人の母数は少ない。仙台にいる人間としては、そういう部分への悔しさもあるんです。そしてだからこそ、仙台FLYING SONは自分たちの聖地と言えるほど特別なところになりました」

――一方で『東京』では、東京で暮らすことの孤独感が描かれています。

「この曲も仙台で暮らす自分の目線から、上京していった友だちの姿を歌っています。高校時代、一緒に音楽をやっていた友人がいたんです。でも彼は上京してから、バンドをやっている気配がなくて。すごく格好良い音楽をやっていて大好きだったから、『バンドを続けて欲しい』という気持ちを届ける意味で『東京』を作りました。落ちサビでは『信じていたいのは歌じゃないのかい』と歌っているのですが、これは自分だったら言われたくないような耳の痛い言葉をあえて使ったんです。

――鉄風東京の曲は、そうやって特定の誰かに向けた曲であっても、ちゃんと普遍性を持って多くの人に届くようになっていますよね。代表曲『外灯とアパート』然り、いずれも現代の人の心理が浮き上がっているように思えます。特に孤独や孤立感。語弊を恐れずに言えば、鉄風東京の曲を聴くと、トー横キッズなどなにか繋がりを求めてやって来る「一人の集団」の光景がパッと浮かぶんです。

「なるほど。新宿とかでライブをするときにそういう若者たちを見かけるんですけど、切ない想いに駆られます。というのもみんな僕と近い年齢だし、また自分が抱えていた感情に似たものがある気がするから。だからこそ、あの子たちのフィルターを通すといろんな音楽になるんじゃないかなって。自分が持っていた孤独感の一部を解釈すると、あの子たちが今経験していることと決して大きな違いはないと思います」

――それこそ、みんなとりあえず「居場所」を見つけたいのかなって。鉄風東京の曲で興味深いのは、そういった「居場所」にとどまること、もっと言えば劇的に変化することへ戸惑いが感じられるところなんです。

「自分たちは一体どこに根差しているか、それをいつも確かめているからかもしれません。鉄風東京としていろんなところへ戦いに行くからこそ、余計に。どこで育ったのかを強く認識しておかないと道を誤るというか。それに高校生のときに持っていた音楽の初期衝動感も失いたくないし。今でもライブハウスで、ギターを弾き初めて1か月の子が鳴らす音って、そのときにしか出せないものがあって『すごく良い』となるんです。自分もあれを忘れたくない。そういう部分で変わりたくないところがあるんです」

――大黒さんの「居場所」への話をここまで聞いていて、どうしても2011年の東日本大震災のことを想起してしまいます。それこそ当時「場所」が失われた。だけど、かつての光景や日常が失われてもみなさんにとってそこは「居場所」だった。仙台出身の大黒さんの「どこに根差しているか」という言葉が持つ意味は、私たちが考える以上にすごく強いものだと思います。

「確かに自分たちの音楽の根底にあるものとして、震災に重なるところがあるかもしれません。ただそれらは、東北で育った自分たちにとってすごく大事なこと。僕は当時、小学2年生か3年生くらいでした。自分が住んでいた場所は大きな被害はなかったんです。でも影響を受けた友人はたくさんいたし、父親も沿岸部で仕事をしていたので尋常じゃないくらいの不安がありました。身近な人でも家が流されたり、どうにか生き残ったり」

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――すべての人に影響がありましたよね。

「絶対的に敵わないことを経験し、奪われるものも多くありました。まだ幼かったですが、それでも自分たちの『居場所』というのはすごく愛おしいものだと実感できました。当たり前のもの、よく見る光景、それが大事に感じられたんです。当時のことを自分から話すことはほとんどないですが、生活する上でも、音楽を鳴らすときでも、潜在的にずっと考え続けておかなきゃいけないこと。そういう感覚は、東北人は色濃く持っているはず」

――鉄風東京の楽曲は自分の「居場所」から、「人との繋がり」にまで話が広がっていきますよね。ただ、先ほども話したように「一人」「孤独」が多いです。

「僕がそもそもいつも一人ぼっちなんですよね(苦笑)。で、一人になりたくないから、そうやってホームにこだわったり、みんながいる場所に行ったりする。そうでもしなきゃ、僕はあまり周りに相手にされないタイプなんです。なんでも自分一人でできちゃうところもあり、愛嬌があるわけでもなく、世話を焼きたくなるようなミスもしない。放っておかれがちなんです。でも実は、そういう自分に気づいて欲しいというか......」

――そうなんですね(笑)。

「今って、ロックバンドもそうですけど、見た目とか発言にパンチのある人が支持されやすい。だから破天荒なことをやったり、逆に失礼なことも言ってみたり。それがウケたり、共感されたりもする。フックありきのシーンもおもしろいですけど、そういう風潮ばかりだと、自分みたいなごくごく一般的な人間はますます気にかけてもらえなくなる。自分は大多数の普通代表として戦いたいんです。普通だったり、地味だったりしても、強く言えないだけでみんな落ち込んだりしますし。それに、SNSとかで『自分はなんの取り柄もない』『一人だから』とか強調する人は、信じないようにしています(笑)」

――それは分かる気がします!

「『一人なんです』とあえて言うことで、内省的な人たちを味方に付けようとしている気がしていて。でも自分からそんなことを言う人に限ってめちゃくちゃ飲み会とかしていたり。僕からしたら『ホンモノはそんなもんじゃねえぞ』って(笑)」

――そんな鉄風東京が「仲間」をゲストに迎えておこなうのが、『From 2MAN TOUR 2023』ですよね。

「自分たちにとって憧れのバンドばかりで。今ってSNSがあるし、『好きです』『影響を受けました』とアピールしたら本人たちに気持ちが届くでしょうけど、そういうやり方は絶対にしたくなかった。ちゃんとバンドとして、音楽として気づいてもらえるところまでがんばりたかったんです。そこでやっとお誘いできたバンドばかりです」

――しかもツーマンですもんね。

「全ゲストが先輩だし、リスナーとして聴いていました。そしてきっと、僕と一緒にそのバンドをフロアで見ていたお客さんが今回のツーマンでは鉄風東京を観てくれることになる。そういう人たちにも胸を張って『このツーマンの相手のDNAを受け取ってバンドをやっています』と言いたい。若い人たちのためだけに音楽をやるつもりはないですし、ずっと前からライブハウスに来ていた人たちにも届くライブをやりたいです。幅広い世代の人たちを巻き込んで、必ず良いツアーにします」

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Text by 田辺ユウキ




(2023年9月13日更新)


Check

Movie

Release

1st Mini Album『From』
※全国タワーレコード&ライブ会場限定

2023年9月13日(水)発売
1500円(税込)
NBDL-0109
No Big Deal Records

《収録曲》
01. SECRET
02. TEARS
03. HOW IS LIFE
04. いらない
05. 東京
06. FLYING SON

Live

鉄風東京 presents From 2MAN TOUR 2023

【宮城公演】
▼9月17日(日) 仙台CLUB JUNK BOX
【北海道公演】
▼9月28日(木) SPiCE
【福岡公演】
▼10月6日(金) LIVE HOUSE OP’s
【香川公演】
▼10月10日(火) TOONICE
【愛知公演】
▼10月18日(水) 名古屋クラブクアトロ

Pick Up!!

【大阪公演】

チケット発売中 Pコード:249-761
▼10月20日(金) 19:00
梅田クラブクアトロ
スタンディング-3500円(整理番号付、ドリンク代別途要)
[共演]KOTORI
※未就学児童は入場不可、小学生以上は有料。
※販売期間中は、インターネット(PC・スマートフォン)のみで販売。1人4枚まで。チケットは、10/13(金)朝10:00以降に引換えが可能となります。
[問]清水音泉■06-6357-3666

【東京公演】
▼10月27日(金)
渋谷CLUB QUATTRO


ATFIELD presents ハリケーンツアー

【京都公演】
Sold out!!!
▼9月24日(日) 18:00
Live House nano
スタンディング-3500円(ドリンク代別途必要)
[出演]鉄風東京/ルサンチマン
※チケットは、インターネットでのみ販売。店頭での受付はなし。1人2枚まで。発券は9/17(日)10:00以降となります。
[問]エイティーフィールド■03-5712-5227

【静岡公演】
▼9月25日(月) 19:00
静岡UMBER


『Date fm ”MEGA★ROCKS 2023”』
チケット発売中 Pコード:247-545
▼10月1日(日) 13:00
仙台市内の10会場
ONE DAY PASS-4800円(全会場共通1日券)
[出演]IRIS MONDO/明くる夜の羊/泡見ル夢/Absolute area/amanojac/アンと私/anewhite/WENDY/汐れいら/Apes/EYRIE/EverBrighteller/Organic Call/aug.1020/Ochunism/音活詩心/カメレオン・ライム・ウーピーパイ/クジラ夜の街/久保あおい/クボタカイ/ケプラ/琴音/小林柊矢/Conton Candy/ザ・シスターズハイ/挫・人間/サバシスター/しまも/the dadadadys/シャイトープ/SUGARLUNG/SHO-SENSEI!!/SCOOBIE DO/鈴木実貴子ズ/SWANKY DOGS/SAVE THE YOUTH/底なしの青/TAIKING/タケモトリオ/Dannie May/超能力戦士ドリアン/チョーキューメイ/ツチヤカレン/Dear Chambers/鉄風東京/DeNeel/東京初期衝動/トンボコープ/中田裕二/中村マサトシ/なきごと/Niiiya/のんぴー/パーカーズ/Half time Old/バウンダリー/ハク。/Hello Hello/BIGMAMA/Hwyl/Billyrrom/ブランデー戦記/フリージアン/Bray me/berry meet/みゆな/MOSHIMO/桃色ドロシー/森大翔/由薫/YUTORI-SEDAI/ヨスガ/Radicalism/Laughing Hick/リアクション ザ ブッタ/Lym/リュックと添い寝ごはん/ルサンチマン/ReiRay/レトロリロン/渡辺諒
※チケットは引換券。未就学児童は入場不可。高校生以下は当日会場にて1000円返金。要学生証。出演者は予定のため変更の可能性あり。公演内容に関する詳細はhttps://www.gip-web.co.jp/t/infoまで。
※チケットは、インターネットでのみ販売。店頭での受付はなし。1人4枚まで。

『SUPER ROCK CITY HIROSHIMA 2023DX』
チケット発売中 Pコード:248-986
〈ALMIGHTY/CAVE-BE/セカンド・クラッチ/広島クラブクアトロ/Live STAR/4.14/Leo/Live space Reed〉
▼10月7日(土) 12:00
広島市内 9会場
全自由(1日券)-5500円(1ドリンク付)
全自由(2日通し券)-9500円(2ドリンク付)
[出演]MOROHA/ガガガSP/アルカラ/the奥歯’s/アメノイロ。/bacho/炙りなタウン/Blue Mash/クジラ夜の街/ペルシカリア/鉄風東京/SHE’ll SLEEP/EGG BRAIN/ケプラ/Half time Old/osage/BACK LIFT/アスノポラリス/the quiet room/アンと私/ブランデー戦記/DNA GAINZ/SHIFT_CONTROL/RED in BLUE/PLOT SCRAPS/the paddles/ポップしなないで/ヨイズ/ルサンチマン/HOTSQUALL/Baby smoker/奢る舞けん茜/peeto/Hyuga/TRACK15/See You Smile/krage/SUGARLUNG/ONIONRING/WENDY/silent sparkle/FUNNYAGE/古墳シスターズ/日日是好日/Mercy Woodpecker/ジ・エンプティ/DeNeel/裸体/Niiiya/BLUESPRING/Daisycall/Hello Hello/Ⅶ DAYS REASON/桃色ドロシー/ゼロカル/SherLock/pachae/Lailah/Rubresist
※10/7(土)出演者
※未就学児童は入場不可。6歳以上はチケット必要。2日通し券の販売あり。2日通し券のご購入は10/7(土)公演ページより「全自由(2日通し券)」をご選択ください。チケットにはドリンク代が含まれております。危険行為禁止/営利目的の転売禁止。その他詳細は公式HP(https://super-rockcity.com/)をご確認ください。
[問]YUMEBANCHI(広島)■082-249-3571

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