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デビュー45周年記念で歴代メンバーも集結!
通算50枚目のオリジナルアルバム『VENTO DE FELICIDADE ~しあわせの風~』を携えて「T-SQUARE 45th Anniversary CONCERT TOUR 2023」開催!  T-SQUAREインタビュー

アジアを代表するポップ・インストゥルメンタル・バンドとして、国内外で世代を超えた観客を魅了し続けているT-SQUARE。1978年のデビューから45周年を迎え今なお進化し続けている。2023年はデビュー45周年のアニバーサリーイヤーを飾る通算50枚目のオリジナルアルバム『VENTO DE FELICIDADE~しあわせの風』が5月にリリースされた。新旧メンバーによる全曲書き下ろしで、新旧メンバー&スペシャルゲストが参加する特別盤となっている。また今作に収録された『CLIMAX』は映画『グランツーリスモ』(9月公開予定)の日本語吹替版テーマ曲に決定。そして、この秋に開催となる『T-SQUARE 45th Anniversary CONCERT TOUR 2023』ではここでしか観れないスペシャルなステージが繰り広げられる! そんなT-SQUAREのフロントマンとして活躍している伊東たけし(Sax, EWI)にインタビュー。歴史あるバンドの原動力や自身の音楽観、新作の制作秘話から45周年記念ツアーの意気込みまでたっぷりと語ってくれた。

良い仲間と出会えているからこそ
こうやって音楽がやれている


――結成45周年、おめでとうございます! これまでの活動を振り返ってどんなことを感じていらっしゃいますか?

「やっぱりこれまで良い仲間と出会えているからこそ、こうやって音楽がやれてるんだなって、つくづく思いますね。僕ひとりの力じゃない。スクエアって今までメンバーチェンジがすごく多いですから。同じメンバーでずっと一緒にというのはないけど、それぞれ自分の音楽を持ってる個々の人間が集まってやるから、今回のように、45周年でこれだけのメンバーがまた一緒に集まってアルバムを作れたりするんです。T-SQUAREっていうブランドがひとり歩き始めたのは随分最初の頃だと思うけど、(個々のミュージシャンに)スクエアっていうブランドに対する情熱みたいなものがあって、それがここまで来れてる大きな要因ではないかと思うんですよね。でも結果が出なかったら、そう長続きはしないかもしれません。F1グランプリのテーマ曲に『TRUTH』(T-SQUAREの前身のザ・スクエア時代の代表曲)が選ばれたことも大きいですね。僕個人のことで言えば、(1984年に)サントリーのコマーシャルに出演して僕のウインドシンサイザー(EWI)がクローズアップされたり、その後もマクドナルドプレミアムローストコーヒーのCMに出たりしました。その時々にちゃんとピークを作れています。そういう活動を支えてるのは、やっぱりスクエアというものに対するみんなの愛情だったり、情熱だったりすると思うんです。スクエアの音楽をずっと聴いてくれて、今でも(ライブに)来てくれているファンにも支えられてずっと活動できてると思いますね」

――2021年から45年目の挑戦として、伊東さんと坂東慧(Dr)さんお二人でT-SQUARE alphaとしての活動がスタートしました。坂東さんとは親子くらいの年の差ですね。

「親子というより孫といってもいいぐらいです(笑)。坂東は40で、僕は69だからね。音楽って、世代なんて関係ないと思ってたけど、やっぱり年齢を経ていけば、普通は若い子とのギャップを感じますよね。でも今の若い連中もスクエアのことをどこかで聴いてくれてて、好きでいてくれているので。一緒にやる時に、スクエアっていうものに自分はこういう風に参加したらいいっていうことがわかってくれてるんですよ。彼らにもスクエアはこうあるべきだっていうビジョンがあって、付き合ってくれてるのをすごい感じるんです。だから嫌な方向に行かない」

――そのビジョンはどのように共有されているんでしょうか?

「それは一緒に音を出したらわかるんです。(セッションして)その楽曲をどう料理するかっていう時に見えてくるから、疾走感とか爽やかさとか、 アウトドアな感じが自然と出てくる。スクエアが透明感のある音とか言われるのはそういう部分かもしれないですね。もちろんミュージシャンだから危ないところにも行きたがるけども、それをオシャレにみせたり、美味しく出してきたりしているので」

――アバンギャルドな方向ではなく、ポップであることを大事にされているからこそ?

「そうですね。これ以上やっちゃダメだとか、そういう匙加減が見えてるのかもしれない。行けば行くだけなんでもできるけれど、 それはスクエアではないっていうところが(暗黙の了解として)あるんだと思います。スクエアがデビューした頃に遡ると僕らが大学の時になりますが、その頃にアメリカからクロスオーバーっていうのが出てきたんです。今までのジャズではない新しい形の音楽が見えてきたっていうか、そういうものと出会ったことは、僕にとってはデカかったですね。これだ!って思った瞬間だったから。信じるものがあるっていうのはこんなにも強いものなんだって」

――それは1970年代の後半ですよね。

「そうですね。要はいろんな音楽がミックスされてきた時代でした。R&Bとかファンクとかが融合して黒人の16ビート系のインストゥルメンタルにメロディーを乗せていって、ジャズの4ビートに乗るフレーズじゃない新しいフレーズがどんどん出てきたんです。チック・コリアやハービー・ハンコックもそうだし、リターン・トウ・フォーエヴァーとか...、今までのジャズと全く違うものが色々出てきて。それがポップスのブラックコンテンポラリーなものと融合し始めた。お互いに刺激し合って、面白い音楽ができてきたんです」

――今の日本でも1970年代のクロスオーバーやブラックミュージックに刺激を受けている若いミュージシャンや新しいポップミュージックがどんどん出てきています。

「確かにそうですね。今回、昔のフィリーソウルを昇華したような曲を坂東が書いています。『かぼちゃの馬車に乗って』(M-2)がまさにそういう感じですね」



インストの醍醐味が存分に詰まっている新作
映画『グランツーリスモ』の日本語吹替版テーマ曲
『CLIMAX』も収録


――今回のニューアルバム『VENTO DE FELICIDADE~しあわせの風』は本当に聴きどころ満載ですね。その1曲目となる表題曲はボサノバ調で参加ミュージシャンとのコーラスが入っています。

「今回のレコーディングでは、いろんなメンバーが入れ替わり立ち替え(スタジオに)来て、全部セッションが終わって最後に、この曲をみんなで歌ったんです」

――こういう始まり方に意外性を感じた方もいらっしゃるんじゃないかと。

「そうかもしれないですね。パンチの効いた曲を1発目に持ってくることが多いですからね。でも、良かったんじゃないですかね。この曲を録音してる時に手応えを感じ始めてはいたんで、やってる時からこの曲がアルバムのタイトルになるだろうと想像できました」

――"しあわせの風"というサブタイトルも良いですね。やっぱりこの3年間、コロナで皆さん大変な思いをしてきて、 ようやくライブも以前のように声を出して楽しめる状況になってきたので。

「ウイルスというものが手強いっていうのは昔から言われてたけど、これだけ衛生管理ができている現代でもパンデミックが起こるというのはやっぱり怖いですよね。でも、そういう意味では世の中が少しダウンしてるというか、閉塞感がある中で、(スクエアのアルバムが)少しでも清涼感を感じるものになってくれるといいなと思います。とはいえ、これは僕の個人的な見解なんだけど、爽やかなものは一歩間違うとすごくチャラくなると思うんです。でも、スクエアの核になってる坂東の楽曲はすごくポップなメロディーなんだけど、何かあるんですよね。僕もそれがわかるから、どう吹いてやろうかって本当 頑張るんです。今までの曲でも、『OMENS OF LOVE』とか『宝島』という曲があって。わかりやすい曲なんだけども、そういう楽曲ってともすれば薄っぺらいものになりかねない。それを爽やかに持っていくっていうのがスクエアのマジックなんですよ。それは楽曲の持ってる力もそうだけど、 やっぱり演奏家がどういう気持ちで演奏するかっていうのはすごい影響してくるんで、そういう楽曲ほど難しいですね」

――単に聴き心地が良いだけではだめなんですね。

「多分ね、それって心に響かないんですよ。響くっていうのはちゃんと何か持ってないと難しい。でもそういう意味では本当に良いメンバーに恵まれたからこそ、45周年でこういうアルバム作れたんだと思います。インストの醍醐味みたいなものもたくさん詰まってるし」

――その中には、映画『グランツーリスモ』の日本語吹替版テーマ曲となっている『CLIMAX』もありますね。

「そうですね。良かったなと思います。そこはスクエアの曲が持っている日本人的な情緒と疾走感みたいなものがこの映画に合ってたんだと思うんですよね。実話に基づいた映画みたいなので。またこれでレース系はスクエアっていうことを広く印象付けられるといいなと思いますね」



いくつになっても鍛えられる
刺激的で緊張感を持って生きれてる


――今作のラストに収録されている『Rooms with a view』はとても感動的な余韻を残します。これは2年前に亡くなられた和泉宏隆さんが書かれた曲が元になっているそうですね。

「そうです。和泉がピアノでスケッチを残しているのが何曲かあって、その中の1曲ですね。アルバムでは最後に和泉が残している本物のピアノ音源を差し込んでいるので、和泉のタッチがあそこに出ていて、それが独特のムードを醸し出してる。アレンジは鳥山(雄司)に頼みました。これは(王道的な展開ではなく)アレンジ的にすごい動きをするんですよね。現実に戻してくれないっていうか...、どっか行ったまんま終わっちゃうみたいな。意味深で、どこか未完のまま終わっていくんです。実際、鳥山に聞いたわけじゃないんで本心はわからないんですけど、そういう狙いはあったかもしれないですね」

――ライブで演奏するときはどうですか?

「このまえBLUE NOTEでお披露目しましたが、ライブでやるとものすごい手強いんですよ。吹き終わった後にポカーンってしちゃうような感じで...(苦笑)。"ちょっと和泉、どうにかしてくれよ"って言いたくなるような瞬間があったりするんです。だから、本田(雅人)ともこの曲難しいよねって話しましたね。レコーディングの時も、これで終わっちゃうんだよなっていう感じで、終わったのは覚えてますが、ライブでもそうなるから、なんか不思議な曲だよねって...」

――実際にライブで耳にすることができたら、どんな風なに受け取るかは聴く人によって違うかもしれないですね。

「そうですね。だから、和泉がどういう思いで、この曲のスケッチを残したのか、頑張ってもうちょっと近づきたいなとは思いますけどね。どこまで僕が理解できて吹けるか...、下世話にやるとダメなんですよ(苦笑)。あの世がどういう世の中なのか知らないけども、少なくとも生きてるっていうのはもう頑張るしかないみたいなものですよね。いくつになっても鍛えられますよね。もういいだろうと思うんだけど、次から次に課題が出てくるっていうか。だけど、おかげでこの年でも刺激的に、緊張感を持って生きれてるから、これはこれでいいのかなとは思いますけどね(笑)。また新しい楽器を見つけることもあるし。あ、こういうフレーズもいいなとか、楽器のこともさらにいろんなことがわかったりしてくるから」

――だからこそT-SQUAREとして進化し続けているんですね。9月に開催される『T-SQUARE 45th Anniversary CONCERT TOUR 2023』はどのようなステージになりますか。9月3日(日)の大阪・なんばHatchは、伊東さんと坂東さんをはじめ、本田雅人(Sax,NuRAD)、松本圭司(Key)、田中晋吾(Ba)、外園一馬(Gt)というメンバーですね。

「今回は外園一馬っていうギタリストがいるんですけど、この子もいい味出してんですよ。安藤(正容)の代わりを見事にやってのけています。スクエアファンの前で安藤の立ち位置に自分が立つというのはやっぱり怖いと思いますよ。でも美味しいところをビシッと決めてくるし、自分を出すところは出してくるし、 抜群のギターです。要チェックですね。松本圭司(Key)は燻銀のようなピアニストだから彼の存在もすごいし、あとはやっぱり伊東と本田雅人が2人フロントに立っているところですね」

――豪華ダブルサックスで!

「はい、ダブルフロントなのでそれは面白いと思います。こっちは大変だけど(笑)」

――45周年を飾るスペシャルなパフォーマンスですね。

「そうですね、今回の大阪公演と名古屋公演はそのメンバーでやります。新しいアルバム中心で色々やれたらいいなと思ってます。本田と僕が一緒にやるっていうのはこれを見逃したら、もうなかなか観れないかもしれないですね。伊東たけしがもがいてる姿をとくとご覧ください(笑)。本当に面白いステージになると思います」

Text by エイミー野中




(2023年8月29日更新)


Check

Release

新旧メンバー&スペシャルゲスト&若手サポート参加の特別盤

『VENTO DE FELICIDADE ~しあわせの風~』
2CD(Super Audio CD Hybrid盤)+特典Blu-ray Disc
発売中 5500円
OLCH10028~30

《収録曲》
01. VENTO DE FELICIDADE~しあわせの風~ / 坂東慧
02. かぼちゃの馬車に乗って / 坂東慧
03. Maverick Moon / 本田雅人
04. Believe / 本田雅人
05. CLIMAX / 河野啓三
06. Into The Spotlight / 河野啓三
07. 海のみえる坂道で / 坂東慧
08. Stratosphere / 松本圭司
09. Rooms with a view / 和泉宏隆、鳥山雄司
                                                     
特典CD:初CDレコード化 <「ELEGY」作編曲:和泉宏隆、1987年作品、演奏:弦楽アンサンブル> 

特典Blu-ray Discライブ動画4曲収録
①「A DREAM IN A DAYDREAM」T-SQUARE YEAR-END SPECIAL 2021@日本橋三井ホールより
②「晴れのち晴れ」T-SQUARE CONCERT TOUR 2022@なんばHatch より
③「Best Friends」T-SQUARE YEAR-END SPECIAL 2022@神戸チキンジョージ より
④「宝島」T-SQUARE YEAR-END SPECIAL 2022@神戸チキンジョージ より

Profile

ティー・スクェア…日本が世界に誇るポップ・インストゥルメンタル・バンド。
1976年、安藤正容を中心に“THE SQUARE”結成。1978年、アルバム「LUCKY SUMMER LADY」でCBSソニーより鮮烈デビュー。海外でも精力的に活動しており、全米でのアルバムリリース(1988,89年)やプレイボーイジャズフェスティバル(1994年)への出演、ライヴツアーの他、アジア圏、特に韓国では1994年の初公演以降これまでに4度にわたって公演を敢行し、現地で絶大な人気を得ている。1989年、アメリカでの活動の際に使用していた“T-SQUARE”にバンド名を変更。
2003年、デビュー25周年を迎え、期間限定で“THE SQUARE”を再結成。2004年、サポート・キーボーディストとしてサウンド面で大きく貢献してきた河野啓三と弱冠22歳(当時)の新人ドラマー坂東慧を正式メンバーに迎え、新生“T-SQUARE“として活動。2020年に河野啓三が退団、2021年に安藤正容が退団。同年10月から伊東・坂東の2人体制:T-SQUARE alphaとして活動開始。世界でも類を見ない多くの作品群、その全てが未だに聴かれ続けている。毎年オリジナル・アルバムをリリースし、国内外でのコンサートでは世代を超えた観客を魅了し続けているT-SQUARE。今なお進化し続ける彼らはアジアを代表するインストゥルメンタル・ポップ・バンドとしての唯一無二の地位を確立している。

T-SQUARE オフィシャルサイト
https://www.tsquare.jp/


Live

T-SQUARE 45th Anniversary Celebration Concert & Tour 2023

【愛知公演】
▼9月2日(土) Zepp Nagoya

Pick Up!!

【大阪公演】

チケット発売中 Pコード:247-898
▼9月3日(日) 16:30
なんばHatch
指定席-8400円(ドリンク代別途要)
着席指定席-8400円(2F席、ドリンク代別途要)
※T-SQUARE alphaX:伊東たけし(Sax,EWI)、坂東慧(Dr)/本田雅人(Sax,EWI)、松本圭司(Key)、田中晋吾 (Ba)、外園一馬 (Gt)
※4歳以上は有料。3歳以下は膝上に限り無料。但しお席が必要な場合は有料。
※学割あり。公演当日入場時に、高校生までのお客様は証明書(学生証等)を提示にて2000円返金致します。(終演後無効)。
※販売期間中はインターネット販売のみ。1人4枚まで。チケットの発券は8/21(月)朝10:00以降となります。
[問]キョードーインフォメーション■0570-200-888

【東京公演】
▼10月21日(土) 東京国際フォーラム ホールA

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