「ずっとライブをしていきたい。ここからがスタートって言いたい」
南ななこインタビュー
アイドルグループ・GEMでの活動を経て、現在はソロとしてフィールドを拡大中の南ななこが、3月26日に1stアルバム『FAMILY』をリリースした。この作品はクラウドファンディングで支援を募り制作されたもので、3月26日にはそのリターンでもあるワンマンライブも開催。そんなソロシンガーとしての第一歩を踏み出した彼女に、今作のことからプロフィールや今後の目標までじっくりと話を聞いた。得意のモノマネを披露してくれた動画とともにお楽しみあれ。
――まずはシンガーを目指したきっかけを教えてください。
「5歳でダンススクールに通ったことがきっかけで、芸能のお仕事をするようになったんです。最初はダンスも、その発表会に出るのも楽しくて。だから幼少期から漠然とステージに立ちたいっていうのがあって、そのうちに松田聖子さんやSMAPさんを見て、自分もそういう人になりたいなって思うようになりました。でも通っていたスクールで演技や日本舞踊の授業を受けたり、『天才てれびくん』(子ども向け教育番組)とかのオーディションも受けたりして、女優さんになりたい時期もありました。ただ、ずっと芸能界に入りたい!みたいなことは思ってましたね」
――では曲作りはいつ頃から?
「本格的に音楽に向き合うようになったのはコロナ禍の影響も大きいので、2年前とかですね。今24歳なんですけど、20歳で(所属していた)GEMが解散する前は、万葉シャオニャンっていう平城遷都1300年祭を記念して結成したグループで、せんとくんと一緒に踊ったりしてたんですよ(笑)。そこから(現在の所属事務所の)エイベックス・マネジメントに行きレッスンを積んでオーディションを受けるっていう、ずっとアイドル人生だったんです。当時はアイドルとアーティストの違いもわからなくて、今思えば敷かれたレールの上で表現してたっていう……あくまで表現者っていう部分で言うとですけど。でもGEMが解散してソロになったら、そんなレールないじゃないですか。歌い続けたいんやったら作らないとダメなんや!ってことに気づいたんです。あ、音楽作りたい。歌い続けたいからこそ、作っていかないとって」
――ちなみに、先ほど松田聖子さんの名前が出ましたが、ほかに好きなアーティストとしてSEKAI NO OWARI、スターダスト☆レビュー、カーペンターズ、アース・ウインド & ファイアーの名前を挙げていますね。
「親の影響が大きいですかね。お父さんの車は70~80年代のディスコソングばっかりでした。最近の音楽も聴くんですけど、やっぱり自分の心に刺さるのは聖子ちゃんとかの昔の曲。あとSEKAI NO OWARIさんはライブがめちゃめちゃ楽しいんですよね。カーペンターズは声質が合うのでよく歌います。スターダスト☆レビューは声が好きで、SEKAI NO OWARIさんもですけど歌詞もいい。私は曲より歌詞派なんで、聴いてしまうのもあるのかな」
――彼らの歌詞のどんな点が好きですか?
「例えば、好きっていう言葉を使わずに好きを伝えるっていう感じかな。あとSEKAI NO OWARIのFukaseさんとかは彼なりの考えに刺激を受けたことがきっかけでライブへ行くようになりました。あと聖子ちゃんは『真冬の恋人たち』っていう歌やったら、スケート場で彼を待ってる私にナンパしてきた人がいて、彼がそれを止めてくれたみたいな1番なんですけど、2番はそのシチュエーションを彼がわざとまた私に仕向けてきてっていうストーリーになってるんですよね。そういうストーリーがすごく好きで、妄想をかき立てられるところがいいんですかね」
――小さな頃から作詞に興味があったのかもしれないですね。
「そうですね。ポエム(を書く)みたいなことは昔から好きで、思ったことをメモするとか、日記は今もつけてるんですけど、自分の感情をどうしても残したくて。それが詩っぽくなったりして、そういうのをずっと楽しくやっていますね」
――では次に1stアルバム『FAMILY』の話を。同作はクラウドファンディングで支援を募って制作されたものですね。
「自分の作った曲を音源化したいってずっと言っていて、ファンの人も音源化を待っててくれて。でもコロナ禍になってしまって、事務所の人に相談したらクラウドファンディングしてみない?って言われて、アルバム制作が動き出したんです。正直、コロナ禍でみんな収入も不安定な時期に支援してくださいって言いにくい状況なんで迷ったんですけど、逆にこういう時やからこそクラウドファンディングすることに意味があるって思ってスタートさせて。結果としては、みんな優しくて力を貸してくれる人が多くて、無事にアルバムがリリースできたんです。本当にいろんな人に支えられてできたんですよ。なので背中を押されてリリースできた奇跡に近いアルバムになりました」
――そんな今作のタイトルが『FAMILY』になった理由とは?
「GEMのファンの方をGEMLYって呼んでたんですよ。家族のような存在なのでGEMとFAMILYを掛けてGEMLY。今回そういうGEM時代から私のことを応援してくださる方の力もたくさんいただいたし、GEMがあって南ななこがあるし、その感謝を込めてFAMILYとつけました。あと家族のことを思った歌が多くて、家族に支えられてここまで来れたのもあるので……」
――ファンや周囲の人々への感謝を込めた作品なんですね。
「ソロになって自分で何でもやっていかなきゃいけない環境になった時、音楽を続けるべきなのか?って迷ったんですね。でも今回、応援してくださる方がいるのに、自信がない自分がダメや!って思えたんで、このアルバムで終わるんじゃなくて、2ndアルバムも出したいって……今度はクラウドファンディングじゃなく、自分の力でリリースしてライブをしたいって思えたので、『FAMILY』は今後の自分の背中も押してくれる作品になりました」
――そして『FAMILY』の曲のことも。曲作りはどのように?
「最近は音楽理論やDTMのオンライン授業を受け始めて勉強しているんですけど、『FAMILY』を作る前は自分なりにYouTubeで調べたり勉強したりして、全曲じゃないんですけどウクレレで作りました」
――そもそもウクレレを始めた理由は?
「ウクレレを始めたのはGEMが解散してからです。YouTubeとかで自分が歌ってる動画をあげたかったんですけど、カラオケが使われへんから、何かしら弾き語りをしないと!って思ってギターを弾こうとしたんですけどF(コード)がやっぱ押さえられなくて、時間がかかると思って(笑)。で、ウクレレは簡単だったんですよね。最初はあまりいい理由(で始めたわけ)じゃないんですけど、とにかく歌いたかったんです。でも結局ウクレレと(自分の)声も合うやん!ってなって、どんどんウクレレが好きになって、今はライブごとに新調して……みたいな感じです。あと不思議なことにウクレレを弾けるようになるとギターも弾けるようになるんですよ(笑)」
――結果オーライですね(笑)。では『FAMILY』の話に戻りましょう。
「今回、音源化するのが初めてだったので、この1枚があればワンマンライブができる状態にしたかったんです。だから似たような曲調はなしで全部違う色にしたくて。ライブ構成を踏まえたうえで、この曲はライブ後半で歌えるようにとか。例えば最後の曲の『僕は臆病者』はわざとイントロを長くして、ちょっとしゃべれるようにしたり」
――ライブに照準を合わせていたんですね。
「それこそクラウドファンディングのリターンがCDとワンマンライブの両方だったので、最後にライブでちゃんとありがとうございましたって言えるように。あと、私は歌詞を重要視してるんで、ライブでどう(詞が)聴こえるかも考えて制作しました」
――その詞はモチーフになる人や場所が実際にありそうですね。
「歌詞にはフィクションとノンフィクションとまぜるんですけど、基本的に身の回りで起きたことが多いです。うちのネコのことや親戚のおっちゃんのこととか」
――親戚のおっちゃんの曲は?
「『ギブソンのギターを弾く』という曲です。その人に対して私が思うことより、(その人の視線から)どう見えてるかを書くことが楽しくて、歌うことや演奏することが好きやったおっちゃんやったら、どういう曲を作るやろうな?って、おっちゃんの気持ちで書いたんです。だから『たからもの』という曲も、もともと野良ネコやったネコが今家にいるんですけど、その子らの視点で書いた方が膨らんだし、本当に書くのが楽しくて」
――ネコを描いた曲には、もう一つ『ブルーアイ』がありますね。
「それはもう亡くなっちゃったネコの曲なんですけど、この子のために書きたい!って思って(自分の視点で)書いたんで、逆にめちゃめちゃ時間がかかりました」
――そして全8曲を通してピュアなボーカルが印象的。
「昔から声質は全然変わってないです。歌うことはすごく好きやし、コンテストとかでも声をほめられることが多かったんですけど、自分では自分の声がそんなに好きやないし、しかも声帯的に音域がそんなに広くないんですよ。高い声がカーッて出るわけでもないので、中低音の声。歌もめっちゃうまいわけでもないし、個性的でもないから、どうしたら味のある歌い方ができるやろう?ってすごく悩んでるし、今も追及しまくってるというか」
――アイドルの時と歌い方は違いますか?
「違いますね。当時よりも自分の声に向き合う時間が増えました。GEMは歌うパートが決まってたんで、自分のパートで自分の声やってわかるように歌うみたいな。今は1曲で感情をどうのせるか?何曲も歌う為の声の体力を保つには?とか、意識の仕方が違う。そういう(感情をのせる)尺はGEMの頃にはなかったんで、今の歌声を聴いてもらいたいです」
――そんな歌声を届けるワンマンライブが3月26日にありましたが、いかがでしたか?
「昔はカラオケで1曲歌えないくらい体力がない人やったんです。だからライブ前のファンミーティングでしゃべって歌ってライブも2時間。ようここまで体力があったなって(笑)。それが一つで、あとはやっぱり音楽を作り続けていく覚悟が決まったライブになったなと。私はずっとライブをしていきたいし、ここからがスタートって言いたい。焦る部分もあるけどじっくり準備して、私の音楽を聴きたいってライブに来てくれる人を増やしていく覚悟が決まりました」
――では最後に今後の活動予定と活動目標を教えてください。
「『サンスターファミリーミュージカル』の全国ツアーに出演する予定で、この記事が公開される頃は開催中です。あと4月中旬から『FAMILY』が配信されます。FAMILY・南ななこで検索か、南ななこのSNS(
HP・
Twitter・
Instagram)をご覧ください。これからの目標は、音楽をもっと追及していくこと。時代に沿ったやり方で音楽をもっと発信していけたらと思います。そして最終的には日本武道館に立ちたい。もうおばあちゃんになってるかもしれませんけど(笑)、それを目標にお芝居とかでも幅を広げていけたらいいなって思います」
Text by 服田昌子
(2022年5月 2日更新)
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