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「琉球民謡と古典音楽を武器に、新しい音楽をつくりたい」
三線のかーなーとギターのなみなみが奏でる
令和時代の新しいオキナワン・ミュージック
いーどぅしインタビュー&動画コメント

沖縄で生まれ育ち、幼い頃から慣れ親しんだ三線と沖縄の古典音楽の学びを深めようと進学した沖縄県立芸術大学で出会ったかーなーとなみなみからなるポップ・デュオ、いーどぅし。2019年にBEGINの島袋優プロデュースによるアルバムでデビューを果たし、活動の幅を広げようとしていた矢先に世界はコロナ禍へ…。活動がままならない間にもコツコツと楽曲制作やリリースを続け、この4月下旬~5月初旬にかけて約2年ぶりにライブ活動を再開させた。東京、大阪、沖縄の3カ所で開催されたツアー『いーどぅしLIVE 2022~Bouquet~』はなんと全会場がソールドアウト、ファンの期待度の高さも証明した。ツアーに先駆けてデジタルシングル「僕らの花束」を発表したいーどぅしのふたりが来阪した機会に、結成の裏話やこれまでの音楽活動、「僕らの花束」に込めた思いまでじっくりと話を聞くことができた。かーなー、なみなみのゆったりとした沖縄の言葉も心地良い、豊かな時間となった。

ふたりのベースになっている
三線と琉球民謡&古典音楽

 
――このGWは人も世の中も動き出した印象が強くありましたが、おふたりはどんなお休みでしたか?
 
かーなー:私たちは今年のGWから2年ぶりに本格的な活動再開になりました。ライブのおかげで音楽漬けっていう感じでしたね。
 
なみなみ:そうだね、コロナ禍を経ての再始動みたいな感じがありました。
 
かーなー:ツアー初日のライブの後に那覇の国際通りに寄ったら、観光客で溢れていてなんだか戻ってきた感じがするなぁとも思いました。
 
――このタイミングでいーどぅしのライブをというのは、何か理由があったのでしょうか。
 
かーなー:私が産後半年以上経って少し落ち着いたというのもありますし、表立っての活動はできなかったけれど新曲もリリースしていたので今だ! となりました。実際はもう少し早くと思っていたのですが、世の中の動きを見ながらこのGWならいけるかなという形になりました。
 
――予測が難しくはあったと思いますが、読みはピッタリでしたね。ライブは2年ぶりだったということですが、ツアーの手応えはどうでしたか?
 
なみなみ:久しぶりでしたけど全会場ソールドアウトになって、最初の沖縄公演で1音目を出した瞬間にふたりとも感極まってしまって…。2年間本当にいろいろあったなぁ、やっとお客さんの前で音が出せる! ここが私たちの居場所だなと思えました。
 
――やはり、いーどぅしとしてはライブが活動の中心という思いが強い?
 
かーなー:そうですね。2年の間にはライブ配信などもやって、コメントをもらったりコミュニケーションを取ることは可能だったけど、普段のライブではお客さんの目を見て歌うことを大切にしてきた分それができなかったので、ライブハウスで歌うのは別格だと気づきました。だからこそ久々のライブでは、やっと復活できたという気持ちになりました。
 
なみなみ:私たちのライブはコール&レスポンスがすごく多いので、どうしてもライブハウスでやりたいというのはあります。
 
かーなー:うん、「イーヤーサーサー」とかね。沖縄の音楽にとってとても大事なので、ライブ配信ではそれがないのが寂しかったです。マスクの下で言ってくれているだろうなという想像でもいいから、顔を見てライブがしたいと思っていました。それでこそ沖縄を感じられますし。
 
――今もコール&レスポンスをすることは難しいと思うのですが、それは何でカバーを?
 
かーなー:手の動きです。カチャーシーの手の動き覚えてもらって、「イーヤーサーサー」という時は一緒にやってくださいとお願いしています。
 
なみなみ:みなさんの反応が目で見えるのは、嬉しいです。
 
――ここで改めて、今回『ぴあ関西版WEB』に初登場いただくというわけで、おふたりそれぞれに自己紹介をお願いできればと思っています。せっかくの関西版ですので、おふたりが関西で好きなところなどもお伺いできたら。
 
かーなー:私からいきますね。いーどぅしの三線担当・かーなーです。ふたりともずっと三線をやってきて、沖縄県立芸術大学の音楽学部 音楽学科 琉球芸能専攻 琉球古典音楽コースという沖縄独自の大学で出会いました。そこで意気投合して、今もふたりで音楽活動をしています。関西の好きなところは…私あいみょんさんが大好きで、彼女が行ったところに行ってみたりしています。
 
――へー! 
 
かーなー:聖地巡礼しています。あとはたこ焼きも大好きです!
 
――では、なみなみさんもお願いします。
 
なみなみ:はい、ギター担当のなみなみです。お互いに3歳から三線をやっていて大学で出会ってから6年ほどふたりで活動をしています。実は私は結婚を機に1年前ぐらいから、関西に住んでいます。関西の好きなところというか…関西の人がすごく好きで。私たちが大阪でライブをすると、どの都市よりも盛り上がるんです。それがすごく大好きです。
 
――関西のファンはいーどぅし愛が強めで、さらにしっかり主張するんでしょうね(笑)。おふたりが音楽を始めたきっかけは、小さい時の環境として自然に?
 
かーなー:そうですね。私はおじいちゃんの家に三線があったので弾くようになったんですけど、なみなみはおじいちゃんが三線の先生なんです。ふたりともルーツはおじいちゃんですね。
 
――沖縄の方がそうして三線に触れるというのは、ナチュラルなことですか?
 
かーなー:小学校の音楽でリコーダーと同じように三線も習います。みんな触れるけど、その後続けるかどうかが分かれますね。
 
なみなみ:私たちはひたすら続けました!
 
――おふたりとも大学で琉球古典音楽を学ばれたわけですが、そこで何を学んで将来はどんな職業を目指そうと入学を?
 
かーなー:私はずっと歌手になりたかったんです。沖縄の音楽は大きくふたつ、琉球民謡と古典音楽に分かれています。幼い頃は琉球民謡…いわゆる沖縄の居酒屋で聞かれるような庶民が歌い継いできた音楽をやっていました。一方、大学で学んで古典音楽は少し格式が高くて首里城などで歌い継がれてきた音楽です。私はずっと三線で歌いたいと思ってきたんですけど、琉球民謡を学べる大学がなくて…。そんな時に沖縄県立芸術大学では古典音楽が学べると知りました。「三線で大学に行けるなんて、そんな幸せなことある!?」って(笑)。
 
――(笑)!
 
かーなー:歌手になりたいという気持ちもあったけど、それと同じくらい沖縄の伝統芸能を広げたいとも思っていたので、古典音楽と琉球民謡を武器にBEGINさんみたいに新しい音楽を作っていきたいと思って大学に進みました。
 
――なみなみさんは?
 
なみなみ:私は古典音楽との出会いは高校の時です。高校でも沖縄の郷土芸能文化コースに通っていたんですね。そして大学には音楽に携わる仕事がしたいと思って進学しました。あともうひとつ教員免許を取ろうと思ったのも大きかったですね。私もかーなーも音楽活動をしながら中・高の教員免許を取りました。
 
――おふたりとも、夢を叶えたんですね。大学で出会ったというおふたりですが、なんでも琉球芸能専攻 琉球古典音楽コースのふたりきりの同級生だったとか…。
 
かーなー:そうなんです! その年は入学したのがふたりだけで自然と仲良くなったんですが、もう出会った時から真逆の性格で。好きなタイプとかもういろんなことが全部真逆だったのに、好きな音楽だけ同じだったんです。不思議でしょう?
 
――ちなみにおふたりの好きなタイプというのは…?
 
かーなー:私はスポーツができる人ですかね? ガッチリ、ハツラツとした人。なみなみは小池徹平さん?
 
なみなみ:全然違うタイプですよね(笑)。
 
かーなー:本当に凸凹だけど、唯一ハマったピースが「音楽」でした。一緒にピアノを弾いても好きなフレーズが合っていたり、ギターと三線でなんとなくセッションをしてみたら曲になったり。
 
――大学では三線を専門的に学ばれていた感じですか?
 
なみなみ:三線、琉球舞踊、琉球笛、お琴などひと通り学びました。午前中は一般教養、午後から着物を着て古典音楽をじっくり学ぶんです。
 
――そうなんですね。そんな環境にあったおふたりがいーどぅしとして活動を始める時に、三線とギターっていう編成になったのはどうしてですか。
 
なみなみ:大学時代、本当にいろんな楽器を使って休み時間中にふたりで遊んでいました。三線とトランペット、三線とピアノ、トランペットとピアノ、太鼓と三線とか。私たちお互いBEGINが好きということもあって、いろいろやってみた中でしっくりきたのが三線とギターだったんです。
 
かーなー:慣れ親しんできた音楽というか。ギターの練習を始めた時もBEGINのコードを見ながらでしたし。だから、三線とギターを合わせた時に、あえて「これでいこう」みたいな会話もなかったよね?
 
――へー! じゃあおふたりで「こういう音楽をやっていこう」みたいな話もなかった?
 
なみなみ:なかったですね。
 
かーなー:本当に感覚だけ。大学の授業の後、ふたりとも師匠のもとで古典音楽のお稽古をしていたので、そこで習ったメロディーをアレンジしたりコードをつけてみたり。遊びの中に音楽制作があった感じです。
 
なみなみ:お稽古が夜10時ぐらいに終わって、そこから海で落ち合ってメロディーをつくって遊んでいました。
 
――やってきた音楽や音楽をやるペースが似ていたんですね。
 
かーなー:ほぼ一緒ですよね。
 
――ちなみに2019年にアルバムデビューするまでは、どんな活動をされていたんですか?
 
かーなー:大学2年生の時の学内の古典音楽オーディションの後に、「これまでみっちり古典音楽のお稽古をしてきたから、今日から三線とギターで思いっきり遊ぼう!」っていう話になって。寝る以外ずーっと三線を弾くみたいな日々だったので(笑)。着物を着たオーディションの格好のまま海に行って、なんとなくBEGINの「海の声」を演奏したものをTwitterにアップしたら突然バズって…。
 
なみなみ:それをきっかけにいろんなイベントにお声がけいただくようになりました。
 
かーなー:イベント主催者の方に「コンビ名は?」って聞かれたけど、そういえばないね…って急遽考えたのがいーどぅし。沖縄の言葉で「ベストフレンド」という意味です。
 
――そこからトントン拍子でデビューが決まって、どうでしたか?
 
かーなー:それこそBEGINのご本人たちに「海の声」のカヴァー動画が届いていて、そこからのご縁で島袋優さんと交流するようになりました。それで優さんプロデュースでアルバムを出せることになったんです!
 
――すごい巡り合わせというか、今の時代ならではのプロセスという感じがしますね。
 
なみなみ:本当に夢だと思っていたことが現実になりました。
 
かーなー:当時自分たちの中にあるものを全て出し切るみたいなアルバムができました。一番記憶に残っているのはギターのコードをレコーディング中に教わりながら進めていったことですね。
 
なみなみ:そうそう。優さんが「こういうコードもかっこいいよ」って教えてくれて、そのままブースに入ってレコーディングをしたり。こんな幸せなことないなって。私たちが知っているコードで演奏すると、どうしても琉球民謡調に走りがちになってしまうので。
 
かーなー:優ニーニーから学んだのはブルースのコード。新しい世界を見ながらつくれたアルバムでしたね。
 
 
 
コロナ禍になって思うようになった
「今しかできない音楽をつくりたい」

 
――そうしてアルバムでデビューしてから程なくして、世界はコロナ禍に突入して…。
 
かーなー:私は関東、なみなみは関西で離れながらもコツコツと曲づくりは続けて、2021年には2ndアルバムの『HOPE』をリリースすることができました。全てコロナ禍以降に生まれた曲を収録していて、気張らず頑張らずありのままの自分たちでつくろうと。本当はもっとポップな曲やそれまでにつくり続けていた曲も収録する予定でいたんですけど…。過去につくった曲は、コロナ禍になってレコーディングに臨むとなった時に「こんな気持ちで歌えない」って。勝手に私がそういうことを言い出しまして。
 
――この曲のラインアップで行こうと決まったあたりで、かーなーさんがちゃぶ台をひっくり返したとお聞きしました。
 
かーなー:そうそう! 自分たちもみんなと同じようにコロナ禍で悔しい思いもしたので、みんなと同じ気持ちを歌にするのはどうですか? と提案をしました。そしたら、みんなもじゃあ今あるものをなしにして新しく曲をつくり始めようって。
 
――宣言を聞いたなみなみさんは…?
 
なみなみ:そのあたりの1年間の活動の流れはほぼ決まっていたんですけど、かーなーの一言で一旦後ろに倒そう、曲をいちからつくり直そうって。でもこの時しか書けない曲が詰まった作品にできたので、結果的によかったなと思います。
 
かーなー:決まっていたライブや師匠の沖縄での舞台も全て中止や延期になっていったことが本当に悲しかったし、その前には首里城の火災があって良くないことが続いたので、どうやって起きあがろうっていう自分たちの気持ちの切り替えの存在にもなるアルバムだと思っていたんです。だからこそ、それまでつくっていた「イェーイ!」みたいなテンションの曲は歌えない!って。今しか生まれない曲があるはずだから、時間をくださいってお願いしました。
 
――その制作期間もおふたりは遠距離活動だったんですよね。
 
なみなみ:はい。離れている期間もzoomミーティングは頻繁に重ねて、気持ちの共有はしていました。そういう状態での曲づくりも今しかできないことなんだなと思って進めていましたね。
 
――なるほど。おふたりそれぞれ「今しかできない曲」をつくって、そういう曲を集めて収録した『HOPE』という作品で一番伝えたかったことは…?
 
かーなー:曲から感じて欲しかったのは、みんな同じ気持ちなんだよっていうことでした。日常に寄り添える曲にしたかった。ふたりから夢と希望を与えます! ではなくて、いーどぅしもみんなと同じ気持ちだから、この音楽と共に歩いていこうって。それを感じてもらえたら嬉しいなと思います。何より 『HOPE』をリリースしてから、聞いてくれている人と一番近い距離感になれているなっていうことをインスタのDMやコメントを通して感じられるようになりました。「通勤中にこの曲を聞いてこんな気持ちになった」とか、今の自分とリンクしたというコメントがアルバム発売後にたくさん届くようになったんです。
 
――そういうふうにたくさんの人が自分の日々と重ねられるほど、具体的な気持ちやシチュエーションを歌ったという証明でもありますね。
 
かーなー:はい。すごく嬉しかったです。
 
――アルバム『HOPE』をリリースした後、かーなーさんは出産、なみなみさんは結婚と、大きな転機も迎えられて。それを経て、音楽への取り組み方に変化は起こりましたか?
 
なみなみ:かーなーのつくる曲が優しくなったなと感じています。今までかっこいい楽曲が多かったけど、「僕らの花束」もすごくやさしい歌詞だし、変わったなって。
 
かーなー:曲をつくるタイミングは子どもを寝かしつけている時しかないんです。だからかな? 普段からメロディーや歌詞が浮かんだらすぐになみなみと共有するんです。共有したLINEを遡ってみたら、無意識的にバラードがすごく増えていましたね。
 
――お子さんが成長して激しく動き回るようになったら、激しめの曲とかポップな曲ができたり?
 
なみなみ:いつかロックな曲ができるかもしれないですね(笑)。
 
かーなー:なみなみは旦那さんもギターを弾く人なので、日常でも音楽が鳴っているんだろうなぁという感じがしています。ここから新しい音楽が生まれていくなという感覚というか。
 
なみなみ:旦那さんとは好きな音楽やアーティストが似ているんです。ふたりともBEGINが好きだし時間があればギターを弾いているので、結婚してさらに音楽に触れる時間が増えました。
 
――お互いの新しい変化は、いーどぅしの活動にもプラスになっているんですね。
 
かーなー:そうですね、確実にプラスになっていると思います。
 

 
自分たちにできることは
歌にのせて思いを伝えていくこと

 
――そして4月にはデジタルシングルの「僕らの花束」がリリースされて1ヵ月ほどが経ちました。そもそもこの曲はどんな出発点から始まったんでしょうか。
 
かーなー:沖縄統合医療学院という専門学校の15周年記念のタイアップソングのお話をいただいたことがきっかけでした。元々は楽しい学校生活をイメージしたような歌詞を書いていたんですけど、実際に話を聞いたら医療系の専門学校だから資格を取るための実習や勉強に追われてとにかく忙しくしているということがわかったんです。歌詞を一度書いた後にみんなの日常生活について聞いたこともあって、歌詞を書き直しました。
 
――『HOPE』の制作を挟んだことで、人に寄り添う曲をつくるということに対してすごくリアリティを感じられていた時期でもありそうです。
 
かーなー:そうですね。学生のみなさんにはMVにも出演してもらいました。
 
なみなみ:MVの撮影が終わったそばから「課題出しに行ってきます!」っていう人もいましたね。
 
かーなー:そういう忙しい学生生活も、この曲で背中を押せたらと思いました。
 
――制作にあたっての学生さんとの対話では、具体的にどんなお話が聞けましたか?
 
なみなみ:私たちとの共通点だなと感じたのは「とにかくバタバタしていること」だなぁと思いました。勉強や課題で大忙しというか。
 
――逆にギャップに感じたことは?
 
かーなー:キャピキャピしていてかわいいなぁって。ハツラツとしていました。
 
――その対話を受けて歌詞を書き直すとなった時には、どういう方向性で?
 
かーなー:レコーディングまで歌詞を決めきれなくて…。楽しげな学校生活に重きを置いたものと、勉強や課題を頑張る学生生活に重きを置いたものの2パターン持っていきました。最後に学生さんと話をしてコレだって決めた瞬間があったんですけど、私たちの大学時代も授業、お稽古でとにかく1日がハードスケジュールだったから朝に顔を見た瞬間「おはよう今日も頑張ろうね」って言い合う感じでした。それと同じように、学生さんたちも「今日の課題も頑張ろう!」って背中を叩き合っている様子を見た時に、“徹夜明けのふたりを照らす太陽”っていう言葉が浮かんできて。勉強や課題を頑張る学生生活を描いた歌詞の方が、みんなの物語だなと思えたので決めることができました。
 
――その歌詞に対して、メロディーはどのような考え方で構築されたのでしょうか。沖縄っぽさという感じは、削ぎ落とされている印象で拝聴しました。
 
かーなー:あえてそうしました。みんなの日常に近い明るくなるような音楽にしたかったので、メロディーはウクレレで書きました。だから沖縄っぽさがないのかも。それと沖縄っぽさを出そうとするならば、ドレミファソラシドでいうとレとラを抜いてつくります。それが沖縄音階と言われているんですけど、そういうことを全く考えずに作ったのがこの「僕らの花束」でした。
 
――へー! ちなみに学生さんたちに初めて曲を披露した時のことは覚えていますか?
 
なみなみ:すぐにみんな口ずさんでいたよね?
 
かーなー:うん。今でも学生さんからDMが来るんですけど、学校の校舎に入ったらすぐに「僕らの花束」が流れているらしくて、みんなで手拍子をしながら階段をのぼったりすると「1日が始まる感じがします」って言ってもらえたのは嬉しかったです。
 
――学生さんも参加されたMVそのままですね!
 

 
かーなー:ほんと、そうですね。今回は学生さんがみんなで口ずさめるように、曲がキャッチーであることはすごく意識しました。歌いながら勝手に手拍子が生まれるとか。サビの“咲かせましょう”とか“重ねましょう”っていうのも言葉を合わせることはすごく意識しました。
 
なみなみ:曲の最後はフェードアウトしていく形にするつもりだったけど、変更してみんなの笑い声を入れたりなんかして。本当に楽しいレコーディングでした。
 
かーなー:元々みんな一緒にやっていたメンバーみたいな感じだったよね。
 
――この「僕らの花束」のリリースを経て、つい先日沖縄は節目の本土復帰50周年を迎えました。沖縄にルーツを持つおふたりが、今考えていることを教えてください。
 
かーなー:当時の話を祖父や祖母から聞いてはいましたが、50年前って意外とまだまだ最近の話で…。沖縄が変わるタイミングでいろいろあったとは思うけど、そんな時を経て受け継がれた三線や沖縄の伝統芸能を、私たちは大切に歌い継いでいかないといけないなと思っています。
 
――おふたりは沖縄のことをどう伝えていきたいと考えられているのでしょう?
 
かーなー:私たちができることは、歌詞の中に聞いたことを交えながら、思いも残していくこと。2019年にリリースした「OKINAWAN BLUE」をつくった時に、世代を超えても沖縄県民が誇りに思っているのは青い空と青い海だと再確認することができたんです。昔の人たちがいろんなことを乗り越えたからこそ、この青い空と青い海が残っているって。この思いをどうにか歌にしたいと思ったのが「OKINAWAN BLUE」でした。その経験をして思ったのは、自分たちにできることは歌にのせて思いを伝えていくこと。私たちは架け橋にもなれるのかなと思うので、そういう気持ちで音楽を続けていきたいなと思います。
 
なみなみ:そういう私たちの思いを伝えるためにもたくさんライブをしたいし、沖縄のことを知ってもらうためにも私たちが主催してフェスもやってみたいです。同じ芸大にいた友達も古典音楽のアーティストとして頑張っている人がたくさんいるので、いーどぅしを通して沖縄の文化を知ってもらいたいと夢見ています!

取材・文/桃井麻依子



(2022年5月20日更新)


Check

Movie

Release

Digital Single
「僕らの花束」
Spotifyほかで配信中/3S Records

Album『HOPE』
発売中 2500円(税込)
Mentho Records

《収録曲》
01. Hope
02. 便座
03. アナタにアイタイ<沖縄銀行CM 「OKIPay] タイアップ曲>
04. 真夜中のウチナーンチューン
05. キミの島
06. かなさんどー( いーどぅしVer. )
07. 雄飛
08. エンディングサーサー
09. マタハーリヌ
Bonus track. 世界はおくりもので出来てる(いーどぅし×HoRookies)

Profile

いーどぅし…VO・三線担当のかーなー、 Gt・コーラス担当のなみなみからなる沖縄発のデュオ。共に幼少時から三線に親しみ、多数の賞を受賞してきた。 高校卒業後に進学した沖縄県立芸術大学にて出会い、沖縄の古典音楽を学ぶ同級生として過ごす。大学2年生の時にふたりでカバーし、何気なくアップした auのCMソングとしても人気を博していた「海の声」 が、 YouTube 再生回数 300 万件越えブレイクしたことをきっかけに、いーどぅしとしての活動を本格的にスタートさせた。2019年8月、BEGIN 島袋優プロデュースによるアルバム 『OKINAWAN BLUE』 をリリースしたのち、2021年2月に再び島袋優をプロデューサーに迎えた2ndアルバム『HOPE』を発表。 2022年4月末からコロナ禍を経て、2年ぶりとなるライブツアー『いーどぅしLIVE 2022〜Bouquet〜』の東京・大阪・沖縄公演を、全てソールドアウトで終えた。

いーどぅし オフィシャルサイト
https://i-dushi.jimdosite.com/