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「今、振り返っても、ちょっと運命的なものを感じます」
驚異の約3500万回再生曲『10月無口な君を忘れる』を含む
初のアルバム『極夜において月は語らず』を手に絶賛ツアー中!
悲しみという美しさが導くあたらよの世界に迫るインタビュー

 多くの人の心に残る名曲を世に生む――。一生に一曲でも、それを成し得ることができたなら…音楽を志す者がどこかで願うであろうそんな夢物語を、初のオリジナル曲でかなえたバンドがいる。’20年11月、YouTubeで『10月無口な君を忘れる』のMVを公開するや、はかない歌声と共感を呼ぶ切ない歌詞の世界観が10代を中心に注目を集め、1年半で驚異の約3500万回再生!!(’22年5月現在) ネクストブレイクアーティストとして一躍話題となった4人組・あたらよが、この春、初のフルアルバム『極夜において月は語らず』をついにリリースした。早くも数々のタイアップ曲の執筆を求められているひとみ(Vo&Gt)がそのソングライティング力を存分に発揮し、喜怒哀楽の“哀”にフォーカスしたセンチメンタルでエモーショナルな全11曲は、この状況が決して時の運だけでは語れないことを自らの音楽で見事に証明している。そして、アルバムタイトルに潜む“極夜”は白夜の対義語であり、太陽が昇らない状態が続く=オーロラが最も美しく見える期間を表し、日中でも薄明な状態が続き極夜には月があるけれど、月は見えない=そのような月のように静かに寄り添うあたらよの楽曲を表現している。現在は『あたらよ 1st Tour「極夜において月は語らず」』中のメンバーを代表し、ひとみとまーしー(Gt)がバンドの成り立ちから楽曲の吸引力の秘密、揺れ動く感情の果てにたどり着いた今を語るインタビュー。目には見えなくとも確かにある極夜の月のように、あたらよの音楽があなたに寄り添う日は、そう遠くはない。

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自己満足で始めたことが
誰かの人生にこれだけ影響を与えるのかと実感した
 
 
――’21年の年末にTwitterでメンバー全員が激動の1年を振り返っていましたけど、ひとみ(Vo&Gt)さんは“体感で3カ月ぐらいに感じるほど目まぐるしい1年だった”と。
 
ひとみ「本当に濃い1年だったなというのと、今までに体験したことがない出来事が次々と起こって、その環境に対応していくので精一杯だったんですけど、すごく楽しかったですね」
 
――まーしー(Gt)さんは、“この1年は自分の人生が変わる瞬間に立ち会うことがめちゃ多かった気がする”と。
 
まーしー「テレビで見ていた人と会えたり、そもそもテレビに出られること自体が夢みたいな話じゃないですか? 目標がどんどん達成されてく感覚があって、それがうれしくてたまらない1年でした」
 
――同時に、“多くの人と関われていろいろ吸収もしたり、少しいざこざもあったり”とも(笑)。
 
まーしー「アハハ!(笑) でも、いざこざ=みんながベストを尽くすためにぶつかり合った結果でもある。そう考えると、“こういう考えもあるのか”という目線を持てたので、どんどん成長してると思っています、自分では(笑)」
 
――その1年前の’20年末に同じようにTwitterで振り返ったときは、現時点で約3500万回再生の『10月無口な君を忘れる』のMVについて、“1カ月という短い期間にも関わらずたくさんの方に聴いていただき、もうすぐ50万回再生”って…この1年でどれだけすごいことが起きたのかという話ですよね。
 


ひとみ「最初は本当に、自分の中にある感情を歌という形で世の中に吐き出しただけだった。でも、自分の歌を聴いて救われたと言ってくださる方がたくさんいて、自己満足で始めたことが、他の誰かの人生にこれだけ影響を与えるのかと実感したので。すごくうれしかったのもありますし、プレッシャーも大きかったですね」
 
――人生で死ぬまでにここまで届く曲が書けるかどうかも分からないのに、それが最初の1曲で起きたという…。そもそも、まーしーさんとたなぱい(Dr)さんが居酒屋で一緒に飲んでいるとき、ひとみさんのTwitterに上がった『10月無口な君を忘れる』を聴いて即連絡したのがバンドの始まりだと思うと、2人は相当優秀な新人発掘担当かも(笑)。
 
まーしー「もう本当に衝撃を受けましたね。すごい曲だなと思って、すぐに声を掛けましたから」
 
ひとみ「曲を作ったときは反応を見るためじゃないですけど、まずはInstagramに上げることが多くて。そのときも“何かいい曲ができちゃったな”と思って上げたら、いつもと周りの反応が圧倒的に違って。こんなに違うものなんだと思って一応Twitterにも上げたら、2人がたまたま見ていたという(笑)」
 
――とは言え、ここ2年はコロナ禍もあり、ひとみさんが専門学校を卒業後、一旦就職してバンドが停滞してしまったとき、 TikTokで見つけたクリエイターに思い切って『10月無口な君を忘れる』のMV制作を依頼したことが、今につながったと。何だか不思議な運命ですね。
 
ひとみ「私は行動に移すのが遅いタイプなのに、何であのときだけあんなに前のめりで動けたんだろう? 今、振り返っても、ちょっと運命的なものを感じますね」

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せめて自分ぐらいは自分のことを愛してあげよう
 
 
――ただ、昨年10月にEP『夜明け前』('21)を出して一区切りできた達成感があったからこそ、今回のフルアルバム『極夜において月は語らず』に向かう制作過程では、ちょっと葛藤もあったみたいですね。
 
ひとみ「“そろそろフルアルバムを”みたいな話から始まったものの、自分の中では『夜明け前』で区切りがついていたので、次に何を見せたらいいかはすごく悩みました。全く曲が書けない時期もあったんですけど、メンバーや周りのスタッフさんともいろいろと話していく中で、“もうちょっと自分を信じてあげてもいいのかな”と思えてきて。誰かがいいと言う曲を、誰かのために書こうとするんじゃなくて、『10月無口な君を忘れる』を作ったときのように、自分が本当に書きたいと思った曲を世の中に出すことが、今の私たちにとっては正しいのかなと」
 
――そのスランプを打破するような一曲があったんですか?
 


ひとみ「それこそ『52』は、このアルバムを作るにあたって一番最初に取り掛かった曲なんですけど、そのときの私の心情が丸々詰め込まれていて。“もっとこうした方がいいよ”とかいろんなアドバイスをもらっていく中で、だんだん自分の書きたいことが分からなくなって心が壊れかけていたとき、じゃあそのさまをそのままリアルに書いてみようと発想を転換したんです。そうやって素直に気持ちを書いたら、やっと本来の私が、他人の意見によって作られた詞じゃなくて、自分の言葉が出てきた気がして。『52』を境に曲がポンポン出てくるようになりましたね」
 
――そんな『52』は、町田そのこさんの小説を読んでいるときにひらめいたと。
 
ひとみ「私は言葉が出てこないときはひたすら小説を読むんですけど、本からインスパイアを受けることもすごく多くて『52ヘルツのクジラたち』を読んだとき、自分が本当に届けたい声が誰にも届いてないもどかしさ、みたいなところがリンクするなと思って。一番最後のブロックのDメロのところで、“世界が僕を愛してくれないなら/せめて 僕が僕を愛すよ”と世界規模で考えちゃってるので、ちょっと壮大過ぎるんですけど(笑)。でも、今ってSNSとかでいろいろと言われちゃう世の中じゃないですか? だからこそ、“せめて自分ぐらいは自分のことを愛してあげようよ”みたいなメッセージを伝えたかった。あと、まーしーが使ってるエフェクターとか、海の中をゆらゆら泳いでるようなサウンドもお気に入りで、今作で一番好きな曲ですね」
 
――まだ22歳でその視野にたどり着けたのは、普段からいろいろと考える癖があるのと関係してるんですかね?
 
ひとみ「考え事は常にしているので、四六時中頭が働いていて。そのせいもあってか、1日10時間以上寝るんですよ、私(笑)。普段から、“そんなに心配しなくても大丈夫だよ!”と言われるところまで考え込んじゃうんですよね」
 
――でも、話している分には、そこまでの危うさは感じないですね。
 
ひとみ「基本的には、“歌詞にしたら面白そう”みたいなことを考えながら生きていますから(笑)」
 
――何でも歌になると思ったら大丈夫とも言えるし、ちゃんと痛みを感じられる自分でもいたいし
 
ひとみ「本当にそうなんですよね。そこがちょっと悲しいなと思っちゃうことがあります。悲しいはずなのに何でちょっとうれしいんだろう? みたいな(笑)。何かもう職業病だなと思って」
 
(一同笑)
 
――あたらよは“悲しみをたべて育つバンド”と称されたりもしますが、ひとみさんにとって詞は祈りであり、喜怒哀楽の“哀”の感情から言葉が出てくると。なぜそこに惹かれるんでしょう?
 
ひとみ「何でしょうね…単純に“美しい”と思ってしまうんですよね」
 
――その辺の美学も今作からはにじみ出ていますね。じゃないと、フレッシュな新人の1stアルバムの1曲目で、『交差点』みたいに静かで切ない始まり方はしないなと思って(笑)。
 


ひとみ「アハハ!(笑) 『交差点』は『52』のちょっと後、『差異』と同じくらいにできた曲で。私は基本、歌詞とメロディが同時に出てくるタイプなんですけど、この曲はスマホのボイスメモに向かって、Aメロ、Bメロからワンコーラスを一気に歌って、ほぼワンカットで作ったといっても過言ではない曲ですね」
 
――この曲のデモをもらったとき、まーしーさんが号泣したという話は本当ですか?
 
まーしー「本当です(笑)。もうめちゃくちゃ感動しちゃって、この曲は絶対にアルバムに入れたいと言いました」
 
ひとみ「デモを渡すときはそれなりに緊張するんですけど、そのときはちょうどメンバー全員が一緒にいて、“新曲ができたんだけど、ちょっと聴いてくれない?”みたいな感じで流したら、目の前でまーしーが泣き始めて(笑)。でも、そこまで反応してくれる楽曲なら私も安心して世に出せるので」

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まーしーが歌えるのはこのバンドの強みだと思う
 
 
――リード曲の『悲しいラブソング』もまーしーさんが入れたかったという曲で。専門学校時代にはあった昔の曲ということは、それだけ印象的だったということですね。
 


まーしー「『10月無口な君を忘れる』の後に書かれた曲だったのもあって、すごく頭の中に残っていて」
 
――ひとみさんもこの曲には気持ちが入り過ぎて、歌録りは大変だったみたいですね。
 
ひとみ「もう実体験そのまんま、という感じの曲なので、当時を思い出しながら歌ったらかなりの熱量だったみたいで。“やり過ぎだよ〜!”って言われました(笑)」
 
――当然、その逆のフィクションの曲も今作にはあると思うんですが、“嘘をつくときって、若干真実を混ぜた方が現実味を帯びてきて、バレなくなるじゃないですか?”とひとみさんが過去のインタビューで答えているのを見て、さすがだなと思うのと同時に怖くなりました(笑)。
 
(一同笑)
 
ひとみ「ヤバい! バレましたね(笑)」
 
――でも、それが曲を作るとなると生きてくるという(笑)。『夜明け前』からも4曲再録されていますが改めて、『夏霞』のまーしーさんの歌声はとてもいいですね。
 


まーしー「ありがとうございます。昔はボーカルもやってたんですけど、俺はやっぱりギタリストだなと思って。でも、コーラスは好きですよ。ボーカルと違うメロディを歌うのが特に好きです」
 
ひとみ「せっかく声もいいし、もっと彼の歌の配分が多い曲、それこそほぼデュエットぐらいの曲があっても面白いのかなと思って。まーしーが歌えるのはこのバンドの強みだと思うので、そこを生かした曲を作りたいなって」
 
――この曲はある種の王道というか、日本のロックの美しいひな型という感じすらあるミドルバラードで。一転、『祥月』は、まーしーさんのギタリストとしての色が濃く出たエッジィで疾走感のある曲で。当時のあたらよが“らしさ”をぶっ壊すために作った曲だと。
 


まーしー「それまではバラード系の曲を多くやっていたので、『祥月』のデモを送ってひとみから“私、全然いける〜!”と返ってきたとき、メンバーからOKが出たことに自分が一番ビックリした曲です(笑)」
 
――『祥月』というのは故人が死去してから1周忌以降の亡くなった月のことを表す言葉で、悲しみの感情の中でもより喪失感を歌った歌詞になっています。
 
ひとみ「自分が曲まで作るときは歌詞の文字数が増えてもその分、自分で曲の長さを伸ばせばいいんですけど、まーしーからは結構完成したデモが来るので、その辺はなかなか難しいなというのはあって。ただ、当時は就職していたので車通勤だったんですよね。だから、その行きも帰りもデモを流して、フリースタイルラップみたいな感じでそれに合わせて適当に歌ってみて…それを繰り返した上でやっとできた歌詞ですね。私はK-POPをよく聴くんですけど、ずっと自分が好きだったアーティストの方が亡くなってしまったときに抱いた感情を歌にした感じですね」
 
――そして、『祥月』のアナザーストーリーが『極夜』ということで。
 
まーしー「ひとみから“この曲をどういう曲にしたい?”と聞かれて、“『祥月』のアナザーストーリーみたいになればうれしい”という話をして作ってもらいました。ちょっとフレーズが似たところとか激しさもあって」
 
――ただ、『極夜』が今作のアルバムタイトル=『極夜において月は語らず』の由来ではなかったのは意外でした。
 
ひとみ「むしろ『極夜において月は語らず』が先に決まって、そこからまーしーが取った、みたいな」
 
まーしー「いつも何となくイメージした仮タイトルをデモに付けちゃって、ひとみを困らせるという(笑)」
 
――それを生かすべきなのか? あくまで仮なのか? どこまで本気なのかは気になりますよね。
 
ひとみ「普通は詞を書いてから、その内容を見てタイトルを決めることが多いじゃないですか? 毎回、“このタイトルに合う詞を書いてね”という圧が(笑)」
 
――あたらよはそういう伏線とか、アナザーストーリーみたいな楽曲が多いですよね。『嘘つき』=『10月無口な君を忘れる』の男性目線という発想をたなぱいさんが思いついたり、曲単体で終わらない世界観があって。
 


ひとみ「『嘘つき』は全く別の物語として作ってたんですけど、たなぱいにそのアイデアをもらったとき、“確かに!”とかなりふに落ちたところがあって。なので、メンバーの着眼点も私はすごく面白いなと思っています」

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私は一生、曲を書いてると思います
 
 
――『「知りたくなかった、失うのなら」』は、『純猥談』(=“誰もが登場人物になったかもしれない、誰かの性愛にまつわる体験談”を投稿するサービス)とのコラボ曲で。元々あるお話に詞曲を付ける作業は難しかったと。
 


ひとみ「それまでは自分の中の感情を表に出す作業だったのが、自分じゃない人が経験して、選択したことにどう感情移入したらいいかが分からなくて。この曲は、浮気をされたけど、それでも相手のことがまだ好きというお話を元に書いたんですけど、自分なら浮気をされたらすぐ別れるので(笑)。何度も何度もそのお話を読んでいくうちに、文章の中にはない“多分、このときはこう思ったんじゃないかな?”みたいな部分がちょっとずつ見えてきて、だんだん感情移入できるようになっていった感じですね」
 
――ひとみさんが言葉を絞り出すときの丁寧さというか誠実さが、歌詞の吸引力に関わっているかもしれないですね。その人の奥にある想いを探り当てていく感じがあるから。そして、今作では個人的に『outcry』が印象的で、とてもスケールの大きい曲だし、できた成り立ちが気になる曲だなと思いました。
 


ひとみ「これはゲーム『メメントモリ』のタイアップ曲で、いろんな魔女が出てくるんですけどそれぞれにイメージソングがあって、その中のアムレートというキャラクターの曲を作らせてもらいました。“孤独が強さを生み出すと思っていたけど、実はそれが弱さだった”というテーマに共感できたので、自分の内面とより向き合う楽曲になっています。作中の叫び声は、どうにもならない気持ちを表に出す表現として入れさせてもらいました」
 
――エモーショナルでドラマチックな楽曲なので、ホールで聴きたくなりますね。
 
まーしー「いつか絶対にやりたいですね!」
 
ひとみ「ストリングスとかも生で入れてね」
 
――『差異』もWEBドラマ『きいてください、最後の曲です』の主題歌ですが、この曲もタイアップ曲でありながら、あたらよのオリジナル曲としてもちゃんと機能していますね。
 
ひとみ「物語に寄り添っても、らしさは消さないようにしています。例えば、『「知りたくなかった、失うのなら」』は歌詞にオーダーがあって、本来の私なら書かないような言葉を使ったりもしてたんです。なので、デモの段階では“ちょっとあたらよっぽくないかも…”とも思ってたんですけど、メンバーの手が入って完成した状態を聴いたとき、やっぱりメンバーのサウンドも含めてあたらよなんだなと、改めて思いました」
 
まーしー「内容が重たい曲なら音を分厚くとか、爽やかな曲ならちょっとフレーズを軽快にしたり、歌や詞に対しての音色にはとにかく気を遣っているので、そう言ってもらえるとありがたいですね。『差異』は一番好きな曲で、2番のサビ前の歌詞がすごくきれいに見えたというか、どうやったらああいう言葉が出てくるんだろうと思って」
 
ひとみ「“君はどこかで散ったのかな”という部分ですね」
 
まーしー「そこがこの曲の肝だと思ったし、サウンド面でも割と自分が好きなように作ったというか、オルタナな疾走感やバンドのカッコよさをその歌詞に乗せたいなと思って。それが思い通りにハマりましたね」
 
――あたらよは、しっかりギターソロがあるのも特徴ですね。
 
まーしー「ひとみの歌が消えたと思った瞬間に即入れて(笑)」
 
――結成当時は、ひとみさんがシンガーソングライターとしてやっていくか、バンドを組むか、決めかねていたタイミングだったということですけど、こういう一連の話を聞いていると、このメンバーでよかったなと思いますね。
 
ひとみ「最初に電話をかけてきたときの2人の熱意が、酔っ払っていたとは言えハンパなくて(笑)。彼らは私の作る曲を私と同じように愛してくれた。後に一緒に音楽を作っていくとき、信頼が置けるポイントもそこだったのかなと」
 
――ひとみさんは小さい頃から歌うことが好きで、高校生のときにはバイトをして自らボイストレーニングに通うほど歌ありきの音楽人生ですけど、曲を書くという行為も今となっては大切ですね。
 
ひとみ「絶対にないですけど、世の中にバンド禁止令が出たとしても(笑)、私は一生、曲を書いてると思います」
 
――よく“面と向かって言えないことも歌では言える”みたいに聞きますけど、3500万回も再生されたら、その面と向かって言えないようなことをより多くの人に知られるのに、不思議な職業ですよね。
 
ひとみ「自分では、歌ってる私と私生活の私は、別人として捉えてるんですよね。だからこそ、“歌ってる私なら言える”みたいなこともあるのかなという気がしてますね」

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新しいあたらよをみんなに見せていくのが楽しみ
 
 
――今作が出来上がったとき、何か思うことはありましたか?
 
まーしー「家で聴きながら号泣しました(笑)」
 
ひとみ「熱い男なんですよ(笑)。本当に短い期間でいろんなことが起こったので、そのときの様子が走馬灯みたいに流れて、ちょっと感慨深い気持ちになりましたね」
 
まーしー「人生初アルバムだったので、“これが俺たちCDなんだ!”と思ったらもう、感動しちゃって…。オカンも横で“何泣いてんのよ”ってちょっとホロッとして」
 
――いい話。お兄さんが好きだったELLEGARDENに憧れ、みたいなところから始まった音楽人生の大きな一歩で。
 
まーしー「最初にひとみの曲と出会ったとき、横で自分がギターを弾いてる景色が見えたのが、どんどん現実になっていく感じで。それが何だかすごくうれしいですね」
 
ひとみ「私は一つ一つを作品として見ていて、自分の頭の中にある美術館の『夜明け前』の隣に、『極夜において月は語らず』が並んだのを想像したときはうれしくもあり、“さぁ、次は何を作ろう?”と考え出してましたね」
 
――昔、ひとみさんは曲を書くときは誰か一人を思い浮かべることが多いと言っていましたが、応援してくれる人が増えつつある今は変わりましたか? 
 
ひとみ「相変わらず一人に向けて作る曲もありますけど、届けたい人が一人じゃなくなったのはあるかもしれないです。いろんな人に届けばいいなと思って作る機会が増えましたね」
 
――自分事だけじゃなくなってきましたもんね、人生が。
 
まーしー「最初は一人でやろうとしてたけどね(笑)。逃がさないよ!」
 
ひとみ「捕まりました(笑)。これからも、新しいあたらよをみんなに見せていくのが楽しみです!」
 
 
Text by 奥“ボウイ”昌史

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(2022年5月20日更新)


Check

Release

全曲リード級の美メロで圧倒!
キャリア初のアルバムがついに完成

Album
『極夜において月は語らず』
【初回限定盤CD付】
発売中 3850円
A.S.A.B
RZCB-87075~6

<収録曲>
01. 交差点
02. 夏霞
03. 極夜
04. 祥月
05.「知りたくなかった、失うのなら」
06. 悲しいラブソング
07. 嘘つき
08. outcry
09. 52
10. 10月無口な君を忘れる
11. 差異

<初回限定盤付属CD収録曲>
『あたらよAcoustic Session』
01. 10月無口な君を忘れる(Piano ver.)
02. 夏霞
03. 晴るる
04. 8.8
05. ピアス
06. 祥月
07. 嘘つき
08. 優しいエイプリルフール(demo)

【通常盤】
発売中 3000円
A.S.A.B
RZCB-87077

<収録曲>
同上

Profile

あたらよ…写真左より、たけお(Ba)、ひとみ(Vo&Gt)、たなぱい(Dr)、まーしー(Gt)。“悲しみをたべて育つバンド”と称され、作詞・作曲・アートワークや映像もセルフプロデュースする、東京を中心に活動中の4ピースバンド。バンド名の由来は、”明けるのが惜しいほど美しい夜”という意味の可惜夜(あたらよ)。 ’20年11月にYouTubeに楽曲を投稿し始め、初のオリジナル曲『10月無口な君を忘れる』のMVは、切なくもエモーショナルな歌声と都会的な空気感、共感を呼ぶ歌詞の世界観が話題となり、約3500万回再生に達している(’22年5月現在)。’21年3月にデジタルリリースを開始すると、瞬く間にLINE MUSIC、Spotify、TikTok、AWA等のチャートで首位を獲得し、活動開始からわずか1年足らずで『THE FIRST TAKE』に出演。同年10月には初のEP『夜明け前』を、そして、’22年3月23日には1stフルアルバム『極夜において月は語らず』をリリースした。

あたらよ オフィシャルサイト
https://atarayo-band.jp/

Live

アルバムを引っ提げた東名阪ツアー
大阪初ワンマンが間もなく開催へ!

 
『あたらよ 1st Tour
「極夜において月は語らず」』

【東京公演】
▼5月5日(木・祝)WWW X

Pick Up!!

【大阪公演】

チケット発売中
※販売期間中はインターネットにて受付。
店頭での直接販売はなし。
▼5月21日(土)17:30
Shangri-La
スタンディング(立ち位置指定)4500円
キョードーインフォメーション■0570(200)888
※未就学児のみでの入場不可。4歳以上要チケット。再入場不可。客席を含む会場の映像・写真が公開されることがあります。あらかじめご理解の上、ご来場ください。

チケット情報はこちら


【愛知公演】
チケット発売中
※チケットは、インターネットでのみ販売。
▼5月22日(日)17:30
スペードボックス
スタンディング(立ち位置指定)4500円
サンデーフォークプロモーション■052(320)9100
※4歳以上有料。未就学児童のみでの入場不可。開場/開演時間は変更になる可能性がございますので、ご注意ください。客席を含む会場の映像・写真が公開されることがあります。あらかじめご理解の上、ご来場ください。

チケット情報はこちら


Recommend!!

ライター奥“ボウイ”昌史さんの
オススメコメントはコチラ!

「最初はだいたいたった一人の対象だったりするんですよね。そこから4人をすごい景色まで連れていってくれた『10月無口な君を忘れる』は、ひとみさんのパーソナルな思いが、あたらよを経由してみんなのものになっていった曲で。MVを公開して2カ月で50万回再生でも相当ですが、今ではその70倍の約3500万回再生って…本当に毎日、刺激疲れする1年だったことでしょう(笑)。SNSが当たり前にある時代のバンドだけに、TikTokからYouTubeへのリスナーの流れなどもメンバーは考えていて、ただいい曲を書くだけではなく、届けることにもしっかり注力しているんだなと感心しました。バンドの停滞期にTikTok で見つけたクリエイターにダメ元でMVを依頼したことがあたらよの今の状況を作った発端ですが、インタビューでひとみさんが語っていたように、後回しにせず起こしたアクションが運命を芋づる式に動かしたりする。こういう分かれ道が人生には何度もあるんだろうな…。ミラクルにはちゃんと理由がある。そんな『10月無口な君を忘れる』すら特別じゃなかったと感じさせる初のアルバム『極夜において月は語らず』は、まぁどれも曲が良い! いずれ作品がたまっていったら、ひとみさんの脳内にとどまらず、ジャケットとか詞と一緒に本当に展示ができるようになるかもしれない。ライブの本数はまだまだ少ないあたらよだけに、今なら一緒にブレイクへの道のりを追いかけられますよ。まずは今回のリリースツアーから!」