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This is TENDOUJI!!!!
「このアルバムで俺たちをわかってもらえる」
EASY PUNKをテーマに掲げ、進化を示した
3rdアルバム『Smoke!!』をめぐるストーリー

2021年、TENDOUJIがアルバムを2枚リリースした。そりゃ1年に2枚リリースすることぐらいあるでしょと思うかもしれないが、TENDOUJIの場合は事情が異なる。2017年に1stアルバムの『MAD CITY』を発表して以降4年、トンとアルバムが出ていなかったのだから。その間彼らは国内外/フェスやイベント、ワンマンなど数え切れないほどのステージに立ち、ライブという形で音楽を鳴らし続けていたのだ。そんな彼らが「かなりチャレンジしたアルバムだった」という2ndアルバムの『MONSTER』をふいに発表したのが昨年春のこと。そのリリース時に公表さたのが“コロナ禍の閉塞感の中で溢れ出す制作意欲が結実し、もう1枚アルバムを同時制作中!年内発売!”という予告だった。4年前に1枚だけだった彼らが1年で2枚出すのだから、その創作意欲はヤバい。そう思っていた。予告通り、12月中旬に3rdアルバム『Smoke!!』をリリースしたTENDOUJI。彼らから届いたのは、メロコアやパンクが学生時代と共にあった30代中盤より上の世代には完全にエモく、打ち込みやボカロに親しんでいる若い世代には完全に新しい感触のポップ・パンクアルバムだ。『Smoke!!』を聴いたらTENDOUJIをわかってもらえる―――――This is TENDOUJIとも言えるアルバムについて、時間を『MONSTER』の制作時へとさかのぼりながら話を聞いた。

実は本気で考えていた「2枚同時リリース」

 
――今日(取材日)は年明けということでまずは2021年をザクっと振り返っていただきたいのですが、どういう1年でしたか?
 
モリタナオヒコ(Vo&Gt):長い1年でしたね。前の年よりはリリースもあったしフジロックも開催されたし、ライブもなんだかんだやっていたなぁと。コロナが来た年に比べたら充実してたってことかなと思います。
 
ヨシダタカマサ(Ba):うん、特に前半は制作を中心にいろいろやっていましたね。後半は1人になる時間も多くて、自分を見つめ直す機会が持てました。
 
――見つめ直して見えてきたことはありましたか?
 
ヨシダ:2022年にやりたいことが見えてきましたね。
 
――それはメンバー内で共有済みですか?
 
ヨシダ:いや、音楽や演奏に関してとかいろいろ…自分の問題ですね(一同笑)。あ、でも年末に来年はライブをたくさんやっていきたいねっていうのはみんなで確認したかな。
 
――ライブに関しては開催可能な範囲を掴めてきている感じがしますしね。オオイさんはどうですか?
 
オオイナオユキ(Dr):2021年は延期していたライブを清算できた年になったかな。個人的にはめちゃくちゃ基礎練習をやった1年でもあったし、プラスになることがいっぱいありましたね。あと、ケガに悩まされた1年でもありました。
 
――なんか、まるでプロ野球選手みたいな発言ですねぇ。
 
モリタヨシダアサノ:確かに!
 
オオイ:ドラムってアスリートみたいなところがあって、2020年はひたすら曲を作ってそこからドラムのフレーズが決まって、2021年はトコトン曲の練習をするっていう流れで。練習しまくった挙句、肩を痛めました。バスケットのドリブル練習で基礎だけを延々やるみたいな日々でした。
 
アサノケンジ(Vo&Gt):確かに2021年は2020年にやるべきことをやったし、1年でアルバムを2枚出せたのはよかったです。こういう状況にならなかったら基本的にライブをいっぱいやるバンドなのでリリースはなかったかもと思うと、音源に集中できる環境を作れたのはよかったかな。
 
――1stのアルバムの『MAD CITY』から昨年春に発売された2ndアルバムの『MONSTER』まで約4年あきましたが、それはコロナもありつつやっぱりライブを中心に考えていたからこそアルバム制作の話にはなりづらかった感じですか?
 
アサノ:自分たちもアルバムを出していないことに気がついてなかったんですよ。間にEPも出していたし、アルバムに目が向いた時には4年あいていたっていうだけですね。
 
――ということはTENDOUJIにとって2021年の1年でアルバムを2枚出すっていうのは、かなり気合いの入るトピックスだった?
 
モリタ: 2枚出そうぜって盛り上がった時は「おっしゃ、やるぞ」ってなったけど、出すと過ぎたことになって次に向かうって感じですね。でも作品を作るってすごく大事なことで、4年もレコーディングをしていなかった分かなりライブ脳になっているしライブ筋肉ばっかりついた状態でした。それでもライブの中で成長してきたことや自分たちがインプットしてきたことを、作品に落とし込めたかなとは思います。
 
――今回12月にリリースされた3rdアルバムの『Smoke!!』についてお話を聞くうえで、2021年春にリリースされた『MONSTER』についてもさかのぼって伺いたいと思っています。久々にアルバムを出そうっていうのは、いつ頃から構想があったんですか?
 
アサノ:コロナが始まり出す前ですね。『MONSTER』っていうタイトルも2020年の1月には決まっていました。
 
――その『MONSTER』っていうワードはどこから?
 
モリタ:怪獣みたいなタイトルを付けたかったんです。みうらじゅんさんの本で『アイデン&ティティ』っていう作品の中に「ロックは怪獣だ!」っていういいセリフがあって。音楽ってとてつもないパワーを持ったものだと思っていて、俺らの音楽はゴジラではないけど弱々しいモンスターみたいだなって思ったんです。絵で言うと「カートゥーン ネットワーク」に出てきそうな怪獣のイメージですかね。音楽は力があって怪獣みたいだけど、怪獣にもいろいろあるよねっていう。弱めの丸い怪獣みたいなアルバムを作りたいなっていうのはあったっすね。
 
ヨシダ:その話を聞いた時、みんなすぐにわかる! ってなってました。
 
――『MONSTER』の制作が始まる時点で曲がありすぎてどうしよ? じゃあ2枚にわける? みたいな展開だったのでしょうか。
 
アサノ:アルバムを作ろうって曲がある程度できてきて、タイトルを決めようって『MONSTER』になって、タイトルが決まったらイメージが湧いてさらに曲ができたあたりでコロナ禍になったから発売日を延ばそうかと。そこで時間ができちゃったし、さらに曲を作ろうってなったんですよね。その時はアルバム収録曲も決まっていなかったし、まだ足せるなぐらいの感じで。それで自粛明けに集まったらいい曲がめちゃめちゃあって、ナオの「2枚組にしない?」って言葉でアルバムを2枚出す構想が生まれました。本当は2枚同時に発売したかったんですけど…。
 
オオイ:俺ら以外、誰も2枚同時がいいって思ってなかったんですよ。
 
モリタヨシダアサノ:あはははは!
 
――ちなみに2枚同時がいいと思ったのはなぜだったんですか?
 
アサノ:おもしろそうだっただけです!
 
――いいですねぇ! でもそこ、2枚同時なのか2枚組なのかでもニュアンスは変わりますよね。
 
モリタ:どっちも候補に挙がってました。思いついた時は、2枚別のアルバムで同時に出そうって盛り上がったんですけど…ちゃんとスタッフに猛反対されましたね。
 
ヨシダオオイアサノ:された~!
 
――(笑)!理由は聞きました?
 
モリタ:「シンプルにもったいない」って言われましたね。
 
アサノ:あと、20曲一気に出して聞いてもらえるわけないよなぁっていうのもあるし。
 
――それはサブスク時代だからですか?
 
モリタ:うん、CD全盛期だったら余裕で2枚同時に出したと思いますね。猛反対を受けて、超アッサリ2枚同時は諦めました。
 
ヨシダ:反対されて助かりましたよね。俺ら本気で2枚同時に出す気でしたから。
 
――「助かった」っていうのは?
 
アサノ:……や、マジ意味なくないですか?
 
――いやいやいや! この時代に2枚同時に音源をリリースしたら、TENDOUJI攻めてるなってなるかなと思うんですけど…。
 
アサノ:でも翌日にはみんな忘れるんですよね~。
 
――あぁ、それは…んー、難しいですよね…世の中移り気めちゃ早いというか…。そう考えたら、時間をあけて年内に2枚っていう方がインパクトあったなとも思いますね。制作期間は2枚並行していたんですよね?
 
モリタ:うん、結構かぶってますね。
 
――なるほど。2枚のアルバムを作ろうと決まった矢先にコロナ禍に突入して、そこからさらに曲ができたと伺いましたが、コロナにまつわるあれやこれやが挟まったことは曲作りや歌詞の言葉選びに影響は出ましたか?
 
モリタ:意識はしてなかったけど、あったかなぁ。正直、SNSは嫌いになった。その「嫌だな」みたいな気分は歌詞に出ちゃってるかもしれないです。
 
――自粛期間にそれぞれ曲を作り続けるのも孤独な作業ですしね。
 
モリタ:曲作りとかギターやベースの作業は各自でできるけど、ドラムはどうしてもスタジオに入らないといけないしどーする? みたいなことはありましたね。
 
アサノ:でも自粛期間に(オオイの)ドラムの打ち込みが上手になったおかげで、zoomでイメージを伝えて作ってもらうっていう流れができて。できることが増えたのはよかったですね。
 
モリタ:俺らレコーディングとか音源を作るにあたって、テクノロジー的な技術が皆無だったんですよ。
 
――テクノロジーなしでやって来れていたってことですよね。
 
モリタ:ほかのバンドはもっとやってると思いますよ。だから時間ができたことは、メンバーが成長するいい機会になった感じはありますね。
 
ヨシダ:やれることが広がった感覚はあります。
 
オオイ:レコーディングスピードが早くなったかな。前はみんな上手いから早いんだと思ってたけど、テクノロジーを駆使しているから早いんだってことに気がついたんです。打ち込みができるようになって、フレーズを決めてからレコーディングに入るっていう当たり前のことができるようになりました。
 
――今までは、とりあえず集まってやってみようみたいな?
 
モリタ:そう、よくも悪くもテキトー(笑)。そもそも自分たちだけでやっている時は、とりあえずレコーディング日程おさえて何も決まってないのにスタジオ入って。特にナオユキは初心者だったし、こんな感じでやってって言っても「え?」って。今回もそういうノリでいたら、割と最後の方怒られたよね?
 
ヨシダオオイ:そうそうそう!
 
モリタ:ケンジのギター録りが時間かかりすぎて、プロデューサーの片寄さんに「練習して来ないとダメだよ」って怒られてて。めっちゃ笑ったっすよ。
 
アサノ:だって当日までどうやって弾くか決まってなかったんだもん、しょーがないじゃん。普通は当日までにいろいろ決めて来るらしいんですけど、俺らは当日にフレージングが決まったり「これよくない?」って入れたりするから、そのまま弾いたことがないんですよ。
 
モリタ:あと、どこか頭の片隅でそのやり方かっけぇみたいなのもある。ちょーっとだけあるよね?
 
アサノ:………いやいやいや。さっと弾けたらかっこいいと思うけど。
 
モリタ:いや! そのマジックは信じてますよ。でもここまでテキトーで来たけど、スタッフの人数も増えて来て指摘されるポイントも増えて、それも日々勉強だしおもしろかったっすね。
 

 
「音楽は簡単にできる、難しく考えなくていい」

 
――ドラムの打ち込みなど新しい武器を得て2枚並行して作って、1枚目の『MONSTER』が発売になった反響の中で2枚目の『Smoke!!』の制作をさらに進めるって…。なかなかレアな状況でしたね。
 
モリタ:そうですね。あれ? 『MONSTER』の反響…あったかな? SNS避けてたしな~。
 
アサノ:シングルカット済みの曲も多かったし、『MONSTER』を出す時は「この後もう1枚出ます」ってアナウンスして2枚目にも取りかかってたから、『MONSTER』を出し終えた満足感はないまま進んでましたね。
 
――うんうん。そうやって『MONSETER』を世に送り出した後、『Smoke!!』を作るにあたってプロデューサーの片寄さんとどんな作品にしようみたいな話はしたんですか?
 
モリタ:…したっけ?
 
オオイ:いや、したかな? してないな。
 
モリタ:とにかくアルバム2枚の制作が始まってから、片寄さんやアレンジャー、エンジニアと2年間ずっと一緒にいる感じだったんですよ。
 
――ずっと作りっぱなしですもんね。
 
モリタ:そう。だからもう言わなくてもわかってもらえるようになってスタッフは家族に近い感じなんだけど、片寄さんからは俺ら十数回同じ話されてますね。
 
――どんな話を?
 
モリタ:それ、ちょっと言えないですね。片寄さんは俺らみたいなヘボパンクじゃなくて、ガチパンクな人なんで(笑)。でも本当にファミリー感がすごく出て、俺はその体験がデカかったです。作品ができたことよりも、ミュージシャンと交流しながら制作を共にするっていうこと、『MONSTER』ではROYくん(THE BAWDIES)とか自分がリスナーで聴いていたミュージシャンが作品に関わってくれたのも不思議な感覚でした。あと一番思ったのは、音楽を継承しているんだなっていうことかな。
 
――継承?
 
モリタ:片寄さんたちは知識や哲学、スキルも含めて、いろんな音楽を作ってきたことを俺たちに伝えてくれているというか、受け継いでいくものなんだっていうことをすごく感じたな。そもそも音楽ってそういうものなんだって気づけたし、面白いなって。一生飽きないですよね。
 
オオイ:俺もエンジニアのサポートの人に練習の仕方を教わって勉強になりました。
 
――レコーディングしながらも、自分たちのレベルを少しずつ上げていく作業でもあったんですね。
 
アサノ:そう、俺らまだまだわからないことが多いんで。
 
ヨシダ:それにバンド始めた頃よりもいろいろ指摘されるようになりましたね。やっと土俵に立てた感じがします。
 
モリタ:要求されるレベルが高くなってきたのは、嬉しいし楽しいです。
 
――そんなふうに制作に取り組んだ『Smoke!!』どういうアルバムにしようとスタートしたんですか?
 
モリタ:なんとなくめっちゃパンクで早い感じのするアルバムにしたかったんですよね。『MONSTER』が俺ら的にチャレンジしたアルバムだったので、2枚目はとにかく自分たちらしいものにしたかったんです。勢いで作りたかったというか。
 
――今回の『Smoke!!』からバンドとして「EASY PUNK」という強いキーワードを全面に打ち出すようになったわけですが、この言葉はどこから出てきたんでしょう。
 
モリタ:いつだっけな…でも俺の中で、結構前から考えていて。「SURF PUNK」っていう曲を作った時から、自分たちの音楽のジャンルを“SURF PUNK”って言いたいなって思ってたんですよ。
 
アサノ:その後俺らの中でEASY ROCKってワードが出てきて、今度はスタッフからEASY PUNKってどう? みたいに言われたのかな。
 
モリタ:俺はEASY PUNKが結構しっくり来て、自分らにめちゃくちゃ合ってると思ったし、そういうものを体現したいなと。「音楽は簡単にできる、難しく考えなくていい」っていうのは、自分たちのテーマでもあるから。今バンドは特にメインストリームにめちゃくちゃテクニックの優れた人たちが集まっていて本当にリスペクトしかないんですけど、自分たちはその真逆にいていいのかなということも含めて、わかりやすく「EASY PUNK」って言えたらいいなって。
 
――今日のライブ終了直後にTwitterを見たらTENDOUJIのことを「やさしいパンクだなぁ」ってつぶやいている人がいて、EASY PUNKっていうテーマがそんなふうに伝わったのかなって思いました。
 
ヨシダ:「やさしいパンク」ってすごくいいですね。嬉しいです。
 
――「EASY PUNK」という言葉を掲げた時に歌詞はもちろん、サウンド面がすごくその言葉に影響を受けるのかなと思ったんですが、そこはどうでしょう?
 
モリタ:逆に「EASY PUNK」っていう言葉を軸に音像はバチっと決まっていて、それに合う言葉を探したっていう方が近いですね。
 
アサノ:確かに。
 
モリタ:よく俺らの音楽のジャンルを聞かれることがあって、答えるのが難しかったんですよ。でもライブがそうだからパンクではありたいなと思っていて。
 
ヨシダ:そういう質問に対しては、なんかビートルズみたいな音楽って言ってましたね。バイト先にいたマダムに聞かれた時も「ビートルズっぽい音楽です」って(笑)。
 
――(笑)!今回はその答えにもなる言葉が生まれた。
 
アサノ:そうですね。でも今後もあんまり僕らを知らない人にはビートルズって言いたいですけどね。
 
――それもすごくいい答えですけどねぇ。その「EASY PUNK」という言葉を掲げて初めて作った『Smoke!!』で、カギになるなと思えた曲はありましたか?
 
モリタ:どうだろ? ある?
 
ヨシダ: 1曲に絞れない感じはありますね。『Smoke!!』っていうアルバム全体が「EASY PUNK」っていうイメージだし。
 
モリタ:そうだよね。今回はナオユキが初めて作った曲が入っていて、やっと全員が曲を作れるようになったんです。ラクだし楽しいですよね。
 
――4人ともが曲を作れたらいいなっていう思いはずっとあった?
 
モリタ:ありました。
 
――なぜこのタイミングでおふたりが曲を作るタイミング(ヨシダが初めて制作した「MY SOFT BONES」は『MONSTER』に収録された)が来たんですか?
 
アサノ:作ったのコロナになってからだよね?
 
ヨシダ:暇すぎたから?
 
アサノ:そうだ、暇だしやれよって。
 
オオイ:メンバー内で、できあがった曲が飛び交っている時期がありましたね。
 
ヨシダ:あ、ナオユキもやってる、俺もやんなきゃ!って焦りました。
 
――ヨシダさんとオオイさんはこれまでTENDOUJIの曲を作ってきたおふたりに曲を聴かせる緊張感はなかったですか?
 
オオイ:俺は全くなかったんですよ。打ち込みの技術を得て頭の中にあるものが出せそうってなったので、それを出しただけっていう感じ。いい反応がなければそれでいいかとも思っていたし、軽く考えていました。でもヨッシーは…。
 
アサノ:ヨッシーはマジで35年分の照れがありましたよね。
 
ヨシダ:自信はなかったですね。俺も最終的にはナオユキの言う軽い気持ちにはなれたんですけど。
 
オオイ:でも「この曲にドラムつけて」とは言って来なかったよね。自分でつけてたじゃん。
 
ヨシダ:そうそう、なんとなく全部自分でやっちゃいましたね。
 
――2枚通してかなりチャレンジしたことが多かったんですね。アサノさんが作った『HELLO』も初の日本語入りの歌詞ですしね。歌詞を見ずに初めて聞いた時は日本語だと気づかなくて、てっきりオール英語で歌っているもんだと思っていました。TENDOUJIは英詞で歌うバンドっていう固定概念もありましたけど。
 
アサノ:Twitterでも「この曲、日本語で歌ってるみたいに聴こえる」って言っていた人が、その後MVを見て(MVは歌詞入り)「ホントに日本語だったんかーい」って(笑)。
 

 
――今、日本語を使ってみようと思えたのは?
 
アサノ:コロナ禍になって自分の好きなものを自分の中で整理したんですよね。ライブも何もない自粛期間の中で曲を作るなら、自分の好きなものは好きってちゃんとしておきたいなと思ったんです。自分は学生の頃からJ-POPがすごく好きで、そのノリで曲を作ってみたのが「HELLO」ですね。作ってみたらAメロだけがすごくJ-POPっぽくて英語が乗らなくなっちゃったので、日本語をはめてみようと。
 
――歌詞を見ると、英語と日本語のミックスバランスがTK的というか…。小室哲哉さんの詞を思い出しました。
 
アサノ:あ、ホントにその世代の感じにしたいと思ったっすね。
 
――日本語詞の曲を作ってみたことで、これからも意欲的に使っていこうみたいな感じですか?
 
アサノ:いや、一旦「HELLO」が限界ですね。オール日本語で書いている人たちは本当にスゴいなと思います。音のはめ方もそうだし、あんな上手い言葉で歌詞を書くって難しいですよ。
 
モリタ:ロックをやっているすべてのミュージシャンがケンジと同じことを感じてると思いますよ。そもそもの音楽のルーツ的に絶対英語の方がハマりやすいから。ちなみに俺、一度自分の曲に日本語をはめた時は身の毛がよだったんですよ。
 
――それは歌詞の意味的に?
 
モリタ:というか感覚的に? 怒髪天の増子さんが「日本語で歌うとトゲが出ないというか、エッジが出ない」って言っていたんです。だから日本語で歌うなら声が歪んでないと売れないし聴いてもらえないって。増子さんはわざと声をガラガラにして日本語もトゲのある言葉を使うって聞いて「それすげーわかる!」って。英語はそのままの発音ですでにエッジがあるんですよ。英語だと言葉はお客さんも理解していないかもしれないけど、なんとなく聞こえてくるワードに耳が反応するとか踊れるとか、そこを重視したいかな。
 
――TENDOUJIとしては踊れるとかノれるっていうことの方が大事だ、と。
 
モリタ:うん、めちゃくちゃ大事です。
 
――なるほど。いろんな葛藤や発見や成長があって無事にアルバム2枚をリリースされましたが、実感はどうですか?
 
モリタ:本当に最近思ったんですけど、2枚出すのに2年かかってるんですよ。2年かけて30分のものを2枚作るってヤバくないですか? この作業。
 
ヨシダ:時間かけた感じあるよね。
 
モリタ:すごくないですか? 2年ですよ!? すごい儚いなと。
 
――儚い?
 
モリタ:儚くないですか? 2年かけて30分と27分のアルバム2枚ですよ? でもなんか、音楽ってそういうものなんだなって改めて思って。むしろそうあるべきというか。それを苦労とも産みの苦しみとも思っていなくて、無我夢中でやって30分のものができるってめちゃくちゃ面白いと思ったんです。これは一体なんなんだ、なんて生産性のない作業! とも思ったし、だから好きだ! とも思いました。俺は『Smoke!!』がすごく好きだし、単純にいろんな人に聴いてもらいたいなって思ってるんです。まだ自分たちを知ってもらっていないだけで、わかってもらえるんじゃないか。伝わる気がするって。
 
――これまでたくさんの曲をリリースしてきたけれど、とにかくまず『Smoke!!』を聴いてもらえたら、TENDOUJIをわかってもらえると。
 
モリタ:そう思いますね。
 
――それはEASY PUNKというテーマに辿り着いたからですか?
 
ヨシダ:要因としては大いにありますよね。それもあったうえで、一番刺さりやすくて染み込みやすいアルバムができたと思います。
 
――リリース後の対バンツアーはすでに始まっていて、2月の大阪公演はワンマンになりますが、何かこういうことしようかなみたいなイメージはありますか?
 
モリタ:とにかくライブに来られるってもう普通のことじゃなくなっているなと思っていて、来てくれる人に感謝しつつ1回1回今日死んでもいいやと思えるぐらい死ぬ気でやりたいなと思います。
 
――確かにライブに行くことが貴重なものであることは、この2年で身に染みました。そのワンマンの告知ビジュアルには「カンタンに遊ぼ。」っていうパワーワードが添えられていますが、あのコピーの意図は…?

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ヨシダ:あれは、昔の広告みたいになんかキャッチコピーをつけたいなと。
 
モリタ:フライヤーを作ってる時に何かコピー入れたいなと思って、ふと90年代の雑誌とか引っ張り出して考えて。もう、意味は言葉のままです。カンタンに遊べたらいいじゃないですか。チケットも安くして、お互い損せず、ノーリスクで着地することを考えつつ気軽に来てほしいなって思ってますね。こういう状況の中でもとにかくカンタンに遊びたい、それだけです。待ってます。

取材・文:桃井麻依子



(2022年1月24日更新)


Check

Release

3rd Album『Smoke!!』
発売中 2500円
浅野企画
ASNP-010

《収録曲》
01. Boys
02. Stupid!!
03. Feelin’
04. Young Love
05. BANANA HIGHWAY
06. VITAMIN
07. Blur blur
08. HELLO
09. SURFPUNK
10. I don’t need another life

Profile

てんどうじ…2014年、中学の同級生だったモリタナオヒコ(Vo・Gt)、アサノケンジ(Vo・Gt)、ヨシダタカマサ(Ba)、オオイナオユキ(Dr) により結成し、翌年には自主レーベル「浅野企画」を設立。類まれなメロディーセンスと90年代のオルタナシーンに影響を受けた爆発力あるサウンドを武器に、さまざまな音楽フェス・イベントなどに出演。中でも2018年のアメリカ最大級のフェス『SXSW』への出演や2019年にTeenage Fanclubの来日公演のサポートアクトを務めたことが話題となった。2020年は積極的にシングルリリースを重ね、2021年にアルバム2枚のリリースを発表。4年ぶり2枚目となるアルバム『MONSTER』を4月にリリースし、12月に3枚目のアルバム『Smoke!!』をリリース。2022年1月下旬よりリリースツアーが本格化する。

TENDOUJI オフィシャルサイト
https://thetendouji.com/


Live

EASY PUNK PARK on Smoke!!

【北海道公演】
▼1月22日(土) BESSIE HALL
[共演]YOU SAID SOMETHING

【愛知公演】
▼1月28日(金) 名古屋クラブクアトロ
[共演]Hump Back

【宮城公演】
▼1月30日(日) 仙台Rensa
[共演]ドミコ

【福岡公演】
▼2月18日(金) Fukuoka BEAT STATION
[出演]No Buses

Pick Up!!

【大阪公演】※ワンマン

チケット発売中 Pコード208-029
▼2月20日(日) 18:00
BIGCAT
自由-3800円(整理番号付、ドリンク代別途要)
※4歳以上は有料。本公演は新型コロナウイルス感染拡大予防ガイドラインに沿って実施いたします。
※販売期間中は、インターネット(PC・スマートフォン)のみで販売。1人4枚まで。チケットは、2/13(日)15:00以降に引換えが可能となります。
[問]GREENS■06-6882-1224

【東京公演】※ワンマン
▼2月25日(金) LIQUIDROOM

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