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「今、歌いたいから失恋の曲を歌おうと思えた」
生活=恋愛をテーマに4曲の失恋ソングを完成させた
reGretGirl 平部雅洋(Vo./Gt.)インタビュー

平部雅洋 (Vo./Gt.) 、十九川宗裕 (Ba.)、 前田将司 (Dr.)による大阪出身のロックバンドreGretGirl。平部がバンド結成当時の彼女に振られた際「いつか有名になってフッたことを後悔させてやる」と思ったのがバンド名の由来というエピソードもかなり強めだが、失恋や恋愛中に感じる悲しみ・切なさも偽りのない素直な言葉で歌い、10代〜20代の若い世代を中心に広く支持されてきた。そんな彼らが2021年1月に初のフルアルバム『カーテンコール』で華々しくメジャーデビューを飾ってから1年弱。メジャーシーンへ進出後2枚目となるEP『生活e.p.』がリリースとなる。reGretGirlの真骨頂でもある失恋ソングしばりを緩めた『カーテンコール』から一転、再び失恋のみに焦点を当てた4曲を収録する意欲作となった。今回はreGretGirlの全楽曲の作詞・作曲を手がける平部雅洋にインタビューを敢行。『生活e.p.』に込めた想いについて語ってもらった。

生活と恋愛は、表裏一体のもの

 
――2021年が終わろうとしていますが、今年1月にメジャーデビューをされて、バンドとして個人としてどういう1年でしたか?
 
今年メジャーデビューはできましたが、引き続きコロナの影響を受けて思い通りの活動はできなくて…。悔しい1年になった印象は強いですね。メジャーデビューしてこれからやっていくぞ! っていう気合いはもちろんありましたけど、実感はなかなか…。今年もライブが中止になったり楽曲制作のスケジュールが後ろに倒れたり、ままならないことの方が多かったですかね。
 
――ままならない時期があったことによって得られたこともありましたか。
 
そうですね。家にいる時間が増えたので実はピアノの練習を始めまして。元々は全く弾けなかったんですけど、練習を重ねたおかげでかなり弾けるようになってきました。それが曲作りに生きてきていますね。
 
――なぜ数ある楽器の中からピアノを?
 
実は僕、中学・高校ぐらいから「ピアノを習っておけばよかった」って後悔し続けていたんです。中学は吹奏楽部だったんですけど、パーカッション担当で譜面が読めなくてもなんとかなっていたんです。でも吹奏楽部に入った時もそれが軽音楽に変わってからも、どこかでちゃんとピアノを習っていたらよかった…っていう思いはありました。あと、ピアノが弾けたらかっこいいっていう憧れもありました。モテたやろなって。
 
――なるほど(笑)! 
 
この1〜2年でじっくりピアノを練習して、上達を感じられたことでバンドとしての幅も広がったので取り組んでよかったですね。
 
――今日は年末にリリースする『生活e.p.』についてお話を伺っていきたいのですが、発売日が12月29日。ご自身にとってもバンドにとっても特別にメモリアルな日(平部自身の誕生日でもあり、reGretGirlの代表曲「12月29日」もファンから絶大な人気を誇っている)にリリースを決めましたね。
 
そうですね。僕自身「誕生日をみんなに祝ってほしい!」っていうわけでもなかったんですけど(笑)、2021年のリリースの日を決めていた時に「12月29日」っていう曲を出しているくらいだし、それもみんなが知ってくれている曲だし、このタイミングで新曲を出すのは意味があるなということになったんです。今回の作品のテーマが「生活」なので、生活の一部でもある僕の誕生日に出すのもいいなぁって。でもリリース日に関しては、僕よりもスタッフの方が「この日にした方がええんちゃうか?」ってノリ気でしたね。
 
――EPのリリースが決まって、制作はどのように進んでいったのでしょうか。
 
EPは4〜5曲の少ない曲で構成しないといけないこともあって、テーマがある方がいいかなと思いました。そこで最初に思い浮かんだのが「生活」という言葉。今回収録している「シャンプー」という曲が、元々デモ曲として手元にあったんですね。そろそろこの曲を世に出したいなと考えていた時にコンセプチュアルなEPを出すことになったので、「シャンプー」からインスパイアされる形で「生活」という言葉が思い浮かんだんだと思います。1月に11曲入りのアルバムを出した時は、初めてのアルバム制作でもあったのでテーマは決めずに「やりたいことをやろう、今reGretGirlが全力を出せる楽曲を収録しよう」っていう感じだったんです。
 
――テーマありきというよりは曲ありき、と。
 
そうですね。単体として成り立つ曲を集めた作品という感じでした。でも今回はテーマに基づいた曲作りをしました。
 
――今このタイミングで「シャンプー」という曲が自分の中でカギになったのはどうしてだったと思いますか?
 
今回は「生活」をテーマにしたと謳っていますが、僕は昔から実体験を書くことが多いので、生活に密着した曲作りをしている意識はずっとありました。その中で生まれたのが「シャンプー」で、ついにタイミングが来たぞと。前のアルバムの『カーテンコール』には失恋の曲だけでなくいろんな題材の曲を収録したんですけど、ここで改めて僕らの武器である失恋をフィーチャーすることで「シャンプー」という曲も生活っていうテーマも自然とハマるなと思いました。
 
――今一度自分たちの持ち味でもある失恋の曲に絞った作品を作ると決意できたのは、前のアルバムを制作した中で気づけたこととかがあったんでしょうか。
 
僕的に今回は「もう1回失恋の曲をやり直すぞ」みたいな感覚ではなくて…自分の歌いたいことを歌える環境に今いるので、コンセプチュアルな作品を作ろうと思ったら「歌いたいから失恋の曲を歌おう」みたいな感じでしたね。
 
――『生活e.p.』の資料には、作品のテーマが「生活=恋愛」っていうことがドーンと書かれているのですが、平部さん的にも普段から「生活=恋愛」って思っています?
 
うん、思っていますね。生活と恋愛は表裏一体だなっていつも思っています。絶対に生活のうえに成り立つのが恋愛だし、恋愛に振り回されるのが生活だなって。
 
――…確かに!
 
そうなんですよ。だからこそ生活と恋愛の切っても切れない関係を作品にしたいと思いました。
 
――恋愛が生活に振り回されたり、生活が恋愛に振り回されるということを、平部さん自身は楽しめる方ですか?
 
いや〜…どうなんやろう………。あぁ、でも後々曲にしちゃうぐらいなので振り回されることは得意ではないと思っているのかな…。振り回されている時はわからへんけど、僕はいろいろ引きずるタイプでもあるので…。僕、失恋の曲を何年も書き続けてきているので、もちろん経験を元に書いているんですね。ただ今回は大きな出来事があって衝動的に書いたというよりは、ちょっと俯瞰して冷静な頭で振り返るみたいな部分は結構ありましたね。
 
――年齢を重ねると失恋観に変化もあるのでは…とも思うんです。20代前半の失恋の受け止め方と20代後半の受け止め方は違ってくる気がするというか。『生活e.p.』の4曲でいうと、何か自分自身の失恋観に変化は見えましたか。
 
新たな気持ちで失恋の曲に取り組んで「あぁ、自分も大人になったな」とは感じました。昔の曲は衝動的に悲恋を書きたくるみたいなところがあったんですけど、今回は一歩引いて「感傷に浸る」みたいなニュアンスに変わってきたのかな。
 
――それは自分が恋愛でさまざまなことを経験して。
 
そうですね。1回目の失恋と3回目の失恋では少し違うと思うんです。慣れるというとアレですけど、自分も大人になってくるし。大人になればなるほど、生活や環境が変わればお互いに好きでも一緒にいられないとか…僕も経験を積んだのかなと思います。
 
――でも失恋の歌は歌詞がハッピーなものではないだけに、メロディーやアレンジとの兼ね合いってすごく難しいのかなと思うのですが、今回の4曲に対してサウンド面で意識したことはありましたか?
 
そこはバンドの初期の頃から一貫していることですが、歌詞の世界観と曲をそこまですり合わせなくていいと思っていて。2017年に出した「ホワイトアウト」という曲は、歌詞の内容は重いのに、曲はアップテンポでキャッチーなんですね。そういうバランスがreGretGirlの持ち味としてあるとは思っていますけど、わざわざバランスを意識しないことで起こる化学反応が楽しかったりします。
 
――『生活e.p.』でいうと、「ロードイン」が「ホワイトアウト」のバランスに近い曲ですよね。
 
うん、そうですね。
 
――だからこそリード曲は「ロードイン」なのかなと思っていたんですけど、意外にもEPからの先行配信&OAプッシュ曲になったのは歌詞もメロディー的にも王道的失恋ソングの「オールディーズ」でした。
 
今回「オールディーズ」を推すことにしたのは、僕の中でシンプルに自信があるからかもしれないです。「オールディーズ」という曲ができたことで、今までのreGretGirlと新しいreGretGirlがグッと噛み合った感覚があったという感じでした。
 
――自信がある「オールディーズ」という曲をプッシュする一方で、ジャケットや曲のタイトルなども含めて「ロードイン」(平部自身の地元である大阪・和泉府中駅前商店街「ロードインいずみ」)が大フィーチャーされましたね。
 
あはは! そうですね。生活をテーマにした段階で、僕がずっと生活を送っていたのが地元の和泉市だし「イズミフチュウ」っていう曲もリリースしていますし、今回改めて一番コテコテのものにしようっていう思いもあって。でもこの商店街、映えるロケーションでもあるでしょう? めっちゃ和泉市推しです。
 
――ちなみに「ロードインいずみ」での恋の思い出ってありますか?
 
「ロードイン」の歌詞にも書いているんですけど、昔付き合っていた人と、商店街の中にある居酒屋で初めて会って仲良くなってって、思い入れはかなりありますね。
 
――やっぱり恋も生まれているんですね。
 
そうですね。ずっと地元で暮らしているとありますよね。
 
 
 
平部雅洋と恋愛と〇〇

 
――今回『生活e.p.』の収録曲の歌詞から見えてきたキーワードから、平部さんが連想するイメージや言葉を伺って、もう少し平部さんの恋愛の捉え方やものの見方に迫っていけたらと思っています。キーワードを聞いて思いつくことをお答えいただけると嬉しいです。
 
わかりました!
 
「恋愛と酒」
――「ロードイン」の歌詞にもガリチューハイとかワインバーとかアルコールにまつわるワードが使われています。
 
結構これは大人の悪い癖だなと思いますが、アルコールが入っていないと本音を言えなくなってきたなと思います。いいことも悪いことも。恋人と喧嘩する時にどちらも酔っ払っているとか。アルコールに依存しているんだな大人は、って思います(笑)。
 
「恋愛と手」
――手をつなぐ、手を離すなど、「手」という言葉を使う場面も多いのかなと思うのですが…。
 
本当に手をつなぐって、日本は特にカップルでしかしかない行為かなぁと思うんです。特に男女で手をつなぐとなるとですけど。僕は女友達とも男友達とも手をつなぐことはないですし…。歌詞を書くにあたって、手をつなぐ・手を離すっていうことは日本語で歌ううえで男女の関係を表すことができるいい言葉だなと思っています。
 
「恋愛と香り」
――今回「シャンプー」の曲の中でも、香りがキーワードになっていますよね。
 
失恋をすると五感で呼び覚まされることって結構あると思うんですよ。匂い…人間の鼻ってすごく敏感で、記憶と嗅覚って結びついているなと思うことがたくさんあります。全然知らない女性が通り過ぎた時に香水が香って「昔の彼女と同じ香りだ」とか、昔一緒に行った場所に行くと、そこの香りは全く変わっていなかったとか。嗅覚から入ってくる昔の恋はたくさんあるなと思いますね。香りって昔を懐かしむ時にはよく使われますよね。哀愁漂う感じはありますよね。
 
「恋愛と日用品」
――EPの中にもドライヤー、シャンプー、コンタクトなど生活必需品が効果的に登場しています。
 
長いこと付き合っていくと、一緒に住む住まないを関係なしにして自分が使わないはずのものって気づけば増えていくと思うんです。恋愛をするうえにおいて、そういうアイテムは別れてから切ないものに変わってしまうんですよ。だからこそ歌詞に使うことは多いですね。モノにも記憶があるので。不思議ですよね。
 
――その他にも作詞をする時に気にかけているキーワードみたいなものはありますか?
 
なんでしょう…そういうの、やり尽くしていますね。僕ぐらい失恋の曲を書き尽くしていると、元カノ連想ゲーム的なものは常にやっていますから(笑)。空の助手席、髪型、ファッションとか無限にありますよね。ホント、無限に思い出せます。
 
――僕ぐらい失恋の曲を書き尽くしているとおっしゃいましたが、恋愛のハッピーソングを書きたい気持ちになったりしますか?
 
前のアルバムで1曲書いたきりですね。失恋名人ですけど、僕にも幸せな時がちゃんとありますから書きたい気持ちにもなります!
 
――だって平部さんの失恋の数だけ幸せもあるっていうことですもんね。
 
そうそうそう! でも今後また歌えたらなと思いますね。でも僕は書いてきた数が圧倒的に多いこともあって、失恋の歌の方が書くのは得意だなと思っています。
 
 
 
リリースツアーへシフトしていくライブ後半戦

 
――『生活e.p.』を通して、伝えたいこと・伝わってほしいことはありますか?
 
改めてreGretGirlの最大の武器でもある失恋を歌っているので、これをきっかけに僕たちを知ってもらうのにもとてもいい一枚になったなと思っています。生活って全ての人にあるもので、またそこにある恋愛に関して「あぁ、自分にもこんなことがあったな」って重ねてもらえたら嬉しいですね。
 
――12月以降冬の時期って、クリスマス、お正月、バレンタイン、ホワイトデーって結構恋愛のシーズンみたいなところもありますから、失恋の曲が身に染みる人も、心の支えになる人もいっぱいいるかもしれません。
 
そうですよね。寒いと人恋しくなったりもしますしね。今回ピアノで曲を作ることができたので、今までと違うニュアンスのものにできたなっていう実感もあるんです。ギターで曲を作ってきた時とは違う引き出しを開けたと言いますか。それが「オールディーズ」で。
 
――自信があるとおっしゃっていましたもんね。
 
はい。
 
――ピアノを使うようになったことで、ライブにも何か変化は起こりそうですか?
 
今はまだライブはギターで進めていますけど、今後はピアノを弾きながら歌う曲も増えてくるかなと思います。バンドとしてライブの幅も広がるので。
 
――今実際にライブツアーが始まっていて10本近く終えたところですが、手応えはどうでしたか?
 
2年ぶりのツアーなんですが、久々にライブをしにいろんな街に行けて、そこに待ってくれている人がたくさんいたのが嬉しかったです。ライブをやるごとに毎回ジンときちゃうんですよ。お客さんがいてくれるライブができて、本当に嬉しいなって思います。無観客ライブを何回かやりましたけど…有観客ライブのよさをヒシヒシと感じています。
 
――年が開ければツアーの残り3本がスタートしますね。
 
はい。ツアーとツアーの間に『生活e.p.』のリリースを挟むので、残りの3本はリリースツアー色がグッと濃くなります。ツアーの前半は、EPからは1曲ぐらいしか演奏していなかったんですけど、後半はガッツリやります。
 
――すごく楽しみです。そんな新しい年2022年にやっていきたいこと、叶えたいことはありますか?
 
2021年はせっかくメジャーデビューをしたのに、年末までリリースができなくて…2022年は新しい曲をどんどん届けていけたらいいなと思います。取り戻す感覚ではないですけど、もっと思ったように動いていけたら嬉しいですね。

Text by 桃井麻依子



(2022年1月 6日更新)


Check

Release

Major 1st EP『生活e.p.』
発売中
日本コロムビア

【完全限定生産盤】
(CD+オリジナルTシャツ)
3850円(税込)
COCP-41654

《収録曲》
01. ロードイン
02. シャンプー
03. LDK
04. オールディーズ

Profile

リグレットガール…平部雅洋(Vo./Gt.)、十九川宗裕(Ba.)、 前田将司(Dr.)からなる大阪出身の3ピースセンチメンタルギターロックバンド。 切なく誰もが一度は経験したことがあるであろう等身大の歌詞と、キャッチ―なメロディーが若い世代から絶大な支持を得ている。2017年12月に初の全国流通盤『my』をリリースし、その収録曲「ホワイトアウト」のMVが2700万回再生(2021年12月現在)を突破。2019年9月に3rd Mini Album『soon』をリリース後、全国13カ所を巡るリリースワンマンツアー「coming soonツアー」が全公演ソールドアウトしたことでも話題に。2020年にTOKYO MX系のドラマ『片恋グルメ日記』のオープニング主題歌に「pudding」が抜擢され、2021年に満を持して1st Full Album『カーテンコール』にてメジャーデビューを果たした。

reGreatGirl オフィシャルサイト
https://www.regretgirl.com/


Live

reGretGirl 忘れたくないワンマンツアー “Life goes on”

Pick Up!!

【大阪公演】

チケット発売中 Pコード:205-463
▼1月9日(日) 17:30
なんばHatch
指定席-4000円(ドリンク代別途要)
※3歳以上はチケット必要。
※【1/6(木)10:00より販売再開】販売期間中はインターネット(PC・スマートフォン)でのみ販売。1人2枚まで。2枚購入の場合はお席が大きく離れてしまうこともございますので、購入内容確認画面で席番をご確認の上ご購入ください。
[問]キョードーインフォメーション■0570-200-888

【愛知公演】
▼1月10日(月・祝) 17:30
ダイアモンドホール

【東京公演】
▼1月27日(木) 19:00
Spotify O-EAST

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