“自分が信じる素晴らしい音楽を
素晴らしいと受け取ってもらえるライブに”
12/6(月)・7(火)に大阪・Zepp Nambaで半年ぶりのライブを開催
XIIX 斎藤宏介インタビュー&動画コメント
斎藤宏介(vo&g/UNISON SQUARE GARDEN)と、aikoや米津玄師などのライブサポートをつとめる須藤優(b)によって結成されたバンドXIIX。2020年1月に1stアルバム『White White』でデビューし、2021年2月には2ndアルバム『USELESS』を、5月1日にはアニメ『ドラゴンクエスト ダイの大冒険』EDテーマ『アカシ』を配信リリースした。今年は6月に東名阪で行なったツアー『XIIX LIVE TOUR「USELESS」』を経て、12月6日(月)・7日(火)に大阪・Zepp Nambaで『XIIX LIVE TOUR「USELESS+」』が行われる。今回は斎藤にライブに特化した話を語ってもらった。コロナ禍でのライブ、今だから思う音楽の重要性、そして今回のツアーについて。斎藤の正直な気持ちに触れて、ぜひライブに足を運んでほしい。
ライブじゃないとちゃんと満たされない人達がいる
――XIIXは2020年1月にデビューされて、その後コロナがきてしまい、2020年はなかなかライブができない状況だったと思います。コロナでライブがなくなって感じたことはありますか?
「やっぱり思ったのは、ライブをやることで自分を保てた部分って結構大きいんだなということと、同時にお客さん側の目線に立ってみても、ライブじゃないとちゃんと満たされない人達が少なからずいるんだなとすごく強く思ったところはあって。その中で、なんとかいろんな協力を得ながらでもライブを続けたいなと思っていましたね。僕は本当にライブがやりたくてバンドを始めたので、ライブがないと困るというのは、できなくなってから気付きました」
――コロナ禍では配信ライブも増えてきました。XIIXも配信ライブをされていましたが、配信とリアルの違いは何かありますか?
「配信とリアルは全く一緒で、“良い音楽をするだけ”という人もいるんですけど、僕は全く逆で、全然別物だと思っていて。有観客のライブが僕は好きです。ただ、有観客ライブが良いとは言っても、どうしてもライブに行きたいのにコロナが不安で行けないとか、親から“今はやめときなさい”と言われてるとか、いろんな事情で来れない人がいる。あとこちらの事情で頻繁に全国各地でライブが出来なくて、“自分の街になかなか来てくれないな”という人が簡単に手を伸ばせるという意味で、配信ライブはすごく助かってるというか、それはそれで面白いものだなとは思います」
――配信ライブで演奏される時に思うことなどありますか。
「最近思うのは、皆が配信ライブを始めて、目新しさみたいなところがないと、なかなか食いついてもらえない状況になっている中で、音楽的なことよりも優先すべきことが増えてきてしまっていること。歌いやすさを捨ててでも何かをしなきゃいけない、みたいなシチュエーションが出た時に、配信ライブだからと割り切って演奏することは、配信ライブを見てくれてる人のことを思えば全然アリなんですけど、僕としては、より良い音楽を届けることに集中したいと思いますね」
――なるほど。ライブは目の前にいるお客さんとの熱量のキャッチボールですもんね。有観客ライブも徐々に復活してきましたが、コロナ禍でのライブを重ねてこられていかがですか。
「UNISON SQUARE GARDENの方でも今年たくさんライブをやって、今は今年4本目のツアーを回っている(現在『TOUR 2021-2022 Patrick Vegee』を開催中)ので、それで思っているのは、回数を重ねることで自分もお客さんも良い意味で慣れていく部分はすごく大きいなと。去年の4月~5月、一番ライブも何もできない時期を経て最初にライブをした時は、本当に入場しただけで泣いてるお客さんがいたりして、自分たちも久しぶりにライブができてすごく嬉しかったし、感動もしたんですけど、“これはちょっと変だな”という感覚がずっとあって。今から1時間半~2時間、楽しい音楽を鳴らして帰るのに、始まる前から何かこれまでとは違う雰囲気だな、みたいなのがあったんですけど、ライブを繰り返すとだんだん自分たちの楽しみ方も分かってくるし、その雰囲気がお客さんにも伝わっていって。マスクをしてるとか、声を出せないという要素を背負っていることを感じなくなってきて、皆マスクをしてても普通に笑ってるのが分かるし、汗だくなのも分かるし。声を出さなくても生まれる一体感が、見た瞬間分かるぐらい、はっきりとある。だからコロナ禍のライブで感じる大事なことは、やっぱり続けていくこと。もちろん周りの協力なくしてはできないことですけど、回数を重ねることが大事だと思いました」
音源を再現した上ではみ出す、壊す
――XIIXとUNISON SQUARE GARDENのライブの違いを挙げるとしたら何ですか。
「“自分で良いと思ってる音楽を自分が作って、それを良く届けよう”という根っこは一緒です。XIIXは同期を流すことが前提の音楽で、 “この音でないといけない理由”がすごくある楽曲たちが多い。だから音源の再現性を大事にしています。ただ、それだけだと大きい音でCD流してるのと変わらないので、そこを最低限クリアした上でのライブ感というところで、どうやってはみ出していったらいいかなと考えながらやってる感じですかね」
――SKY-HIさんとのJ-WAVEの対談を拝見したのですが、“次のツアーは音源を再現して壊す”とおっしゃっていました。具体的にどういうことですか。
「分かりやすいところで言うと、音源ではギターが常に3本とか鳴ってるところをライブでは1本でやりくりする。それにより“生である”ことを感じてもらうこと、あとは歌のニュアンスや譜割についても、正解は既にCDで出してはいるんだけれども、そこから衝動的にはみ出したくなった時に、できるだけ素直にそっち側にいける準備はしたいなという意味で、今回のツアーでは音源の再現性とライブならではの楽しみを良いバランスで作りたいなと思ってます」
――6月にも『USELESS』ツアーを東名阪でされていますが、その時とは違うアプローチを?
「具体的なことでいえば、6月よりも音を間引こうと思っています。その代わりにステージの上で生で出してる音の比重を増やすことで、ライブ感に繋がったらいいなと思ってますね」
――XIIXは音源通りのライブという評価をされますが、今回は生っぽさも感じられるライブになると。
「そうですね……演者としては、自分の感覚と受け取られ方の間隔の差みたいなものは埋めなきゃなとは思ってて。ありがたいことに、よく歌の褒め言葉として、“口から音源”とか“口からCD”みたいなことを言っていただくことが多いんですけど、自分の中では結構違和感でしかなくて。毎回CDと違う、ライブならではの演奏をやっているつもりで、ライブでしか歌っていない歌が自分の中には確かにあるのに、そう言われてしまうということは、僕の歌はいまいち届いてないのかなと。そう思うと、もうちょっと伝わることに対しての道を整理してやるというか、受け取られ方と演者の感覚をできるだけ近いものにしたいので、できるだけシンプルにしていこうかなというのが今回のツアーですね」
――それはライブを経て感じてきたことですか?
「そうですね」
――演出面など、ライブの構想はもう決まっているんですか。
「多分演出らしい演出はないかなとは思います。まだXIIXとしてワンマンライブをしっかり回数重ねたわけではないんですけど、できるだけ客席を巻き込めるような参加型のライブにはしたいなと思っていて。そのためにはどうしても音のアプローチになってくるんですけど、照明とかでも実現できるのかなと思っています。最近そんな会議をしたところですね」
――今斎藤さんが思う、音楽の重要性や可能性は、どういうところだと思われますか?
「僕自身がそうだからすごく思うんですけど、音楽“も”好きな人じゃなくて、音楽“が”好きな人ってやっぱりいて。冒頭でも言ったんですけど、心の隙間を他で埋め合わせができなかったという人は少なくない人数いると思っていて。だけど、そういう人が未だにライブに来れていない現状が、目に見えないところにあるとは思うんです。その人がいつでもふらっと戻ってこれるように、自分たちはライブを続けていきたいですね」
――いよいよ12月6日・7日、Zepp Nambaでライブです。ツアー日程の中で大阪だけ2daysというのが嬉しいですね。
「もう、信用するイベンターさんにお任せしています」
――最後にライブの意気込みや、アピールをお願いします。
「アピール、難しいですね(笑)。僕自身はこの上なく良い音楽を作って、奏でて、歌うということをしているつもりなので、それこそさっき言った演者と受け手の差じゃないですけど、自分が信じる素晴らしい音楽を、素晴らしいと受け取ってもらえるためのライブになったらいいなと思っています。XIIXの強みは演奏が良いところだと思うので、一緒にグルーヴを感じてもらえるような雰囲気作りをしたいですね」
――ちなみにユニゾンとXIIXのライブの切り替えはどうされてるんですか?ステージに立ったらそれぞれのモードに自動的になるものなんでしょうか。
「いや、なんないです。練習あるのみです(笑)」
Text by ERI KUBOTA
(2021年12月 1日更新)
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