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4枚目のソロアルバム『OVERHEAT 49』に込められた想いとは――
MO’SOME TONEBENDERの百々和宏(vo&g)インタビュー

MO’SOME TONEBENDERの百々和宏(vo&g)が4作目となるソロアルバムを完成させた。『OVERHEAT 49』と題されたこの作品には、バンドとは一味も二味も違う、ロックミュージシャン・百々和宏の日常に根差した風景が広がっている。どうして歌い続けるのか、で、歌い続けた挙句どこへ向かうのか――この作品の中に答えが示されているわけではないが、それよりも大切なことが含まれている。それはきっと、わからないままそれでも進むという、現在の状況にも通じるアティテュードだ。アルバム収録全10曲を本人と一緒に辿るドライヴへ。

――タイトルがイカしています。
 
百々:ありがとうございます(笑)。
 
――まず、我々同い年ですけど、49イヤーズ・オールドなんだーってことに改めて驚かされ、そしてそれを堂々とタイトルにしてしまう潔さに感服しました。
 
百々:でも、全然ひよっこだなって思わされるけどね。だって、鮎川誠さんは73歳だけど、バリバリ現役だからね。
 
――そうですね。じゃあ我々が二十代半ばくらいの頃に、鮎川さんはちょうど49歳くらいだったのか。そう考えたらまだまだ先は長いね(笑)。
 
百々:そうそう。いまだに俺が最年少の現場ってまだあるからね。このあいだ松坂大輔が引退して話題になってたけど、ロックは誰も引退しないから(笑)。だからまあ、いい稼業だなと思いますよ。
 
――今作でソロアルバムも4枚目となるわけですけど、今回は自身のレーベル「FUZZY PEACH」を立ち上げて、そこから制作も何もかもDIYで行っているというのが最大の変化ですよね。これは、以前からこういう形でやりたいなということを思っていたんですか?
 
百々:ふんわりとは思ってたんだけど、どうしてもめんどくさいが先に立って、なかなか踏ん切りがつけられなかったんですよ。それに、周りの環境に別に不満があるということでもなかったし。でも、特に世の中がコロナになってからだね、真面目に自分のやり方を考えなきゃなって気持ちが強くなってきたのは。
 
――それはもう、音楽的なことというよりも、生き方として、ということですかね?
 
百々:うん。生き方も込みって感じですね。さっきまだまだひよっこだって言ったけど、でも世間的に考えたら49歳は結構なもんだし(笑)、どうしたって残りの人生を考えるでしょ?
 
――すごくわかります(笑)。そして、もうこのまま突っ走っていくしかないのかな、とも思ったり。
 
百々:いや、そうなのよ。いい意味での割り切りというかね。俺はこれでやっていくしかないわっていう。もうやることってさ、基本変わんないわけですよ。曲を作って作品を出してライブやるっていうのは。それ以外に何もないんだよね、困ったことに(笑)。
 
――音楽と生き方がどんどん密接になっている。
 
百々:そうそう。特にソロでやる場合はね。モーサムをやってると、ちょっと非日常というか、実生活が入り込んでくる余地があんまりない感じではあるんですよね。特にライブの現場はね。いかにエクストリームにやり切るか、というテーマがあるので。でもソロはもう自分自身以外ないので、何と言うか、恥ずかしげもなくなってくるというか(笑)。もういいや、素っ裸でって。そう考えるとね、一方でバンドがあるってデカイですよ。もしモーサムを解散してたらソロをこんな感じでやることはなかっただろうなって思うしね。
 
――帰る場所みたいな感覚があるんですか? モーサムには。
 
百々:うん。何て言うんだろ……一応、MO'SOME TONEBENDERっていう看板があるわけじゃないですか。そんなに立派なものかどうかはわからないけど、でもそれがある上でソロをやるっていうのが前提としてあるから。だからソロは酒場で飲みながらワイワイやるのがちょうどいいくらいだなって振り切れるんですよね。
 
――せっかくなので、アルバム収録曲についてアタマから1曲ずつ訊いていきたいと思います。1曲目「鬼退治」から。資料のセルフライナーノーツによると、前回のソロアルバム『スカイ イズ ブルー』(2016年)に収録しようと思ったけど入れられなかった、とありますが理由は?
 
百々:単純に時間が足りなかった。歌入りのデモまで作ってたんだけど、スタジオでは録ってなくて。前作はエンジニアが中村宗一郎さん(PEACE MUSIC)だったんだけど、とにかく中村さんが忙しくて。というのもあって、曲のタイプ的にこだわりたい感じのものだったし、ちょっと無理かなって諦めた。で、今回アルバムをほぼほぼ録り終わった段階で、そう言えばあの曲あるぞって思い出したんですよ。ただレコーディング・スタジオの録りは終わっちゃってたから、デモに肉付けしていっただけなんだよね。
 
――あ、そうなんだ。そこに歌詞を新たに書いて、ボーカルを入れ直したんだ。
 
百々:そう。
 
――このアルバムはわりとハッキリしたコンセプトがあると思うんですけど、そこが見えてくる中でこの曲の存在というのが浮き彫りになっていったという感じなですかね?
 
百々:まあ、このアルバムに限っての話じゃないかもしれないけど、ソロ作品に関しては、生活と地続きの音楽というか。で、特に今回はここ2年くらいの自分というものが色濃く出ていると思ったので、その序章としてこの曲を入れるのはいいんじゃないかなって思ったんですよね。
 
――この曲を聴きながら感じたのは――歌詞の内容に引っ張られているとは思うんですけど――この人はやっぱりバンドマンであることからは離れられないんじゃないかなっていうことなんですよね。鬼退治には猿と犬とキジという仲間が必要なわけだし。そう考えていくと、このアルバムはいろんな仲間たちが参加しているじゃないですか。モーサムのメンバーをはじめ、ミュージシャン仲間たちが。
 
百々:ああ、そうだね。今回特にそうだったんですけど、一人でやろうとして始めたんだけど全然楽しくならなくて。つまんねーなーって(笑)。今思えば、完全にコロナの空気感にやられてたんだよね。いまひとつ自分に確信が持てないというか。本当はもっと早くリリースしようと思ってたんだけど、コロナで考え込んじゃって。まあ、考える時間もたくさんあったから。ちょっとダウナーというか。みんなそうだったと思うんだけど。あの期間を経て、よっしゃやるぞ!っていうところのアルバムという感じが強いですね。
 
――だから「鬼退治」の鬼が明確じゃないんですよね。どこかモヤっとしてるというか。もしかしたら20代や30代だったら、敵、みたいな形で鬼は現れてたのかもしれないけど、今はそうじゃなくて、そんなのがいるかどうかはわからないけど、とりあえず歩いて行ってみるしかねーじゃんっていう腹の括り方ですよね。
 
百々:そうだね。まあ何を鬼とするかは人ぞれぞれなんでしょうけど、でも確かに見えづらいものになっているのかもしれない。で、それがみんなの感じてる“生きづらさ”の正体なのかもしれないし。
 
――2曲目「ロックンロールハート(ア・ゴーゴー)」。ソロアルバムには必ず入る「ロックンロールハート」シリーズですね。このシリーズは、百々くんのより個人的な記憶みたいなものが滲みやすいのが特徴なんですけど、今回は直接的に具体的な記憶や思い出を歌っているわけではなく、曲調も初期パンクの勢いそのままという感じで。でも、だからこそ誰もが思春期の頃に初めてロックに触れた時の感情に戻れる、まるで中学の時の友達の部屋みたいな曲だなって勝手に思いました。
 
百々:ははは。このシリーズって、確かに自分がロックを始めた時の感覚を曲にしてるから、その捉え方というか感じ方は、まさしくそんな感じですね。昔って新しいアルバムを買ったら友達の部屋に集まって一緒に聴いてたもんね(笑)。
 
――ジャンルは偏って申し訳ないけど、「BURRN!」のレコ評の点数を見て、来月買うレコードのドラフト会議を真剣にしてたもんね(笑)。
 
百々:ミー・トゥー(笑)。
 
――だからね、今回の「ロックンロールハート(ア・ゴーゴー)」は、誰に聴かすともなく作った曲のような感じがしてて。それこそ中学生が自分で自分にシビレながら曲を作ってるようなさ(笑)。その邪念のない感じがすごくあるんだよね。
 
百々:確かに。そういえば歌詞は一番時間かかってないかも(笑)。
 
――3曲目「H・A・K・A・T・A BEN」。タイトルどおり全編博多弁、それもキツめのやつですけど、すごい語感ですね(笑)。
 
百々:どこの言語だって感じだよね(笑)。博多の子でも今の子はわからないかもしれない。
 
――博多弁の曲を作りたいっていう思いがあったんだ。
 
百々:そうなんだよね。武田鉄也ではない、ちゃんとロックフォーマットに落とし込んだ博多弁ソングを作ろうと思って(笑)。
 
――ははは。武田鉄矢の壁は相当高いね(笑)。
 
百々:以前、TH eROCKERSに参加した時に陣内孝則さんが「糸島の太陽(カリフォルニア ・サン)」っていう曲を作ったんですよ。ラモーンズのカバーを博多弁で和訳したものなんだけど(※元ネタはザ・リヴィエラズ)。その時に、これ面白いなーって思ってね。
 
――今、TH eROCKERSの話が出たけど、いわゆる「めんたいロック」とひとまとめにされる1970年代から80年代にかけて博多界隈で活動したロックバンドの影響ってもろに受けてる世代だと思うんだけど、やっぱり福岡で育ったからこそ自分のオリジナルってこうだよなっていう部分はある?
 
百々:そうね。モーサムの出始めの頃、まだ福岡にいてツアーで東京とか大阪にライブをしに行くようになったら、しょっちゅう「めんたいロックの流れを汲んでいる」って言われたり、紹介されたりするのが不思議で仕方なかった。あれ? むしろ俺ら新しいことやってるんすけどって(笑)。オルタナティブなんだけどって。そうやって言われるたびにちょっとイラッとしたりしてたんだよね。なんだけど、今となってはよくわかるというか(笑)。
 
――その「わかる」部分って何なんだろう?
 
百々:なんかほら、バンドとしての佇まいがさ、やっぱり東京にはないというか。それっていうのは福岡にいると自然に身についちゃうものがあって、それが独特なんだろうね。音っていうのは一括りにはできないから、やっぱり。福岡でやってるからと言って。でもバンドの佇まいは似たような雰囲気になるのかもね、特に外の人から見れば。周りに迎合しないスタンスというか、斜に構えた感じというかね。そういうのって、例えばTHE ROOSTERSとかTHE MODSとかから直接影響を受けた先輩が俺らが地元でやってる頃にはまだたくさんいて、脈々と受け継がれていったんだろうね。だから東京のライブハウスなんかに出ると、対バン相手がみんなフレンドリーなのが不思議でさ。福岡って、そうじゃないのよ。リハ見て本番見て、打ち上げで酒を酌み交わしてようやく打ち解けるから(笑)。
 
――入りから「よろしく」みたいのはないんだ。
 
百々:ないない。今はわかんないけどね。
 
――4曲目「オーバーヒート 49」。奥野真哉さん(key/ソウルフラワーユニオン)のオルガンが全編にわたって弾けまくるアルバム・タイトルチューンですが、このオルガンのイメージは最初からあったんですか?
 
百々:これはもう最初からあったね。デモで自分のへたっぴなオルガンを入れて、それを奥野さんに送って、「俺が弾いたのは全然気にしなくていいです」って渡した。で、奥野さんはレコーディングに来られなかったからデータで送ってくれたんだけど、まあビックリするくらいカッコよくなってた。家で聴いて飛び上がったもんね。エルヴィス・コステロ&ジ・アトラクションズ初期の感じがあってね。本当にね、今回は奥野さんもそうだけどゲストで参加してくれたミュージシャンのプレイがハマっていくのが気持ち良くて楽しかったな。
 
――「ロックンロールハート(ア・ゴーゴー)」と一直線上にある曲ですよね。
 
百々:そうだね。基本的にソロアルバムを作る時って一人でやるから弾き語りでできる曲っていうのが前提になるんだけど、今回はウエノコウジ(b/the HIATUS、Radio Caroline)が一緒にやりたいって言ってくれたから、そう考えると、あんまフォーキーなものだったらあの人には収まらないなって思ってバンドものを追加でザザッと作ったんですよ。その一群の中にあるものだね。
 
――5曲目が「ハルノハクチ」。幻想的な曲というか、サイケデリックな雰囲気がもわもわと漂っている曲ですね。まず、この曲の着想はどんなところから?
 
百々:ウエノコウジ(b)、ヤマジカズヒデ(g/dip)、奥野真哉(key)、有松益男(dr/BACK DROP BOMB)が参加するロック系の曲が結構増えてきたので、そういうタイプの曲と弾き語り系の曲との落差が結構デカいなと思ったんですよね。それをつなぐバンドものの曲を作ろうと思って、それで藤田勇(dr/MO'SOME TONEBEBDER)と有江嘉典(b/VOLA & THE ORIENTAL MACHINE)が浮かんで、二人のリズム隊でもともと弾き語り曲だったものをバンドアレンジにして録ったっていう感じ。
 
――イメージしていたのはどんな感じですか?
 
百々:音作りにこだわりたいと思って、サイケ感というかソフトロック感みたいなトロンとした感じを全体的に出せればなというのはありましたね。
 
――歌詞もやっぱりというか、エグみがあるからね(笑)。
 
百々:どうしてもね(笑)。だから歌詞しかりサウンドしかり、今こんな曲を作って誰が求めているんだろう? とは思ったよ(笑)。
 
――でもメロはいいし、百々くんの好きな感じっていうのがすごく伝わる曲ですよ。
 
百々:そうだね。わりとミュージシャン仲間からも評判の良い曲だね。
 
――6曲目「CRY GUITAR CRY」。さっきおっしゃったロック系楽曲の中でも最もぶっとい曲ですね。もうこれは、いい意味で何も考えずにできたというような感じですよね。
 
百々:シンプル極まりない構成だし、コードは3つしか出てこないし、しかもほとんどEだし、そもそもヤマジさんに遊んで欲しくて作った曲だから(笑)。ヤマジさんのギターさえ入ればOKっていう。
 
――いやー、すごいものが入ってるよね(笑)。ブーストの仕方が半端ない。
 
百々:レコーディングはシビレたよ。ワンテイク目から「はい、それ!」っていうね。ヤマジさんも録り終わってから、「やりやすかったよ。これだったら当日に連絡もらってもすぐいける」って(笑)。
 
――血みたいな曲だ(笑)。
 
百々:そうそう(笑)。
 
――歌詞も気持ちいいくらい意味ないしね。でもそれが、今のトレンドと違ってていいなと思いました。
 
百々:あー、トレンドねー。別に追っかけてもないんだけど、サブスクで聴けちゃうから、まあ耳には入るんですよ。そしたら、曲の構成とか展開とかアンサンブルはすごいなと思う。思うんだけど、じゃあフィーリングってなんだっけ?とか思っちゃう自分もいるわけ。特に歌詞なんて、フィーリングを感じ取ってもらうために言葉をつけてるだけだったりするから。洋楽で育った人間はみんなそうだと思うんだけどね。まあいいや(笑)。
 
――7曲目「見習いスーパーマン」。これはすごくプライベートな雰囲気が音から伝わってきますね。
 
百々:何せ行きつけのBARで録ったから。コロナでずっと営業を自粛してたから、店主に連絡して試しに「一週間ほど店貸して」って言ってみたら、「いいですよ」って面白がって貸してくれた(笑)。ジャック ダニエル2本入れるからよろしくって。
 
――シメにスキャットが入ってますね。
 
百々:なんとなくポール・マッカートニー気分で(笑)。まあそこにたいした意識があるわけではなくて、弾き語りを一人でやってるとさ、どうしてもバリエーションが欲しくなるから、スキャットってこれまでやってなかったな、入れとけば、「あのスキャットの曲ね」って覚えやすかったりするかなってくらいのことですね。
 
――8曲目「コロちゃん」が、コロナ禍にある社会の状況を歌った曲で、珍しいタイプではありますよね。でもそこは百々和宏なんで、こうなっちゃうっていう。
 
百々:どうなっちゃったっけ?
 
――おちょくらずにはいられない(笑)。
 
百々:そうなんだよねー(笑)。今ならこんな感じでも大丈夫なんじゃないかっていうことでね。そういう意味では1年前なら絶対にできなかった曲だね。
 
――ミュージシャンとして社会的なことを題材にして歌うのは抵抗があるんですか?
 
百々:抵抗というか、自分のスタイルとは合わないっていうだけかな。ただ、聴く分にはさ、ザ・クラッシュとか全然好きなんだけど。やっぱあれかな、日本語の歌詞の曲だと、音よりも言葉の比重が大きくなるのかな。
 
――曽我部恵一さんが何かのインタビューで言っていたのを思い出したんですけど、カレー屋さんのことを歌ってもそれは政治的なメッセージになりうるんだって。要するに生活と政治は直結してるんだっていうのはすごく腑に落ちたんだよね。
 
百々:日本語でのやり方としてはそれが一番合っているのかもね。政治や社会側から入るよりも、日常や生活から入る方が。それこそこの間、曽我部くんが俺のトークと弾き語りの企画(『Rock,Talk,Smoke….Drunk?』)に出てくれた時に、「コロちゃん」を歌ったらすごい気に入ってくれて、「コロちゃんpart2って作っていい?」って言ってた(笑)。
 
――9曲目「ジャグリNUパー」。この言葉に意味はあるの?
 
百々:ないない。毎回曲のデモを作る時はまだ歌詞がのってないからデタラメ英語で歌うんだけど、たまにそのデタラメなやつに無理くりカタカナをのせてサビを歌い切っちゃうっていうパターンがあって。それですね。
 
――トランペットに武井靖典(MO'SOME TONEBENDER)くんが入ってるからというわけじゃないんだけど、この曲からはそこはかとなくモーサム感が漂ってくる。
 
百々:みたいだね(笑)。他の人からも言われた、それ。この曲はもう、1分くらいでできたワンフレーズを繰り返すだけというか、武井のトランペットありきだね。
 
――今回はそういう感じが多いですね。誰かの何かの音、プレイから導き出されるという曲が。
 
百々:このインタビューの最初の方でも言ったけど、一人でやってるとなぜかずっと楽しくなかったんだよね。それがバシッと前向きに切り替わったきっかけが、人呼んじゃおうっていうことだった。そういう人たちのことを想像しながら作り始めたらアルバム制作がグッと楽しくなったんだよね。DIYとか言いながら、人に頼りまくってるんだけど(笑)。
 
――次のラスト10曲目「サルベージ」の話にいくんだけど、そうやって他者とやることこそが自分自身を知る道筋というかさ。それが最後の「サルベージ」で回収されていく感じがすごくあるんですよね。この曲は一人で弾き語ってるんだけど。
 
百々:知り合いがさ、会話の中で「サルベージ」って言葉を使ってたのがなんか残ってたんだよね。で、どういう意味なんだっけ?って調べてみたら、沈没した船舶とかの引き揚げ作業を指す言葉みたいで、まあ転じて回収作業みたいな意味なんだけど。面白いなと思って。それで、曲を作る時っていつも俺の場合は曲先なんだけど、これは先に言葉の走り書きみたいなものがあったんだよね。これに合う感じの曲を思いついたら作ろうと思って置いてた。でも、歌詞の内容的にさ、歌を歌うことそのものをテーマにして書いてるから、これを大掛かりなアレンジでやっちゃうと、ちょっとお涙頂戴じゃないけど、そっちに行ったら嫌だなって思ってたんだよね。最初はバンドでやってもいいかなって思ってて、(藤田)勇にはデモを送ってたのかな? 有江くんには送って、2人で録ったテイクもあるんだけど、最終的に歌詞までバシッとハマったら、これは一人でやるしかないなーって思った。人に頼っちゃいかんなって(笑)。
 
――なんか、このアルバムが辿ってきた道筋を振り返ると、まるで人生のようと言うと、ちょっとダサく聞こえてしまうかもしれないんだけど、旅している車の中にいっぱいあった荷物が、気づいたらそのほとんどがいらないなってなってて、今すごい身軽というかね。
 
百々:まさにそうだね。
 
――必要なものってこれだけってわかってきたから、その時に必要な人を乗っけることもできるようになったし。
 
百々:エンジンもボロなんだけど、軽くしときゃまだ走れるわっていうね。
 
――途中でオーバーヒートもしながらね(笑)。
 
百々:アルバムタイトルもそうだけど、まさにそういうことを考えて作ってたな。
 
――ガソリン車は2030年には消えゆく運命みたいだけど、とりあえず行けるところま行ってみますか。
 
百々:うるさいエンジン音と排気ガスを撒き散らしながらね(笑)。

Text by 谷岡正浩



(2021年11月 5日更新)


Check

Release

Album『OVERHEAT 49』

発売中 3300円(税込)
MOMO-0001
FUZZYPEACH

《収録曲》
01. 鬼退治
02. ロックンロールハート(ア・ゴーゴー)
03. H・A・K・A・T・A BEN
04. オーバーヒート 49
05. ハルノハクチ
06. CRY GUITAR CRY
07. 見習いスーパーマン
08. コロちゃん
09. ジャグリNUパー
10. サルベージ

書籍『泥酔ジャーナル4』

アーティスト:百々和宏
価格:2200円(税込)
レーベル:FUZZYPEACH

Live

百々和宏withウエノコウジ「OVERHEAT 49」TOUR

▼11月6日(土)長野・北志賀高原ホテルタガワ
▼11月7日(日)埼玉・東松山レトロポップ食堂
▼11月13日(土)茨城・水戸VIBES
▼11月14日(日)栃木・宇都宮 Coffee Rumba
▼11月20日(土)群馬・前橋Drumkan
▼11月21日(日)埼玉・秩父ちどりSTUDIOお座敷
▼11月23日(祝火)北海道・札幌 SUSUKINO 810
▼11月27日(土)愛知・名古屋sunset BLUE
▼11月28日(日)愛知・豊橋FreeStyle BAR? 輪-RiN-
▼12月3日(金)広島・音楽喫茶 ヲルガン座
▼12月4日(土)岡山・蔭凉寺
▼12月5日(日)大阪・cafe Room
▼12月11日(土)青森・八戸Patrie
▼12月12日(日)宮城・仙台 HA’PENNY BRIDGE


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