『ODDL PARTY in TOKYO』連続インタビュー(全3回)
第1回 Mega Shinnosuke
今年8月に大阪で初回が行われたイベント『ODDL PARTY』が好評につき、10月27日(水)、『ODDL PARTY in TOKYO』として渋谷・WWW Xにて開催決定。前回に続き“ODD”で”踊れる”摩訶不思議な夜というテーマのもと、ジャンルレスに集められたダンサブルで中毒性のある3組が登場する。そこで、同イベントに出演するアーティストの素顔に迫るインタビューを実施。第一弾となる今回はMega Shinnosukeを招き、そのバックグラウンド、最新作、ライブについて話を聞いた。2000年生まれの天才から見た世の中とは?
――まずはプロフィールの話から。音楽を始めたきっかけは中学生の時にギターを始めたことだとか……。
「いや、ギターは買ったんですけど、骨折して弾かなくなって。それが中3の時で、骨折からの受験だったので、ギターは買っただけです(笑)。誰しも男子が通る憧れですね。スケボーとかもやってたし、そんな感覚。スケボーも転んだらケツが痛いしってすぐやめて。買って満足しちゃう(笑)」
――好奇心旺盛ですね。そもそもどんな子どもだったんですか?
「先生とケンカしてました(笑)。当時は、この大人うるせーなって感じだけだったんですけど、今思えば、先生っていうだけで、なんでそんなに言われなきゃいけないんだ!って。こうしないと立派な大人になれないよ!とか、先生っていう肩書だけでいきなりズカズカ言われてもなっていうのがあったと思う」
――その反骨精神はどこから?
「父親が怖いみたいな家庭ではなくて、諭されたり語られたりとかなく、こういう風に生きていきなさいみたいなのもない。だから大人に対するリスペクトをあまり教わってなかったんですよね。幼稚園でも普通に先生とケンカしてた気がします(笑)。お遊戯会の練習で、俺がこうした方がよくないですか?って効率よくやろうとしたら、和を乱すからって怒られたり」
――頭がよくて自由な子だったんですね。では生業にするほど音楽にハマった理由とは?
「なんですかね。出会いがあることかな。そもそも僕は家にこもって研究するようなタイプじゃないんです……ま、外に出て研究してるわけでもないですけど(笑)、外に出て友達とかと遊びたい。それでいろんな場所でいろんな人と出会って発展していくものがおもしろいなって思うんですよね。そういう風にしてサブカルチャー寄りのクリエイターとして生きているということが楽しい。僕の肌に合う」
――人に会って刺激を受けるのが楽しいんですね。でも音楽的には影響を受けたことはあまりないとお聞きしたのですが。
「それはたぶん影響を受けたアーティストは?っていう聞かれ方をした時で……。音楽のルーツは?とか、どういう人になりたくて活動をしているのか?とかのニュアンスだと、それは全然ないです。そもそも憧れがあって音楽を始めたわけではないし。ただ、人のいい行動も悪い行動も自分の鏡になるんで、考え方とか人間的な影響は受けているというか、自分の中にあるものに気づかされているっていうのはあると思う。日々自分を見つめ直すきっかけをくれる人はたくさんいると思います」
――好奇心があり常にアップデートを続けるMega Shinnosukeさんの音楽がバラエティ豊かになるのは納得。9月発表の1stアルバム『CULTURE DOG』もまさにそんな感じです。
「コロナ禍になって超ひまで音楽をよく聴いてたので、それによってこういうカルチャーを見つめ直したらおもしろいなとか、今の僕が聴いてこれいいじゃんって思えるものを取り入れたりしました。今、この令和の世の中で20歳のアーティストである自分がいいと思うことを、作品を通して発信するっていうのがいいなって」
――発信できることが音楽をやる理由でもありますか?
「あまり深く考えたりはしないですけど、普通にモノを作ってる自分が好きだからだと思いますね。いろんな人に会えるというのも含め、モノを作って発信している自分がおもしろい」
――『CULTURE DOG』に話を戻すと、等身大でありつつも歌詞にはパワーがありますね。歌詞だけでなくTwitterも名言多めな気がします。
「僕は覚えてないけど、飲み会で言ってたあの言葉がめっちゃ好きだったんだよ!みたいな風に言われることがありますね。僕、別にネット依存ではないんですけど、コロナ禍になってからちょっと(ネットから)離れたくなっちゃったんです。でも言葉って腐るから、一応、今言っとかないと(ツイートしておかないと)みたいなのは意識してます」
――そしてTwitter上での『CULTURE DOG』の反応も、具体的に詞の一節を出して絶賛するファンが多数。
「僕としては単純に(音楽として)おもしろいことをやってるだけですけど、言葉に対する評価があふれるっていうのは単純に音楽が若者に流行ってないから。流行ってないから若者にそこまで情報量がない。例えば、めちゃめちゃ流行った曲の雰囲気を引用したらわかるんですよ。でも別にどメジャーで流行ってる曲をわざわざ引用するのも……みたいなのがあって、でも引用という手法はカッコいいので、僕はDef Techのフレーズをホニャッとさせて引用してみたんですよ。でも若者に音楽は流行ってないし、もちろん掘り下げられてもいないから、それに関するコメントはあふれない。僕や僕の周りのミュージシャンがいる環境の中では美学とされているものが一部にしか伝わらないんですよ。SNSに書き込みたい層には刺さらない……ってか気づいてもらえない。僕にはある程度ファンがいてコメントをくれる人もいると思うんですけど、音楽自体が流行ってないので、音楽についてここで趣を感じたっていうようなコメントを残す人は少ないんですよ。僕を評価する対象として音楽は心地いいねくらいな感じで、もしコメントをよりしっかり残すとしたら歌詞にいくんですよね」
――とは言え、刺さる言葉は魅力的です。ただ若い世代で音楽が流行ってないとすると、どう音楽を届けていくのかが課題になりそうですが。
「それは僕が興味を持ってるカルチャーとか、それを通して生きていくことは楽しいよっていうのを発信できればいいのかなって。例えば毎朝通勤する安定した生活のサラリーマンの方より飲んだくれてるおっさんが楽しそうなのを何回も見たことあるから……その人も飲んでばっかりじゃよくないとは思うけど(笑)……なんか自分の視野を広げて生きていけば、楽しく生きていける方法があるのかなって思ったりもする。そういうところを発信していきたいなと思いますね。音楽がいっぱい聴かれるようになるっていうのが絶対的な目標ではなくて、(自分の好きな)カルチャーに興味をもってくれる人が増えたらいいなと。その方が僕とか僕の友達がやるような音楽がより理解してもらえてより広がっていくんで」
――では多彩な楽曲が並ぶ『CULTURE DOG』で伝えたかったこと、広めたかったことは?
「特に今はコロナ禍なんで、サブカルチャーの実際の現場にある空気感……飲んでるおっさんがいて、こういう人ってなんの仕事してるんだろう?っていう……そういうのはぶっちゃけ無理だと(伝わらないと)思うんですよ。そういうのもあるから、実は言ってなかったんですけど、正直ここ(『CULTURE DOG』)にあまりメッセージとかはないんですよね。だってネットを通して聴いてくれてる多くの人たちは、飲んだくれのおっさんを見てないし、この人なんの仕事してるんだろう?って思った経験はないので、無理だから(笑)。だから今回のアルバムについては、もっと広いところで僕の思ってること、やりたいこと、漠然とした(サブカルチャーの)概念を好きなように発信しようって考えてたと思います。でも、(本来伝えたいサブカルチャーは)絶対コロナ禍が明けてから飛躍すると思ってますね」
――状況を冷静に分析しつつ、肌感・皮膚感を大切にしていますね。
「(分析は)あまり意識的には考えてないので無意識のうちに……ですね。最初にギターを弾き始めた時とかって別に何のためでもないじゃないですか。肌感で生きてることが好きで、そのことによって音楽をやってて、また肌で感じたものに対してメッセージを届けたい。で、今、肌で感じているのが、音楽が流行ってなくてネットを通してしか届けられない人がいることとか。だからそれに対してどうしたらいいか?っていうのは無意識で分析してしまっている。でも、分析というか考えることは、お金を稼ぎたいとか、売れたいとか、評価とか、そういうののためではないんですよね。だからネットで届けた方が届くから、そこにシフトするっていうわけではなくて、結局、コロナ禍前の2017年から肌感でやってきたことがずっと続いているだけだと思うんですよね」
――販売戦略的な分析ではなく感覚を整理するために考えるということですか?
「ま、あの先生、どうやって黙らしてやろう?みたいなことと変わんないですね。なんで給食後すぐにドッジボールしちゃいけねーんだ!みたいな(笑)。どう説得してやろうか?みたいなのと変わってないです。それ(対象)が音楽になって、このコロナ禍で音楽も流行ってねーし、どう届けてやろうか?って」
――なるほど。つい話が音楽から脱線してすみません。
「全然いいですよ。いつもインタビューで言うんですけど、音楽についてはもう(実際に作品を)聴いてもらう以外ないんで、マジで。だから俺っていう人間を、たまたま文章を通して読んでくれた人が、こいつなんかおかしくね?って思ってくれた方が得なんですよね。何こいつ!って思わないと、正直40分とかのアルバム、聴かないじゃないですか? 知らない人……たまたま写真を見かけた人に、音楽のこと、アルバムのことを解説されて、その人に時間を割こうと思わないですよ。だからどういう人なのか?を質問された方が、読んだ人が、こいつめっちゃおもしろいから音楽を通して感じたいって思ったりするかなって思いますね。でもこれ、ライブのこと聞かなくていいんですか(笑)?」
――そのとおりです(笑)。ではライブのことを。以前はそんなにライブは好きではないとのことでしたが、今はどうですか?
「めっちゃ好きっすね。やっぱ『CULTURE DOG』を出してから歌いやすくなったんですよね。なんだろうな、前はテクニカルなことをやろうとしてた感じがあったんですけど、最新の曲とかはキャッチー……ま、もともとキャッチーではあるけど、メロディが覚えやすいっていうキャッチーだけじゃなくて親しみやすさを出したいなっていうのがあって。もちろんそういう曲ばっかではないんですけど、そういう要素を入れた曲が何曲かあって、そういう曲は俺も歌いやすくて。それで、そんなに気張って緊張しなくても、楽しみゃいいぐらいの感じのセットリストを組めるようになってきたんですよ。だから、わ、今日ライブだ。失敗したらどうしよう?みたいなのがなくなってきたのがものすごくでかい。もともと地元で高校生のうちから軽音部に入って……とかやってないからライブ経験がなくて、ツアーも今度やるの(11月5日(金)から始まる『CULTURE DOG TOUR』)が初めてで。だから前は、人前に出て演奏するんだ!みたいな感じがあったんですけど、今は割と楽しめばいいっしょ!っていう感じでも成立するというか、僕の歌唱力の範ちゅうで歌い切れる曲がいっぱいあるから、自分自身、歌うのが楽しくなってきたって感じですね」
――以前ライブを拝見した時は、緊張されているようには見えませんでした。
「(ステージに)出ちゃえばいいんですけどね。その前までが、特別な日感が強すぎるから。いつもと変わらない日常……日常の中でたまたまみたいなのが好きなんですけど、決定的に特別な時間って感じじゃないですか、ライブって。でも今は自分で昔のライブ映像を見て、どんだけダセーんだよ!っていう気持ちになるくらいライブがよくなってきているんで」
――『ODDL PARTY in TOKYO』、『CULTURE DOG TOUR』ともに楽しみです。ちなみに『ODDL PARTY in TOKYO』はマハラージャンさんとFNCYさんとのスリーマンですね。
「マハラージャンさんは、TwitterのDMで『普段からチェックしてます……』みたいなDMを頂いて、それでいつかご一緒したいですって言って頂いたのが2か月前ぐらい。その時にLINEも交換したんですよ。で、この前『ODDL PARTY in TOKYO』が決まって、LINEで『決まりましたね。よろしくお願いします!』みたいなのがありました」
――すごいタイミング。FNCYさんとは?
「鎮座DOPENESS(FNCYのMC)さんは、ものすごく大好きなラッパーさんで、友達の友達みたいなのはあるんですけど、会ったことはないです。でも前に、ある駅で友達と電話してたら鎮座さんがいて、ちょっと待ってヤバイ!って俺、めちゃめちゃ興奮しちゃったんですよ。でも、ヤバイ!って言われる側の人の立場もわかって……声掛けられもしないのにヤバイ!って言われてるのって、結構どうしよう?ってなるから、その感じを出さないようにタタタッて走って逃げたんです(笑)。あと、『FIFA』っていうサッカーゲームをしてるんですけど、そのBGMには世界中のマジでいい音楽しか流れてないんですよ。そこに鎮座さんの曲が入ってるんですよ。もう、俺的にはスーパーレジェンドラッパーなんです。バトルとかもめちゃめちゃ見てるし。だから絶対、(『ODDL PARTY in TOKYO』で)一緒に写真撮ってもらおうと思って(笑)!」
――ぜひ記念撮影を(笑)。ご自身はどんなライブをしたいですか?
「いつもどおり……ですね! てか、MCはこのびっくりして逃げちゃった話をしたらウケんじゃないですかね(笑)」
Text by 服田昌子
(2021年10月21日更新)
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