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「今は本当に純粋な感覚で音楽をやれてる」
結成20周年に徹底的に遊んだ『HEALTH』、最大限の愛情=ライブ
ORANGE RANGEがコロナ禍で見つけた新たな価値観
HIROKI(vo)インタビュー&動画コメント

 結成20周年という誰もがたどり着けるわけではないアニバーサリー。そんな記念すべき一年に何ら気張らぬテンションで、むしろ過剰な遊び心で(笑)、ORANGE RANGEが世に送り出したのは、聴くほどに癖になるファニーでトリッピーなワークアウトソング『HEALTH』。抑えたエレクトロのビート、耳に残るストリングスのリフ…“気づけばプーさん化した腹に 今 おさらば”というド頭のワンフレーズから最後の一秒まで徹底的に遊んだクールなトラックからは、20年という時を経てもなお変わらずミュージックラバーな5人の現在が刻まれている(MVがまた最高!)。さらには、10月放送開始のタツノコプロ原作のテレビアニメ『MUTEKING THE Dancing HERO』のオープニングテーマ『ラビリンス』や、10月1日(金)Zepp Osaka Bayside、3日(日)南海浪切ホール 大ホールの大阪2DAYSより幕を開ける『20th Anniversary ORANGE RANGE LIVE TOUR 021 〜奇想天外摩訶不思議〜』について、そして、コロナ禍で見つけたバンドの新たな価値観…この20年にまつわるエトセトラをHIROKI(vo)に語ってもらった。

 
 
もしこの1年がなかったら
こんな感覚は持てないまま20周年を迎えてたかもしれない
 
 
――最近は、大阪でも『ジャイガ OSAKA GIGANTIC MUSIC FESTIVAL 20>21』や『風雲!大阪城音泉 ~首里城編~』への出演があったり、ライブに関しては去年よりだいぶ前進したんじゃないですか?
 
「そうですね、去年は2月末からは一本もやらずという感じだったんで。ライブをやれることに改めて一本一本の尊さというか、ありがたみを感じてます。あとは今、お客さんが声を出せない制限があって…普通にライブができたあの環境は幸せだったんだなと感じながらも、今のこの状況をちゃんと楽しめるようにメンバーのみんなと話して、ライブを作っていく。逆境に立ち向かっていく感じも楽しいかなって」
 
――コロナ禍に久々に集まったリハーサルで、“みんなで音を出すのが楽し~!”みたいになったり、かえってバンドの仲が良くなった話も聞きますね。
 
「いや~それ、ありますね! 一周回って、今は本当に学生時代のように純粋な感覚で音楽をやれてるんじゃないかなと思います。やっぱり、ずっと前を見て走ってきたから…今一度、いろんなことをそれぞれが考えたこの時間は、確かに無駄ではないなと思いますね。例えば、ライブを有観客でやるのか配信でやるのかとかでも、ちゃんとみんなで意見をすり合わせてゴールに向かえているのは良い状況なのかなって」
 
――結果的に、そういう1年があって20周年を迎えられたのも何だか良かったですね。
 
「何か新しい価値観がバンドの中に生まれてるのかなと思いますね。去年、回る予定だったツアーも最初の2本だけやって、あとは全部飛んじゃったんですけど、元々50本近くあるツアーだったんですけど、ある意味、自分たちの中では“このステージ立てたね”とか、周年に向けてという目的地があったわけです。それがなくなって、今年は10月からのツアーも10本しかない。でも今は、お客さんにとっても普通に行けていたライブが1本行くのも難しいという中で、お互いが音楽に対してすごく新鮮な気持ちになれて、ピュアに楽しめてるのかなって。もしこの1年がなかったら、こんな感覚は持てないまま20周年を迎えてたかもしれない」
 
――やる側も見る側も、ライブがなくなったら、音楽がなくなったらと考えさせられましたもんね。
 
「だからこそいろんなことを考えて、自分の中で昇華させて会うあのライブの空間は、やっぱり最高なんですよね」
 
 
今あえてこういうことをやる方が面白いかなって(笑)
 
 
――そういうふうに誰もがシリアスに考えることがあった上で、いよいよ20周年のアニバーサリーというときに、出すシングルがこれかい! というのが(笑)。
 
「アハハハハ!(笑)」
 
――何年かの周期でORANGE RANGEがフザけるタイミングをここに当てるのが最高だなと思いました(笑)。
 
「まぁこれも結果論じゃないですけど、コロナ前からこういうことをやろうと言ってたわけじゃなくて、今あえてこういうことをやる方が面白いのかなって」
 
――『HEALTH』は、RYO(vo)さんが15kgぐらいコロナ太りしちゃったことも発端の一つらしいですね。
 
「本人も“こんな体じゃMVも撮れないし、俺は頑張るんだ!”って言ってたんですよ。俺は笑いながら聞いてたんですけど(笑)。いつも結構“三日坊主”というか、好きなことにはとことんストイックだけど、続かないものもたくさん見てきたから、今回はどうだろうなと思ってましたけど、本当に半年〜1年かけて体を絞っていったんですごいなと」
 
――筋トレにハマる人って、多分どこかで変わっていく自分が面白くなるんでしょうね。だからすごく生き生きしてるし、やらされてる感じじゃないですもんね。
 
「そうそう! Tシャツのサイズ感がどんどんピチピチになっていくのを見せたいんだろうなって(笑)。『HEALTH』をリリースしましたイェ〜イで終わりじゃなくて、今でも継続できてるからこそ説得力も生まれてると思うし。今回はグッズでプロテインまで作りましたからね(笑)」
 
――そうやってだんだんグッズの質も変わっていって、Tシャツも速乾素材に(笑)。
 
「まさにそれも出してますね(笑)」
 
――この遊び心を斬新な“ワークアウトソング”として、ちゃんと音楽的に成立させちゃうのがすごいし、抑えたエレクトロのビート、耳に残るストリングスのリフ…ORANGE RANGEのミュージックラバーな部分がすごく伝わってくるなと。あと、ド頭の“気づけばプーさん化した腹に 今 おさらば”っていうワンフレーズで、この曲はもう勝ってます(笑)。ユーモアに溢れた歌詞にクールなトラックという組み合わせが絶妙ですね。
 
「だいたいサウンドが先に出来上がって、それにリリックを書いていく作業なんですけど、『HEALTH』=健康というテーマなら、いろんなことができるじゃないですか? もっと元気に“パーン!”といった方が分かりやすかったりはすると思うんですけど、自分たちはアイデアを発案した人に対しては最大のリスペクトでというモットーがあるから、これはもうNAOTO(g)やRYOのやりたいことなんだろうなと思いながら」
 
 
あれでもカットした方で、もっと過激にやってたんですよ(笑)
 
 
――あと、この曲はMVも最高ですよね。
 


「結構癖になりますよね?(笑) 実はあれ、地元の公民館で撮ってるんで、そういう背景を知るとより面白い。振り付けはプロの方にしてもらったんですけど、何かもう本当にRYOの熱意がハンパなくて、その先生を上回るような情熱で当日もやってました(笑)」
 
――映像の質感、サウンドの曲調、癖になる動き…全てが本当に奇跡的にマッチしてる。でも、最初のHIROKIさんのパートからやり過ぎでしょ(笑)。
 
「あれでもカットした方で、筋肉担当のエキストラの方の乳首にローションを塗りたくったり、最初はもっと過激にやってたんですよ(笑)。でも、撮影が終わった後、きっとお母さんとかにも“俺、ORANGE RANGEのMVに出たよ”とか言うかもしれないっていうところまで想像すると、もうちょっと抑えた方が…って」
 
――HIROKIさんがキマった状態でめちゃくちゃするから面白かったな~最初からギアが上がり過ぎてる(笑)。この曲は本当に映像とトータルでより魅せる曲ですね。
 
「MVありきなところもあるし、あれを見てもらうとまた違うかな。ただ、自分たちの中では『HEALTH』ってそういう特殊な位置付けの曲だったんですけど、フェスとかでやってもみんなが一緒に踊ってくれるからうれしくて。“何この曲!? 大衆ソングになってる!”みたいな」
 
――だからライブの1曲目とかにも良いんでしょうね、ちょうど準備体操みたいな(笑)。
 
「いやぁ〜逆にそこしかやるタイミングがないんですよ、もう(笑)」
 
――今回は『HEALTH UP PROJECT』ということで、コラボした健康関連機器メーカーのタニタを訪ねたYouTubeも見ましたけど、良い企業ですね。
 


「あんな健全な企業がこんな曲とコラボしてくれるなんて(笑)。一曲にいろんな人が関わっていく面白さも今回の『HEALTH』では感じましたね」
 
――20年やってきて、こういうチャレンジングな曲が出てくるのは理想的だと思います。
 
「まだまだ枯渇してない感じがしますし、自分たちも狙ってやってると言うよりは、こういう曲が息継ぎみたいになってる(笑)。たまにこういうこともやらないと活動がうまく回っていかない部分もあるんですよね。それはもうありがたいことにいろんな話もいただけて、そのための曲を作る楽しさももちろんあるんですけど、何も考えずに楽しんで作れる曲も大事だなって」
 
 
“小学生の頃から聴いてました!”とか言われたら
“えぇ〜!? 俺も歳を取ったなぁ”って(笑)
 
 
――20周年ということで今年は振り返ることも多かったとは思うんですけど、これは楽しかったなとか、このときはピンチだったな、みたいに思い起こすことはあります?
 
「う〜ん…あんまり、ないんですよね。ずっと次のことばっかり考えてるんで。ただ、自分たちの主催イベント(=『テレビズナイト』)を沖縄でやってるんですけど、規模は小っちゃいけど好きな仲間を集めて音楽ができて…それがまた沖縄の人たちへの“恩返し”じゃないけど、そういった県外の音楽を聴かせられるのはやっぱりうれしいなと思いますね。だから、そこまでつらいことは個人的にはなくて、メンバー同士けんかもしないし。音楽だけのために集まったバンドで、シビアにそこだけ追求していくとぶつかり合ったりするかもしれないですけど、根本には“友達”というのがあるから、絶妙なバランスでやってこれたのかなって」
 
――あと、沖縄のアーティストは地元にいながらちゃんと全国区になるのが、僕ら関西人から見ても憧れですね。何もかも東京に行かないと実現しないわけじゃないことを、もうずっと前から実践してるから。
 
「いや~単純に社会適合性がないだけです(笑)」
 
――アハハハハ!(笑) 20年もやってると、“学生時代からORANGE RANGEを聴いてます!”っていう人にもしょっちゅう会うんじゃないですか?
 
「本当にもう、フェスとかでも会うバンド会うバンドに言ってもらえるんで、複雑っちゃ複雑…“小学生の頃から聴いてました!”とか言われたら、“えぇ〜!? 俺も歳を取ったなぁ”って(笑)」
 
 
今できる環境の中で、自分たちの最大限の愛情を込められたら
 
 
――そして、テレビアニメ『MUTEKING THE Dancing HERO』のオープニングテーマに『ラビリンス』('21)を書き下ろしたのも発表されましたね。
 


「これはやっぱりコンセプトも含めてちょっとぶっ飛んでたので」
 
――歌とダンスでモンスターを倒す、みたいな設定ですもんね(笑)。
 
「映像もきれいで面白い話だし、自分たちのやりたいことともちゃんと融合できそうだなって。“こんな曲”みたいな縛りもなく自由にやらせてもらったんで、制作自体も楽しかったですね。自分みたいに原作のアニメ(=リメイクされた『とんでも戦士ムテキング』(’80~’81))を見たことがなかった人にとっては新鮮に映るだろうし、一定の世代にとっては懐かしさもあるだろうし、幅広く楽しんでもらえるかなと。ライブでどう変化していくのかも楽しみですね」
 
――10月からは『20th Anniversary ORANGE RANGE LIVE TOUR 021 〜奇想天外摩訶不思議〜』がスタートします。大阪公演は初日の10月1日(金)Zepp Osaka Bayside、3日(日)南海浪切ホール 大ホールです。
 
「今できる環境の中で、自分たちの最大限の愛情を込められたらなと思ってますね。大阪はやっぱりね、MC中に独特の掛け合いがあるじゃないですか? ツッコミというかガヤというか(笑)。自分たちがステージ上でやれることはあんまり変わってないんですよ。何のオチもない話をワイワイキャッキャ話して、通常ならばそれに対していろんなツッコミが飛んできたりする。今まではそういうお客さんとのやりとりで盛り上げる手法でやってきたんで、メンバーだけで会話を成立させるしかないとなると、ただの楽屋トークになっちゃいそうですけど(笑)。あと、春にファンクラブ会員限定ツアー(=『RANGE AID+ presents ORANGE RANGE FC TOUR 021 〜Clap Your Hands〜』)で回ったときも、大阪はすごい元気がありましたし、涙、涙みたいな瞬間もありつつ、“一緒に頑張っていこうな!”って背中を“パーン!”と叩いてくれるようなノリがありました。ライブって…やっぱりすごく愛が詰まってる場所なんですよね。そういった場所自体を作ることが大事だなと思ったし、いろんなこと考えながら来てくれた人たちを後悔させないように、精いっぱい楽しんでもらえるように、このツアーも頑張っていきたいなと思います!」
 
 
Text by 奥“ボウイ”昌史



(2021年9月29日更新)


Check

Movie

いかにも大阪なエピソード(笑)
HIROKI(vo)からの動画コメント!

Release

20周年に捧ぐ遊び心と音楽愛の結晶は
まさかのワークアウトソング!?

Digital Single
『HEALTH』
配信中

<収録曲>
01. HEALTH

『MUTEKING THE Dancing HERO』
OPテーマと挿入歌が緊急リリース

Digital EP New!
『ラビリンス』
10月1日(金)配信

<収録曲>
01. ラビリンス
02. あの世のANTHEM ~天国と地獄~
03. ラビリンス
-Instrumental-
04. あの世のANTHEM ~天国と地獄~
-Instrumental-

Profile

オレンジ・レンジ…写真左より、RYO(vo)、HIROKI(vo)、NAOTO(g)、YAMATO(vo)、YOH(b)。沖縄出身の5人組ロックバンド。’01年に結成、’02年インディーズ、翌’03年にメジャーデビュー。ジャンルにとらわれない自由かつ高い音楽性と、卓越したポピュラリティが話題となり、数々の名曲を世に送り出し続けている。’21年に結成20周年のアニバーサリーイヤーに突入。6月30日には『HEALTH』を配信。10月放送開始のタツノコプロ原作のテレビアニメ『MUTEKING THE Dancing HERO』のオープニングテーマに起用された『ラビリンス』と、同アニメの挿入歌でもある新曲『あの世のANTHEM ~天国と地獄~』が収録された配信EP『ラビリンス』を10月1日(金)にリリース。

ORANGE RANGE オフィシャルサイト
https://orangerange.com/

Live

アニバーサリーツアーがついに開幕
待望の大阪2DAYSからスタート!

 
『20th Anniversary
 ORANGE RANGE LIVE TOUR 021
〜奇想天外摩訶不思議〜』

Pick Up!!

【大阪公演】

チケット発売中
※販売期間中はインターネット販売のみ。公演当日、開場時間より当日券窓口にて座席指定券と引換えいたします。お渡しするチケットは先着順ではございません。お席が離れる場合がございます。予めご了承ください。
▼10月1日(金)18:30
Zepp Osaka Bayside
全席指定(当日引換券)5800円
キョードーインフォメーション■0570(200)888
※小学生以上はチケット必要。未就学児童のご入場は、同行の保護者の方の座席の範囲内で、周りのお客様のご迷惑にならないようにご覧いただくことを大前提とさせていただきます。客席を含む会場内の映像・写真が公開されることがあります。チケット券面には全ての注意事項の記載ができません。また「注意事項」は状況によって変更となる可能性がございます。公演直前にはオフィシャルホームページをご確認いただき、記載されている「注意事項」内容をご了承の上、ご来場をお願いいたします。

チケット情報はこちら


【大阪公演】
チケット発売中
▼10月3日(日)18:00
南海浪切ホール 大ホール
友の会5000円
一般5800円
浪切チケットカウンター■072(439)4915
※全席指定。小学生以上はチケット必要。未就学児童のご入場は、同行の保護者の方の座席の範囲内で、周りのお客様のご迷惑にならないようにご覧いただくことを大前提とさせていただきます。

【愛知公演】
▼10月8日(金)Zepp Nagoya
▼10月9日(土)アイプラザ豊橋 講堂
【東京公演】
▼10月12日(火)中野サンプラザ
▼10月14日(木)Zepp Tokyo
【北海道公演】
▼10月16日(土)函館市民会館
▼10月17日(日)Zepp Sapporo
【福岡公演】
▼10月23日(土)Zepp Fukuoka
▼10月24日(日)八女市民会館おりなす八女
ハーモニーホール


Recommend!!

ライター奥“ボウイ”昌史さんからの
オススメコメントはこちら!

「毎回、取材前にはかなり下調べする僕ですが、事前に『HEALTH』についてのインタビューが載っていたのは、某音楽雑誌でも某音楽情報サイトでもなく男性向け健康雑誌『Tarzan』の“股関節 ほぐす ひらく まわす”特集号(笑)。『HEALTH』はMVもホント最高で、かつてパパイヤ鈴木が出演した、石野卓球 feat. 七尾旅人の『ラストシーン』('01)の名MVを彷彿とさせる、得も言われぬ心地良さと得体の知れない気持ち悪さの共存(笑)。結成20周年にこんな曲ブッ込んでくるんだから、まだまだこのバンドは面白くなるな~。今や“ORANGE RANGE聴いてました!”世代のアーティストが続々とデビューする時代であり、その言葉が初対面の方との共通言語になるほど彼らの音楽が浸透していることを感じる日々。そんなうれしい事実にORANGE RANGEのすごさと底力を改めて思い知り、ライブについて愛おしそうに話すHIROKIさんのピュアネスに胸打たれたインタビュー。各地のライブでぜひその愛を受け取ってください!」