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「フリースタイルピアニストとして唯一無二で
新しい音楽シーンを作っていきたいです!」
デビューアルバム『殻落箱』を6/30にリリース
けいちゃんインタビュー

“フリースタイルピアニスト”として演奏のみならず、自ら歌い、作詞作曲まで行っているけいちゃん。洋楽からJ-POPやアニソン、ジャズなど、幅広いレパートリーを弾くストリートピアノ動画をYouTubeから発信して、2年足らずでチャンネル登録者数が100万人、総再生数が驚異の2億越えに! 6月30日にはデビューアルバム『殻落箱』がリリース。7月に開催された『けいちゃんZepp Tour 2021~Freestyle Piano Party「殻落箱」~』も大成功を納めたけいちゃんがぴあ関西版WEBに初登場! 初の有観客ライブとなった先のツアーの手応え、独創的で斬新なアイデアが散りばめられたオリジナル曲が飛び出すデビューアルバム『殻落箱』の聞きどころを中心にインタビューする中で、けいちゃんの意外な素顔にも触れられた。クラシックから学んだ確かな音楽知識と高度なテクニックを武器に、ジャンルに限定されないスタイルで魅了する新時代のピアノヒーローとして今後さらに躍進しそうな予感大だ!

ピアノを弾いてる時と普段のギャップがすごい!

 
――今回行われたZepp Nambaのライブで初めてけいちゃんの生のステージを観たのですが、1曲目の『浄土』から鳥肌が立つぐらい圧巻でした! 今回のツアーはどのような手応えを感じましたか?
 
「けいちゃんとして初めての有観客ライブだったので、ライブを重ねるごとにどんどん進化していくのが自分でもわかったし、(ツアーバンドの)メンバーからも進化の度合いが凄いと言っていただきました。予想以上のパフォーマンスができて、やっぱ生のステージにはライブでしか生まれない魔物みたいなのがいるんだなという気がしました」
 

 
――そうなのですね! デビューするまではストリートピアノというスタイルでライブをされていますが、その時とはまた違う感覚ですか?
 
「はい! 集中力が全然違いますね。型にはまったパフォーマンスではなくて、リミッターがどんどん上がっていってます。歌う時は自分でも予想していなかったシャウトをしたり、アドリブのピアノソロが終わって、“なんだ?今の…?”って、我に返ったりすることもあって…。やっぱ、ステージに立つと人格が変わるんでしょうね、きっと…」
 
――確かにあれだけ凄まじいピアノを弾いていると相当な集中力を要するでしょうね。でも、MCになると緩やかな雰囲気で、親近感を感じました。ちなみに普段のけいちゃんはどんな感じなのですか?
 
「ふわふわしてるというか…、私生活ではなるべくエネルギーを使わないようにのほほんと生きてますね(笑)。だからなのか、ピアノを弾いてる時と普段のギャップがすごい!って周りの人にもよく言われます。ピアノに集中してる時とそうじゃない時の落差が大きいんでしょうね」
 
――テクニカルなピアノに圧倒されますが、けいちゃんの音楽的な原点はクラシックなのですか?
 
「そうです。3歳からピアノを始めて、大学2年生ぐらいまでずっとクラシックを勉強していました」
 
――その間、クラシック以外のジャンルにはどの程度触れていたのですか?
 
「多少ポップス寄りのピアノも弾いたりはしてたんですけど、8割9割はクラシックですね。クラシックは割と均等にどの年代の曲も弾いてましたが、ロマン派の後期の曲の方が自分の好みではあります。例えば、ラフマニノフとかドビュッシーとか、近代の作曲家が好きでよく弾いてました」
 
――オリジナル曲を作る際も、そういうクラシックの作曲家からの影響が反映されているのでしょうか?
 
「曲の中で展開が多いところとかドラマチックなメロディーはラフマニノフから影響を受けているところもあります。ラフマニノフはメロディーの天才で、コード進行によってどういうメロディーが良いかをしっかり把握しているところは歴代の作曲家の中でもトップクラスだと思います」
 
――ドビュッシーはどういうところに影響を受けていますか?
 
「ドビュッシーはハーモニー感ですね。固定概念を覆す不思議な和音を使ってくるから、そういう常識に囚われない曲の作り方は多少影響されているかもしれません。ドビュッシーの『パスピエ』という曲をモチーフに一から作り直そうと思って作ったのが(デビューアルバムに収録されている)『パスピエ』(M-9)なんです」
 
――今回リリースされたデビューアルバム『殻落箱』の楽曲を聴くと、ゲームミュージックやクラブミュージック、ジャズ、ボカロなどの要素も感じられます。そういったクラシック以外の音楽はどのように吸収してきたのですか?
 
「中学生の頃からボーカロイドの曲は結構聴いていたので、いつか自分もボカロを使ってみたいと思っていたんです。今回のアルバムでは4曲にボカロを入れて挑戦してみました。洋楽ではケシャというアーティストをよく聴いていたので、クラブミュージックっぽい感じはその影響がちょっとあるのかもしれません」
 

 
失敗を恐れず、もっと楽観的になってもいいんじゃないの
というメッセージ性を込めている

 
――それぞれの曲にどのような音楽要素やアイデアが盛り込まれているのかとても興味深いのですが、1曲目から疾走感満点で引き込まれていく『√Future』(M-1)でこだわった部分というのは?
 
「『√Future』はシンプルなコード進行とすごく難しいコード進行を交互に出していく手法を使っています。全体的には馴染みのあるコード進行だけど、要所要所で隠し味的に難しいコード進行を入れることですごくバランスがよくなるんです。作曲している時はそこにすごくこだわりました」
 

 
――『HIRAKE-GOMA』(M-2)もスピーディな展開で曲調がどんどん変わっていきますね。
 
「これはストーリー性がある曲です。音楽的にはオーケストラサウンドの曲を作りたくて、結果的にジャズピアノコンチェルトみたいな感じになりました。いろんな場面が出てくるので、アドベンチャー的な物語を感じてもらえる曲になったと思います」
 
――『動き出すラボラトリー』(M-8)もジャズの要素が入っているようですが。
 
「これも大学時代に作った曲を再アレンジしたんですが、ジャズ寄りのスウイング系の感じですね。ライブでも好き勝手に弾いてます。曲のイメージは映画の影響もありますけど、ちょっと不思議なチョコレート工場みたいな感じを表現したくて…」
 
――へー、映画というのはジョニー・デップが主演していたティム・バートン監督の映画『チャーリーとチョコレート工場』ですか?
 
「あの映画そのものというよりは、ああいうファンタジックな雰囲気のチョコレート工場をイメージしています」
 
――チェンバロのような音から始まる『千寸法師』(M-3)も意外性たっぷりな展開ですね。
 
「これはチェンバロをドッキリ要素みたいに使って、バロックの時代から一気に20世紀のメタルにタイムスリップするような衝撃を与えたかったんです。この曲もボーカロイドを使っているんですけど、ボーカロイドでしかできないような呂律で、人間が発声するには早口過ぎて歌えない旋律で歌わせています。そこに僕のボーカルを乗せて、ボーカロイドと人間が共存していくみたいな作品を作りたかったんです」
 

 
――なるほど。今までにない新しい発想で面白いですね!
 
「そうですね。多分、こんな曲は今まで無かったと思います」
 
――『From Impulse』(M-4)はライブで観た時も特に印象的で、インプロビゼーション的な演奏が似合うライブ映えする曲ですね。
 
「まさにライブパフォーマンスを意識して作った曲なので、ライブごとに全然違った雰囲気になります。タイトルを翻訳すると、“衝動から湧き出るもの”みたいな意味で、その時に湧き出た感情で曲の雰囲気がだいぶ変わってもいいかなと」
 
――今のコロナ禍では、観客の声は聞こえませんが、こういう曲こそ、ライブ中に歓喜の声が上がりそうですね。
 
「そうですね! 早く(歓声が)欲しいですね~」
 

 
ピアノを弾いてる時、口は空いてるから
声も楽器として使おうと思ってボーカルを始めた
 
 
――MVにもなっている『透明シンデレラ』(M-5)を聴いてけいちゃんのボーカルにも驚かされました!
 
「これは、ボーカルを際立たせようと思って、割と歌ものよりに作りました。このアルバムの中でも、唯一(自身の)ボーカルにエフェクトがそんなにかかってない曲で、僕の生声を届けたかった曲なんです」
 

 
――これは個人的な体験なんですけど、うちでこの曲を聴いてる時、偶然にも外で雷鳴が轟いて急にすごい雨が降り出したんですが、そういう状況にも不思議とマッチしてました。
 
「へー、それは興味深いな。雷と一緒に聴いてみたいですね」
 
――『思い出に添えて』(M-6)は一転、落ち着いて聴けるピアノ曲です。
 
「唯一のピアノソロで、しっとりポイントですね。大学時代に作った曲を再アレンジして、結婚式をイメージして作りました。今作の中では、『World & Me』(M-10)も大学生の時に作った曲を再アレンジしていて、メロディーにこだわっている曲です」
 
――『般若- HANNYA -』(M-7)は劇伴のようなドラマチックな展開でボーカルはラップのように聞こえます。
 
「そうです! これは雷が落ちたみたいに急に雰囲気を変えたくて。実は僕の歌詞は結構韻を踏んでいる曲が多いんですけど、ラップ調みたいな歌い方をしているのはこの曲が唯一ですかね」
 
――疾走感満点でピアノも超絶的なスピードで弾いている『浄土』は今作で最速の高速チューンですか?
 
「そうですね。しかも7拍子なのですっごい難しい曲ですね。途中でピアノソロが入るんですけど、あそこはバチバチにアドレナリンを出して弾いてます」
 
――地獄的な状況から救いを求めて浄土へと逃げてるのかなと思わせられるMVも印象的でしたが、この曲にはどんな思いが込められているのですか?
 
「人生の主役は自分なんだから、失敗を恐れないでいいよと、もっと楽観的になってもいいんじゃないかというメッセージ性を込めて。それをかなり抽象的な歌詞で表現しました」
 
――けいちゃんには超人的な才能を感じるのですが、普段どんなことを考えてこういう曲を作っているのでしょうか?
 
「うーん…、僕はあんまり失敗とか失態を恐れないというか…、怖いものがないみたいなところがあって…」
 
――え、怖いものは何もないのですか?
 
「あ、お化けがちょっと怖いぐらいですかね(笑)。あと、虫は怖いですけど…。何かする時に失敗は恐れないし、緊張することはあまりないんです。なので、自分の曲を通して、“あんまり考え過ぎなくていいんやで”みたいなことが伝わればいいなと思っています」
 
――逆に言えば、今の時代は情報過多で頭が混乱したり、身動きが取れなくなったりしている人もいるからでしょうか?
 
「そうそうそう! もっと気楽になっていいのではと思いますね」
 
――アルバムの最後にボーナストラックで、1曲目の『√Future』のインストバージョンとして『√Future-inst ver-』(M-12)が入ってます。
 
「元々、インストの方を先に作っていて、後から歌詞をつけたのが1曲目の『√Future』なんです」
 
――これまでは、ピアノのインストをメインで弾いてこられて、ご自身で歌うことや歌詞を書くことはしていなかったのですよね?
 
「そうですね。インストって、受け手によってイメージが変わると思いますけど、歌詞をつけることによって、抽象的なものを具体的に(提示)したかったのと、ピアノを弾いてる時は口は空いてるから、声も楽器として使おうかなと思ってボーカルを始めました」
 
――そこは新たなチャレンジ精神でやってみようと?
 
「そうですね! 進化し続けていきたいと思います」

 
 
会場全体で一つの音楽を作っていくようなライブがしたい
 
 
――今後はどのような活動をしていきたいですか?
 
「ライブはもっといっぱいやりたいですね!今はこういう状況なので、声は出せないけれど、お客さんと一体となって作っていくのがライブだと思うので。僕、けいちゃんがパフォーマンスをするというよりは、会場全体で一つの音楽を作っていくようなライブがしたいなと思います」
 
――今まで体験したことがないようなライブになりそうですね。これから音楽シーンの中でどんな存在になりたいですか?
 
「フリースタイルピアニストとして唯一無二でありたい。軸にピアノがあって、肉付けは自由にしていく、けいちゃんというジャンルは誰にも真似できない!と言われ続けたいですね。その上で、新しい音楽シーンを作っていきたいです!」
 
――そんなけいちゃんの一番のエネルギー源とは?
 
「(即答で)ワンちゃんですかね~(笑)。今、一番のエネルギー源になってます。最近、犬を飼い始めたんです。ミニチュアダックスフントで(名前は)るぅとくんです。やっぱすごい癒しなんですよね…(嬉しそう)。人生変わりましたね。とにかく可愛いんで、早く会いたいです!」
 
――(笑)意外なコメントでした! けいちゃんはそういうギャップがあるところもいいですね!
 
「ギャップは大事だと思います。そこも売りです(笑)」
 
――今後の活躍がさらに楽しみです!
 
「ありがとうございます!」

Text by エイミー野中



(2021年8月 6日更新)


Check

Release

Album『殻落箱』
発売中

【初回盤】(24Pブックレット封入予定+ボーナストラック1曲/DVD付+初回封入特典ステッカーあり)
4500円(税込)
em-0011
初回限定盤特典:浄土(atさいたまスーパーアリーナ)DVD

【通常盤】(12Pブックレット)
3000円(税込)
em-0012

《収録曲》
01. √Future
02. HIRAKE-GOMA
03. 千寸法師
04. From Impulse
05. 透明シンデレラ
06. 思い出に添えて  
07. 般若-HANNYA-
08. 動き出すラボラトリー
09. パスピエ
10. World & Me
11. 浄土
12. √Future-inst ver-(Bonus Track)

Profile

2019年9月に活動を開始し、わずか1年7ヶ月でYouTubeチャンネル登録者数100万人、総再生数2億超えを達成。アクロバティックかつテクニカルな演奏スタイルで人気を博しつつ、センスあふれた楽曲制作においても話題を呼ぶ新時代のピアニスト。2020年12月に、さいたまスーパーアリーナでの初ワンマンライブ(無観客配信)をはじめ精力的に活動している、いまもっとも注目される、トラックメイキングピアニスト。 2021年6月30日にデビューアルバム『殻落箱』リリース。7月に『けいちゃんZepp Tour 2021~Freestyle Piano Party「殻落箱」~』が開催された。

けいちゃん オフィシャルサイト
https://keichanpiano.com/