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ハタチで制作したからこそ意識した「大人」というキーワード
シンガーソングライター・mihoro*が
メジャー1stアルバム『love is alive』で表現したかったこと

高校進学後の2016年に本格的な音楽活動をスタートさせ、在学中は地元の岡山はもちろん、関西、そして東京までギターを抱えて自らの音楽をライブというかけがえのない場所で伝えてきたシンガーソングライター・mihoro*。昨年10月にタワーレコード限定で発売されたミニアルバム『Re:』に続き、メジャー1stミニアルバムとなる『love is alive』を発表した。ハタチのメモリアルイヤーに製作されたこのアルバムで彼女が意識したというのは、“大人”。キュートでポップさも際立つ歌声ながら、mihoro*ならではのみずみずしい感性と鋭い視点を持って恋愛・人生・日々起こることなど描き出される歌詞は、怖いほどリアルで真っ直ぐだ。そんなmihoro*というシンガーソングライターの始まりや、メジャー初作品となる『love is alive』について、たっぷりと話を聞いた。

ギターで曲が弾けた中学生の時から
「私センスあるかもしれない」と思い込んできた

 
――メジャー1stミニアルバムの『love is alive』を発売して少し時間が経ちましたが、率直な感想としてはどうですか?
 
「やっと出せた…!」っていうのが一番ですかね。店舗に並んでいるのを見たり、今まで自主制作で出していた作品と並べて写真を撮ってくださっていたりするのを見ると、ずっと見てきてくださった方にちゃんと届いているっていうのがわかってうれしくなりました。
 
――「メジャーデビュー」ってすごく華々しい感じがしますが、自分の気持ちのうえで変化はありましたか?
 
実はそんなになくて…今までと同じような曲作りではよくないなっていうのはありました。でもそういったことを少し意識したぐらいで、それ以外に「メジャーだからこうしなきゃ!」みたいなものはなかったですかね。
 
――ちなみに「今までと同じような曲作りではよくない」っていうのを具体的に言うと…。
 
今までは、一度作った曲をもっとこうしたほうがいいああしたほうがいいとか言われると、イチから考え直しちゃう方だったんです。調整していくみたいなことが得意ではなくて1回作ってダメならダメ、いいならいいみたいな極端な感じでやってきたんですけど、今回いいところは残して、気になる部分を新しく組み替えていくみたいなことに初めて挑戦してみました。作って寝かせてみたりを繰り返して、決定までしっかりと時間をかけました。
 
――そのやり方をやってみてどうでしたか? 合ってました?
 
んー、嫌ではなかったです(笑)! 曲は夜遅くに作ることも多いんですけど、作った時は達成感も含まれちゃうから、「ヤバいめっちゃいい曲できた」みたいに思っちゃうんですけど、寝かせると冷静になるので、「ここが違ったな」ってはっきりわかるんだなって知りました。
 
――実際そういう振り返りをやり始めたら、ここで終わり!みたいな線引きって難しくなりませんか。
 
確かに終わりは永遠にないなと思うんですけど、そういうことをわかってるスタッフの皆さんが締め切りをちゃんと設定してくださるので大丈夫でした!
 
――そもそも少し遡って、mihoro*さんが音楽を始めたきっかけから聞いてもいいですか?
 
元々お父さんが家でギターを触っていて、小さい頃から家にギターがあったんです。ずっと興味がなかったんですが、中2の夏休みとかちょっと時間のある時になんとなく触り始めて。その後、中3で部活を引退して時間が有り余って本格的にギターを始めた感じです。ハマるとずっとやっちゃうタイプなんですよ、私。
 
――中学2年でギターを触り始めた時には、すぐ弾けちゃった感じでした?
 
その時は、指が痛くて1日で挫折しちゃいましたね。最初にギターを貸してもらった時に、お父さんがギターのコードを絵で描いてくれて「これやってみたら?」って渡してくれたんですけど、難しくて辞めて(笑)。そこから何ヵ月か後にまたやろうかなって思った時に流行っていた曲をやろうとしたら、その曲が4つぐらいしかコードを使っていない曲だったんです。それが意外にもすぐ弾けて「私センスあるかもしれない」って勘違いしたまま今に至るっていう感じです。
 
――それは何の曲だったんですか?
 
最初お父さんにコードを描いてもらったのは、ユーミンさんの「ひこうき雲」かな。それは私の中では難しかったし、出てくるコードの種類も多くてダメだ〜って。コードが少なかったのがmiwaさんの「ヒカリヘ」っていう曲で、私も押さえられるコードだったんですよ。原曲のスピードで弾くのは無理でしたけど、一度ユーミンさんの曲の難しいコードを見ちゃったので、いける! と思っちゃったのかもしれないです。
 
――それが一発で弾けたことで、これは面白いぞと。そこからはカヴァーを?
 
はい、ずっとカヴァーをしてました。紙に歌詞とコードを絵で描いたものを100曲近く作ったんです。当時は中学生でスマホも持っていなくて、すぐに歌詞やコードを調べたりできる環境もなかったから、お父さんのパソコンで調べて書いて自分の部屋で練習できるようにしていたんです。ヒット曲とか耳馴染みのある有名な曲ばっかり選んでいました。
 
――すごいアナログな作業! そのたまたま手に取って始めたギターが今も続けるほど魅力的だったのは、今振り返ってみるとどうしてだったんでしょう。
 
その時は本当に暇だったっていうのが一番なんですけど…(笑)。小さい時から結構習い事をやっていたり、中学生になったら部活もあったりで。中3で部活を引退するって、一般的には受験勉強もあるから夏頃に引退することになるんだと思うんですけど、私の場合は中高一貫校に通っていたので高校進学も決まっていて、とにかく時間があったことがギターに手が伸びた理由でした。
 
――へー! そこからライブに出演するようになったのは…?
 
初めて人前で歌ったのは中2だったんですけど、お父さんがお仕事に行っていたところのお祭りで岡山県出身のシンガーソングライターの方がいろいろと出ている中で、主催者の方が「娘さん、オープニングアクトとかどうだろう?」って声をかけてくださったんです。それが最初ですね。中2の時に初めて出させてもらって、中3でも3、4回出させてもらって。がんばろう!みたいな感じが強かったので、緊張してはいたけど無事ステージを終えたいっていう思いでしたね。
 
――度胸十分っていう感じですね。そこからライブハウスへと向かっていく感じですか。
 
イベントに「出演しました!」って写真をTwitterにアップしたのを見た岡山のライブハウスの人が、「今度出ませんか?」って連絡をくださったんです。でもその時、ライブハウスに行ったこともなかったから、ライブハウスに出ている人たちはみんなオリジナル曲で出ているもんなんだと思っていたんですよ。だから、声がかかったんだから急遽曲を作らなきゃ!って。最初は作詞の知識もないので、文字数とかを揃えてなんとなく歌詞を書いて。それに今までカバーしてきた曲で覚えたコードを、これなら気持ちが伝わるだろうみたいな感じではめ込んでいくみたいな感じで作りました。
 
――「カヴァーでもいいんだよ」って聞いていなかったからこそそこに辿りつけたと。そうやってライブというキャリアをスタートさせたと思うんですが、ライブの面白さってどんなことでしょうか。
 
ちょうどその頃中高生にスマホが急激に普及して、私も弾き語りの動画もなんの抵抗もなく載せたりしていたんです。そこに来る反応もすごくうれしかったんですけど、ライブハウスとなると音も違うし見てくれる人と直接顔を合わせて見てくれているのもわかるし、直接感想も聞けるし。集客も目に見えるので、よかったと思ってくれた人はまた来てくれるし、何回か来た以降そういえばあの人来てないなあっていうのもわかるのが面白いですよね。そういうお客さんがいたからこそ続けてこれたんだろうなあって思います。
 
――そういう面白さを実感しながらライブを重ねている頃は、シンガーソングライターになりたい!って気持ちが芽生えてきていたのか、それともただただライブ楽しい!ってなっていたのかどちらでしたか?
 
高1の時にライブハウスで歌い始めて県外にも歌いに行くようになっていて、その時は全然「シンガーソングライターになるぞ!」とは思ってなかったけど、ふざけてやってるとか楽しいだけでやっていたわけでもなくて。これはこれで本気でやっているけど、現実は見ないといけないから夢を別に持っていて、大学に行くつもりでした。
 
――その現実的な夢っていうのは…。
 
体育教師です。
 
――ええっ!? 
 
小さい時からずっとスポーツが好きでやっていたのもあるし、体育教師の採用試験の実技を調べたら、得意な種目がたくさん入っていたから、「これは私体育教師になれるわ」って思っていました。いけるぞって。
 
――そういうふうに考えつつ、結果的にシンガーソングライターの道へと進んだのはどうしてだったんですか。
 
高2の終わりぐらいに進路を考えることが本格化し始めて先生に相談していた時に、いろいろネックが出てきたんです。一番大きかったのは、今のライブをたくさんやっている状況のまま体育大生になったとしても、体育大は実技が多いから平日も学校が終わったらライブとか土日は県外でライブみたいなことはもうできないと思うよって言われて。その時はライブをめちゃめちゃやっている頃だったので、「じゃあ、ライブします!」って言っちゃったんです。そこから音楽に強い学校への進学も考えたんですけど、リアルに想像することができなくて、じゃあとにかくライブをやろうって高3からはどんどんライブをやっていくようになりました。
 
――高校生の頃ふんわりと目標にしていたものが、今明確に叶っていっているところだと思うんですが、実感としてはどうですか?
 
あんまり将来こうなりたいというか、こうしたいみたいな目標を立てるのが得意ではなくて…。高校生の頃からいつまでにこうして、いつまでにあれをやってっていうのを考えてはいなかったので、それを思うと今音楽で生きているっていうのは本当に当時の自分からしたら考えられなかった未来なので、うれしいなって思います。運が良かったっていうのもありますし、それをずっと見てきてくれた人がいるっていうのも幸せ者だなって思いますね。
 

 
ネガティブな心にも寄り添える、
ずっとそばにいるような作品を作りたかった

 
――ではここからはアルバムのお話を…。今回のアルバム『love is alive』の制作は、どんな風にスタートしていったのでしょうか。
 
昨年の10月に『Re:』 っていうミニアルバムを出したんですけど、それは10代に作った曲をセレクトして収録したんですね。その後の作品になるので今回は全部新曲にしたいですっていう話をして、すぐに作り始めて。6曲入りって決まっていたので、めちゃくちゃいっぱい作った曲の中からチームのみなさんそれぞれに6曲を選んでもらって、私も6曲選んでそれを照らし合わせながら、収録曲に落ち着いたっていう作り方でした。
 
――作る中でどういうことを念頭に置いていたとかはありましたか?
 
ハタチの大人になった私っていうのが大前提で全曲作った感じですかね…。リードの曲は前からありましたけど、それにプラスで「大人」っていう要素は作品の中に入れたいなと思っていました。
 
――作っている時にmihoro*さんが思い描いていた「大人」とは、どういうものでしたか?
 
歌詞を見てもらったらわかってもらえると思うんですけど、全然私は大人にはなれていないんです(笑)。今はハタチになったっていうだけで中身は全然19歳とも変わっていないんですけど、かっこいいなこの人って思うのは自分を持っていて芯がある…なんていうんだろう…外見も中身もちゃんと気を使うところは使えて、でも自分が決めたことはちゃんとやり切るみたいな。完璧じゃなくてもいいんですけど、譲れないところをちゃんと持っている人みたいなイメージを思い描いていました。
 
――今回の作品中でも「大人」っていうワードが際立っていますよね。
 
大学生だったら学生気分とかあったと思うんですけど、私は学生でもないのでそんな気分でもなくて。会う人会う人がみんな年上で、どこに行っても年下なので大人の仲間入りをしたんだなっていう気持ちはあります。一番大人だなぁって思ったのは年金の封筒が届いたことですかね…。誕生日が来たらすぐ届くんですね、急に大人扱いされたなあって感じはありました。意識というよりも、物理的に「大人ですよ」って言われた感じがしましたね。
 
――国からの大人認定ですもんね(笑)。このアルバムを通して表現したかったことって言葉にできますか。
 
実は6曲通してあまりポジティブな曲がなくてネガティブな曲が多いんです。ポジティブで明るくて楽しい時って「こんなことがあったよ」「そうなんだ、よかったね!」って楽しい会話ができるんですけど、自分が沈んでいる時に「こんなことがあってね♪」って楽しい感じで言われてもギャップを感じちゃいますよね。それがよくないことがあってあんまりポジティブじゃない時に曲の中も「こんなことがあって…⤵︎」って同じ状況の、落ちている時にも寄り添える曲、そっとそばにいるような作品にしたかったなっていうのはあります。
 
――6曲の中でも一番自分のことを反映している曲って、挙げることはできますか?
 
「分かり合えないよ」は、恋愛の曲なんですけど作り始めとしては…少し前に朝早い電車に乗ったんです。サラリーマンの方がとにかくたくさん乗っていてこの人たちはいつもこの時間の電車に乗って会社に行ってまた帰ってっていう生活をしている、ちゃんと働いているんだって思ったらみなさんがすごくかっこよく見えてきて。私は曲を作るのも夜が多いので、気づけば朝みたいなこともあるから本当に新鮮に見えて。全然違う時間軸や習慣でもそれぞれちゃんと生きてるんだなっていうのをインスピレーションにサラリーマンの方を見て作り始めた曲だったんですよ。
 
――そんなの全然想像つきませんでした! ストレートに恋愛の歌かと。
 
お互い…私は朝早く起きてスーツ着て働くことはできないし、そのサラリーマンの方もその生活が染み付いている分夜更かしして朝になっちゃったみたいな生活もできないと思うんです。それでもそれぞれ生きてるし、なんだかんだこう…お互い絶対に生きているうえですれ違ったり何かしらで近くにいる存在ではあるので、それを音楽で表せたらいいなと。あくまで作り出しはそういう感じでした。
 
――6曲入れ込んで完成してみて自己評価は、どんな感じですか。
 
そうですね、どうなんだろうなあ(笑)。いい悪いはわかんないというか、でも好きか嫌いかでいうと好きです! 作り出した時は年末で、SNSに「今年は何もできなかったね」って書こうかなと思ってたんですけど、なんだかんだ結構配信リリースもしたし、アルバムも作ってるし、世間的にはコロナで動けないし、遊びに行ったりもできなかったけど、音楽としてはちゃんと自分は動いていたんだなと思ったんです。mihoro*としてはやるべきことをちゃんとやった一年だったんだなって。もちろんライブはしたかったっていうのはありますけど、ちゃんと音楽を届けることはしていたなと思います。
 
――今後ライブも控えていますけど、ライブができない期間があって、ライブに対する気持ちやステージに立つっていうことに対して変化はありましたか?
 
やれないならやれないで「やりたいやりたい!」って言い続けていたんですけど、いざやるとなると不安というか。本当にライブをやるって決まったあたりから「本当にお客さんが来なかったらどうしよう」って。このキャパでのライブは2年前はできていたけど、この2年で曲は出しているけど実際にどのくらいの人に届いてどのくらいの人がその曲を聞いてライブに行こうと思ってくれているのかがわからないというか。楽しみっていうのはありますけど、不安もあるのが本音ですね。
 
――ライブでやりたいなと思っていることはありますか。
 
考えてないです(笑)。いつもそんな感じなんです。あそこでああやってこれやって、あのタイミングでこんな話をしてとかは一切考えないというか。“今まで通り”をやりたいと思いますね。ライブができない期間があったからこそ、一旦今まで通りを2年ぶりに会う人たちに「あぁ、こうだったな」って感じてもらったうえで、新しい曲も加えて。今まで通りだけどかっこよさがプラスされている状況になればいいなと思います。

Text by 桃井麻依子



(2021年7月26日更新)


Check

Release

Mini Album『love is alive』
【初回限定盤DVD付】
発売中 3080円
ビクターエンタテインメント
VIZL-1905

《収録曲》
1. 会いたいなんて言わせないで
2. 孤月
3. 馬鹿な女
4. いやいや
5. 分かり合えないよ
6. ミヤコワスレ

《DVD収録内容》
1. 「Re :」リリースワンマン「破釜沈船」ライブ
  電車に乗って/ロックバンドと貴方/さよなら最愛の人/コドモノママデ/証/会いたいなんて言わせないで
2. 「Re :」リリースワンマン「破釜沈船」オフショット
3. 「分かり合えないよ」ミュージックビデオ
4. 「分かり合えないよ」メイキング
5. おまけ ジェンガでライナーノーツ

【通常盤】
発売中 1980円
ビクターエンタテインメント
VICL-65509

《収録曲》
同上

Profile

mihoro*(読み:みほろ)…2000年6月30日生まれ、岡山県出身のシンガーソングライター。2016年高校1年生で本格的にライブ活動を開始以降、精力的にライブを行い関西や東京へもその活動の場を広げる。2019年1〜3月にはAbemaTVの人気恋愛リアリティショー『白雪とオオカミくんには騙されない』にレギュラー出演したことで同世代への認知が広がり、番組放送以降、2018年3月に公開された「遊んでたの、知ってるよ。」のYouTube再生回数が急増。2020年10月28日、初の流通作品としてタワーレコード限定でミニアルバム『Re:』をリリース。収録曲の「コドモノママデ」はSNSを中心に話題となり、MusicVideoの再生数が320万回を超え、 配信でもロングヒット中と勢いを増す中、ミニアルバム『love is alive』をリリースし、2021年6月23日ビクターエンタテインメントからのメジャーデビューを果たした。

mihoro* オフィシャルサイト
https://mihoro.net/


Live

「mihoro* LIVE TOUR
 “love is a live”」

【岡山公演】
2021年8月14日(土)
岡山 城下公会堂
開場 17:30 /開演 18:00
指定席 3300円

【大阪公演】
2021年8月15日(日)
大阪 歌う魚
開場 17:30 /開演 18:00
指定席 3300円

【東京公演】
2021年9月3日(金)
東京 下北沢CLUB251
開場 18:30 /開演 19:00
スタンディング 3800円