アーティスト活動休止発表から数カ月…
ラストイヤーを走り出している今、
“アーティスト・與 真司郎”が考えていることとは
SHINJIRO ATAE(from AAA)インタビュー
「アーティストとしての活動をお休みさせていただきます」
パフォーマンスグループ・AAAのメンバーとして、またソロのアーティストとして活動を続けてきた與 真司郎が、自身のホームページに驚くほど誠実な言葉を連ねて人生の決断を発表したのが昨年11月のこと。新型コロナウイルスの感染拡大により、AAAのドーム公演が振り替えを余儀なくされたり、世界中のアーティストが同じ状況に陥ったようにライブができない、思うように活動ができないというジレンマの中、與自身もAAAのこと、そしてソロとしてどう活動していくのか自問自答の日々を経て、最終的にだした答えはアーティストとしての歩みを一度止めることだった。
そのアーティスト活動休止前最後となるアルバム『THIS IS WHERE WE PROMISE』を夏に発売するのを前に、インタビューを敢行した。収録曲に登場する君、You、あなたをはじめとした3人称はすべてファンに、そして聞いている私自身に向けて歌われているような感覚になる、まるで與からの手紙を受け取るような作品だ。作品に込めた思いとともに、今心に秘めている思いについて話を聞いた。
	アメリカにも生活の軸足を持ったことで
	発信したいことの幅がグッと広がった
	
	 
	――この取材日は、地元・京都を出発点にしたトークショーがいよいよ始まったところなのですが、與さんがアーティスト活動休止を発表されて以降初めてファンの皆さんに直接会う機会だったと思います。直接お会いしてみてどうでしたか。
	 
	今回ファンの皆さんに会うのが、約1年4カ月ぶりだったんですよ。実はAAAとしては、デビュー当時から年に2回はツアーをしていたり、その間に個人でもトークショーを開催したりしていたので、僕はAAAのメンバーの中でも特にファンの皆さんと直接会うことができていたんです。それが約1年4カ月っていうのは…かなり長かったと思いますね。正直言うと、僕のこと忘れられているかもなぁって思っていたんですけど(笑)、でも直接会うと今までずっと応援してくれていた人がこのコロナで会えない間に出産をされていて、お子さんをつれてきてくれたりとか変化も見られたりしてうれしかったです。
	 
	――え、そういうことも気づかれるんですか! 
	
	 
	 
	もちろんもちろん! AAAは16年もやっているので、ずっと追いかけてくれている方も多いですしね。
	 
	――そんな風に與さんのことを応援し続けている皆さんと大きな決断を伝えた後初めて会ってみて、改めて気づいたことはありましたか?
	 
	僕のことを最初は音楽を通じて好きになってくれたと思うんですけど、僕のキャラクターそのものを好きになってくれている人も多いんだなと、それはすごく感じました。信頼して話を聞いてくれている部分がすごくありました。ライブをやってトークショーをやるっていうアーティストとしての流れがこの十数年ずっとあったので、そこから歌がなくなるというのは自分でも大きいことなんだなと改めて思いました。
	 
	――でもこの1年ちょっとは、動こうにも動けないもどかしい期間だったと思うんですけど…。
	 
	そうですね、AAAのドームツアーもできませんでしたし…。でもそれはしょうがないことだし、AAAだけじゃなくて世界中のアーティストも同じ状況で、ファンの皆さんだってストレスを抱えているだろうなと思うんですよね。思うように会えなくなったことで、今までの会える状況の方が普通じゃなかったのかもっていうことにも気付かされた時間でもありました。
	――確かにそうですよね。その間、ネットやSNSでファンの皆さんの声を目にされることはありましたか?
	 
	結構見てました! 皆さんのコメントはすごく楽しみにしているタイプです。僕、この期間中に情報解禁したことが多かったんですよね。AAAの活動休止に個人のアーティスト活動休止、自分のアパレルブランドも一度終わらせたりサッドニュースが多くて、あまりハッピーなことを届けられなかったなっていう思いもあったからこそ、反応は気になったというか。特に僕自身のアーティスト活動休止の発表の後は、特にいろいろ言われちゃうかなと覚悟していたんです。でも「それでもしんちゃんを応援してます!」とか、「いつかAAAが帰ってくるときに一緒に帰ってきてください」っていうコメントがたくさんあって。僕の勝手な予想としては「歌ってるしんちゃんしか興味ない」とか「活動休止なんて勝手ですね」とかそういう反応が多いのかなって思っていたんでけど想像とは全然逆で、すごく温かい言葉をたくさんもらって本当にうれしかったです。
	 
	――與さんをずっと見てきたファンだからこその言葉ですよね。実際にアーティスト活動休止を決めるまではすごく葛藤もあったと思うんですけど、その頃からファンのネガティブ反応を想像されていたんですか。
	 
	そうですね。一番ネガティブな反応を想像していた感じがします。ずっと応援してくれるファンがいてくれるっていう自信がある一方で、そこも含めて彼・彼女たちにとってアーティスト活動休止は決してハッピーなニュースではないですから…。だからこそ、マイナスな反応も想像しながら出した結論ではありました。
	 
	――アーティスト活動休止をしようかなっていうのは、自分の中ではどんな風に始まったんでしょうか。
	 
	AAAが活動休止すると決まってからですかね。僕は14歳でエイベックスに入って16歳でAAAという名前でデビューさせていただいて、今年33歳なんです。人生の半分以上を「AAAの與真司郎」として走ってきたので、それが一度立ち止まるとなったときに、他のメンバーはソロでも活動していますけど、僕自身はソロでやっていくという想像がつかなかったのはありました。
	 
	――とはいえ、與さんもソロで活動されてきていましたよね。
	 
	はい。ソロでライブをやらせてもらったりもしましたね。そもそものスタートは他のメンバーがソロで活動していたときに、ファンの皆さんから「しんちゃんもやってよ!」って後押ししていただいたのがきっかけでした。もちろんそれはありがたいことでしたけど、僕は元々ダンサーだったので、どちらかというとグループでどんどん上がっていくことが楽しいという部分がありました。だからこそAAAが休止するからソロで! っていう選択が自分的にはなかったか感じかなぁ。あと、美容とか健康とか音楽以外にも興味を持っていることがたくさんあって、僕はかなりハッピー人間なので音楽とは違ったところで周りがハッピーになれるお手伝いができないかなって考えるようになっていたのも大きかったですね。
	 
	――考え方が変わってきたっていうのは、生活の軸足をロサンゼルスにも持ったことと関係はありますか?
	 
	うん、それはめちゃくちゃありますね。やっぱり向こうの友達はオープンマインドの人がすごく多いんです。何に対しても決めつけないし、いい意味で自己中だし(笑)。日本人は優しいしチームであることを大事にしますよね。それはそれですごくいいと思うんです。その一方で僕は自分の道を行くタイプだと自覚しているので、アメリカの友達と話すとすごく話が合うなと。たまに日本の友達に「アメリカかぶれ!」とか言われちゃいますけど、それで日本人にはないいいところが得られるならそれもいいかなと思うんです。そういう新しい経験を通して、アーティストとして生きるだけがすべてじゃないって思うようになったのかもしれません。AAAが休止するって決まっても、音楽だけじゃなく違うことを発信できるかもなって思っています。
	 
	 
	『This Is Where We Promise』は
	ライブで泣かずに歌えるのか不安
	 
	
		 
	
		――こうやってお話を伺うとアーティスト活動休止後の展望もありつつなのですが、8月にリリースされるアルバム『THIS IS WHERE WE PROMISE』を聞かせていただくと、「休止の日を迎えるまでは精一杯活動するぞ」とか「待っていてください!」みたいな與さんの意思表示がガツンと伝わる1枚に感じられました。特に歌詞が決意表明的で…。
	
		 
	
		確かにそういう感じの曲は多いですかね。そもそもアルバムのタイトルがね、決意表明というかね。 またいつか皆と会うことを約束したいなっていうのと、アーティストとして帰ってきたいなとも思いますし、またライブで会えたらいいなっていうのもあって、そういったことをアルバムで表現できたらと思いました。
	
		 
	
		――アーティスト活動を一旦休止する前に発表するアルバムを作ろうとなったとき、アルバムの制作はどんなところからスタートしたんですか?
	
		 
	
		そうですね、まずはアルバムタイトルは何がいいかなって。
	
		 
	
		――タイトルから!
	
		 
	
		うん、タイトルからでしたね。それほどこのアルバムタイトルに対しては思い入れは強いですね。あとは…やっぱりライブですかね。ライブでパフォーマンスすることを想像して曲を決めていきました。前の1stアルバムをリリースした以降にリリースしていたシングル曲に加えて、ライブを想定したらここはもう少しこういう感じの曲が欲しいなっていうバランスを見ながらというか。
	
		 
	
		――曲調という意味ではショーとしてのバランスとかを重要視して選ばれたと思うんですが、歌詞の世界はどうですか? 個人的には休止発表前にリリースされていたシングルと、発表後にリリースされたシングルでは、毛色が違うな…と感じました。特に発表後は、與さんの気持ちが透けて見えるというか。
	
		 
	
		あー!そうですね、特にアルバムタイトル曲でもある『This Is Where We Promise』は、ファンの皆さんにあてて歌詞を書きました。あとは『Bye Bye』とかもそうですね。普段あまり歌詞を書かない方なんですけど、アーティスト活動休止発表後は自分で書いた歌詞の曲が続いたっていうところがあって、それこそ皆さんに向けて書きたいというマインドにもなったというか。共作でもうひとり入ってもらっていますけど、とにかく僕が今の思いを書いて意見をもらってというやりとりをかなり繰り返しました。それこそ書きたいことがありすぎてまとめるのが大変だったっていうか。これまでの感謝や、これからの約束っていうのが大きなキーワードで、それを表現するためにすごく考えましたね。
		 
	
	
		――特に『This Is Where We Promise』は、ありがとうという感謝もそうですけど、「帰ってくるから」っていう強い気持ちをすごく感じました。與さんが活動休止されている間、この曲がファンの皆さんのお守りみたいな存在になるんでしょうね。
	
		 
	
		そうですね。そうなってもらえたらいいなと思います。
	
		 
	
		――きっと、それは與さん自身にとっても。
	
		 
	
		はい。この曲、ライブでちゃんと歌えるかなぁって思いますね。ホント、涙が出ないように歌わないと(笑)。このアルバムを作っている間に頭にあったのは、本当にずっとライブのことでした。こんな曲なら、こんな歌詞なら、ライブで喜んでもらえるかなとか。ずっとスタッフさんともそんな話をしながら作っていました。
	
		 
	
		――ライブというと、このコロナの状況になったことでライブを見るということがこんなにも心の栄養だったんだということに気付かされたような気がします。
	
		 
	
		本当にそうですよね。アルバムを聞きながらこの曲やるかなぁって想像したり、グッズは何買おうかなってワクワクしたり。ライブに行くまでの時間も楽しいですしね。
	
		 
	
		――ちなみに今回のアルバムのリリースツアー、與真司郎としてアーティスト活動休止前の最後のツアーになりますが、どういうライブを想定されていますか?
	
		 
	
		僕はどっちかというと、歌よりダンスが得意でずっとやってきたので、かっこいいパフォーマンスができる、ダンス中心のライブになればいいかなと思っていますね。
	
		 
	
		――それを想定したアルバムである、と。
	
		 
	
		はい。でもいろんなジャンルの曲は聞いていただけるかと。楽曲自体はアルバム1枚を通してかなりカラフルな感じに仕上がってると思います! コロナ禍ですけど、許される範囲で皆さんの近くに行きたいなとは考えています。
	
		 
	
		――本当にこのライブ以降、なかなか会える機会もなくなるわけで…。
	
		 
	
		うん、ライブは…そうですね。もちろん歌やダンスもそうなんですけど、いままでやってきたAAAの與真司郎としてやってきた集大成を、楽しんでもらえたらと思います。
	
		この自分の明るいキャラ届けて、皆さんが帰っていくときに笑顔で「またしんちゃんに会えたらいいな」って感じてもらえたらうれしいですね。また何カ月後、何年後になるかはわからないんですけど、またしんちゃんに会う約束をしたからそれまで頑張ろうっていう思いになってくれればいいなと思ってます。
	
		 
	
	
		アーティスト活動休止しても常にアクティブに動きたい
	
		ロスの日差しで真っ黒になっているかも
	
		
		 
	
		――今振り返ってみて、これまでのAAAとソロの活動を通して得たことや成長できたなと思うことはありますか?
	
		 
	
		得たことというか、本当にいろんな人に助けてもらってこれまでやってこれたので、そういうところでの感謝はものすごくありますね。それは大人になるにつれて思うようになったことでもあります。皆そうだと思うんですけど、若い頃はひとりでもやれるぞ的な考えもあったんです。でも大人になるにつれてとひとりではやっていけないんだなっていう想いになっていきましたね。ファンの皆さんもそうですし、スタッフさんも、家族や友達のサポートもあってこそ僕はここまでやってこられたと思っています。だからこそ作品でもライブでも、感謝を伝えられたらいいなと。
	
		 
	
		――先ほど與さん自身はサクッと「16年やってきた」っておっしゃいましたけど、それって実はすごくすごく長い時間ですよね。
	
		 
	
		本当に! メンバーと会ったころから数えれば18年かな。自分の人生の半分以上だと思うと、すごく長い時間だなと思います。
	
		 
	
		――それが一度休止するって、想像できますか?
	
		 
	
		うーん…どうなんでしょう? ようやくAAAが休止するということは想像できるようになってきた、ぐらいの感じですかね。
	
	
		――でも與さんが人生の半分以上とおっしゃっていたように、AAAは「あって当たり前」のものだったわけですし。
	
		 
	
		そう、ホントそれなんですよ。「あって当たり前」!  でも自分の人生を見直すときに、芸能界じゃないところにいる自分も楽しめたらいいなと思うんです。今まで芸能界でしか生きてこなかったし、もっともっと他の部分でもって。僕は人生って短いと思っているタイプなので、急いで楽しいことをいっぱいしていかないと人生はすぐに終わっちゃうな〜と思っているんですよ。僕、今までどんなことも諦めずに頑張ってきたなっていう自負はあるんです。今までの人生もちろん楽しかったし、ファンのみなさんと出会えたこともすごく最高の出来事でした。でもまたさらに自分で楽しいことを見つけていろんな考えを持ったうえで大人になって、またAAAが再開したときに“ちょっと大人な與真司郎を”見せられたらいいなと思います。
	
		 
	
		――AAAが再開した時は「大人になっていたい」?
	
		 
	
		大人になっていたいというよりは、勝手に大人になっている気もするんですよ。ステージに立つことがないと、老けちゃうこともあるだろうし(笑)。そこはファンの皆さんが許してくれることを祈っています。
	
		 
	
		――休止の日やってくるまで、とにかく全力で駆け抜けていくと思うのですが、「今日からプライベートの與 真司郎の生活が始まる!」という1日目は何をしたいなとかありますか?
	
		 
	
		休止1日目…何しましょうね? アメリカに戻るかなぁ? まだ未定ですが、来年からはロサンゼルスに完全に拠点を移そうかなと思っているので。もちろん日本にもちょこちょこは帰ってきますけどね。
	
		 
	
		――向こうでやりたいと思っていることはあるんですか?
	
		 
	
		自分のライフスタイルをどんどんいろいろな形でシェアしていけたらいいなと思っています。新たに立ち上げた「446 -DOUBLE FOUR SIX-」というブランドがあるのですが、アパレルだけではなくて、雑貨やホーム系のもの、アクセサリーなど、皆さんの毎日がポジティブになれるような物を作っていきたいです。そういうクリエイティブな部分は自分の中でずっと残したいなと思っているので、そこに力を入れていくんじゃないかなと思ってます。あと旅行も行きたいし、読みたい本もいっぱいあるし、スポーツもしたいし。やりたいこといっぱいあるんですよ! 僕、趣味がすごく多いので、ウィッシュリストを作ったら結構すごいことになっちゃう。だから、家でゴロゴロすることはないと思いますね。とにかくアクティブに、常に何かしらやっていると思います。アクティブすぎてロスの強い日差しをたっぷりと浴びて、真っ黒になってるかもしれないですね(笑)。
	
		 
	
	
		 
	
		Text by 桃井麻依子
	
		Photo by 河上良
 
(2021年5月 6日更新)
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