自主レーベル第一弾デジタルシングル『glow』をリリース
4月3日(土)になんばHatchでワンマンライブを開催!
番匠谷紗衣インタビュー&動画コメント
活動拠点を東京から地元大阪に戻し、昨年は自主レーベルのFill RECORDSを立ち上げた番匠谷紗衣。年が明けて、2021年2月24日にその第一弾となるデジタルシングル『glow』がリリースされた。今作は自身とトラックメイカーの二人だけというミニマムな環境で制作されたオルタナティブなセンスが光るR&B 風の曲調。心に響くボーカリセーション、実体験をベースにしたリリックからは出逢いと別れを経て、新たな一歩を踏み出して行こうとする意志が感じられる。この新曲を再スタートの第一歩として、昨年からコロナ禍で延期となっていた待望のワンマンライブ、 2021 meet “Fill RECORDS”が4月3日になんばHatchで開催される。今回のインタビューでは、“一生音楽を続けていく場所”として作った自主レーベルに懸ける覚悟と決意、そして、736日振りとなるワンマンライブにどんな想いで臨むのか率直に話してくれた。
Fill RECORDSを通して作るものは、
誰かを満たせるようにということを一番大事に考えている
――まず、東京から地元の大阪に戻ってきていかがですか?
「実は、東京に行ってから割とすぐに大阪に戻りたいな…って思ってたんです(苦笑)。4年前ぐらいですね。でも、上京する時にみんなに見送ってもらって、一生帰ってけーへんぐらいの勢いで出て行ったので。大阪に帰ってくること自体が自分にとって逃げじゃないかと…、ファンの人たちに申し訳ないことやと思ってたし…、そこで頑張ろう!って決めてたんですけど。デビューしてから一度、自分を見つめ直す時間を作りたいと思って、大阪に帰らせてもらったことがあって。その時、音楽は自分がほんまに楽しいこととかやりたいことを、シンプルに心からやる場所やったなと」
――番匠谷さんにとっての原点を思い出したのですね。
「はい。音楽自体がほんまにワクワクしたり楽しかったりするシンプルなものやったけど、東京にいる間は関わる人が一気に増えてしまって、しかも大好きな人たちばっかりやから、ほんまはこうしたいけど、そうするのはだめかな?とか考えすぎて、そういう些細なことの積み重ねでどんどん自分がちっちゃくなっていっちゃってたんです。音楽をやるということと、一人の大人としてやっていくということの両立が難しかったのかなと…。今はそんなこと考えずに普通にできていると思います。いろんなことで自分が悩むぐらいやったら、やりたいことを全部やって楽しんで、そのパワーが観てくれた人にも届くぐらいの気持ちでやれたらなって」
――そうだったんですね。では、新型コロナの影響というのは?
「えー、それは全然関係ないですね。たまたま時期が重なっただけで」
――大阪に戻って来るのは、コロナ禍の前から考えていたのですね?
「そうですね。結構何年も前からどのやり方が自分に合っているのか、考えていたので」
――番匠谷さんは中学生の頃からオリジナル曲を作り出して、ライブも始めて、高校時代からセルフマネージメントで活動されていたそうですが。元々、独立心や意志が強い方なのでは?
「そうですね、やりたいと思ったことはとりあえずやってみないと気がすまないというか…。高校生の時もシンプルにそういう気持ちでやってて。一回メジャーデビューさせてもらって、どういうことをするのか勉強になったので、まだまだこれからもっと頑張ろう!って、めちゃワクワクしてます!」
――そして、昨年は自主レーベルのFill RECORDSを立ち上げました。
「私はまだ経験も浅いし、何言ってんねんと思われるかもしれないけど、音楽に関しては対等で、お互い尊敬しあえてカッコイイと思い合える人と作るものの方が絶対に良いものができるし、シンプルにそれでいいんじゃないかと。だから、そうやって自分で何か作っていく場所が欲しいと思って自主レーベルを作りました」
――夢を抱いても、実際に実現していくのはかなりパワーがいるし勇気がいることですね。
「うん、ほんまに自分の気持ちに正直に、一生音楽をやっていきたいからこそ、歪(いびつ)でも荒々しくてもいいから、今このタイミングで自分に合った環境を、失敗する覚悟でちょっとずつ作っていかなあかんなっていうことで決断しました」
――“Fill ”というのは“満たす”という意味ですが、このレーベル名にしたワケは?
「音楽が自分を満たしてくれる存在だったから、このFill RECORDSを通して作るものは自分が誰かに与えられるように、誰かを満たせるようにということを一番大事に考えています。自分が好きなことだけやっていると自己満足になっていくけどみんなはどういうものが刺さるのか、どういう音がかっこいいのか常にリサーチしたり、SNSのコメントとか手紙を読んだり、友達の話を聞いたりして、こういう曲書いたら寄り添えるかもとか、めっちゃ考えています。でも、だからと言って、誰にでもわかる曲を書こうとは思ってなくて。ほんまに音楽が無いと日々回っていかへん、音楽を聴いてなんとかやっていける人やから…私が(笑)。同じぐらい音楽を必要としている人の生活の一部になれる曲を作りたいと本気で思って、Fill RECORDSを立ち上げたから。振り切らないといけないなと。素っ裸で、鋭いものを自分を剥き出しにして出していきたいなって思っています!」
――“自分を剥き出しにする”ってインパクトがありますね。具体的には?
「例えば、今回デジタルシングルで出させてもらった『glow』は私とトラックメーカーさんの二人だけで作ったんです。事務所に所属している時は多くの人が関わって下さって話し合って色んな事を決めていってたので、自分とトラックメーカーさんの感覚だけで、久しぶりにそうやって作った時に怖さよりも、すごいワクワクしました。そうやって純度100%のものを出していけたらなって。粗いところも多分あるんやろうけど、その良さもあると思うから。この『glow』を第一歩の一作目として、もっと自分の感性を磨いて行って、より良い作品を増やしていきたいなって思います」
浮かんでくる景色とか、人とかいっぱいある
『glow』はそれを全部強さにして、前に進もうっていう曲
――『glow』はR&Bのテイストで音数を絞ったオルタナティブなセンスを感じますが、それは番匠谷さんのコアな部分を凝縮してるからなのかなと。
「そうですね。marsh willowさんというトラックメーカーさんがR&Bとかオルタナティブなトラックを作ってる方なので。そういう自分がめっちゃ好きな音楽を作ってる人と一緒にできたというのは大きいなと思います」
――心の内側に入っていくような曲だなって感じました。
「ああ…、私、何歌ってもちょっと暗いんですよ…。なんでかわからないんですけど…、たぶん根が暗いんです(笑)。でも今回の『glow』が今までと違うなと思うのは、全部強さにして次に進むための曲というか…。だから暗い気持ちになる曲ではなくて…」
――そうですね。“glow”は“輝く”とか、“発光する”というような意味ですもんね。歌われていることも、別れを乗り越えて、次に進んで行こうという前向きな想いが感じられます。どんなふうに書いていったのですか?
「ほんまに深く考えずにパーっと書いたんですよね。タネは東京に行ってすぐにできていて。そのままずっと寝かせてたんですけど。曲のイメージだけで、歌詞は全部書き換えました。元々書いてたのは、歌詞の中にも出てくる、“軽々しく捨てられるもので出来てる世界を見ていたから”というところです。東京に行くまでは、自分のこともどうでもいいというか…(笑)、周りのこともどうでもいいと思ってて…」
――え、それはどういうことですか?
「前はライブするたびに、このライブやり切って死んでもいいという感じやったんですけど、上京してから、自分のことをすごく思ってくれる人と出会っていったので、自分のことも含めて、世の中や周りの人を大事に思えるようになっていったんです。以前は自分への怒りとか、うまくやれなかった自分への不甲斐なさとかで押しつぶされそうになってたけど、自分から見える世界も変わっていったし、輝いているものもわかるようになったことへの感謝の気持ちもあります。そういう大事な時期を過ごした東京で出会ってきた人や経験があったから今の自分があるんやなって。そういう自分やからこそ踏み出せる一歩があるかもしれへんって。それで、すっと出てきたんやろうなって思います。こうやってインタビューしていただくまで深く考えたことがなかったんですけどね…」
――なるほどね。最初聴いた時に失恋のことを歌っているのかなって思いましたけど、この曲の中にはいろんな人への想いが込められているのですね。
「うん、そうですね。この曲を聴いてて浮かんでくる景色とか、人とか…、いっぱいあって…。それを全部強さにして前に進もうっていう曲です。この曲を聴いてくれた人がそれぞれの景色を思い浮かべてくれたら嬉しいです」
めっちゃ頑張って、命すり減らしてでも
音楽と福祉の両方に集中してやっていける環境を作っていく
――ところで、番匠谷さんの大阪の生活スタイルってどんな感じなのですか?
「普段、児童施設で福祉の仕事もしていて、(音楽活動をしている時との)切り替えみたいなのは、今のところできてるけど、ほんまにクリエイティブに振り切ったら、その切り替えが難しくなってくるやろうなって思うから。どっちのことにもちゃんと集中してやっていける環境を作っていくために、めっちゃ頑張って音楽でも影響力を持てるようにいっぱい作品出して、命すり減らしてでも、自分のやりたい福祉にもつなげていけたらいいなと思っています」
――10代の頃から福祉施設で歌ったりしていたそうですね?
「はい、好きでよく行ってました。福祉にも携わりたくて」
――それは何かきっかけがあったのですか?
「世の中にいろんな悲惨なニュースがあるけど、育児放棄された子どもたちに出会った時に、それだけは他人事と思えなくて。なんとかせな!っていう気持ちになってそういう活動やお仕事をするようになりました。将来的に何か貢献したいし、自分がやれることを全部やりたいなと思っているから、欲張りかなって思うけど、音楽も福祉もどっちもやりたいことなんです。今は福祉のことを勉強しているという思いでやらせてもらって、いつか福祉にも集中してできるようにと思っています。音楽活動はもちろん一生続けていくんですけど、ちゃんと影響力を持てるように今まで以上に売れたるぞ?っていう気持ちでいます!どうやったらもっと多くの人を巻き込めるかな…って、いっつも考えてます。デザイナーさんとか、ミュージシャン、MVの監督とか、ダンサーさんとか…全部自分でやり取りしてるから、結構大変なことも多いけど、しんどいなとか、辛いなとかは1ミリも思わなくて、めちゃ楽しいなと思ってやっています」
――ご自身の活動について、今、一番リスナーの方に伝えたいことは?
「私も音楽に対しては絶対的にピュアで真っ直ぐに向き合っていくし、そういうものを届け続けるから、そういう思いでこれからも聴いてくれたら、毎日生きていく中で信じられへんことがあったとしても、私の曲は真っ直ぐに、いつでも信じられるものとして、届けていけたらと思っているから、そういう風に受け取ってもらえたら嬉しいなって思います。音楽から離れてみても、気づいたら、やっちゃうんですよね(笑)。気がついたら歌を作ってて、それがずっと続いてるから。それがこれからも続いていくんやろうなっていうことを自分で認めました」
――そのための環境を改めて整備してきたんですね。
「うん、自分のペースで自分に合ったやり方をするには、色々決断したり、地道な努力がめちゃめちゃ必要やなっていうのを感じてるので、その土台を作ろうと思いました。どうなるんですかね?これから…不安しかないんですけど…」
――不安じゃない人はきっといないんじゃないかな。でも、こうしたい!っていう自分の中から湧き出してくる本当の思いがあればきっと大丈夫ですよね。
「それが尽きないみたいです、私。こうしたい、これやりたいみたいなのが、どんどん出てきちゃうんですよ。だから体力が追いつかないようになってきてます。あっちこっちに常に行ってるし、人に会ってチャレンジして、ずっとそんな感じなんです。今日無理っていう日は1日中寝てますけど(笑)」
――新曲は次も割と早く出せそうですか?
「はい。出したい曲が溜まってきてるんで。なんとかして早く、アルバムとしてCDで今年中には出したいですね」
半分以上は新曲、フルバンドでダンサーも20人
エンターテイメントとしてやりたい!
――4月3日にはなんばHatchで、736日振りのワンマンライブが開催されます。
「これは昨年からずっと延期になっていたんですけど、ある意味、ファンの人たちとの約束でもあり、一歩踏み出すタイミングでやりたかったライブなんです。今、大変なこととか辛いことがいっぱいあると思うから、来てくれた人が元気になってもらえたらいいなと思ってます」
――この日はどんな曲が披露されますか?
「半分以上は新曲で、フルバンドでやります。バンドでやるのは楽しいですね。私はアコギとエレキを弾きます。あとダンサーも20人ぐらい来てくれます!子どもたちとか私と同い年ぐらいの人やいろんな人に来てもらおうと思ってます。今作ってる新曲がいろんな人に踊ってもらいたいなって思ってる曲なんです」
――そうなんですね。じゃあ、今回の『glow』とは全然タイプが違う曲ですね?
「そうですね。ちょっとそういう曲にも挑戦してみようかなと思って。今まではアコースティックな曲が多かったんですけど。これから私がギター弾かずに歌う曲も増えていきそうです」
――フルバンドでダンサーも入るとなると賑やかで力強いステージになりそうですね。
「うん。エンターテイメントとしてやりたいですね。自主レーベル立ち上げて初めてのワンマンライブなので、これから自分がどういう思いでやっていきたいのか、目に見える形でやろうと思っているので、それを体感していただけたらなと思っています」
――楽しみにしています!ありがとうございました。
Text by エイミー野中
(2021年3月26日更新)
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