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「開放的なものを自粛期間(ステイホーム中)にずっと求めていた。
 今やりたいことがこの全10曲に詰まっている」
1stフルアルバム『neo neo』でメジャーデビュー!
リュックと添い寝ごはん、松本ユウ(vo&g)
インタビュー&動画コメント

耳にすると覚えずにいられないバンド名に不思議な親和性漂う3ピースバンド。メンバーは2020年春に高校を卒業し、初の全国流通盤ミニアルバム『青春日記』を3月にリリース、12月9日には1stフルアルバム『neo neo』でメジャーデビューを果たした。今作には、インディーズバンド&アーティストの音楽配信サイト「Eggs」で年間1位を獲得した『ノーマル』から、先行配信された『あたらしい朝』『生活』も収録されている。流れてくるとパッと視界が開けるフレッシュな勢いがあり、優しさとあたたかさが滲みだす全10曲。近年再評価が高まっているシティポップや80年代の歌謡曲、90年代の渋谷系にも通じるクロスオーヴァーな音楽センスが感じられる。コロナ禍で不自由さや不安を感じる日々が続いているが、これから20代に向かう彼らが今何を思い、どんな気持ちを音楽に託しているのか…。ここに至る音楽遍歴と作品作りやライブに対する素直な思いをソングライターの松本ユウ(vo&g)が明かしてくれた。

歌謡曲のどこか懐かしいメロディーみたいなものが
今回のアルバムに無意識に出てるのかな
 
 
――今年(2020年)の春に高校を卒業されたんですよね。コロナの影響でいろいろ大変な状況が続いていますが、バンドにとって2020年というのはどんな一年でしたか?
 
「バンドにとっては、結構大事な時期になったのかなって思ってます。ライブがなくなったのは、悲しかったんですけど…。今までぽんぽんぽんぽん物事が進んでいってたので、自粛期間にインプットする時間をしっかり取れたっていうのは良いことだったのかなって思っています。リュックと添い寝ごはんのこれからやりたい方向性をバンド内で明確にできたのかなって。それからアルバムの制作に取り掛かっていけました」
 
――それまでは目まぐるしく、環境が変化してきたんですね。
 
「そうですね。高校卒業して、環境が変わって…、ドタバタしてた部分があったので。自粛期間は家でゆっくり映画を観たり音楽を漁ったりして、いろいろ部屋の中でできることをしました」
 
――“ステイ・ホーム”でしたからね。その期間にインプットできてご自身の中で変化することって何かありましたか?
 
「それがこの『neo neo』という1stフルアルバムに結構出てるんじゃないかな。その期間に歌謡曲とか、ずっと聴いたりしてたので。歌謡曲のどこか懐かしいメロディーみたいなものが今回のアルバムに無意識的に出てるのかなって。あと、『ジャージー・ボーイズ』っていう映画を観たんです。たしか、2014年のアメリカのミュージカル映画なんですけど、それが多分『23』(M-7)という曲に出てます。映画の中にバーでセッションするシーンがあるんですけど、それ観たときに“あーこういう曲作りたい!”って思って。自分なりにそれを落とし込んで作ったのが『23』ですね」
 
――『23』って確かに他の曲とはテイストが違うなと思いました。ちなみに、さきほど自粛期間中に聴いていたという歌謡曲っていうのは?
 
「はっぴいえんどさんから派生した方々の曲とか、松田聖子さん、筒美京平さん、ユーミンさん、山下達郎さんですね」
 
――時代で言えば、1970年代後半から80年代前半あたりですよね。近年流行ってるシティポップにもちょっと重なるような時代ですね。それまではそういう音楽は聴いてなかったんですか?
 
「いや、結構聴いてはいたんですけど、今まで掘り下げてしっかりと聴いたことがなくて。自粛期間に、“ここはこういうメロディでこういうコード持ってくるんだ”とか、“歌詞はこういう語尾を使ってるんだ”とか、そういうところに注目して聴けました」
 
――あの時代の曲って日本のポップスのスタンダードになっているというか、ずっと残っていくようなメロディやサウンド感ですよね。
 
「あの時代のメロディは本当に洗練されてるすっごい素敵なメロディですね。歌詞も含めて。いろいろインプットするのはずっと続いてて…、今は洋楽の方に派生してます」
 
――ちなみにどういうような?
 
「今、バンド内で共有したりしてるのはストロークスさんとかチャック・ベリーさん。さん付けしちゃうんですけど(笑)。ビートルズとか、フラテリスっていうバンドとか、Apple Musicで“おすすめ”に出てくるようなのを聴きました」
 
――チャック・ベリーはロックンロールの原点だし、ストロークスなんかは2000年代初期のロックンロール・リバイバルで出てきたバンドで、そういうところまで遡って聴いているんですね。
 
「そうですね。そういうのを自分に落とし込んだら次どんなのができるんだろうっていう楽しみがあります」
 

 
日本のロックを聴き始めたのは高校から
幼い頃は親の影響でジャズとか聴いてました。
 
 
――松本さんはバンドサウンドを聴くようになったのが高校生の軽音楽部に入ってからだそうですが、それまではどんな音楽を聴いていたのですか?
 
「その前はSAKEROCKとか、インストバンドを聴いてました。日本のロックを聴き始めたのは高校からです。幼い頃は親の影響でジャズとかを聴いてました。でも、今のバンドでジャズが出てる気はしないんですけど(笑)。ジャズ聴くのはすごい好きです」
 
――ちなみにジャズはどういったものを?
 
「母がビル・エヴァンスが好きだったので、家でよく流れてたんです。僕はソニー・クラークさんがすごく好きです。ソニー・クラークさんはアルバムのジャケットが好きだったのか曲が好きだったのかよく分かんないのですけど、今でも覚えています」
 
――ヒールを履いた女性の足元がジャケットになっている有名な『クール・ストラッティン』かな?
 
「あっ!そうですそうです!そのジャケットがずっと好きで」
 
――音楽的な環境が良かったんですね。私は松本さんの声質がすごく良いなと思って。
 
「ありがとうございます!」
 
――ジャズで言えば、チェット・ベイカーみたいに、聴いてて疲れない、ずっと聴いていたくなるような心地よい歌声です。
 
「嬉しいです」
 
――いつ頃から歌ってたんですか?
 
「中学の頃から家でよく歌ったり、口笛とか吹いたりしてて、そういうのは好きだったんですけど、“バンドとして歌うぞ!”って思い始めたのは高校からです」
 
――ご自分の声質とかボーカルスタイルについては何かこだわっていることはありますか?
 
「いやあ…全然考えたことないですね、そこに関しては。癖はあると思うんですけど、昔から聴いてたいろんなアーティストさんの声が混ざって、今の僕の声が無意識的に出ているのかなとも思います。でも単語の発音とかはgo!go!vanillasさんに一時期影響を受けたなと思ったりしますね。た行、たちつてとを、“つぁ”とか、“つぃ”とか」
 
――英語っぽい発音ですね。イギリス英語かな?
 
「そうですね。そこは影響受けたかなって。一時期やりすぎてるくらい影響受けたというか(笑)。あとは高校の軽音楽部でも滑舌だったり、トップの音の出し方みたいなものを教わったりしてました」
 
――力まないようなソフトな歌唱だなって。
 
「あーそうです! 力まないようにはすごい気をつけてます。力むとやっぱり声が出づらいっていうのもあって。“リラックスしてリラックスして”って。あと、“ウィスパーボイス寄り”だねって言われることが多くて。囁くような…。それはでもあんまり意識したことはないですね」
 
 
 
拳を上げるより今はヨコ揺れのテンションなんです
自由に一人ひとりが曲を楽しめるように

 
――ちょっと戻りますが、今年の自粛期間中に、メンバーとはバンドの方向性についてどんな話をされたんですか?
 
「目標みたいなものをたくさん作ろうっていう話になって。“野外の似合うアーティストになりたい”とか、“この野外フェスにはリュックと添い寝ごはんがいるよね”みたいな、そんなアーティストになりたいな、とか。あと“お客さんと心を一体に”というか。ラフなライブづくりをしたいっていう。never young beachさんを去年(2019年)のROCK IN JAPAN FESTIVALのLAKE STAGEで初めて観た時に、衝撃を受けて…。後ろで踊ってる人がいたり、みんな自由にビール片手にヨコ揺れで…。そんなライブの空間がいいなって。そういう景色みたいなものを共有したいなっていう話をしてました」
 
――なるほどね、そういえば、今までのインタビューで、“自分たちは拳を上げるのが似合わない”という話をされているのを読みました。
 
「そうですね。拳が似合わないというか、拳上げるよりは今はヨコ揺れのテンションなんですよ。“拳上げていくぞ!”っていうよりもヨコ揺れで自由にひとりひとりが曲を楽しんでもらえたらと思ってます」
 
――もっと遡ると、高校時代はライブでもガンガン行ってましたか?
 
「そうですね。サビ前で“いくぞー!”みたいな、で、サビでバーン!みたいな(笑)。そういうのが多かったですね。」
 
――でも高校卒業して、今はもうちょっとスピードを落として…。
 
「ヨコ揺れのテンションで、っていう」
 
――新しくできた曲もそういう方向性の曲が多い?
 
「そうですね。結構ヨコ揺れの曲が多いのかなとは思いますね」
 
――今年の春に初の全国流通盤となるミニアルバム『青春日記』を出して、その後に新しく作った曲がメジャーデビュー作となる、12月9日リリースの1stフルアルバム『neo neo』に入っているんですね。
 
「そうですね。『ノーマル』(M-5)と『グッバイトレイン』(M-3)は前の『青春日記』にも入ってた曲ですけど、『青春日記』よりも前にできてた曲もあって。それは『ホリデイ』(M-4)ですね。それ以外は全部今年になって作りました」
 


 

 
 
『23』は40代ぐらいの女性をイメージして
大人の女性の曲を書いたことないなと思って

 
――1stフルアルバムの『neo neo』についてもう少し詳しくお聞きしたいんですけれども。結構異色な曲だなと私が思ったのは『PLAY』(M-2)、『ホリデイ』や『23』もそうだし、『渚とサンダルと』(M-8)の途中から転調していく感じとか、『あたらしい朝』(M-9)とか…、やはり新しいテイスト多いですね。
 

 
「そうですね。その時々でやりたいことを出したいよねって、バンドの中で話してたので。この全10曲に今やりたいことが詰まっているのかなって思います。さっきも言ったようにヨコ揺れとか、開放的なものを自粛期間(ステイホーム中)にずっと求めていたところがあって。部屋の中でひとりでいたので、自然の中でっていうのをイメージしながらアルバムを作っていきました。自粛期間にはいろんなアーティストさんのライブ映像とかをよく観てたんですけど。その中でいいなって思うのが山とか海とかでライブしてる映像が多かったので、そういうところにも影響受けましたね」
 
――歌詞の中にも“海”というワードがよく出てきます。
 
「そうですね。冬に出すのに夏の曲ばっかりで(笑)。“夏”とか“海”は多く入ってますね。今までと比べてもすごく多いと思います!自然の歌詞が多いと思います」
 
――“外に出て行きたい”とか“開放感を感じたい”っていう想いがそのワードに象徴されているのかもしれないですね。さきほど、映画『ジャージー・ボーイズ』の中のシーンにインスパイアされて出来たと話していた『23』は大人っぽい気だるさが漂う曲ですが、『23』と『渚とサンダルと』は女性目線の歌詞なのかなと…。
 
「そうですね。誰か目線みたいなものは新しく歌詞に取り入れましたね。『23』は、40代くらいの女性をイメージして書きました。“23”ってタイトルなんですけど、だいぶ年上をイメージしてて。最後に歌詞を書いたんですけど、曲調とか全部踏まえて、そういえば、大人の女性の曲書いたことないな…と思って書きました。けっこう難しくはありましたね」
 
――そうだったんですね。『渚とサンダルと』は?
 
「これはもう本当に女の子をイメージしてます。一曲通して女の子目線の曲で、最初のほうは片思いに自信があったけど、徐々になくなっていくみたいなストーリーで、可愛い歌詞の曲を作りたいなと思って書きました。カネコアヤノさんの曲の影響も受けてるかな。(自分ではない)誰かの目線になって歌詞を書いてみようと思ったんです」
 
――アルバムだからこそ、ちょっと毛色の違う歌を入れてみたかった?
 
「そうですね。『23』のようなちょっと変わった面白い曲は毎回アルバムに入れたいなと。一枚の中で緩急がつくというのもあるし。前の『青春日記』の時にそう思って。『青春日記』の中に『500円玉と少年』という曲を入れたんですけど、あれも公園でひとりでガットギターで弾いたものをそのまま入れたんです。楽しく、ラフにやってたいですね…」
 
――ラストの『ほたるのうた』(M-10)もすごくグッときました! 日本人的な細やかな感性がにじみ出てて。この曲ができたきっかけは?
 
「これも自粛期間中に作りました。『あたらしい朝』と『生活』と『ほたるのうた』が前半にレコーディングした曲なんです。その3つが部屋の中で思ったことを書こうと思って作った曲で。『ほたるのうた』は部屋の中でひとりだけど、そんな自分とバンドをほたるに見立てて、それで歌詞を書いていきました。“灯るほたるを眺めて逃す”というのは、チャンスみたいなものを眺めたまま逃してしまっているっていう状況から…、東名阪ツアーが予定されていたけど、それがコロナの影響でできなくなったので…。今は部屋の中にいるけど、何か発信したいという思いが強かったときに作った曲ですね。歌詞に出てくる“世界”という言葉とか、今まであまり使ったことがないんですけど、ニュースとか見てて、世界も今の僕たちと同じ状況なんだなと思って。それでこの“世界”という言葉を使いました」
 


 
――なるほど。これは歌詞を追っていくと、最初のほうは部屋の中でひとりだけど、最後はふたりになっていますね。そこに希望を感じます、独りじゃないという。
 
「はい。前半のほうは5月6月ぐらいのことで、最後は未来で1年後2年後はいろんな人とこの曲を歌いたいなと思って…、“ふたり部屋で歌うメロディ”と書きました」
 

 
ライブの空間を大切にしたい
友達の家に遊びにきたみたいなラフな感じで

 
――今回のアルバムはバンドの新たな引き出しが提示されていて、まだまだいろんな可能性がありそうです。
 
「そうですね。今の自分たちをよく“透明”っていうふうに例えるんですけど、徐々に色付けていけたらいいなと思います。今作は自分たちが聴きたい曲がけっこう詰まっていて、ここからどんどん色付いていったらいいなと思いますね」
 
――基本的に3人だけで奏でられるギターロック/ポップが軸になっていると思いますが、このバンドとして大事にしたいサウンド感があれば教えてほしいです。
 
「僕たちはけっこうスタジオではふざけあったりしてて…。自粛期間中にも電話しながら、ゲームしたりとかしてて(笑)。そういう、日常のふざけあった、あったかさみたいなものをこれから音にしていけたらいいなって思います。それが、誰かに寄り添えるような楽曲になっていくのかなと…」
 
――なるほどね。それって、ちょっとバンド名にもつながるような気がします。リュックは背中に背負うものだし、添い寝はまさにそうだし、ごはんってあったかい感じがしていろんなイメージがわくバンド名だなと。
 
「ああ、確かに(笑)、“リュックと添い寝ごはん”って、ぴったりだねってよく言われます。うーん、改めて考えてみるとそうですねー」
 
――あと、バンド名にカタカナと漢字とひらがなと、全部入ってるのがいいなと。
 
「ああ、それも意識したことはなかったですね(笑)。バンド名はドラムの宮澤の思いつきではあるんですけど、他の案が出なくて、メンバー全員、しっくりきたっていうのも、そこに惹かれたのかなって」
 
――12月の初の東名阪ツアーはソールドアウトということで、メジャー進出と共にさらに注目度が増していきそうですが、年明けのライブ予定などは?
 
「これから決まっていくと思います。今までやったことがないいろんなところでやりたいですね。神戸とか、北海道、九州方面でもやりたいです。そうそう、富士山周辺の野外ライブは制覇したい(笑)。まだ19なので、二十歳になったらお酒とか飲めるし、ビール片手にっていうのもいいなって(笑)」
 
――今は特に10代に人気があるようですが、もうちょっと上の世代にも聴いほしいですね。
 
「僕もホントにそう思います! いろんな年代の人に聴いてほしいという思いで今回のアルバムを作りました。今回、けっこう新しい僕たちとか、これからやりたい音楽をみたいなものを表現できたのかなと思っているので。もっとライブができるようになったら、ライブにも来てほしいですね。ライブの空間を大切にしたいので。ラフな感じで、僕らもお客さんも緊張せずに、ふらっと遊びにきたパーティーみたいな、友達の家に遊びにきたみたいなテンションで音楽をやっていきたいです」

Text by エイミー野中



(2021年1月14日更新)


Check

Movie

Release

1st Album『neo neo』
発売中

【完全生産限定“メジャーデビュー記念盤”】
CD+DVD+Tシャツ購入券(購入サイトURL)
2900円(税別)
VIZL-1825

【通常盤】
2400円(税別)
VICL-65439

《収録曲》
01. 海を越えて
02. PLAY
03. グッバイトレイン
04. ホリデイ
05. ノーマル
06. 生活
07. 23
08. 渚とサンダルと
09. あたらしい朝
10. ほたるのうた

Profile

松本ユウ(vo&g)、堂免英敬(b)、宮澤あかり(ds)から成る、東京都内を拠点に活動中の3ピースバンド。2017年、高校の軽音楽部で活動をスタート。以来、インディーズバンド、アーティストの配信サイト「Eggs」のアーティストランキングで常に上位にランクイン、2019年の年間ランキングではアーティスト・楽曲ともに 1位を獲得。2019年夏には、ロッキング・オンが主催するバンド・アーティストのオーディション「RO JACK for ROCK IN JAPAN FESTIVAL 2019」で優勝アーティストに選ばれ、国内最大級のロック・フェス「ROCK IN JAPAN FESTIVAL 2019」に出場を果たす。今年3月には初の全国流通盤となるミニアルバム「青春日記」をリリース。12月9日には1stフルアルバム「neo neo」をリリース! SPEEDSTAR RECORDS からメジャーデビューを果たした。

リュックと添い寝ごはん オフィシャルサイト
https://sleeping-rices.com/