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「楽園なんて存在しない。でも音楽があるからいいよね」
悩みも楽曲に昇華したシングル『楽園』に込めた想い
3rdアルバムの制作もスタート!
w.o.d.インタビュー&動画コメント

サイトウタクヤ(Vo.&Gt.)、Ken Mackay(Ba.)、中島元良(Dr.)からなる神戸発スリーピースバンド、w.o.d.が8月7日にシングル『楽園』を配信リリースした。歌い出しから“楽園なんて存在しない”とズバリ言い切ってしまう歌詞が印象的なこの楽曲は、w.o.d.らしい轟音サウンドにポップネスも備わっており、感情的なボーカルで世の中の生きにくさを歌い飛ばしている。プロデューサーには今作もThe Strokesの2ndアルバム『Room On Fire』を手がけたヨシオカトシカズ氏を迎え、一切編集なしの完全一発録りで録音された。新型コロナウイルスの影響でライブができなくなり、リスナーとの距離を近づけたいという想いが芽生えたと語るサイトウ。“ライブハウスは楽園だ”との意味も込められた同曲を引っさげて、9月20日(日)には自身のホームタウン、神戸・太陽と虎で、23人限定のライブ『w.o.d. presents limited show “ キャパシティ23”』を開催する。ようやく直接爆音を鳴らせる機会が訪れたことに、サイトウは心底嬉しそうな笑顔を見せた。この曲で3rdアルバムの制作もスタートしたという。初期衝動で制作していた時期を越えた今のw.o.d.はどんなモードなのか。ぴあ関西版WEB、2度目の登場となる今回は『楽園』の話をはじめ、コロナ禍での制作のことやプライベートについての話を聞いた。

コロナ禍でも制作を続けていたw.o.d.
 
 
――2ndアルバム『1994』(2019年9月リリース)以降は、今年の年明けまでツアーをされていた感じですよね。
 
「そうですね。2月頭まで自主企画をやって、その後はちょこちょこ別のバンドの企画に出たりしてました。最後にライブをしたのが3月1日渋谷クラブクアトロのナードマグネットの企画ですかね。それ以降はもうコロナで全部なくなっちゃって」
 
――コロナ禍はどう過ごされてました?
 
「最初はスタジオも密閉された空間なので、基本入らないようにしようという話をしてましたね。だから1人で曲作ったりしてたんですけど、それ以外はバンド活動できず。徐々にスタジオも感染対策をし始めたので、それからはずっと制作をしてました」
 
――メンバーさんと、“こうしていこう”というお話はされていましたか?
 
「“とりあえず俺は曲作るわ”みたいな話はしましたね。でもこんなに長くなると思ってなかったんで(苦笑)。3月〜4月くらいはしばらく自粛しようという感じで過ごしてたんですけど、5月くらいになかなかスタジオも入られへんとなって、“あれ、このままだと結構ヤバいな”というので動き始めた最初のキッカケが、配信ライブでした」
 
――7月3日に行われた『w.o.d. live session Ⅰ』ですね。
 
「そうそう。生配信はトラブルも多いし、どうしてもカメラワークに限界があるし、あまりクオリティが高いものにはならんなと思って、いろいろ話し合った結果、収録でやることになりました。演奏自体はほんとにライブそのまんまやって、それを録音して。全曲ライブと同じミックスにしてもらって、生配信ライブに近いけど、映像はしっかりカメラを入れて、編集もしました」
 
――手応えはどうでした?
 
「手応えはありました! 本当に関わってくれた皆さんのおかげなんですけど、特に普段のライブと違って、映像でどうライブを見せるかって内容なんで。クオリティ高く、でもちゃんと熱量のあるライブができるように前々から準備しました。会場はお世話になった渋谷のLushというライブハウスに協力いただいて。だからしっかり“作り上げたもの”として、自分らとしては結構手応えがあって。見てくれた人たちの反応はすごく良かったし、音楽業界の人たちも、“今まで見た配信の中で1番良かった”と言ってくれたりとか。頑張った甲斐あったなーと思いました」
 
――配信ライブは生のライブの代わりにはならないけど、その中でも前向きにやっていこうと。
 
「できないものはどうしてもできないんで。でも人数が少なくても、できることはやっていこうというのも込みで、9月20日(日)に神戸・太陽と虎で、お客さんが23人のライブをやるんです」
 
――23人は、感染拡大防止ガイドラインに沿った結果ですもんね。
 
「なかなか今まで通りには戻らないと思うので。地元のお世話になっているライブハウスで何かしたいという気持ちもあって。スタッフさんも賑やかなので、あのライブハウスで良かった(笑)」
 
――確かに(笑)。w.o.d.は映像ツールを使った企画をいろいろされてますよね。お客さん参加型で配信ライブの打ち上げの配信『w.o.d. live sessionⅠ~打ち上げ~』をしたり、『楽園』のMVをお客さんと一緒に鑑賞したり。
 
「ライブハウスは物理的な距離が近いじゃないですか。ライブが終わった後もしかしたらお客さんと交流できるかもしれない。でもそんなことは多分しばらく一切ない。だから逆に今はそういうことをしたい。曲だけじゃなくて、別のところでも楽しんでもらえたらなと思いました」
 
――そう思ったのは、コロナがキッカケというのはあります?
 
「多分そうやと思います。今まで通り普通にライブやれてたら、配信もやらなかったと思うんです。今は面と向かってライブができないから、逆に近寄りたいなという気持ちはあったと思います」
 
――ところでサイトウさんは、外に絶対出ないとしんどいタイプではないですよね。
 
「全然ないです(笑)」
 
――外出できない状況で、ストレスは?
 
「個人的にはなかったですね。友達と外に飲みに行けないくらいで(笑)」
 
――お酒好きですもんね(笑)。
 
「結局家で1人で飲んでました(笑)」
 
――あと4月からFM NACK5で『サイトウタクヤの“パジャマ de ラジオ”』という番組が始まったということも1つのトピックスかなと思います。
 
「そもそも3人でするか1人でするかという話だったんですけど、”話力を鍛えよう!”ということで1人で(笑)。タイトルはスタッフが考えてくれたんですけど、完全に昭和の男なんで、親父ギャグレベルの候補がいっぱい出てくるんですよ(笑)」
 
――“布団が吹っ飛んだ”的な。
 
「そうそう(笑)。俺はラジオを聞くのが大好きだったんで、いざやりだしたら、楽しいんです! 1人で喋れるかな〜と思ってたけど、自分の好きなことばかり喋ってるので、毎回話す内容を考えるのも楽しいですね」
 
――ライブではMCが全くないので、そのギャップはいいですね。
 
「ラジオをやり出して気づいたのが、MCは今後も多分喋れない気がするんですよ。普通に喋ってるテンションから演奏の方にガッと向かって集中するのが結構大変で。MCは今後もなくていいかなと思ってます」
 
――なるほど。
 
「逆に喋りだけでステージ立つなら……」
 
――それもいつか見たいですね!
 
「いつかね(笑)。漫談は嫌ですよ(笑)」
 
w.o.d.スタッフ「オープニングアクトで入れるとか」
 
「俺が先に出ていって?(笑)どんな感じで出ればいいんやろう」
 
――ぜひ、自主企画や特別なライブの時にしてほしいです(笑)。
 

 
アダムとイブの話が楽曲のモチーフに
 
 
――『楽園』はw.o.d.らしい轟音と、聴きやすくポップな感じもあって、カッコ良いの一言です。人生そのものにも通じるけど、今の状況下で聴くと、コロナに対する不安や閉塞感も感じました。
 

 
「この時期にリリースをすること自体はそもそも決まってて。何曲か曲の候補があって、その中で1番ライブっぽいというか、ライブでやってる画が浮かぶ曲だったんですね。でも、今はライブやりたくてもできへんし、見たくても見れへん状況で、ライブに行きたくさせるような曲を出すのも変なタイミングかなと思ったんです」
 
――そうなんですね。
 
「でも逆にすっごいライブ感がある曲を出して、いつかライブハウスでできたらいいなとか、ライブハウスで聴けたらいいなと思ってほしくて、この曲にしました。やっぱりずっとライブハウスでライブをやってきたんで、この自粛期間中、知り合いのライブハウスとかずっと心配で。9月に太陽と虎でできるのは、めちゃくちゃ嬉しいです」
 
――『楽園』の歌詞は、コロナのことも影響していますか?
 
「そうです。最初はもう、ノートに愚痴みたいに色んなことをバーッと書いて完成させた歌詞だったんですけど、めちゃくちゃ不満だらけで、暗いし、救いがなかったんです(笑)。でもそれはちょっと違うなと思って。もちろん自粛期間のことだけじゃなくて、今までのことや、今の自分の状況も考えながら作りました」
 
――葛藤や苦しみを感じるのは、過去の経験を書いたから?
 
「学生の頃はすごい楽観的に生きてて。学生なりの悩みがあるんですけど、特に俺なんかは、“音楽やって稼いだるぜ!”みたいなとこが少なからずあったんで、いざ世間に出てみるとスムーズにいく事ばっかりじゃないし、むしろ悩むことの方が多いし、打ちのめされるわけです。多分今後も引き続き、打ちのめされ続けるわけですけど(笑)。それで悩んでることも、そのまま歌詞に書いちゃったらいいんじゃないかなという気持ちと、音楽があるからいいよねという気持ち。思ったままを伝わるように書いた感じですね」
 
――“楽園なんて存在しない”と言い切る理由は?
 
「ちょっとこざかしいんですけど、旧約聖書にアダムとイブが楽園を追放されたという話があって」
 
――あ!!……それでリンゴなんですね!
 
「そうそう! だから“楽園はこの世にはないよね”みたいなことを考えながら書きました」
 
――なるほど! 私、リンゴはビートルズのオマージュかと思ってました! “オープリーズヘルプミー”と言ってますし。
 
「あ、それは完全にビートルズです」
 
――そうなんですね!(笑)。アダムとイブは最初に創られた人間だけど、禁断の果実を食べてしまい、生まれた楽園から追放される……歌詞の意味を知ると、深いですね。“金輪際救われはしない”とか。
 
「ありがとうございます(笑)。金輪際は仏教の話で、“これ以上下はない”みたいな意味なんですけど、アダムとイブはキリスト教で、そういう引っかかりを与えたら、もしかしたら気づいてくれる人がいるかな、とか思いながら」
 
――ジャケットの緑のリンゴのイメージは?
 
「リンゴはアダムとイブのお話からきてて、いつもアートワークに携わってくれるアートディレクターの寺澤(圭太郎)さんと話しながら決めました。寺澤さん的には、ジェフ・ベックの『Beck-Ola』がイメージらしいです。俺、アート方面に関してすごいサイケデリック趣味があるんですよ。だから『楽園』の字体も、ゆらゆら帝国みたいな感じにしたくて」
 
――なるほど。MVもサイケっぽいですね。
 
「寺澤さんと俺は音楽的な趣味が結構似てるんです。だからお互い好きなサイケ部分が爆発したってことですよね(笑)」
 
――ビートルズもサイケですもんね。
 
「ジャケットもMVも、いろんな元ネタがあります。MVはThe Strokesの『Threat Of Joy』という曲の、一瞬背景が真っ暗になって演奏するシーンとか、プライマル・スクリームの、ライティングがチカチカ光る度に画面が切り替わる映像があって、それも参考にして、ずっとライトが動き続けてるMVにしたんです。あとは演奏シーンでThe Jamを参考にしたり。色々やってます」
 
――1stアルバム『webbing off duckling』と2ndアルバム『1994』は初期衝動で作っていて、『楽園』は3rdアルバムへ繋がる作品というところで、どういうふうに作ろうと思われていましたか?
 
「やっぱりもう初期衝動だけでは作れなくなってます。でも、1番最初のデモを作る段階では、頭で考えた理路整然とした良さよりかは、理屈ではよくわからないけど感動できる良さがあるギタープレイだったり、ベースのフレーズ、ドラムのパターン、メロディー、言葉、何か1つ引っかかりがあるものから作っていくようにしていて。それは前から変わらずなんですけど、曲を練ったり広げる部分で、前よりもっと緻密になっていってる。全員参加で話し合うようになって、細かい作業が増えたり、片っ端から色んなアレンジを試したり、曲の長さを変えてみたり。前はもっと衝動的に作ってたけど、頭で作る部分と最初に感動した部分を大事に持ちながら曲を作っていく方法に変わりましたね」
 
――今回、その最初に感動した部分は?
 
「最初はデモのフレーズをギターとドラムで作ってたんです。まずそれがあって、すごく良いけど、衝動だけだからちょっとチープな感じがする。1枚目に出すなら良いかもしれんけど、今同じようにやるのはちょっと違うなというので、1回ボツになったんですよね。で、後になって“でもこれ良いな”という話になって、もう1パートカッコ良い要素を増やそうと言うので、あのベースラインを思いついたんです」
 
――あれすごくカッコ良いですね!
 
「そうそう。“天才かな!”と思ったんですけど(笑)」
 
――天才です! すごく耳に残ります。
 
「最高ですよね。最初に思いついたデモの方は、ちょっとオルタナとかグランジ、パンクっぽい感じで、あのベースラインはポップなメタルみたいなイメージだったから、どうやってくっつけようかと。まずトラックができて、そこに、“ハンマービート”というドラムのカッコ良い要素を足して、全楽器最高の状態にして、曲の構成も詰めながら作りました。デモの段階からレコーディングまでの詰める作業を、より濃密にした感じですね」
 
――ハンマービート。
 
「ちなみに叩くのめっちゃ大変らしくて。うちのドラムは全力で叩くんで、毎回死にそうになりながらやってて(笑)。2ヶ月ぐらい毎日スタジオ入って練習したと言ってました」
 
――かなり練りこんで作られたんですね。
 
「最終的には全員が良いと思う方を選んでいくんですけど、それが見つからなかったらもう1回考えるし。2分半しかないけど、めちゃくちゃ色々詰まってる曲ですね」
 
――今回もヨシオカトシカズさんがプロデュースで、今回は編集一切なしの一発録り。
 
「これまではギターを重ねたり、部分的に別録りする瞬間があったんですけど、今回は本当に一切編集なしの、切れ目なしの音です。ヨシオカさんも20年エンジニアやってきて初めてと言ってました」
 
――目指したわけじゃなく、たまたまそうなったと。
 
「もちろんいつもそれができたら1番いいんですけど、何回も聴けるクオリティの高さが音源にとっては大事なんで、一発録りしたとはいえ、そこからより良くするために色々やるのが普通だったけど、今回は切ったりしない方がカッコ良いというので、そのままになりました」
 
――しかもこの楽曲は3rdアルバムの制作の皮切りになっているんですね。
 
「します! ずっと曲作りしてます」
 
――今、どういう気持ちで曲作りに臨んでいらっしゃいますか?
 
「むずー、って思ってます(笑)。もちろん毎回、前作より良いものを出したいじゃないですか。毛色が違う曲だとしても、前に出した曲には負けたくない。良いのを出せば出すほど苦しんでいく」
 
――自分の中でハードルが上がっていく。
 
「そうそう。だからもうとにかく頑張ってます(笑)」
 
――今は曲をたくさん作る段階なんですか?
 
「曲のかけらを作るのは常にやってるんですけど、かといってちゃんと形になる、皆の琴線に触れるものはやっぱり少ないし、さらにそこからどのタイミングでどういう曲を出せばいいのかということも考えると、もっと狭くなる。“とりあえず頑張って曲を作るしかない!”という気持ちです(笑)。多分1stの時も2ndの時も、そんな気持ちだった気がする。でもほんまにそれしかないと思うんですよ。とにかく良いものを作って、その時1番良い曲を良いタイミングで出すのを続けて、アルバム完成したら皆で乾杯して、次のアルバムの制作頑張りましょう! という感じですよね(笑)」
 
――コンセプトやテーマを掲げるよりは、その都度自分たちの中でベストな曲を作っている。
 
「1stと2ndはある程度、今まで生きてきた自分の要素だけで作れてた部分があると思うんですけど、今回は曲においても歌詞においても、今の自分や、これから何をするか、どういうことを自分の中に取り込んでいくかが大事になると思うし、そうしないと成長できないなって。まだ狙って何かを作れるほどの余裕はなくて。目の前の1つ1つを頑張って作る感じです」
 
――ちなみにアルバムの完成予定は?
 
「まだはっきりとはわからず(笑)。まあでも確実に作ってるし、進んではいるんで。現在進行形です」

Text by ERI KUBOTA 



(2020年9月25日更新)


Check

Movie

Release

“プラスに捉えて聴いてほしい”と語る
6未来のアンセム
6th デジタルシングル『楽園』
6配信中!

『楽園』

《収録曲》
01. 楽園

Profile

神戸発3ピースバンドw.o.d.(ダブリューオーディー)。圧倒的なライブパフォーマンスとその音楽センスがジワジワと口コミで広がり続け、各地にw.o.d.中毒者続出中。これまで開催した自主企画イベントは、各地チケットSOLD OUT。今一番ライブが観たいバンドとして、ジャンルを問わずあらゆるバンドマン・関係者からも注目を浴びている。8月7日、6thデジタルシングル『楽園』を配信リリース。この曲を皮切りに3rdアルバムの制作に入った。

w.o.d. オフィシャルサイト
http://www.wodband.com/


Live

『w.o.d. presents “スペース・インベーダーズV”』
10月10日(土)チケット一般発売
Pコード185-508
▼11月19日(木) 19:00
Shangri-La
3300円(整理番号付、ドリンク代金別途要(600円))
[共演]SPARK!!SOUND!!SHOW!!
[問]GREENS■06-6882-1224