インタビュー&レポート

ホーム > インタビュー&レポート > 「見えない鎖に繋がれている人たち、 何かに縛られて本当の自分を見失っている人たちに向けて “自由”を表す“Unchained”という言葉にたどり着いた」 新たなチャレンジとライブ感に引き込まれる Maica_n、メジャー1stEP『Unchained』インタビュー


「見えない鎖に繋がれている人たち、
何かに縛られて本当の自分を見失っている人たちに向けて
“自由”を表す“Unchained”という言葉にたどり着いた」
新たなチャレンジとライブ感に引き込まれる
Maica_n、メジャー1stEP『Unchained』インタビュー

昨年、初の全国流通盤『秘密』がリリースされ、Spotifyの『Early Noise 2019』に選出されるなど、ネクストブレイカーとして注目されてきたシンガーソングライターのMaica_n(マイカ)。'00年生まれの19歳で、幼少期から1960~70年代の洋楽(ビートルズ、エリック・クラプトン、ジェイムズ・テイラー、etc.)に親しんできたという。生のグルーヴを軸とした音楽性や良質なメロディーラインには世代を問わず自然と引き込まれてゆくのではないだろうか。さらに歌の中から同時代リスナーの共感を呼ぶ繊細な視線や息遣いが伝わってきて、聴けば聴くほど心を掴まれる存在なのだ。ぴあ関西版WEB初登場となる今回、5月20日リリースのメジャーファーストEP『Unchained』の話題を中心に、音楽に向かう姿勢と密かな野望を語ってくれた。

このEPは曲順にすごくこだわっていて
ライブのセットリストを組むように考えた
 
 
――昨年、初の国内流通盤『秘密』がリリースされてから、Spotifyの『Early Noise 2019』に続いて『Early Noise 2020』にも選出されるなど、注目度もさらにアップしてきていますが、何か意識するようになったことはありますか?
 
「音楽を作るときの意識はそんなには変わらないですけど、一人一人の聴き手のことをより意識するようにはなりました」
 
――メジャー第一弾となるファーストEP『Unchained』はファンキーでグルーヴィな『HYW 55』から勢い良く始まりますね。
 
「そうですね。ライブでも一番最初にやることが多い曲なんです」
 
――『HYW 55』のようなナンバーは、昨年リリースされた初の全国流通盤『秘密』にはなかったような曲だと思いますが、楽曲自体は前からあったのですか?
 
「『HYW 55』は、ミニアルバムが作ることが決まって、せっかく作るならライブで1曲目にやれる曲を作ろうというアイデアが製作チームから出たんですよ。「Maica_n」の作品には、クレジットにもあるように、Faithというアメリカ在住の共同制作者がいまして、彼女がテーマを出してくれて、そこからできた曲です」
 
――ライブのセットリストのような構成にしようと思ったのはなぜですか?
 
「やっぱり、ライブは自分にとってとても大事だなと思っているからです。ライブに来て生で音楽を感じてもらいたいですね。だからこそ、音源自体もライブを意識したほうがいいんじゃないかなと。ライブに来ているような感覚で聴いてもらえたらいいなと思います」
 
――今作にはアレンジャーに、根岸孝旨さん、斉藤和義さんという錚々たるミュージシャンが参加されていますが、レコーディングの時はどのような印象でしたか?
 
「大先輩なので、改めてリスペクトの気持ちが高まり、本当に凄いなと思いながらレコーディングさせてもらいました。『HYW 55』『Unchain』『Flow』はデモ音源からすごく変わっているので、改めて聴き比べてもとても面白いなと思います」
 

 
――マイカさん自身はギターの弾き語りがベースになっていると思いますが、根岸さんや小田原さんと一緒にレコーディングすることで、よりバンドっぽいグルーヴが生まれたのでしょうか?
 
「そうですね。全部生楽器でお互いの顔を見ながら演奏しているので、ライブ感やグルーヴ感も出ていてライブっぽい音源になっていると思います。根岸さんと小田原さんは普段のライブでも一緒にやらせてもらっているので、レコーディング自体もすごく楽しくやらせていただきました」
 
――斉藤和義さんはいかがでしたか?
 
「斉藤さんとはレコーディングで初めてお会いしました。とても穏やかな方ですが情熱もあって、静かなパッションを持っている方だなと思いました。お話をする時もとてもやさしく聞いてくださって、自分のアイデアを聞き入れてくださいました。斉藤さんは、“斉藤和義サウンド”というものが確立されているので、私の作品のギターのフレーズや音色の中に、そのエッセンスを加えてもらえました。今回一緒にレコーディングさせてもらって、とても光栄でした」
 
 
 
実体験も多いので、自分の気持ちを大事にしながら歌っています
 
 
――歌詞はどのように書いているのですか?
 
「毎日日記をつけることが習慣になっているので、日記が歌詞になることが多いです」
 
――『Go my way』の「この時代の流れをすり抜けて行く」というフレーズがすごく気持ち良く心に響いてきました。
 
「ありがとうございます! 自分にはどうにもできないことや逃れられないこともあると思うんですけど。“自分の気持ち次第ですり抜けていけるよ”っていうメッセージを込めています」
 
――『Unchained』というEPのタイトルの由来はなんでしょうか?
 
「制作チームとアルバムタイトルについて話し合っていた時に、“自由”というワードが誰からともなく出て……本当の自由というものをどういう言葉で表現しようかという話になり、見えない鎖に繋がれている人たち、何かに縛られて本当の自分を見失ってしまっている人たちに向けて、一番強いメッセージ性を持った”自由”を表す言葉として、”Unchained”という言葉に辿り着きました。私自身も1曲1曲レコーディングで歌っている時に、新しい自分が見つけられて、とても意味のある作品になったと思います」
 

 
――その中で、『Unchain』という曲はどういう位置付けなのですか? 
 
「『Unchain』はこのEPの表題曲です。この曲はFaithが実在する人物をもとに大枠のテーマを書いてくれました。その歌詞の背景や意味を説明してくれて、そこに私の第一印象として、今の時代は必要以上に情報がたくさんあふれているので、みんなまわりの声を気にしていて、自分を出せなかったり、噂や嘘に惑わされていることがたくさんあるんじゃないかなと思っていて。そういう周囲の声に囚われたりしないで、“そのままのあなたが一番かっこいいのだよ”という私なりの解釈をしました。そういった思いをギターにも歌にも込めているつもりです」
 
――たしかに今の時代はSNSに惑わされることも多いですからね。
 
「そうですね。日々思います」
 
――マイカさんの歌を聴いているとなんだかフラットな気持ちになれる気がします。
 
「ありがとうございます。そこを大事にしているというか、第一に音楽を楽しんでほしいというのもあるのですけど。聴いている人が、自分の歌で少しでも気持ちが明るくなって、救われてくれたらいいなと思っていて。ギターを引き出した頃から、また曲などを作り始めた当初からそういう思いがあるので、そう言ってもらえるのはすごく嬉しいです」
 
――マイカさんのボーカルは気負い過ぎないナチュラルな感触があり、そこも魅力だと思います。歌う時に何か心がけていることはありますか?
 
「歌う時に一番大事にしているのは、言葉やフレーズを大切に歌うこと、誰かに伝えているという気持ちとか、やっぱりフィーリングがすごく大事だと思うのです。自分の歌っている時の心境は、聴いている人に絶対伝わるだろうなって思うのです。実体験も多いので、自分のことを歌っている曲の時は、自分の気持ちを大事にしながら歌っています」
 
――ラストの『海風』は特に余韻が残るナンバーですが、この曲ができたのはいつ頃ですか?
 
「私自身が曲を作り始めたのは中学生の頃なのですけど、初めて曲として形にできたのがこの『海風』なんです。だからこそ、このメジャー1stEPという自分の中で大事になる作品に収録することができて、すごく嬉しいなと思っています」
 
――これまで、ライブではやっていた曲ですか?
 
「はい、ライブでは何度かやっていましたが、音源になるのは初めてなのです。ライブの時は、自分でギターで弾き語りをすることが多かったんですが、今回ピアノアレンジでストリングスが入ったことによって、より壮大な曲になったなと思います」
 
――どこか郷愁感のようなものを感じます。
 
「『海風』というのは“海”がテーマになっていて、自分が育った徳島県の海を思い浮かべながら作りました。自分が曲を作る時、聴く人に余韻を残したいなと思っていて、その人自身の曲になってほしいなと思いながら書いているので。聴いた人自身のドラマに当てはめてもらえたらいいなって思います」
 
――そんなふうに考えるようになったきっかけがあれば教えてください。
 
「私自身、ふだんから自分の思っていることや自分の意見をあまり言わないタイプなので、まわりの意見を優先することが多くて。自分の気持ちをうまく吐き出せないから、こうして曲を書き始めたというのもあるので。誰かにとっても、私の音楽がその人自身の吐き出せない気持ちを代弁しているような曲になれたらいいなって思っています」

 
 
バンドや弾き語り、いろんなバリエーションで
音楽を届けられるライブになるんじゃないかな
 
 
――1960~70年代の洋楽ロック・ソウル・ポップスを幼い頃からよく聴いていたそうですね。マイカさん自身の曲も時代を超えて聴き手に寄り添い、ずっと残っていくものを目指しているのですか?
 
「やっぱり、自分が今まで聴いてきた音楽が、自分が生まれる前の音楽で、自分が生きてなかった年代の音楽だけど、いまだに何回聴いても良いなって思えるので。やっぱり素晴らしいものって、時代をも超えて残っていくと思うんです。自分の曲も何十年、何百年先の人にも聴いてもらえるようなアーティストになりたいなと思います。だからこそ、自分自身が良いと思えるものを信じて発信していきたいなと思います」
 
――『Unchained』が完成して、現在の心境は?
 
「『Unchained』はメジャーという舞台に踏み出す大事な作品なので、ひとりでも多くの人に届いたらいいなと思います。今まで以上にたくさんの人に聴いてもらえる良い機会だと思うので。これからも聴き手のひとりひとりを大事にしながら、作品を作っていきたいです」
 
――そのために工夫していることはありますか?
 
「普段から自分自身もいろんな音楽を聴いて、聴き手の気持ちを忘れないようにしています。自分の作品を作るようになってから、作り手側の意識で聴いちゃうときもあるんですけど、やっぱり本当にフラットな状態で一回聴いてみるようにしています」
 
――近い将来、マイカさんが実現したいと思っていることがあれば教えてください。
 
「やっぱり武道館でライブをしたいなと思っています。次に開催するワンマンライブツアーは『LIVE 2020~Approach to…』というタイトルなんですが、“Approach”というのは、何かに近づくという意味もあるので、“Approach to…”の後には“武道館”という言葉が隠されているんです。このツアーが武道館に向けての第一歩になるようにという意味をこめてこのタイトルにしました」
 
――そうなんですね。マイカさんにとって、武道館とはどんな場所ですか?
 
「大好きなエド・シーランの武道館公演を観まして。武道館という空間がすごく特別に映ったんですよね。その時、“自分もいつかこのステージに立ちたい!”と思ったので、武道館はひとつの目標の場所です」
 
――この後に控えているワンマンライブツアー『LIVE 2020~Approach to…』はバンド編成で行われるのですか?
(※「6月に予定していたワンマンライブツアー『LIVE 2020~Approach to…』は、無期延期となりました)
 
「はい。小田原さん、根岸さん、中内さん、キーボードは大先輩の友成さんとバンド編成でやらせてもらいます。バンドや弾き語りなど、いろんなバリエーションで音楽を届けられるライブになるんじゃないかなと思います。今回が自分にとって初めてのワンマンライブツアーなので、本当に全力で、今まで得たことを余すことなくみなさんに伝えたいなと思っています!」

text by エイミー野中



(2020年5月20日更新)


Check

Release

1st EP『Unchained』
2020年5月20日(水)発売

【初回限定盤(CD+DVD)】
2300円(税別)
IZL-1764

【通常盤(CD)】
1800円(税別)
VICL-65366

《CD収録曲》
01. HYW 55
02. Unchain
03. Go my way
04. Flow
05. 海風

《DVD収録内容》
・Unchain(Music Video)
・Maica_n Special Live Session

Profile

マイカ…2000年9月14日生まれ(19歳)O型、佐賀県出身 徳島県阿南市育ち。幼少期より父親の聴く音楽に触れ、The Beatles、The Band、Donny Hathaway、Eric Clapton、Sheryl Crow、Rickie Lee Jones、James Taylor、Boz Scaggsなどを聴きながら育つ。初めて買った洋楽アルバムはBen L'Oncle Soulの「Ben L’ Oncle Soul」。中学に入ると、Elvis Presley Stray Catsなどを好んで聴くようになり、同時期にギターを使って作曲をはじめるようになる。2019年6月、初の全国流通盤「秘密」をリリース後、Spotify「Early Noise」に選出。その後多数のフェスに出演し、2020年には Spotify「Early Noise2020」にも選ばれる。 また、数々の音楽シーンを支えてきた名プレイヤーとのセッションでも話題になっている。メジャー1stEPから『Flow』を3月18日に、『Unchain』を4月22日に、先行配信。メジャー1stEP『Unchained』を5月20日にリリースする。6月2日から初のワンマンライブツアー『LIVE 2020 ~Approach to…』を開催予定。

Maica_n オフィシャルサイト
http://maica-official.jp/