「成熟したらロックンロールじゃない
64歳になっても、歌う瞬間は18歳になる」
祝デビュー40周年!HOUND DOG、大友康平インタビュー
1980年のデビューから、今年で40周年を迎えるHOUND DOG。『ff(フォルティシモ)』『BRIDGE~あの橋を渡るとき~』『Only Love』など、誰もが耳にしたことがある数々の大ヒット曲を世に送り出してきた国民的なロックバンドである。結成時からの中心人物であり、唯一のオリジナルメンバーである大友康平は俳優としても活躍しているが、「ロックンロールは命と思ってやってきた。未だに答えも到達点も無い!」と断言。64歳となった現在も“歌う瞬間は18歳”となってロックンロールの真髄を体現し続ける。“ストロングスタイル”と称する熱いステージングで圧倒するライブに懸ける思い、3月に開催される“HOUND DOG 40th Anniversary LIVE 2020”『First Finale』への意気込みを訊いた。
ロックンロールの命はとにかくビートと歌声
――HOUND DOGといえば“パワフルで熱いライブ”という印象が強いです。特に1980年代の超人的なライブ活動とその動員力は凄まじいですね。
「うん。たくさんライブをしたくて。昔は、日本全国を回ってましたし、大阪でも吹田や豊中、八尾、堺まで行きました。大阪城ホールで1万人集めて一回やるんだったら、1000人が入る場所で10回やりたいなって、そういう感じで。東京や大阪の大きい会場に行くんじゃなくて、“みんなが住んでる街に行くんだ!”というテーマでツアーをしたこともありました」
――大友康平さんがセンターマイクに立って歌えば、その声と存在感で瞬時にもっていかれます!
「ロックンロールの命はとにかくビートと歌声です。ドラムとボーカルが上手かったら成立するんです」
――そもそもHOUND DOGの結成当初は、大友さんがドラムボーカルだったんですね。
「そうなんです。昔はギターとベースとドラムのトリオでした」
――ドラムを叩きながら歌うというスタイルをやめたのは何かきっかけがあって?
「僕らの時代は(ローリング・)ストーンズ、ビートルズ、レッド・ツェッペリン、ディープ・パープルといった、今や古典的なロックバンドが現存していてものすごい影響力がありました。そういうバンドを中学生くらいから聴いていたんですけど、高校2年生の時に矢沢永吉率いるCAROLが出てきて、日本語のロックがカッコイイなと。その後、矢沢さんがソロになって歌うのを観て、とにかくマイクスタンドを振り回して歌ってみたい!と思ったんです。それが大学4年生の時です。僕は一人っ子だったんで、(実家の)大友商店を継がなければいけなくて。最後ぐらいは、(ドラムの)スティックを置いてマイクスタンドを振り回して歌いたいと思ったんです。その最後のコンサートが仙台の音楽関係者の目に止まって、“プロでやってみないか”って声を掛けられて、デビューすることになりました」
――それから今年でデビュー40周年を迎えます。
「キャリアは時間の積み重ねですから、若い人には無い年輪みたいなものはあると思います。でも、ピュアな若さ、体の回復力、声帯の強さは若い人にはかなわない。自分が20代前半の頃は、たとえどんな状態でも声は出たけど、60歳を超えたらいかに一本一本に集中するか。今は良いライブをするために、ジムで週3回走って、できるだけボイストレーニングもしています。ずっとついてきてくれているファンの人は厳しいですから。ライブはある種、(ファンとの)せめぎ合いというか、うちの場合はお客さんのパワーもすごい。ロックンロール・ショーというのは、やっぱりお客さんがもうひとりのメンバーですからね。お客さんがバーンと興奮して一体感がないとだめなんです」
――ちなみに、来年2021年には大友さんが65歳になられて、HOUND DOGは結成から45周年を迎えます。そういう節目としてなにか意識されることはありますか?
「いや、毎年毎年が勝負だったのでね。まあ、ふと振り返ってみると、アマチュアから数えて45年というのは、さすがに長いと思いますが…。それほど、僕にとってはロックンロールというのはものすごくインパクトがあったんです。今でも飽きないし。未だに答えも到達点も無いんです」
――答えも到達点も、未だに無いのですか?
「たぶん、無いんじゃないですかね。成熟したらロックンロールじゃないから。青臭いガキの音楽がロックンロールなんだから。64歳になっても歌う瞬間は18歳か20歳になるわけです。64歳のロックンロールなんてありえない、と僕は思います。ロックンロールって、“永遠の宿題”っていつも言っているんですよ。たぶん、答えはない。それを受け取るほうがどう感じるかっていうことが答えかもしれないし。発する側には明確な答えはないですね」
――たしかに、今までいなかったですよね。60代でHOUND DOGのようなスタイルでやっているバンドは。
「そうなんです。僕らが30代の頃は、ローリング・ストーンズが唯一続いてるバンドだったんです。あの頃のミュージシャンやだいたい20代でドラッグや事故で亡くなってますから。アグレッシヴなロックンロールバンドをずっと続けているのはストーンズだけですね。で、その次がHOUND DOG(笑)」
自分にはパワーとパッションで押していく
“ストロングスタイル”が合っている
――ライブのサポートメンバーは2015年の35周年の時から同じメンバーですね。
「そうです。本当に安心して歌えるので、全幅の信頼を持ってやっています。これまでアコースティックライブをやったこともあるし、(HOUND)DOGの曲をちょっとジャズ風にアレンジしてやってみたり、自分の音楽の底辺を広げようと思っていろいろやってみたけど。やっぱり自分にはパワーとパッションでガンッと押していくんだ!っていう、ストロングスタイルというのが合っているなと。それを4年前から始めて。東京、大阪で2本ずつ、全4本やります。“俺はこの四日間のために生きてるんだ”って。それぐらいキザなことを言ったことがあるんですけど」
――今年の“HOUND DOG 40th Anniversary LIVE 2020”は『First Finale』というタイトルですが、ここに込められた意味は?
「会場に足を運んでもらわないと、その意味はわからないぞ!といいたいですね(笑)」
――今回のステージの構想などは?
「常にベスト・オブ・ベスト。みんなが聴きたい曲は全部やります。おかげさまで、他のロックバンドに比べてヒット曲は多いので。どこを削っていくか、それは嬉しい悩みですよね(笑)」
――東京の会場となる豊洲PITは、東日本大震災復興のためのチャリティーイベントの活動拠点として建てられたコンサートホールです。大友さんは宮城県のご出身ですが、震災についてどんな思いがありますか?
「いつどこで震災が起きてもおかしくない国に住んでるわけですから。そういう時に僕ができることは歌を歌うことなんです。2011年の東日本大震災の時は、最初に宮城県塩竈の避難所に行って、『上を向いて歩こう』と『ff(フォルティシモ)』をアカペラで歌いました。歌には自浄作用があると思うので。被災された方が少しでもほっとされたり、元気になってもらえたり、癒されたりしてもらえればと思って。自分ができることはそういうことだなと。 100の言葉より、一曲の歌を歌うことだなと思います」
――やっぱりファンの方々は、『ff(フォルティシモ)』や『BRIDGE~あの橋を渡るとき~』を生で聴いて、“鼓舞されたい!”っていう思いがありますよね。
「そうですね。(ライブに)20年ぶりに来た人が『BRIDGE~あの橋を渡るとき~』のサビを聴いて、“やっぱりコレだよ!”って、瞬時に(聴いた)当時のことが蘇って、それがまた明日につながるんだと思います。ロックンロールっていうのは起承転結がはっきりしていて、歌舞伎みたいなものだと思っているんです。最初にのせていって、中盤でちょっとゆったりさせて、そのあとバラードをきかして、もう一回ロックンロールでもっていくっていう。それは変わらないと思うんです。でも、去年とまったく同じセットリストでやったとしても、今年はまた違うんですよね。『ff(フォルティシモ)』にしても、毎年聴き手の感情も違うだろうし、歌っている側の感情もあるし、いろんな『ff(フォルティシモ)』があったりするわけで。ぼくは同じ曲をやったとしても、違うことをやる自信があるし、絶対満足できるライブだと自負しています」
――今年の、この日、この時しか観れないパフォーマンスが観れると。
「そうですね、東京と大阪で二日ずつありますから、必ず1日ずつ変えるわけです。ライブって一番大事なのが流れなんです。曲をちょっと入れ替えると流れがちょっと変わるんです。どうやって開けて、どうやって締めるか。ポイントはそこですね。一曲目のイントロからお客さんの心を鷲掴みにしないと」
昨年は名前を“いすゞりんご”に変えようかと思いました(笑)
――デビュー当時から長年応援してきたファンの方だけでなく、昨年はモノマネ芸人のりんごちゃんの影響や、いすゞ自動車のTVCMで大友さんのことを知ったという方も多いと思いますが。
「昨年は名前を“いすゞりんご”に変えようかと思いました(笑)。年末年始の集中スポットはホントにすごかった。お正月に家で酒を呑んでると、自分の声が聴こえてくるんです(笑)。でもそれがきっかけになって、数人でもいいから実際のライブを観にきてもらって、“すげーな、この60を超えたオヤジ、こんなことやってんだ”って思ってもらえたら。とにかくコンサート会場に足を運んでもらわないと(笑)」
――若い世代のリスナーにはどんなことを伝えたいですか?
「今はヒップホップも人気があるし、若い人の歌やソングライティングもすごいなって思うんだけど。ロックンロールっていうシンプルなビートミュージックを若い人にも感じてほしいですね。HOUND DOGは3コードだけのロックンロールに特化するわけじゃなくて、もっとコードも多いし、メロディラインも豊富だけど、僕は3コードのロックンロールに刺激を受けてHOUND DOGを結成して、曲を作ってきたわけですから。そのベーシックな部分が伝わるといいなと思っています。僕はロックンロールに関しては、本当に“命”という感じでやってきてるんで。自分が総監督で主演という感じですから(笑)。それが良ければ自分が評価されるけど、ダメな時は俺がまったくダメなんで、だからやりがいもある。自分が(ロックンロールの)継承者として、ロックンロールは絶対に死ぬまで続けたいと思います」
text by エイミー野中
(2020年2月14日更新)
Check