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ボーカルであり作詞作曲を担当するキイチビールが活動休止を発表
バンドを止めずに4人で動き続ける強い気持ちと
キイチビールへの強い愛を語る
キイチビール&ザ・ホーリーティッツ、KDインタビュー

キイチビール&ザ・ホーリーティッツは、ここ2年ほど音楽業界、音楽ファンの間でも話題になっている若手の注目株バンドである。去年5月に2ndフルアルバム『鰐肉紀譚』がリリースされたばかりで、誰もが順風満帆だと思い込んでいたが、7月の頭に、ボーカルであり作詞作曲を担当するキイチビールは活動休止を発表した。バンド名にもなっているボーカルがバンドからいなくなるというのは衝撃だったし、それ以上に衝撃だったのはバンドが止まらなかったこと。コーラス担当のKDが後を継ぎ、そのままバンドは止まらず動き続けている。去年前半にKDがサイドギターを少し弾くこともあったが、あくまでコーラス。もちろんスケジュールは詰まっている訳で、穴を空けないというのは素晴らしいことだが、それで成立してしまうとキイチビールが戻って来にくいのではと思ったのも事実。当たり前だが、KDがサラッとケロッとした気持ちでボーカルを楽しんでやっているとも思ってはいなかったが、一度ちゃんと話を聴きたいと考えていた。なので、ここでは赤裸々にキイチビールの活動休止が決まるまでの経緯や、どのような想いでボーカルを継いでいるのか、そしてキイチビールへどんな想いを持っているのかをストレートに聴いている。これを読んでいただくと、彼女の断腸の想い、そして覚悟決意、絶対にバンドを止める訳にはいかないという強い気持ちとキイチビールへの強い愛をわかっていただけると思う。だからこそ、大きな声で「キイチ君!帰ってこいよ!」と、この記事から呼びかけたい。あなたがいつでも帰って来れる様に、KD始めメンバー全員がキイチビール&ザ・ホーリーティッツというバンドを大切に大事に守っているから、「キイチ君!帰ってこいよ!」。

――去年5月に2ndフルアルバム『鰐肉紀譚』がリリースされたばかりなのに、7月頭にはボーカルであり、全曲を手掛けるキイチビール君が活動休止に入ってしまいましたよね。バンド名にもなってる人がいなくなるというのは衝撃だったのですが…。
 
「本当に突然の事だったので、めちゃくちゃびっくりしました。このバンド終わってしまうのかなって…。6月29日のツアーファイナルだった渋谷WWW Xのリハ終わりに、楽屋で『終わったら話がしたい』と言われたんです。その頃は様子がおかしかったし、練習も来なかったりとか、本人の中で揺れてる感じでしたね。残りの4人で話し合ったりもしましたが、キイチ君が何を想っているか今でもわからないです。そのツアーでも大阪ワンマンは楽しい感じも伝わってきて良かったり、でも、名古屋では落ち込んでいたりしていて。それでも、ファイナルの渋谷は良かったんです。常にキイチ君の様子は伺ってましたが、繊細だけど器用な部分もある人だったので、いろいろ無理しているのかなとは心配していました。キイチ君の活動休止がほぼ決まったのは、6月29日の渋谷終わりのミーティングですね。だけど、9月までライブが何十本とあったので、やった方がいいとは言ったんですが、『無理だから…今日で一旦終わりにしたい』の一点張りで…」
 
――その後、一発目が7月6日の大阪での「見放題」への出演でしたよね。
 
「そこから4人でやろうとなって、その方向にシフトしてからは、キイチ君と連絡は取ってないですね」
 
――今、思い返すと5月のアルバムキャンペーンの時点で突然キイチ君が坊主頭になったりと異変を感じることはありましたよね?
 
「その時点で『次からライブは行かない』とは言われてましたね。でも、名古屋でイベントに出る予定があったので、4人でも30分の出演時間をできるように想定して準備はしていました。でも、説得したら『やる!』となって、『やんのかい!』とは思いましたけど(笑)」
 
――ちゃんと想定して準備していたのは凄いですね。今、KDちゃんがボーカルになって、作詞作曲した楽曲(『夜明けをさがして/さよならともだち』が配信シングルとしてリリース中)も出始めてますが、いつからオリジナルは作っていたのですか?
 
「年明けから作り出してはいたんですが、特にキイチビール用では無かったですね。『さよならともだち』は5月にできました」
 
――タイトルからそうですが、何も包み隠さずキイチ君への想いをそのまま歌にしている楽曲ですよね。
 
「変に明るく振る舞うより、そのままの感情を歌にした方が良いなと思いましたし、でも、お客さんにいろいろ詮索させてしまうのかなとも考えましたね。実際、曲をメンバーやスタッフに聴かせたら、『やりなよ!』と言ってくれて。ただ、やはりファンのみなさんがどう受け止めるのかなと…。ライブに来なくなったり、違うと言われたりするのかなと思っていたら、意外と応援してくれる人が多くて、音楽が好きな人に恵まれているなと思いますね。キイチ君が戻ってくるまでの埋め合わせと見られるのではなくて、今は今で良いと言ってくれているので嬉しいです。肯定されている感じというか、やっていいんだなってというのは、9月の大阪の『OTODAMA(音泉魂)』で感じました。最初の7月の頃は、何か起きたのかなと凄く真剣にお客さんに見つめられる独特のムードでしたね」
 
――キイチ君が活動休止しても、バンドを止めなかったのは責任感ですか?
 
「責任感というより、自分たちでやりたいという気持ちが一番ありました。もちろん、やっていいのかなとは思いましたが…。最初は私もみんなもキイチ君の休業に困惑してましたが、私は自分で曲を本格的に作るようになってからは、キイチ君の事もわかってくるようになったんです」
 
――それはフロントマンとしての心境みたいなものですか?
 
「そうですね、フロントマンだけが感じ得る責任感というか不安があるんだなってことです。キイチ君を初めて大学のサークルのライブで観た時、『何ていい歌!! この人についていきたい!!』と思ったんですね。メンバーみんなもそこに魅力を感じたと思いますし。だから、私にメンバーがそこまで付いて来てくれるのかなと不安でした。でも、曲を作っていく中でいろいろとやり取りをして、いい方向に向かっているとは感じましたね」
 
――正直なところ、今キイチ君に対して、どう思っていますか?
 
「未だに何をしているんだろうって話しますし、本当に戻ってきて欲しいですけど、前以上のやる気というか、絶対にやりたいと思って戻ってきてくれないのなら、長めにお休みしてもらった方がいいのかな、とも考えています。何か本当にわかんなくて…。やってくれそうな気もするし、やらなさそうな気もするし…。うちらの事をよく思ってないのかなとか、いろいろ思って…。サラっとケロッと私はやっているように見えるかも知れないですけど、『キイチ君がいなくてもやれますよ』ではなく、いつでもキイチ君の事を考えているし、こうなった以上はやるしかないというだけなんで。バンドっていろいろなことがあるので、長く見ると歴史の一部というか。キイチ君が戻ってきたら、パワーアップして、完成なのかなって。キイチ君可愛いんですよ、だから許せちゃうというところもあって。とにかく、ここで終わりたくないんです。キイチ君はロックスターっぽくて、むっちゃヤバくて、特殊人物なんで、そういう変人に付いて行くには、まだまだバンドが途中なんですね。だから、ここで止まるなんていうのは考えられない」
 
――キイチ君が休んでる間も4人は動き続けて成長をして、そこにキイチ君が帰ってくるならとても素晴らしいですもんね。
 
「キイチ君は人当たりも良くて、誰とでも仲良くなれて、気も遣える常識人なところもあるので、こういう事態になってしまったということは、本当に深く病んでしまってるんだろうな、と思うんです。そういうことって誰にでもあることですし、どれくらい先かわからないですけど、キイチ君がまたやりたいと思ったら、何回でもやり直せますから。いつでも戻ってきていいよと思ってますし、いつでも遅くないですから。それに4人だということを知っていても、ライブのオファーを下さる方々がたくさんいて、だからこそ前へ進めてるんですよね」
 
――さっき『さよならともだち』の話もしましたが、『夜明けをさがして』もキイチ君を思い出してしまう良い曲ですよね。
 
「8月に50分セットのライブがあって、曲が無いということで作りました。他にも聴かせたい曲はたくさんあるんです」
 
――不思議なのは、KDちゃんが作った曲も、ちゃんとキイチビール&ザ・ホーリーティッツの楽曲に仕上がっていて、何の違和感も無いんですよね。
 
「このメンバーでやると、こういう音になるんです。キイチ君だけがこのバンドらしさを持ってると思ってたんですけど、自然と他のメンバーにもこのバンドらしさがあったんですよね」
 
――今でこそギターボーカルですが、最初はコーラス担当でしたよね。でも、去年ギターも少し弾き始めていたじゃないですか? あれはキイチ君に何かあるかも知れないと思って、そうなったのですか?
 
「いえいえ、それは単純にギターがもう1本あった方が良いなって。違った見せ方もできるんじゃないかと思ってのことなんです」
 
――それが今に繋がったのは偶然だけど、とても良いことだし、これからもバンドに何が起きるか本当に全くわからないですよね。
 
「キイチ君が休んでいたけど、また戻って来たという話が将来伝説になってくれる様に、今はどっしりと構えていたいです」

text by 鈴木淳史



(2020年1月21日更新)


Check

Release

2nd full album『鰐肉紀譚』
発売中 2130円(税別)
KBHT-0006
PTA

《収録曲》
01. 鰐肉紀行
02. 今夜浮かれたい
03. Tシャツ
04. こーかい
05. 日照りになれば裸になって
06. 平成がおわる
07. 透明電車が走る
08. 軽めな二人
09. なんでも知ってる女の子
10. 終電でまた会おうぜ
11. 海老肉志向

Live

『ふりそそぐ憧れ』
チケット発売中 Pコード:173-570
▼3月1日(日) 17:00
神戸VARIT.
前売-2500円(整理番号付、ドリンク代別途要)
[出演]THE TOMBOYS/ステレオガール/Laura day romance/キイチビール&ザ・ホーリーティッツ/愛はズボーン
[問]神戸VARIT.■078-392-6655

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キイチビール&ザ・ホーリーティッツ
オフィシャルサイト