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DedachiKentaが大阪で初ワンマン
若き才能を存分に発揮した夜

LA在住のシンガーソングライターDedachiKenta。山崎まさよしや秦 基博、スキマスイッチらを擁するオフィスオーガスタの新星で、オーガスタが新たに立ち上げたインディーズレーベル“newborder recordings”第一弾アーティストとして2018年11月にデビューした。昨年10月には1stアルバム『Rocket Science』をリリース、収録楽曲の『Life Line』がFM802 10月のヘビーローテーションに選ばれるなど、大阪でも知名度をぐんぐん伸ばしつつある、現在20歳の現役大学生だ。そんな彼が1月8日(水)、自身初めてのワンマンライブ『DedachiKenta presents “Rocket Science”Launch Party』を梅田・Shangri-Laで開催した。前日に東京・Veats Shibuyaでも、同じ事務所のさかいゆうとFAITHをゲストアクトに迎えて発売記念ライブを行ったが、完全なるワンマンライブは大阪公演が初めて。『Fly Away feat.Kan Sano』でフィーチャリングしたKan Sanoもゲストミュージシャンとして出演し、初めてのワンマンライブは大成功で終了した。今回はその模様をレポートしよう。なお、1月22日(水)には『Step by Step (Kan Sano Remix)』が配信リリースされることも決定している。ライブの思い出とともに、この日を楽しみに待とう。

年が明けて1週間が経ち、そろそろお正月休みから通常モードに戻ろうかというムードの1月8日。梅田Shangri-Laには新たな年の音はじめに、若き良質な音楽を耳にしようと続々と人が詰めかけた。

19:05。バンドメンバー(名付けて“Rocket Scientists” by DedachiKenta)がステージに上がり、しばらくして薄いブルーのシャツをまとったDedachiKentaが登場。大きな拍手で迎えられる。

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ポエトリーリーディングの『Rocket Science』からライブはスタート。“人生は難しいーーそれはロケット科学みたいだ。”そんな語り出しから始まるアルバムのメインテーマを謳った詩が、DedachiKentaの肉声で語られる。澄んだギターの音が会場に広がり、音源の1曲目と同じように、“Rocket Science Launch Party”の世界へと誘われる。

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DedachiKentaがアコースティックギターを持ち、『More than enough』へ。最初は本人のアコギと歌のみで紡がれていく。力強くも繊細で、透明感のある歌声がすっと胸元に飛び込んでくる。早速彼のボーカルの実力と魅力に触れ、鳥肌が立った。2番からはバンドサウンドも加わり、軽快だが分厚い音がShangri-Laを包み込む。笑顔で楽しそうに歌う姿にこちらも心が溶かされてゆく。大サビ前には1度照明が暗くなり、ドドドドド……と大きくなるドラムのビートに合わせて、ピークでパッと客電が明るく灯る。楽曲の世界観と魅力を高め、伝えるための演出が随所になされていた。
 
“あけましておめでとうございます! Welcome to Rocket Science Launch Party!”と笑顔で挨拶するDedachiKenta。“僕、大阪大好きなんです。ここで僕の最初のワンマンライブがやれること、ほんとに感謝です! ありがとうございます!”と感謝の気持ちを述べる。実はこの日の西日本は、急速に発達した低気圧の影響で、進むと押し返されそうな強風が吹いていたのだが、“大丈夫でしたか?”と心配したり、LAの大学の寮でお好み焼きを作って友人に振る舞ったというエピソードなど、たっぷりのトークを展開する。来阪時の思い出では、“観光で商店街に行ったんです。名前なんだっけ……”と迷うと、“道具屋筋!”、“プロフェッショナルが使ってるような道具で……”と言うと、“コテ!”と、すかさずオーディエンスからフォローが入るという、大阪ならではの場面も(笑)。

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ほわりと空気が和んだところで曲へ。3曲目は『Alright』。アップビートでグルーヴィな楽曲だ。ここからは、これまでのDedachiKentaの作品を全てプロデュースし、彼の才能を大きく開花させたプロデューサー、KOSENも登場。サウンドにもう一層厚みが加わる。“クラップで助けてくれますか!”と、DedachiKentaがギターを置いてフリーハンドでクラップを煽り、呼応する客席に一体感がうまれる。時折目を閉じ、ジェスチャーも交えながら身体を揺らしてソウルフルに歌う姿には、海外シンガーの片鱗も感じられた。
 
続いてデビュー曲『This is how I feel』をプレイ。DedachiKentaのアコギがリードする形で、ドラム、ベース、ギター、と徐々にジョイン。音圧に厚みが増してゆく。彼が17歳の時に初めて作ったオリジナル楽曲でもあるこの曲。初々しさと爽やかな疾走感が心地良く会場を満たしていく。

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ここでバンドメンバーが一旦掃け、ステージはDedachiKenta 1人になる。ここからは弾き語りパートへ。東京ではやらなかったカバー曲を大阪では特別に披露! ということで、オーディエンスは大喜び。“Ed Sheeranの……”と言うと、曲名発表前にも関わらず、さらに大きな歓声が上がる。Ed Sheeranが大好きだという彼が選んだのは『Thinking Out Loud』。1人椅子に座り、ギターをつま弾き、目を閉じてしっとりと歌を届ける。なめらかな英語の発音は流石。客席も思わず聴き入る……しかし、“歌詞忘れちゃった~(笑)”と、ペロッと舌を出すお茶目な場面も。こんなところも実に愛らしいが、いつか、昨年の来日公演で9万人を動員したEd Sheeranのように、世界と日本をつなぐ架け橋になってほしい。そう思わせられるような、心に沁み入るカバーだった。
 
次に披露された、大学の友人ハリーにもらった“I’ll be fine”というお守りの言葉がキッカケで生まれた楽曲『I’ll be fine』では、時にささやくように、時にパワフルに、強弱をつけてやさしく歌う。オーディエンスはうっとりと聴き入り、幸せな音の波に身を任せていた。

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そして、いよいよスペシャルゲストが登場! 『Fly Away』や『Step by Step』でもフィーチャリングした、今最も熱い視線を浴びるキーボーディスト、Kan Sanoを呼び込む。曲にいく前に“Kan Sanoクエスチョンタイム”へ。Kan Sanoに質問をぶつけてゆくコーナーだ。前日の東京では“DedachiKentaをコードで表すと?”という質問をしたらしいのだが、今回は“アルバム『Rocket Science』をコード進行でいうと?”とクエスチョン。難しいな〜と言いながらも、“力強くて若いエネルギーがあふれてますよね”と、見事にキーボードを弾いてみせた。また、Kan Sanoに初めて“エゴサ”を教わり、“ニュー・ボキャブラリーです!”とはしゃぐシーンも。最後に、次の曲にちなんで“人生で手放せないものは何ですか?”という問いにKan Sanoは、“80歳まで作品を作り続けるのが目標だから、音楽がないことが1番キツいですね”と回答。DedachiKentaも“僕も同じアンサーですね。ミュージック大好きです”と嬉しそうに話していた。
 
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dedachikenta12.jpg“まだ君のことを手放せないみたいだ”という意味の『I can’t seem to let you go』は、ピアノ・ジャズ・バラード。ジャジーな雰囲気がShangri-Laによく似合う。『Rocket Science』のイメージカラーとも言えるブルーの照明が、天井に吊るされたシャンデリアを美しく照らす。Kan SanoのムーディーなピアノとDedachiKentaの歌声が合わさり、珠玉の空間がうみだされる。時折2人はアイコンタクトを取り、微笑みながらプレイ。サビの“I’m singing”では美しい高音を響かせて、ボーカリストとしての幅広い表現力と、大人の表情を見せてくれた。
 
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ここでバンドメンバーがステージにカムバック。メンバー紹介をしたのち『Fly Away feat.Kan Sano』と、1月22日(水)にリミックスの配信リリースが決定している『Step by Step』を続けて披露。『Fly Away』でのKan Sanoによる間奏部分はやはり極上! それぞれの楽器から繰り出される音で弾ける化学反応が最高に心地良く、会場の一体感が高まっていく。グルーヴィなサウンドに思わず身体が揺れ、クラップが沸き起こる。DedachiKentaも心底気持ち良さそうに2曲を歌いきり、フロアからは大歓声! たまらなく充実した、スペシャルな時間だった。

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Kan Sanoがステージを去り、ライブも終盤へ。演奏されたのは少し憂いを帯びたメロディーが印象的なスロウナンバー『Ambiguous』。DedachiKentaの歌詞は日本語と英語のミックスが特徴だが、特にこの曲は日本語詞がはっきりと聴き取れるような歌い方で、彼の想いがまっすぐ向かってくるようだった。ネイティヴな英語の発音はもちろんだが、二言語を自然に操り、魅力的な楽曲としてアウトプットできる才能は、唯一無二の強みだと実感させられる。後半、徐々にリズム隊のビートが強まり、ギターがうねり、高まる熱が会場全体を巻き込んでいく。そして、周りの人たちへの感謝の気持ちを込めた『Memories』をプレイ。耳に残るメロディがシンプルに心地良い。バンドのアンサンブルが会場全体に降り注ぐようなサウンドスケープを響かせる。

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本編ラストは、FM802のヘビーローテーションにもなった『Life Line』。“大切な曲です。自分が大切に思っているものにちゃんとしがみついて前に進んでいく歌。まだ20歳になったばかりだけど、これから何歳まで生きるかわからないけど、家族、友人、音楽。自分にとって揺るがないものをいつも大切に、これからやっていきたいと思います。皆さんもこの歌を聴いて、今までずっと繋がってきたものを思い巡らせて聴いてくれたら嬉しいです”と語る。“歩みの中でも強く揺るがないもの 僕らなら最後までたどり着ける”という力強いメッセージが希望を感じさせる。しっかりと想いを込めて最後まで歌い切ると、この日1番の拍手が惜しみなく贈られ、すぐにアンコールを願うクラップへ。

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しばらくして再び登場したバンドメンバー。全員『Rocket Science』のジャケットがプリントされたTシャツを着用(ちなみに本編でバンドメンバーが着ていたシャツはDedachiKentaがホテルでペイントしたらしい)。

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アンコール1曲目は『Remenber Me』。大地のような温かみのあるドラムのビートに合わせて自然発生的にクラップが起こる。まるで青空がパッと開けるような清涼感。まばゆいメロディーにしばし酔いしれる。“大阪大好きです! また帰ってきたいと思います!”という約束とともに、アルバムやツアーに関わった人たち、スタッフにも感謝の気持ちをくまなく述べる。

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最後は『20』。“皆さんにありがとうの気持ちと、これからも頑張りますの気持ちで歌いたいと思います!”と、ポロポロとアコギをつま弾く。素直に突き抜けてくる純度の高い歌声から、しっかり伝えたい、という意思が感じられる。美しくファルセットをきかせて歌い終えると、大きな大きな拍手が贈られる。“ありがとうございました! Thank you so much!”と笑顔で締めくくる。ステージを去るか、と思いきや、思い出したかのようにパッとマイクの前に戻り“Happy New Year!”と笑顔でひとこと。和やかな余韻を残してステージを去っていった。
 
こうして、全15曲に“現在のDedachiKentaの魅力”をギュッと詰め込んで、初ワンマンライブは幕を閉じた。彼の音楽家としてのキャリアはまだ始まったばかり。これからどんな成長や進化を見せてくれるのか、ルーツミュージックと現代のポップミュージック、世界と日本をつなぐ彼がどんな風を吹かせてくれるのか。2020年もDedachiKentaのクリエイティビティを楽しみにしていよう。

text by ERI KUBOTA 



(2020年1月21日更新)


Check

Set List

01. Rocket Science
02. More than enough
03. Alright
04. This is how I feel
05. Thinking Out Loud (カバー) ※弾き語り
06. I'll be fine ※弾き語り
07. I can't seem to let you go (w/Kan Sano)
08. Fly Away (w/Kan Sano)
09. Step by Step (w/Kan Sano)
10. Ambiguous
11. Memories
12. Life Line

EN1. Remember Me ※EP『breakfast for dinner』収録曲
EN2. 20

Release

『Rocket Science』
発売中 2800円(税別)
POCS-23002

《収録曲》
01. Rocket Science
02. This is how I feel
03. Fly Away feat. Kan Sano
04. I can't seem to let you go
05. Ambiguous
06. Life Line
07. I'll be fine
08. Step by Step
09. Alright
10. 20
11. Memories
12. More than enough
-Bonus track-
13. Catch Me If You Can (Fly Away feat. Kan Sano)
14. Chromatic Melancholy (Ambiguous)
15. AYUMI (Life Line)

DedachiKenta
オフィシャルサイト