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覚悟を決めて闇を見つめると、その先に光があることに気づいた
“光と影”のコンセプトライブ第二弾の開催が迫る!
三上ちさこインタビュー

13年ぶりのフルアルバム『I AM Ready!』で復活した2018年を経て、2019年は『LIGHT & SHADOW』(光と影の世界観)をコンセプトに掲げて活動してきた三上ちさこ。5月にリリースされたLIGHT盤『re:life /ユートピア』に続き、SHADOW盤『ヌード/sNow letteR』が11月20日にリリース。CDのアートワークも二枚を連動させてビジュアルが完成する仕掛けになっている。そんなコンセプト盤の制作にまつわる話の中で、明かしてくれた彼女のパンク精神、子供を産んで変わってきた意識など、これまでの人生の中で体験してきた痛みや喜びを穏やかに語ってくれた。12月21日には『House Of “LIGHT & SHADOW”2nd -コンセプトライブ-』が梅田シャングリラで開催される。演奏や衣装も異なる二部構成で繰り広げられる今年の集大成となるパフォーマンスに期待したい!

自分にとって、できれば避けて通りたいような感情にも意味がある
 
 
――三上さんが今年、『LIGHT & SHADOW』(光と影の世界観)をコンセプトに活動しようと思った理由はなんですか?
 
「自分の中の感情をもう一度見つめ直してみようと思ったんです。見つめ直すことで、自分自身が見えてくるかなと。昔は自分のことも、お客さんのことすらも信じられなかったけれど、今は、たとえ相手が自分のことを好きじゃなくても、歌を届けたいと思えるようになりました。そうなると、割と光のほう(ポジティブ)に気持ちが向きがちだったんですけど、影の部分もなくなったわけじゃない。自分にとって、できれば避けて通りたいようなネガティブな感情もやっぱり意味があることだから。闇って、目を背けるとすごく重くのしかかってくるんですけど、覚悟を決めてその闇自体を見つめると、意外とその先には光があるっていうことに気づいたんですよね。目を背けるから闇が深くなるんだと思って…」
 
――その“闇”というのは、人と人との関わりの中で感じるもの?
 
「そうですね。普段の生活で嫌なことを言われた時に、そこで思考が止まっていると嫌なままですけど。“なんでこの人はこういうことを言ったんだろう?”というふうに相手の気持ちになって考えてみると、そのことも理解できるかなと。そうすることで、闇から光に変わるような、そういう感覚ですね」
 
――いつ頃からそういうふうに変わってきたのですか?
 
「やっぱり子供を産んだというのが大きいかもしれません。人の気持ちを考えて歌うように変わってきました」
 
――そうなんですね。実は、5月にリリースされたLIGHT盤『re:life /ユートピア』を聴いたとき、10代の人に向けたメッセージなのかなと思ったんです。もしかしたら、お子さんがいらっしゃることも関係してるのかなと。
 
「ああ、確かに…。その2曲が放ってるメッセージは年齢関係なく、若い人にも響くんじゃないかなと思っていて。でも、そういうところは子供(がいること)も影響してたのかな…(笑)。SNSとか昔はなかったけど、悩んでることって今も一緒だなと。人と接する中で、自分が思ってたのと違うとか、表では良い振りしてるけど影で悪口言ってるとかね。MVも若い映像制作チームと一緒に作ったので、年齢的にも自分よりも下に向けて放ったというのはありますね。10代だけというわけではないんですけど」
 


 


 
 
怒りとか、自分の中に溜め込んでいることを声を大にして叫んでいます(笑)
 
 
――11月20日にリリースされたSHADOW盤の方の『ヌード』という曲はかなり挑発的で耳から離れなくなります。
 

 
「怒りとか、自分の中に溜め込んでいることを声を大にして叫んでいます(笑)。プロデューサーの保本(真吾)さんと作ったんですけど、ニルヴァーナがけっこう好きなので、ああいう感じがいいよねって。ストリングスも入れて、とにかく叩きつけるような感じで」
 
――人間の本性をむき出しにさせるような過激な歌詞ですが。これは誰に向けているのでしょう?
 
「他人に向けているところもあるし、自分自身に向けているところもあるし、人の思いを代弁しているところもあります」
 
――すごくパンキッシュなものを感じました。
 
「パンク的な部分は私の精神部分の中に確実にあるので。それは出ちゃうと思います」
 
――そのパンクの精神のルーツというのは?
 
「うーん、親に対する思いなのかな…。実は兄が小学校の1年生の時に白血病で亡くなって、ひとりっこになったんですけど。自分も親になった今の立場で考えると、自分の子供が亡くなるってとてもつらいことだし。そういう中で私を育ててくれたことにすごく感謝しています。でもやっぱ自分ひとりでは抱えきれない部分もあったのかな。けっこう(親が)ヒステリックになることが多くて。それに対して私はなにもいえなくなっていたので。だんだん、心をシャットダウンして、(人の言葉を)音として聴くという術を身につけるようになっていきました。そういうところで溜まってるものが、音楽に出てきちゃうんだろうなと。ふだんは言葉にできないことも、音楽にすれば許されると思って…」
 
――なるほど。そういう辛い経験が昇華されて三上さんの表現が生まれてくるんですね。
 
「ほんとのパンク精神って、自分の中から出てくるものですよね。パンクミュージックを聴いてとか、きっかけにすぎなくて。たぶん、自分が育ってきた時間とか、そういうところにあると思うんですよね。昔は特にそれが大きかったと思います。今は、そんなになくなりましたけど。やっぱ、子供を産んだことで、感覚がホント変わりました。(子供から生きる力を)与えてもらったっていう感じがすごくあります」
 
――いろんなことを肯定できるようになったと?
 
「そうですね」
 
――『ヌード』の話に戻りますが、この曲を聴くとデトックスされるようで、自分の中に溜まっていた悪いものが解放される気がします。
 
「ライブでみんなに持って帰ってもらいたいものってそういうものだったりするんですよね。凝り固まったもの、溜まったものを揺さぶって洗い流すみたいな(笑)。で、スッキリして帰ってもらいたいですね。だから、『ヌード』は、これを聴いて発散するきっかけにしてもらえたらいいかなと思ってます。昨日も大阪城公園の“城天”で初めてストリートライブをさせてもらったんですけど、野外だとすごく声が突き抜けて響くので。歌ってる自分自身も気持ちが良くて。その声を聴いてくれた人もスッキリしてくれたらいいなと思って歌いました」
 
 
 
生きていくための力になれるような曲を書きたいと思ったんです
 
 
――SHADOW盤に入っているもう1曲『sNow letteR』は、哀しみを癒すようなバラードで、鎮魂歌のように感じました。
 
「まさにそうです! 東日本大震災の次の年(2012年)の3月10日に、仙台の友人が、震災で亡くなられた2万人の方に、“自分たちは元気でいるよ”という手紙を送る気持ちで、2万発の花火を打ち上げるイベントを開催したんです。3月11日ではなく、幸せがあたりまえだった前日の10日に。私もそこに同席させていただきました。その日もすごく寒くて、しんしんと雪の降りしきる中で、とても大きな大輪の花火がドーンと打ち上がって。あんなに寒いところで、あんなに熱い涙を流しながら、“美しい”と思って花火を見たのは初めてでした。遺族の方は家族で肩を寄せ合うようにして、花火をずっと無言で見てたんですけど。その中には赤ちゃんの遺影の写真を持っている方もいました。その心象風景を曲にしたいなと思って書いたのが『sNow letteR』です」
 
――LIGHT盤の方の『re:life』は人間が再生していく力になるような曲だと感じましたが、あの曲も震災がきっかけで書かれたそうですね。
 
「そうです。まだ完全に復旧してないけど、生きていくための力になれるような曲を書きたいと思ったんです。震災直後にはなかなか歌う気になれなかったんですけど、今年で8年が経ったので。今だったら、歌うことにも意味があるかなと思って出すことにしました」
 
――この二枚のコンセプト盤にともなうライブとして、9月に『House Of “LIGHT & SHADOW”1st -コンセプトライブ-』があり、その第二弾『House Of “LIGHT & SHADOW”2nd -コンセプトライブ-』が12月21日(土)に梅田シャングリラで開催されます。
 
「今回も自分の中の“光と影”をテーマにして、ふつうのワンマンライブとは違う世界観を演出しようと思っています。前回と同じようにセクションによって演奏者の編成も異なる“LIGHT”と“SHADOW”という二部構成ですが、セットリストと衣装は(前回とは)ちょっと変えようかなと思っています。あと、ライブに来てくれた人に特製のライブDVDをプレゼントしたいと思っていますので、ぜひみなさんに観に来てもらいたいです」
 
――自分の中に眠っていた感性が刺激されるようなステージになりそうで、とても楽しみです! 最後に三上さんのことをもっと知りたいという方に何かメッセージがあればお願いします。
 
「10月から今までのブログをやめて、映像で自分の思いを伝える、“VLOG”というのを自分のオフィシャルYouTubeチャンネル内(https://youtube.com/c/mikamichisako)でスタートしたんです。MVのメイキング映像があったり、自分の思いを語ったり、料理を作ったり、いろいろなことにチャレンジしています。そのYouTubeチャンネルの登録者数を年内に1000人を目指してますので、みなさん登録よろしくお願いします!」

text by エイミー野中



(2019年12月18日更新)


Check

Release

ジョイントシングル SHADOW盤
『ヌード / sNow letteR』

発売中 1200円(税別)
SLIDE SUNSET
SSSA-1007

《収録曲》
01. ヌード 
02. sNow letteR  
03. ヌード(Instrumental)
04. sNow letteR(Instrumental)

Profile

8月14日・山形県生まれ。2000年にfra-foaのボーカリストとして メジャーデビュー。解散後、子育てなどを経て、2018年11月に保本真吾(CHRYSANTHEMUM BRIDGE)率いるレーベルSLIDE SUNSETから、13年ぶりのフルアルバム『I AM Ready!』をリリースした。その後、全国ツアーも成功させた三上が2019年に掲げたコンセプトが「LIGHT & SHADOW」という光と影の世界観。5月22日(水)には、ジョイントシングルという、2 つの世界観で完成する作品の LIGHT盤、「re:life / ユートピア」をリリースし、対バンツアーを行った。さらに7月には、NHK BS-1『ワースポ×MLB』のエンディングテーマ曲『TRAJECTORY- キセキ -』を配信リリースした。9月15日(日)には、東京・新宿LOFTにて、House Of“LIGHT & SHADOW” 1st - コンセプトライブ - と銘打ったワンマンライブを開催。そして、11月20日(水)に、SHADOW 盤「ヌード / sNow letteR」をリリース。12月21日(土)に梅田シャングリラで『House Of “LIGHT & SHADOW”2nd -コンセプトライブ-』リリース記念ライブを開催する。

三上ちさこ オフィシャルサイト
https://www.mikamichisako.net/


Live

Pick Up!!

「House Of “LIGHT & SHADOW” 2nd
-コンセプトライブ-」

チケット発売中 Pコード:165-802
▼12月21日(土) 18:00
Shangri-La
全自由-4000円(整理番号付、ドリンク代別途要)
※3歳以上は有料。
[問]キョードーインフォメーション■0570-200-888

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『Queen’s Garden Vol.2』
チケット発売中 Pコード:171-888
▼2020年2月23日(日) 18:00
shimokitazawa GARDEN
スタンディング-3000円(ドリンク代別途必要)
[出演]伊吹留香/三上ちさこ/CruelShe(亜矢)
※小学生以下は無料。
※チケットは1人4枚まで。
[問]下北沢GARDEN■03-3410-3431

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