異なるテーマに導かれた各公演
謎解きの楽しみも秘めた“where you are Tour 2019”
fhána、初日の大阪公演をレポート!
“インターネット3世代”といわれる、佐藤純一、yuxuki waga、kevin mitsunagaによって'11年に結成され、翌'12年にボーカルのtowanaが加入して現在の4人体制となったfhána。その音楽スタイルはアニソン、J-POP/ROCKといった枠組みを超えて驚異的に進化し続けている。昨年デビュー5周年を迎え、今年1月には5年の活動をひとつの物語として表現した三部構成のスペシャルライブを開催。ライブにおいても独創的な世界観でファンを魅了する。そして、この秋、“where you are Tour 2019”と題された全4公演の東名阪ツアーが11月16日(土)Zepp Osaka Baysideからスタートした。今回は公演順に、大阪=“fade”、名古屋=“illuminate”、東京=“narrative”“divine”と、“各公演で異なるテーマに導かれたステージを行う”初の試みが実施される。ファンにとっても期待値の高さが伺えるツアー初日、意外性も孕んで大いに盛り上がりを見せた大阪公演のレポートをお届け。
“fade”というテーマが掲げられた大阪公演。ステージ上は極めてシンプルなセッティングだが、それゆえに観る側のイマジネーションは無限大に広がっていきそうな予感がした。開演時間になると待ち構えていたみんなの盛大な歓声に迎えられて、佐藤純一、yuxuki waga、kevin mitsunaga、サポートのベースとドラムからなるバンドメンバー5人が登場。さらにクラップが高まり、可憐なボーカリスト・towanaが姿を表してライブがスタートした。ツアータイトルにもなっているフックが効いたメロディアスなナンバー『where you are』から始まり、テンポよく『ワンダーステラ』へと繋げてゆく。加速する曲調に呼応するように観客も元気に手を振り拳を突き上げ、曲中ではコール&レスポンスが巻き起こった。会場中に降り注がれるtowanaのピュアなハイトーン・ボーカル。佐藤のキーボードがパワフルかつ優雅な音色を奏で、yuxuki wagaのギターは激しく唸りを上げる。PCを操作しながらグロッケンも叩くkevin mitsunagaは一番の盛り上げ役となってフロアに手を振り観客を引き込んでゆく。この厚みのあるアンサンブルで、序盤から軽快かつアッパーに飛ばし、フロアを埋めるファンのクラップと活気溢れる声も加わってZepp Osaka Baysideはイッキに沸騰状態となっていった。
最初のMCタイムで、towanaが「みなさんこんばんは~! fhánaです!」と元気に挨拶。「前半ブロック、ヤバくないですか?」「ヤバいっす! これでやりきった感じ(笑)」と、ここまでの熱い流れに興奮気味のメンバーが嬉しそうにやりとりする場面も見られた。次なるブロックではステージ後方の黒い幕が開いて、バックが奥行きを感じさせるように白く反射するような状態に。そこから始まった最新シングルのカップリング曲『真っ白』を視覚化する効果的な演出だ。towanaが「ちょっと久しぶりの曲を聴いてください」と言って歌った『tiny lamp』ではパワフルな歌声とyuxuki wagaのギターソロに胸掻き立てられた観客が熱気を帯びて飛び跳ねる。続く『コメットルシファー ~The Seed and the Sower~』ではクラップもさらに激しくなり、より一層熱くステージと観客がひとつになっていった。
ライブの後半戦になると、バンドの多面性を浮き彫りにする多彩な楽曲が次々と繰り出されていく。特に興味をそそられたのは、佐藤曰く、「最近ラッパー化している」というkevin mitsunagaのラップを大々的にフィーチャーした『Unplugged』。kevinはtowanaと掛け合うように軽やかにラップを披露し、フロアのみんなは手にしたピンクのフラッグを嬉々として振っていた。リラックスさせる快適なグルーヴ感とオシャレな雰囲気が漂う曲調にfhánaの新境地が感じられた。
『lyrical sentence』から再びテンポアップ。リズミカルなアレンジで聴き手の気分をポジティブに先導する。佐藤がアニソンシンガーの亜咲花に楽曲提供した『Code “Genius”?』を英語歌詞でカバーし、towanaの歌声がのびやかで瑞々しく響き渡った。
『STORIES』から再びtowanaが加わってライブは終盤へ。『Relief』ではグリーンのライトの下、四つ打ちのリズムに乗ってエレクトロな音色とダイナミズムあるバンドサウンドが融合。これこそがライブの醍醐味といわんばかりに刺激的で、そこにいる誰もが立体的な音の波に呑み込まれてゆく快感を味わったに違いない。この日のハイライトとなる圧巻の様相で大歓声に包まれた。その後、towanaが「みなさん自由に楽しんでください!」と促し、可愛く“せ~の!”と発してみんなと声を合わせた『青空のラプソディ』では、kevinが前に出てきて踊るように飛び跳ねていた。そして、本編ラストの『僕を見つけて』へ。佐藤は、「今年の頭にデビュー5周年のスペシャルライブを行って。それからfhánaは変化の時期を迎え、その中でいくつかの別れも経験した」という話をして、「その変化の真っ只中で生まれた曲。作品を作っている全てのクリエイターとそれを愛してくれている全てのみなさんに捧げたい」(佐藤)という言葉を添えてじっと聴き入らせる。切なさと強さを表現した曲調で、後半は各プレイヤーのテンションもさらに高まり、息を飲むほどハードでスリリングな展開を見せてフィニッシュとなった。自分たちを見つけてくれた君への感謝の思いと、そこから旅立つ新たな決意が込められたリリックがtowanaの歌声でまっすぐに心の奥まで届けられた。
アンコールでは明るい雰囲気となり、佐藤が「みんな楽しかった?」と尋ねると、会場全体から暖かい歓声が返される。本編でラップを披露したkevinは「やる前は緊張したけど、やってよかった!みなさんのおかげで自信がついた」と安堵し、笑顔で感謝の気持ちを伝えていた。そんな和やかなMCタイムを経て、EN2の『Outside of Melancholy ~憂鬱の向こう側~』では再び激しいバンドサウンドが炸裂! それに伴い観客も勢いよくジャンピングする。towanaは全身全霊から放たれるような歌声を会場全体に響き渡らせ、「また会いましょう!」と笑顔でステージを後にした。
圧倒的かつ陶酔感に満ちた楽曲の世界観と進化を遂げたバンドサウンド。ライブ中に佐藤が、「このツアーにはちょっとした謎がある。ツアーの中で少しだけヒントが隠されているかも」と話していたが、無事にこのツアーが終わり、その謎が解けた時、fhánaに触れた者たちが共有するものとは? 新たな段階へと歩を進めている4人の今をぜひ目の当たりにしてほしい。
text by エイミー野中
photo by 河西沙織
(2019年12月 5日更新)
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