1st EP『TEXAS』をリリースしたsummertimeに
盟友・TORA(8otto)がインタビュー
Hi-STANDARDの恒岡章と□□□の村田シゲの二人で結成し、2018年3月より活動開始したインスト・ユニット、summertime。1st EP『TEXAS』をリリースした二人に盟友、8ottoのTORAが新作について、ライブについて話を聞いた。
TORA「初めてのインタビュアーなんで、ちょっと緊張してますがよろしくお願いします! ツネさんは久しぶりに会っても音楽の話はしないですし、シゲさんもしょっちゅう会うけど音楽の話しないじゃないですか」
シゲ「音楽の話なんて今更しないでしょうよ」
TORA「今日はなんの話をしようかなと思ってて。いろんな話する前にお二人のルーツ的なところから聞きたいんですよ。そんな話したことないじゃないですか、お二人の音楽との出会いというか。初めて買ったCD、レコードは何やったんですか?」
恒岡「初めて買ったのは、役者の伊武雅刀さんの『子供達を責めないで』っていう7インチレコードですね。スネークマンショーの番組絡みで。小学校4年生くらいかな」
TORA「でもそれを聞いてバンドやりたいって思ったわけではないですよね?(笑)」
恒岡「なんか不思議で面白かったのは覚えてる」
TORA「その1枚目から結構音楽に興味を持ったってことですか?」
恒岡「ベストテンとかの世代だったからかな。そういうのもあって、面白そうだなって思った」
TORA「そこからぐいっと飛んで、音楽自分でやりたいなって思ったきっかけになったアーティストはいますか?」
恒岡「長渕剛さん。小学校6年生のときに『家族ゲーム』っていうドラマがあって、その主題歌(『GOOD-BYE青春』)を、主演の長渕剛さんが歌っていたのね。その曲が好きになって、アコースティックギターに興味を持って買ったのが最初だね」
TORA「最初はギターから始めて。Fコード押さえられなくて諦めた感じですか?」
恒岡「コードはそこそこ弾けて(笑)。小学校の卒業文集には、将来は作曲家になりたいですって書いてた」
シゲ「早いね。小4で伊武さんの7インチ買って、小6で長渕さんと出会ってアコギを買ったってこと? 早いね」
TORA「めちゃめちゃ早いですね」
シゲ「その時はまだシンガーソングライター志望だったってこと?」
恒岡「どうなんだろう。でもそこには”将来は作曲家になっていろんな人に歌詞をつけてもらいたい”と書いてた。だから歌詞を書くっていうのは、その頃からもう自分の中にはなかったのね。まるで、今ものすごい作曲家になったみたいな感じで言ってるけど(笑)」
シゲ「でも長渕さん聞いてて、Hi-STANDARDには繋がらないじゃないですか。そこの間はどうなってるんですか?」
恒岡「そこから当時の括りだとニューミュージック、松任谷由実さんやサザンなどを聴き始めて、いろんな音楽があるんだなって知っていって、そのあとは日本のヘビーメタル、LOUDNESSや44MAGNUMとか、激しい音楽も好きになっていきますね」
TORA「あ~なるほど。だいぶ繋がってきましたね。ここにきてやっと」
恒岡「アコギから入ってエレキにいって、でもまだギターですね」
シゲ「まだドラムまでいってないんだ」
恒岡「中学校の時とかってみんなギターやるじゃない。で、みんなでスタジオ入ったら、みんなギターを持ってきて、みんな代わる代わるギターをアンプに繋いで。そんなことをしている間に、スタジオにあったドラムがかっこいいなあって思えて、演奏してみたら思ったより出来たというか、わりかし出来て楽しいなって思って、これはドラムだ!ってなったのが中学校3年生の時」
TORA「でも基本的に早いですよね。ツネさんは中3でドラムと出会い、その道を進み始めると。じゃあちなみにシゲさんが初めて買ったCDは?」
シゲ「中学の時に好きだった女の子がいて、その時に彼女が好きな音楽を聞いて、それ関連のCDを買った気がしますね」
TORA「彼女の好きな音楽ってどういうこと?」
シゲ「好きだった女の子がなんか会話の中で言ってたやつとか。その時買ったのはMR.BIGのアルバム『LEAN INTO IT』と、当時「タモリの音楽は世界だ」っていう番組があったんですよ。それによく出てたロッカペラっていう外国人4人組のコーラスグループのCDを買いましたね」
TORA「うん、なんか聞いたことある気がしますね」
シゲ「と、たぶん同時に買ったので印象的なのは、BIG HORNS BEEっていう米米CLUBのホーンセクションのアルバムが出たんですね。最初に買ったかどうかはわかんないけど、当時、大してバンド事情とかはわかんないんだけど、そのCDを買ったことは覚えてる」
TORA「それは好きな女の子と話すためにってことですよね?」
シゲ「そう」
TORA「じゃあそれを聴いて“音楽やりたい”ってハマっていったってことですか?」
シゲ「まだあんまりね。BIG HORNS BEEは管楽器だしさ、ロッカペラはアカペラだしさ、MR.BIGは速いしさ(笑)。MR.BIGからハードロックを聴いて何かしらのカタルシスを感じ取ったことはある。それまでに普通にB’zとか売れてたし、世界的にはどうかわからないけど、ビーイング系の英語名のアーティストが出てて、ちょっとロックな感じの音楽が多かったので、そういうのに惹かれていったのは覚えています。それこそ、中3の卒業間際に、佐藤くんっていう、そんなに喋ったことのない友達の家にいったんですよね。そしたら佐藤くんがB’zの松本孝弘モデル、ヤマハから出てたゼブラ柄のやつ、ゼブラかな?黒字にネオンのピンクのやつかもしれない。それを持ってて。小さいアンプでそれを鳴らして、“うわ、すげーかっけー!”って思って、すぐに質屋で2000円のアコギを裸で買って帰った記憶があります」
TORA「で家に帰って、”エレキの音でえへんやん”って思ったパターンすか?(笑)」
シゲ「まあしょうがなかったよね。エレキは買えなかったし」
TORA「じゃあシゲさんもギター始まりですか? Fコードは弾けました?」
シゲ「Fコードはね。俺ごまかすのが得意だからさ、弾いてる気持ちになっちゃう、みたいな。まあこんなもんでしょって感じでやってた気はします」
TORA「僕もギター始まりやけど、Fコード弾けずにギターでベースのラインを弾いてただけやったんで」
シゲ「でもそうっすよ。今思えばコピーできたのは探偵物で有名な『ピーター・ガン』っていう曲があって。これのイントロだったんですよね。“これは弾けるー!”と思って。勝手にアレンジして弾いたりしてました」
(実際に当時のアレンジを演奏披露して一同笑)
TORA「じゃああれなんですね。二人とも器用なんですね、もともと」
シゲ「すげえざっくりだね(笑)」
TORA「シゲさんはそこからどうやってベースに変わっていくんですか?」
シゲ「どうだったっけなあ。たぶん高校に行ってコピーバンドみたいなのやるんですけど、当時、ヤンキーなんだけどめちゃくちゃ金持ちの同級生がいて。高校生にしたらギブソンのレスポールなんて20~30万円とか高いですよね? 彼はそれをパッて買って、しかも2週間くらいで”飽きた”と。“村田買わねえ?”みたいな話になって。“まじか! 買う買う”みたいな。それを買いに彼の住んでいる駅に行くんですよ、お金持って。俺の記憶では6万円くらい持って。そしたらその駅ビルに楽器屋が入ってて、そこ行ったら先ほどのMR.BIGのベースのビリー・シーンの5弦モデルがあったの。“え~5弦? でもあの人4弦だし。なにこのモデル見たことない”ってなって。当時は、楽器屋行ってカタログ片っ端からもらって帰ってきて、ベッドで寝る前に見る、みたいな生活してたから。当時出てるモデルは絶対覚えてるって思ってたのに、見たことないのを見たわけ。だからまあ約束を反故にして、買いますよねベースを」
TORA「5弦モデルを(笑)」
シゲ「そこから別に大してベース熱が上がることもなくギターをやっていくんですけど」
TORA「おかしいやろ(笑)」
シゲ「ベースとギター持って大学で関東に出てきて。音楽サークル入ったら、ギターの人が多すぎて。“じゃあベースでいいんじゃね?”ってなってベースに転向するって感じ」
TORA「初めて買ったベースは5弦ってことですか?」
シゲ「多分そうだと思う」
TORA「へんな人(笑)。すごいなそれ」
恒岡「5弦のベースがあったってことは知ってたのかな?」
シゲ「どうなんだろうね。なんとなく見たことはあったんじゃない? ただなによりも“ビリー・シーンのモデルが5弦モデルあったんだ!”って思ったのは覚えてる」
TORA「へ~。おもしろい! このあと二人のユニットの話してる時に、今聞いたルーツの話が重なってくるかな?」
シゲ「いや重ならないよ。全く重ならない」
TORA「(笑)。であればこの話してる意味ないからね(笑)」
シゲ「それはそちらで上手く重ねて(笑)」
TORA「(笑)。まあそこで、二人は音楽始めて、わーっと活躍して、なぜ二人でやろうって話になったんですか?」
シゲ「まず、恒岡章と村田シゲはCUBISMO GRAFICO FIVEってバンドで、一応長い時を過ごすわけですが。その前に、最初は恒岡さんが、Sound Pressure Levelという、通称SPLというソロユニットをやってて」
恒岡「ESCALATOR RECORDSの、ロードバイクをテーマにしたコンピに入れてもらってたのね。そのある曲でシゲにベースを弾いてもらっていて、基本はサンプリングや打ち込みとかなんだけど、あれキュビに入る前だっけ?」
シゲ「入る前ですね。それがたぶん最初の出会いだったと思う。それから1年も経たないうちに僕がCUBISMO GRAFICO FIVEというバンドに加入することになって。ちょろちょろ仲良くなっていくわけですよね。でね、何年くらいかわからないけど、恒岡さんはやっぱりなんていうのかな、夢と現実の狭間で生活してらっしゃる方だから、」
(一同笑)
シゲ「当時の恒岡さん曰く”アルバートというバンドを組む予定だ”と。いろいろ脳内で構想が決まってるわけ。何人組って言ったっけ?」
恒岡「7人組だね。うん、7人編成。ずっとやりたいと思っていた音楽の構想、20代の頃からずっとあったものが、15年くらい経って、2009年にやっぱりどうしてもやりたいってなった。そのタイミングで、まずシゲと一緒にやりたいと。自分がリーダーやるから、シゲにバンマスやってもらえないかって言った」
シゲ「リーダーとバンマスの差ってなんなんだ!って話なんだけど」
TORA「(笑)」
シゲ「で、とりあえず理想の話をなんとなく聞いていたと。“わかったわかった、了解~”みたいに。まあなかなか一気に7人編成で活動しようって大変じゃん? だから現実にはならなかったんだけど、その話がsummertimeの根っことしてある。で、NHKの音楽番組で一緒だったりとか、わりと定期的に会ってて。そんな中で、東京の幡ヶ谷にある『ウミネコカレー』っていう店があるんだけど。ウミネコサウンズっていうバンドやってる、古里おさむくんっていうのが店主なの。俺は昔から知り合いで、彼がカレー屋を始めて、1年に1回、周年イベントで、渋谷のo-nestでイベントをやると。俺もなんかお喋りで出たりとか。で、また何周年かで、あれ2周年か、3周年かな、その時に“また出てよ!”って言われて、ウミネコカレーに俺も行くし恒岡さんも行くわけですよ。おさむちゃん曰く、恒岡さんがすごくいい時期の時に定期的にくると」
恒岡「たまたま周年の時とかにね」
シゲ「ウミネコが記念のTシャツ作ってプレゼントしてるんだけど、その最後の人だったりとか。すごいいいタイミングに来るっていう話があったから、じゃあ章と2人でなんかやるよって言って。それがそもそものsummertimeのはじまりと」
TORA「でもじゃあ、曲としては、恒さんのソロのプロジェクトから始まった所があるってことですか?」
シゲ「それはまた全然ちがうね。最初の時は、とりあえず二人でなんかやってみようって」
TORA「完全にそれとは全く別でって?」
シゲ「全く別でって考えてたんだけど、恒岡さんが、カレー食べに行ってたんでしたっけ? 冨田さんと」
恒岡「いや、飲みに行ってた」
シゲ「飲みに行ってたのか。INO hidefumiさんって方と、冨田謙さんっていう鍵盤の方と恒岡さんが飲みに行って、ウミネコカレーでイベントでシゲとやるんだって話になった時に、お酒が入るとそういう感じになるのか、いつの間にか俺の知らない所で二人を誘ってた」
TORA「(笑)」
シゲ「俺的には、冨田さんとは一緒に他の仕事やってたし、INOさんは一方的に俺は知ってたけど全然面識なかったし。結構ちゃんと音楽で生活してる人に、ウミネコってめちゃめちゃ知り合いだからやるだけで、そんなギャラも出せないからさ、大丈夫かな?と思いつつ、“まあいいや!やってくれるなら”と思って。で4人でやるわけですよ。その時は、我々二人だったら適当にやればいいだけだけど、冨田さんINOさん二人にも、ちゃんとテンション上げてもらいたいなと思ったんで、ひとり1曲カバーみたいな感じで、それぞれ歌うくらいのノリかなってやり始めて。その方が楽しく参加してもらえるのかなと」
TORA「その時は、お二人も歌ったってことですか?」
シゲ「歌ったと思います」
TORA「じゃあ今の形とはまた違うんですね」
シゲ「うん。全然違う。オリジナルソングなかったよね」
恒岡「なかったね。みんなそれぞれ好きな曲、カバーしたい曲を、1曲ずつ持ってきて、アレンジして演奏した。4曲ね」
シゲ「最初はね、そんな感じで全然違ったんですよ」
TORA「で、2人で本格的にやろかってなったのは、そのあと何があったんですか?」
シゲ「まあ多分『HOPE FOR project』じゃないですか?」
恒岡「でもあの時も自分たちの曲はなかったかな?」
シゲ「なかったね。仙台の荒浜海岸ってとこで3月11日に震災復興のイベントがあるわけですよ。それに恒岡さんはずっと参加してたわけですよ。それでその年に。2018年かな、ウミネコの周年が2月なんですよ。で、そのイベントが3月にあると。なんかわかんないけど、俺も誘ってくれたんですよ。まあそこでもsummertimeとしての稼働もあったんですけど、それもたしかにオリジナルソングなかったよね」
TORA「全然つくれへんやん、オリジナルソング(笑)」
恒岡「そのあと、仙台荒浜に行っていたメンバーでライブをやることになっていたのね。アイゴン(會田茂一)とtoeの鍵盤の圭作(中村圭作)のデュオmulletと、summertimeで。その時に、2グループで、スプリットのカセットテープを作ろうということになって、曲を作り始めたのが最初」
シゲ「それで初めてオリジナルソングができた」
TORA「それは、例えばですけど、自然に歌はいれなかったんですか?」
恒岡「う~~ん。どうなんだろうね?」
シゲ「そのテープには今回の12インチに入ってる1曲目『群衆』のデモみたいなのが入ってる。うちでずっと恒岡さんの頭の中でなっているものを具現化する、みたいな感じはありましたね」
TORA「なるほど。作り方的には、そういう作り方なんですね。俺聴いて、こういう曲ってどうやって作るんやろって。単純に。“どっから作るのこれ? リズムから作るの? ラインから作るの?”って思ってたんですよ(笑)」
恒岡「『群衆』はベースライン作って、そこにパターン合わせてみて、いいねってなったものを展開するような。間引いたりとか。あんまり複雑には考えてない」
TORA「頭の中にあれ鳴ってるってすごいなと思って(笑)」
シゲ「でもやり方でいうとやっぱり、基本のジャズっぽいものじゃないけど、テーマみたいなのが定まって、展開してくみたいな感じだから。そこから大枠みたいな、拍子みたいなのができれば、飽きないようにどうやるかって感じはあるけど」
恒岡「うん。耐久性のあるものにはしたくて、その状態を完成系として、どうするかっていうのをシゲの家でやってた」
TORA「当たり前のこと聞きますけど、音源聴いて思ったんですけど、演奏はあれ生でしてるんですよね?」
シゲ「まあそうですね!」
TORA「いや、出来るんやと思って(笑)。スゴ!って(笑)」
シゲ「できたね。まあギリギリでしたけどね」
TORA「なんかあの、3曲目の最初の入りとかブレイクめっちゃあるじゃないっすか。めっちゃ止まるじゃないですか。あんなん、めっちゃ怖ないですか? やってて(笑)」
恒岡「あれどうやって撮ったかな? クリックは聞いてますね」
TORA「ちなみにもうひとつ聞いていいですか? 2曲目のベースってシンセベースですか?」
シゲ「うん」
TORA「あれはシンベでシゲさんが弾いてるんですか? すげえ」
シゲ「編成上、ドラムとベースっていう縛りが最初にぼんやり生まれるじゃん。恒岡さんは人より多くドラム叩いてて、俺は多くベース弾いてるからさ。だけど、そうすると、俺の中では、ちょっとLightning Bolt(アメリカのドラム/ベースデュオ)以上にならないじゃないですか。俺としては、二人でやったものであればオッケーですよっていうのがあったから、シンベもいれた」
TORA「なるほど。恒さんのドラムセットは通常の感じなんですか? パッドがあったりするんですか?」
恒岡「今回のレコーディングでは、キックとスネアとハットとシンバル、パッドも生で入ってるね。タムは置いてないです」
TORA「そこまでの構成というか、あれがあるんであれば、ライブもいつでもできるってことですか?」
恒岡「練習すれば」
シゲ「そうですね~」
TORA「ライブはまだ決まってないんですか?」
シゲ「今のところ決まってないですね~」
TORA「決まってないんや(笑)」
シゲ「まあなかなかね。どう活動していこうかなあっていう夢のような話はありますね」
TORA「結構ライブ見たいと思う人も多いやろうなあと思って。僕も見たいし。あれ生でやってるんや、どんな感じなんやろう?と思ったから」
シゲ「まあね。俺の個人的なことで行ってしまえば、すっごい狭いところで申し訳ないんだけど、わりと8ottoは意識してるし」
TORA「(笑)」
シゲ「すごい意識してるのよ」
TORA「じゃあやりましょうよ一緒に」
シゲ「タムがないって話を恒岡さんもしてたけど、シンプルなドラムのあれに、大本となるベースラインがいるっていうところは、俺は8ottoの好きなところだし。歌はあるけど、歌もさ、歌いたいことがあるわけじゃないじゃん」
TORA「まあそうですね(笑)」
シゲ「いやあるとは思うんだけど、どっちかというと楽器と一緒だと思ってるの、役割としては。『mickey』とかもあれは声とかはサンプリングであってもいいし。そこで、その二つはロックって概念がありながら踊れるバンドだなと思ってて。俺は意識してる。意識してるって言い方はあれだけど」
恒岡「曲を作ってる時、二人で8ottoの話もしてた」
TORA「ありがとうございます」
シゲ「数少ないTORAを評価してる人間だよ」
TORA「ありがとうございます(笑)」
シゲ「一部の音楽関係者とかも全く気付いてないところだよ」
TORA「全然。センス悪いんであっち(笑)。シゲさんとかに言ってもらえるだけでいいです。2曲目歌ってるじゃないですか。あれはどちらが?」
シゲ「僕が勝手に入れました」
恒岡「あれは、ひとまずレコーディングが終わって、追加作業があったんだけど、村田さんが『mickey』は家でもうちょっと仕上げてきますと。そしたら数日後にボーカルも入れてみましたって届いて、んで、いいねと」
TORA「あれ、なんて言ってるんですか?」
シゲ「一応歌詞ありますよ」
TORA「歌詞あるんですか?」
シゲ「チャラコパクッテ サーラ オディビリオリ」
TORA「あ~~! あーってなんで納得したんかわからんけど(笑)。ってことは全く意味ないってことですか?」
シゲ「いやいや。それは言えない」
TORA「なんやねんそれ(笑)」
シゲ「それは言えないよ。なにかを俺は実は伝えたいのかもしれないし」
TORA「うわ、逆再生したりするパターンのやつ?」
シゲ「これを入れることによって作詞印税がね。これが最初の恒岡さんの話にもどりますね。詞が書けないっていう恒岡さんの代わりに、作詞印税をね。それをつけたら、もうこっちのもんだと」
TORA「じゃあ別にインストでやりたいってことではないんですね。歌入れられるんやったらバンバンいれてこうって感じ?」
シゲ「まあ意味のない歌は俺好きなんですよね。ていうかだって、なんで理解できる言語が入ったら歌って認識しちゃうの?っていう」
TORA「ちょっと待って。意味のない歌がどうとかいう話になったら俺長くなるからやめとこ。愚痴に変わっていくからこれ(笑)。みんな音楽に意義求めすぎやから」
シゲ「まあなんでもいいけど、楽器を入れる感覚に近かったんですよ」
TORA「なるほど」
シゲ「声が単純に、ドラムとベースだけだと、定位としたら上の方がなんにもなくなっちゃうんですよね。一般的な音楽と比べると」
TORA「めちゃめちゃちゃんとした音楽の話してるな」
シゲ「そう。例えば『群衆』は、Illicit Tsuboiさん(エンジニア)が勝手にベースの音をオクターブ上げて入れてくれてるんですよ」
TORA「あ~あの重なってくるところですよね」
シゲ「勝手に入れてたんですよあの人。最高でしょ! “どうしたんですか? 何使ったんですか?”って聞いたら“オクターバーです!”って返ってきて。”そんなこと知ってるよ!”っていうのもありつつ、上の方も埋まったりする感じが、まあ3曲だったら1曲あってもいいかなと思ったんですよ。単純に限定しない感じになれたらいいなあって気持ちはありました。勝手に入れちゃったけど、恒岡さんも喜んでくれたというか、いいんじゃねって言ってくれたから、アリだなっていう感じです」
TORA「結構個人的には、二人の歌も聴いてみたいから。恒さん歌いたいとかそういうのはないんですか? 長渕的な」
恒岡「長渕的な?(笑)」
シゲ「いいよね。それ全然俺オッケーですよ」
TORA「だって結構何でもありなんやったらそこに持ってくるのもかっこいい気がしますけどね」
シゲ「まあでもsummertimeの歴史的に言ったら恒岡さん一回歌ってるから」
TORA「ああそうか」
恒岡「いずれ。やることなくなったら」
TORA「まだまだ歌う以外にアイデアはたくさんあるってことですね」
恒岡「そういう風にとってもらえると嬉しい(笑)」
TORA「シゲさんも歌わないんですか?」
シゲ「俺はどっちでもいいっすね」
TORA「そうなんや。俺は聞いてみたい」
シゲ「普通な感じでやったほうがおもしろいかな? まあその時次第ですね。これで次のシングルに“愛してる”とか書いてあったらまあまあおもしろいでしょ」
TORA「めちゃくちゃおもしろいですね」
シゲ「まあそういうのはアリかもしれないですね。せっかくあんまり歌と演奏っていう風に訳ない感覚での歌を入れたい。入れるなら、っていうか入れても入れなくてもどっちでもいいし。ただあんまり歌が入ったから演奏がバックバンドっぽくなるとかではないと思います」
TORA「それはね。二人が演奏してたら勝手にそうなるとは思うんですけど。あと聞きたいのはタイトルですね」
恒岡「2曲目はね…」
シゲ「ジャケットは恒岡さんがやってるんですよ。ジャケットとかトータルビジュアルとか存在のあり方とかは全部恒岡さんがやってて」
恒岡「存在のあり方はシゲの方があれなんじゃないかな(笑)」
シゲ「曲のタイトルは、2曲目の『mickey』は僕がね」
恒岡「あれは最初にドラムのパターンから作ったんだけど…」
シゲ「明るい感じにしたかったんですよ」
TORA「まあでもポップですもんね」
シゲ「ドラムとベースだけでやってると比較的ちょっとかっこいいというとあれかもしれないけど、ダークな感じになりがちなんで、明るい曲にしたいなと思って。1曲目の『群衆』っていうのと、3曲目の『七対六』は恒岡さんなんで、恒岡さんからお願いします!」
恒岡「もともと曲のタイトルは、シゲが“日本語がよくないですかね?”ってところから始まってるんだけど、1曲目は曲が出来て、その曲のイメージで、“群衆はどうかな?”みたいに聞いたら、“いいっすね!”ってなって決まった。あんまり深い意味はないです」
TORA「3曲目もですか?」
恒岡「あんまり深い意味はない。もともと『長月』という曲名だったんだけど、リリースする前にタイトルを変えたくなって『七対六』に。曲中の符割りからですね」
TORA「僕もそういう意味かなと思ったんですよね。何分の7みたいな、あんま変拍子わからないですけど」
恒岡「まあ字面がよかったっていう」
TORA「(笑)。そういう決め方の方が好きです俺は(笑)。ってことは、もうひとつだけ最後に聞きますけど、もちろんこの作品タイトルも意味ないってことですか?」
恒岡「これは、シゲから“作品タイトルつけてください”ってなって、いくつか候補をあげつつ、最終的にこれどうだろうで送ったのが『TEXAS』で。意味としては…自分がリーダーでバンドやりたいって言い始めたのが2009年なんだけど、その年はキュビでSXSWに行ってて、その時に一緒に行ったSXSWがとても楽しくて、そのあとにやっぱり自分のバンドをやりたいやりたいってシゲを誘い始めたりもしててっていう思い出もあったから、『TEXAS』どうだろうって聞いたら、そういうのがいいですねって話になった」
TORA「なんなんですか。曲タイトルに何の意味もないのに、いきなりめっちゃ素敵な意味あるじゃないですか、そこだけ(笑)。たぶんこのインタビューで僕が思ったのは、ミステリアス感が増してしまったんで、読んだ人はよりライブが見たくなるんじゃないかなと思うので、僕はますますライブに期待するって感じですね」
シゲ「なるほど。おもしろいことをおっしゃる」
TORA「(笑)」
シゲ「まあでもライブの編成になって、まだ二人かはわかんないですからね。どうなるかわかんないですよこれは。一人の可能性ももちろんありますよ」
TORA「ああなるほど…一人の可能性?(笑)」
恒岡「俺もう死んでるね(笑)」
シゲ「いやもう俺と恒岡さんじゃない可能性ありますからね。もしかするとそれは、全然違うバンドの誰かかもしれない」
TORA「今日の話聞いてる限り、無くはないやろうからなあ、それ。やりかねんからなあ(笑)」
シゲ「ユニークな感じになればいいと思います」
TORA「最後に、待ってるであろうファンの人たちに一言お願いします」
シゲ「なんでしょうね、次の音源できないとライブできないですもんね。なんですかねえ。辛いなこれ」
TORA「ここにきて言葉詰まるのめちゃくちゃおもろいな(笑)」
恒岡「今はいないわけだけど、これからファンになるかもしれない人たちに」
シゲ「そうですね」
恒岡「音源聞いて、気に入ってもらえたら嬉しいですね」
TORA「(笑)」
シゲ「普通(笑)。プロフィール文にも書いてるけど、恒岡さんはそれこそ出会って15年くらい経ってるわけですよ。たぶん、比較はできないけど、一番長く付き合ってる人で、紆余曲折いろいろなことがありながらの、音楽やってなくても友達で居られるっていう感じの人なんですよね。そういう人と、二人で作るっていうことは、俺からすると私生活が音源の中に入っていくんですよ。そんなに仕事としてはやってないというか、単純に。それが俺は重要視されてる気がして。例えば□□□(クチロロ)でも三浦さん(三浦康嗣)とかいとうさん(いとうせいこう)とも付き合いが長くなってきてるから、私生活も。音楽的である以前に、人と人のコミュニケーションの方を大切にしてしまっている。それが音的に良いか悪いかはさておき、そういうことしかできないからそうしてると。一応summertimeは、すごい断片的な3曲ではあると思うんですけど、今までの、恒岡さんとの繋がりみたいなものが入ってると自分では思ってるんですよね。だから、なんでしょうね。だからといって、聞くことに対してどうこうしてほしいっていうのはないんだけど、なんというか、感情が揺らいでる感じとか、こういうのがかっこいいって思ったりする感情っていうのは、きっと音楽を制作してない人、聞いてる人でもあると思うので、そういうのを聞いて感じ取っていただけたら嬉しいし。次の作品も期待しといてくださいって感じです」
(2019年11月27日更新)
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