手さぐりで突き進んだミニアルバムには秀逸な謎解きが… おいしくるメロンパンインタビュー&動画コメント
昨年7月発表の『hameln』から約1年2か月、おいしくるメロンパンが4枚目となるミニアルバム『flask』を9月25日にリリースした。緻密で濃厚で美しくもはかない世界が聴く者を揺さぶる今作は、長い模索の末に生まれたという。一体3人はどんな時間を経て『flask』を完成させたのか? シリアスな話だけでなく普段の様子が垣間見られる笑い多めのトークもお楽しみあれ!
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――今作『flask』は“難産”だったとお聞きしましたが、そうなった理由とは何ですか?
ナカシマ 「前作『hameln』でやりたいことができて一回ゴールしたみたいな感じで、じゃあ次はどこを目指していこうか?というので悩んだんですよね。『hameln』と比べて曲が進んでいないというか……越えられないというか」
――『hameln』がよくできたがゆえにハードルが上がったんですか?
ナカシマ 「そうだと思います」
原 「(ナカシマを見ていると)曲はできてるっぽいけど、納得いってない感じがしました。まだもうちょっと……みたいな」
峯岸 「でもそれは、『flask』が『hameln』の先じゃなく、横移動したような作品ということで……。横移動したことで、今まで歩いてきた本線からちょっと外れてはいるから、今までの自分たちや今までのナカシマから出てこない曲の雰囲気だったりしてるんです。だから(ハードルを)超える・超えないというより“これで俺らあってんのかな?”って感じでしたね」
――新しい側面を引き出した感じですか?
峯岸 「そこまで新しくもないと思うんですけど、ちょっと前までは微妙なところ(変化)を僕らは不純物って感じてしまっていたので……。だから逆に『flask』を作ったことによって広がったし、これから先広げていくことが前より抵抗なくできるんだろうなって思いますね」
――そして最終的に目指すべき方向というのは、はっきり見えたんですか?
ナカシマ 「いや、結局この方向!っていうのは決まっていなくて。決まらないまま、とにかく視野を広げて作ってみた曲たちですね」
峯岸 「さぐりさぐりですね」
ナカシマ 「今回は特にそんな感じでした」
――今回は3人でたくさんディスカッションをしたともお聞きしましたが、それはそういう過程で……?
峯岸 「それは『hameln』の概念から抜け出せないというのがあって、その話をたくさんしたみたいな……“(抜け出して)いんじゃない?”“いや、ダメじゃね?”っていうのですね。抜け出さないことに理由があったとかではなくそれは感覚で、自分で納得がいかないからっていう。でも納得してもいいんじゃないか?っていうのを言っていたんですよね」
ナカシマ「でも僕は今も抜け出したつもりはないですね」
――いつもの三者三様な感じですね(笑)。でも聴く方としては前作よりさらに色濃くなっているかな?と……。特に4曲目の『candle tower』は吹っ切れている感じがして痛快でした。
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ナカシマ 「自分では吹っ切れた感じもしてないですね。これは最初にできた『epilogue』という曲の次にできたんですけど、割といつもどおりに作ったような気がします。ま、アレンジとかは練って、確かに吹っ切れたところもあったような気もするんですけど……。でも歌詞はすごく変わったというか、すごくうまくできたと思います」
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――よりディープですよね? ナカシマさんが深淵をのぞき込んでいるのではないかと思ってちょっと心配になりました(笑)。
ナカシマ 「全然そんなことはないですね。最終的に表現していることは割とシンプルで、マイナスの感情とかプラスの感情とかでもないんですよ。表現したいことをややこしく物語にして……ってやっているだけです。だから別に闇という感情でもないですね」
――勝手に闇を見出していました(笑)。
ナカシマ 「でも、そう見えるように作ってはあるので…。あと僕自身がそういうのが好きなだけですね。中二病。だからそこは趣味です」
――しかし前作の詞には“ご案内”というか“誘導”の要素もあったと思うんですが、今回はそういうものがないような…。
ナカシマ 「ちょっとやさしくない感じですよね。『candle tower』はわざとそういう感じにしましたね」
――全体的にそんな感じも……。
ナカシマ 「そうかな? 『水仙』とかはわかりやすくしてあるかなと。なんか、なぞなぞみたいにするのが好きで、もしかしたらそのなぞなぞの作り方がうまくなったというか、こなれてきたのかもしれないです」
――ではそのなぞなぞのヒントが楽器の音やアレンジだったりするんですね。
ナカシマ 「はい」
――峯岸さんと原さんも意図的にそういう風にしているんですか?
峯岸 「ナカシマの(作詞には)芯みたいなものがあるんで、結構それをアレンジの時に“ここはこうだから”って(聞く)ことはありますね」
ナカシマ 「基本的に曲のストーリーを考えて(アレンジしたり演奏したりして)もらうことはないんですけど、“ここだけは!”っていうのはありますね」
原 「今回はそれが多かった気がしますね」
――だからなのか心象風景が浮かびやすかったです。
峯岸 「そう感じてもらえるのは完璧。自分らでは……ですけど(笑)」
――緻密に作られているからそう感じられたと思うんですが、その緻密さへの原動力は職人魂?
ナカシマ 「そうなんですかね(笑)? でもやっぱり自己満足かな」
峯岸 「そうだよね」
原 「いろいろやりたい!みたいなところとかね」
ナカシマ 「正直、わかってもらうために作っているわけじゃないっていうのがあって…。どう言えばいいかわかんないですけど、例えばオブジェとかでも、よくわかんないけどずっと見ちゃうっていうのがいいじゃないですか? そういう感じですね。わかんないのがいいっていうところがあると思います」
――余談ですが、結構ファンの方はプレビューとかで曲の解析にトライしていますよね。わかんないままにはしていない(笑)。
原 「いろいろ書いてくれているファンの人いますね」
ナカシマ 「あ、考察してる人ね。それはおもしろいなって思いますね」
原 「うれしいですね」
ナカシマ 「(考察が)間違っていてもまた一興だし、考えてもらう分はすごくうれしいです」
原 「なるほど! そういう考え方もあるのかって……よっぽど僕より考えてるなって思います(笑)」
ナカシマ 「原君は考えてないもんね(笑)」
――原さんはいつも包み隠さないですね(笑)。でもそんな原さんが時に核心をついたりとかは……?
原 「いや、そんなことはないです(笑)」
ナカシマ 「原君、歌詞覚えてないもん」
原 「そうだね。感覚だからね」
ナカシマ 「原君、前に『caramel city』(2ndミニアルバム『indoor』収録曲)を歌ってって言って、歌ってもらったらひと言目から違ってたよね(笑)」
全員 「(笑)」
原 「聞き間違いで覚えてたんです(笑)。“机に並べた”を“地球に並べた”って……」
ナカシマ 「何回、歌ってると思ってるんだよ(笑)」
峯岸 「でも(聞き間違えるのは)俺もわかる(笑)。難しい言葉もあるしさ」
ナカシマ 「歌詞カードは見てないもんね(笑)」
原 「そうだね。そういうことだよね(笑)」
ナカシマ 「でも僕、デモを送る時にも歌詞を一緒に送ってるよね?」
原 「もう曲を聴いちゃうっていう感じで……」
ナカシマ 「もう(原にとっては)インストみたいなもんですよ(笑)」
峯岸 「でも俺は最近、詞をちゃんと読むようにしようと……」
原 「それは僕もあるかもしれない」
ナカシマ 「でも、実際のところ無理だと思ってるんです。詞のことに関してすり合わせるのは……」
原 「全部、説明してもらわないと無理だよね」
ナカシマ 「全部説明しても無理だよね。でも(すり合わせることができたら)それはそれで気持ち悪くない?」
峯岸 「うん」
ナカシマ 「他の人が言ってること(詞)に関して、ベースとドラムが“本当に○○で……”って言うのも変だと思うから、これ(今の状態)でいいんじゃないかなって思います」
――確かに人の考えを完全に理解するのは無理ですね。ところで作詞作曲はナカシマさんが手がけていますが、その時は原さんも峯岸さんも完全にナカシマさんを“放置”している感じですか?
ナカシマ 「僕が触れないで!っていう感じがありますね、詞も曲も」
――ではナカシマさんが変わったら、音楽も変わりますか?
ナカシマ 「いや、それはないと思います。僕が作ったアレンジも2人がまたアレンジし直して、そこでやっとおいしくるメロンパンになるところがあるので……。僕が作った段階では僕の曲って感じがするけど、そこにベースとドラムが入ってガラッと変わるんですよね。それはバンドだなって思います」
――2人は変えようと思っている部分もありますか?
原 「う~ん。僕はあまり変えようとは……こうした方がいいんじゃないか?っていうのはたまにありますけど」
ナカシマ 「原君は簡単にするくらいだね(笑)」
峯岸 「ドラムも俺が変えるしね(笑)」
ナカシマ 「(ドラムは)半分くらい翔雪(峯岸)が変えてるもんね(笑)」
――原さんはいじられ上手ですね(笑)。
ナカシマ 「そうです。心のオアシス。ムードメーカーだからね」
――ちなみに今作でベースとドラムが入ってガラッと変わった曲は? ベースがきいているラストの曲『走馬灯』はどうですか?
ナカシマ 「『走馬灯』は僕がだいたい……(アレンジした)。でもサビとかは違うかな。一番、気に入ってる曲ですね」
峯岸 「グルーヴィーですよね。あれはギターフレーズとの絡みありきなんですよね。その妙です」
――『走馬灯』以外の曲も3つの音で絵を成していますよね。
ナカシマ 「リードギターがないのでコード感とアンサンブルだけで表すことを考えなきゃいけなくて、だからバンドとしての個性が出ると思います。やっぱりリードがあると普通にバッキングが弾いて、リードがメロディを弾くっていう形にどうしてもなっちゃうんですけど、それができないとなると選択肢が増えて、そこで何をするか?っていうのの選択でそのバンドがやりたいことが見えやすくなると思いますね」
――だから色濃く緻密なるんですね。そんな曲たちはみなさんが年を取って演奏しても変わらずエモーショナルに聴こえそうな気がします。
ナカシマ 「そうですかね? 『色水』(1stミニアルバム『thirsty』収録曲)とか痛いですよね。40歳になっても“色水になってく”とか言ってたら痛いです(笑)」
全員 「(笑)」
峯岸 「どうなんだろうね(笑)。たぶん40歳になっても若作りをしていると思います。それを歌うために……」
ナカシマ 「でも曲も着実に老けていってると思う。それは実感します。だからおじさんになったらおじさんの音楽になってると思います。ま、もうそろそろおじさんですけどね(笑)」
――でもおじさんになっても(笑)、曲の世界観ちゃんとあって緻密だから、実際の3人と乖離してもエバーグリーンに聴こえるかな?と思いました。
ナカシマ 「あ~。それはあるかも。そっちの方向に進んでいると思います」
原 「ただ『色水』は……」
峯岸 「初期の曲だからね」
ナカシマ 「あれはちゃんと大学生の時の曲だね」
原 「まだ粗削りだった」
――そう考えると作品ごとに進化しているんですね。さて、そんな横方向に進化した今作を携えたツアーが始まりますが、どんなツアーになりそうですか?
峯岸 「その答えは原君が(笑)!」
原 「どんなワンマンになるかと言いますと……(笑)。今の時点では流れを考え始めているところでまだちゃんとは決まってないんですけど、リリースした曲が20曲になって、これまでは普通のワンマンライブに比べ曲数が少ない感じだったのが、やっと一つのワンマンライブとしてしっかりとしたものになるなっていうのがありますね。なので、いろいろできると思うので、過去のワンマンよりもよりもかっこいい濃密な時間にしようと思っております!全部やっちゃうくらいのつもりなので……」
ナカシマ 「そのなかで曲と曲のつながりを大事にしているので、1曲ずつだけじゃなくて一つの大きな流れとしてライブを見せられたらいいなと思ってます。曲順とか、最初はどの曲か?とか、最後は何がくるか?とか、そんなところも気にしてもらえるとより楽しめるライブになると思います」
text by 服田昌子
(2019年10月18日更新)
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