“伝えるマン”を発動させた新体制第一弾を携え
披露宴代わりのツアーへ!
め組インタビュー&動画コメント
昨年12⽉、寺澤(b)と外山(ds)が加入し5人組になっため組が、新体制初の作品となるミニアルバム「ユエアイ」を10月2日にリリースした。そこでフロントマン・菅原(vo&g)にインタビューを実施。彼が“伝えるマン”と化した今作のことから意外な夜のルーティーンまで、盛りだくさんのトークはさすが!の例え話多めで展開する。
――昨秋、取材させていただいた時はメンバーが5人から3人になった直後でしたが、昨年末に寺澤さんと外山さんが加入し、今度は5人体制になりましたね。
「その取材の頃にはサポートメンバーとして2人(寺澤・外山)が入ってましたね。だから結婚前に付き合ってた……みたいな感じです(笑)」
――その時は既に結婚は決まっていたんですか(笑)?
「いや、まだお互いに結婚の意思確認をしてなかったです(笑)。どうなるかな?みたいな時で、僕たちも勇気がなくて聞けなくて向こうも同じだったみたい。それでスタッフさんを介して、どう思ってるのかを聞いてもらって、やっと結婚にこぎつけました(笑)」
――本当に恋愛みたいですね(笑)。
「マジで恋愛でした(笑)。早く(一緒にやろうと)言いたかったんですけどね。でも、いざくっついたら、今度は親御さん……お客さんはどう思うかな?とか考えたりとかして(笑)。やっぱり前の人(メンバー)がよかった!って言う人もいるかな?って思ったんですよ。元彼を引きずるみたいに……(笑)。もちろんそこも無視はできないと思ったんですけど、本当に音楽性がしっかり合っている人と出会えたので、ウソなくちゃんとお客さんにはっきり(加入のことが)言えたのでよかったですね」
――そして現体制になっての第一弾、ミニアルバム『ユエアイ』がリリースに! 今回はどんなところに重きを置いたんですか?
「僕が作詞作曲をやらしてもらっているんですけど、今回の5曲、すべていい歌が書けたのでそれをしっかり届けたいと思って、歌が映えるように作ろう!ってなりました。以前はギターもベースもドラムもピアノもボーカルも!って全部を水平(同列)にしてバッ!て出していて、すべてがメインディッシュみたいな状況だったんですけど、それでは届けたいものが届きにくいなって思ったんです。なので、5人で集まって新生・め組で音源作るぞ!っていうタイミングで“いいのができたから、今までみたいにガチャガチャ鳴らすのは一回置いておいて、歌をメインに出そう”って話して冷静になったところからスタートしましたね」
――メンバーの反応はどんな感じでしたか?
「新たに入った寺澤くんと宰くん(外山)は、まずはどんな空気感なのか?とか感じながら試行錯誤しつつ作るんじゃないかな?って思ってたんですけど、曲を聴いてしっかり自分のなかで吸収して曲の主人公になって、そのうえでどうするか?を真剣に考えてくれたんですよね。既存の3人にもお客さんにも愛されたい!っていうのが2人にちゃんとあって、エネルギーがあるなってびっくりしました。だから僕もそれを裏切りたくないって思ったし、そこにのっかったというか……」
――想像以上にバンドのことや曲のことを考えてくれたんですね。
「今まではそんなことがなかったんですよ。僕も気を使っちゃうというかで、そんなに要求をしてなかったんです。“こんなの作ってきたけどよろしければ……どう料理してもらってもいいので!”みたいな(笑)。でもそうすると、たまにぐちゃぐちゃってなってシチューの中に味噌入れちゃうみたいなこともあったんですよ。でも今回はそういうんじゃなく、みんなで意識統一しようっていうのが5人のなかにありましたね。でもそれは計画したわけではないんですけどね」
――今作のライナーノーツがHPで公開されていて、菅原さんのブログにその追記がありました。そこで最後の曲『駄々』のレコーディング時に涙したという話がありましたが、その涙の理由は今の話のようなことですか?
「はい。今までは誰がどの楽器をどう弾いて、どう音色を選んでっていうのを僕が把握していたんですけど、もう今回は本当にいい意味で好き勝手にやっているというか…。『駄々』に限らずですが、いろいろやっているうちに僕もわけわかんなくなって“ハイハットをガチャガチャ開いちゃえばいいじゃん、サビなんだし”とかってなっちゃうんですけど、今回は宰くんが“いや、しっかり歌を聴かせなきゃいけないから、ここは(ハイハットは)閉じる!”って言って、その時はそれでピリッとはしたんですけど(笑)、でもそのあと、そうやって考えてくれてるんだっていうことに驚いたんですよね。僕の思う以上に相当考えてやってくれたと思うんですよ、きっと」
――そんなメンバーの様子は見ていたんですか?
「見てないようで見てましたね。曲を真ん中にして相談して練っている宰くんと寺澤くんの姿が作詞した者としてはうれしくて…。介入しないように盗み聞きしてました(笑)」
――ではその時に2人と何か話をしたわけではないんですね。
「話してないですね。でもなぜかわからないけど信頼があって“この人たちは絶対に(曲を)愛してる”って思えて……。細かい部分は置いておいてですけど、それでも“こいつはこういうのが好きだろう”っていう風にお互いをわかっているので、いい意味での妥協もできました」
――今回いい曲が書けた理由は、その信頼関係にもありますか?
「そこは別ですね。詞に注視すると僕がメンヘラだっていうのがわかると思うんですけど(笑)、そこは1人じゃないとできないので…。そのことはメンバーも理解してくれていると思ってるので、書いている時にメンバーがチラッと浮かんだりはしないですね」
――詞について感じたのは、今作はエロスも含め(笑)、人間臭さが増したような気がしました。
「1曲目の『ななこおねいさん』とかは(エロスを)言ってますね(笑)。ま、歌詞はもう無我夢中で気を失っているような状態で書いてるから、その時のリアルタイムな記憶とかはないんです。で、書き上げて宅録でデモ音源にして、そこからバンドで一つ変換するんですけど、その時はもう自分の自慰行為は済んだから、あとは気持ちを込めなくても歌ってしまえ!みたいな思いに駆られたりして……本当に僕はオナニー人間なんです(笑)。だからそれは反省する点なんですけど、シリアスな歌詞なのにそうなっちゃうのが、どこかまじめじゃないような、礼を失してるような気がしてたんですね。つまり、今までは自分が気持ちよくなって終了!で、それ以上に伝えようっていうのが足りてなかったんです。例えば、歌い方もちょっとひしゃげて歌ってる方が歌っている気分になるというか……(自分の感覚が優先だった)。でも今回は伝えることをテーマにしてテコ入れをして、“伝えるマン”になる!としたんです。そこに集中!って……。それで歌入れでも、ここはこういう気持ちで!とか、ここの『○○は○○』の“は”は、もっとはっきり言わないと何言ってるのかわかんないぞ!とか、そういうことをしっかりやったんですよ。でもOKが出た時、あれ?これでいいの?って思っちゃったんですよね。それってきっと、伝える役っていうのは意外とそういう感じなのかって……」
――伝えるためには勢いではなく丁寧に歌うことが大切ということですかね。
「いい意味で冷静ですよね、“伝えるマン”って……。初歩的なことなのかもしれないですけど、今回は俯瞰してボーカルという役割をまじめにやった気がします。思いっきり肩をグワッて入れて力を込め、血管を浮かばせながら歌う方が歌ってる感はある。でもそれは伝えてる感を出している自分にはなるけど、結果的には伝えられてないしボーカルという楽器をうまく使えてないんですよね」
――ちなみにボーカルについては、個人的に2曲目の『お行儀の悪いことがしたい』の出だしの低音が素敵だなと思いました。
「すごく低く歌いましたね。この曲はいいって言ってくれる人が割と多いですね。でもそこ(出だし)のことは……(あまり感想を言われない)。ただこの1行目もさっき言ったように、ひしゃげて歌うとあまり口が広がらないんですけど、今回は“な~っ”って瞳孔が開くくらいに思いっきり口をバッカバカに開いて歌ってます(笑)」
――その効果で耳に残ったのかも?ですね(笑)。では、ここまで話に出てきていない曲のことも……。リード曲の『ユエアイ』は“心をわしゃわしゃし合いたい”という詞がとても菅原さん的だなと思いました。人が好きなんだろうなと……。
「もちろん好きですよ(笑)! ありきたりなテーマではあるんですけど、わかり合いたいけど(詞の)“願いが月日を奪ってく”……。でもその月日をいくらかけてもやっぱりわかり合いたい!っていう曲ですね」
――執着ぐらいの人への愛着ですよね。
「執着心は持ってますね。どんなに嫌いなヤツでもちょっとどっか好きになれる部分があるんじゃないか?っていうM的な要素が……(ある)。昔のバイト先とかでもそう思ってましたね。今でもそう思っているし」
――それは音楽をやるモチベーションにもなっていますか?
「あ~どうかな? 例えば、わかり合えた瞬間とかは、すごく気持ちがいいな。この人とわかり合えた。やった!ってなって、家に帰ったらクリエイティブな気分になる時はありますね。それで曲を書く時はあるかもしれないです」
――そしてその次の曲『春風5センチメンタル』は、この“5センチメンタル”というワードがお見事ですね。
「ポンッてこの言葉が出てきた時は、なんかお気に入りのキーホルダーができた気分でしたね。それってきっと、リュックにずっとつけておきたいっていうような……色あせてもやっぱり好き!じゃないけど、なんかそういうキーホルダーができたっていう感じでした」
――この曲はさわやかですね。でも“黒歴史”っていうダークな言葉が入っていたりもしますが。
「一応、そういうナイフ的要素は入れておかないと……性ですかね(笑)。(ゲームの)『ロックマン』でいうトゲとか、『マリオ』の落とし穴というかです。ずっと平坦な道だとつまんないし、しっかり仕掛けるみたいなことですね」
――最後の曲『駄々』は“駄々をこねる”の駄々を擬人化するという仕掛けが…。駄々はこねない方が人間としては良いけれどなくしたくもないという気持ちが、こじらせていていいですね(笑)。
「そういうの好きじゃないですか(笑)? でも本当にそういう気持ちですよね」
――でもそれが曲になる時点で、駄々へのレクイエムになっているのかな?と思いました。
「ちょっとだけですね。(まだ駄々をこねるべき)僕らより若い人たちが聴いたら、おや?って思うかもって思うとそれは少し反省して……いや!でもわかってくれるはず。だって僕も中学生の時に40歳ぐらい人の音楽を聴いて、めちゃいいなと思ってたから。そこは気にせず、好きだと思える曲を作れたからいいです」
――レクイエム的要素はちょっとだけだったんですね(笑)。
「歌詞でも“大人っぽくなっただけだ”って言ってますけど、その言葉どおりですね。その(子どもと大人の)間を行き来しているだけです。(大人になることを)受け入れつつも、やっぱり最後は子どもの気持ちを忘れないようにって“どうかこの病がずっと治りませんように”と(曲中でも)繰り返し唱えてるんです。でもこんな呪文を唱えなくてもずっと病は続いてるから、それはもうしょうがない(笑)」
――そう言い切ってもらえると聴く方はなんか安心します。でも意外と10年後に会ったらすごくものわかりのいいオジサンになっていたりして…(笑)。
「そうですかね? いや、それでも変わらず大人っぽくなっただけって思ってるんでしょうね(笑)」
――しかし、体は正直に年を取るのでお気をつけて(笑)。
「あ、本当にそれなんですよ。20歳ぐらいはそういうこと(健康)にまったく興味がなくて、タバコもバカバカ吸ってクモの巣が張ってる部屋の汚いソファに座ってるようなのがカッコいいって思ってたんですけど、今は週4、5回ランニングしてるんですよ。自分でももう意味がわかんなくて(笑)。でも気持ちいいし楽しい、なんかヤバくないですか?」
――どこを目指してるんですか(笑)?
「僕もそれがわからないまま走ってますね(笑)。しかも夜に走るんですけど、流れ星が見えたりして、素敵だな~なんて思って……ずっと走ってられます」
――そんな万全の状態で(笑)、11月から今作のリリースツアーに突入! 現体制での初ワンマンツアーですね。
「そうです。昨年も(新メンバーに)サポートメンバーとして入ってもらってツアーは回ったんですけど、今回は正式メンバーとして5人でやる初めてのツアーです。そして音源自体が今の5人での初作品なので、昨年のツアーとは意味合いが大きく変わります。なので今回はノロケたいなと思います。こうやって(腕を組んで)登場して、ずっとニヤニヤしてたいなと……(笑)。今回はそういうのも、きっとお客さんは歓迎してくれると思うんですよね」
text by 服田昌子
(2019年10月23日更新)
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