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名盤『JOLLY JIVE』から40年
あの頃の熱狂を呼び覚ますツアーを開催!
高中正義インタビュー

スーパーギタリスト・高中正義の名を世に知らしめたアルバム『JOLLY JIVE』。同作のリリースから40周年を迎える今年、その音世界を再現するスペシャルなツアーが開催される。そこで、ご本人にアルバム制作の思い出や今ツアーについてインタビュー。代表曲『BLUE LAGOON』の誕生秘話や、10月22日(火・祝)に控えるツアー・大阪公演の“お楽しみ”も惜しみなく語ってくれた。

――ヒットナンバー『BLUE LAGOON』を収録したアルバム『JOLLY JIVE』のリリースから40年が経ちましたね。同作はご自身にとってどんな作品ですか?
 
「中学でギターを始め、高校を卒業してプロになって、フライド・エッグというバンドに1年いて、そのあとサディスティック・ミカ・バンドというバンドに3、4年いて、そしてスタジオミュージシャンの仕事もやっていろんなミュージシャンのサポートもして……。24歳ぐらいの時に初めて自分の作品を出し、5枚目のアルバムが『JOLLY JIVE』。26歳の時でしたね。やっとこれで売れたというか世に知ってもらえたというか……だからよかったなっていう(笑)。1曲目に『BLUE LAGOON』が入っているんだけど、これが一番みんなに好かれたみたいで、それで売れたんですよね」
 
――そしてその40周年を記念したツアー「SUPER LIVE 2019 “BLUE LAGOON 40th Special”」が9月に始まります。
 
「あれから40年で今僕は66歳。40年前に聴いてくれた人たちもやっぱり同じように年をとって、60代とかその前後になっているわけです。だから(当時の思い出がよみがえるように)今回は『JOLLY JIVE』を全曲、曲順どおりにそっくりそのまま、アレンジも変えずにやろうかと思ってます」
 
――ちなみに40年前は“これはヒットする!”という予感はあったんですか?
 
「その1年前に取材を受けた時、“高中さん、サーファーのなかで人気が出始めているから、来年売れますよ”って言われたんですよ。サーファーは(流行が)早いんだって。だから“だといいな”と思っていたら、それが確かに当たったんです(笑)」
 
――予想どおりでしたね(笑)。ご自身の予想はどうだったんですか?
 
「やっぱりヒットさせたいから、そうするにはどうやったらいいのかを考えてて…。でも、あまり難しい音楽をやっているつもりもなくて、僕自身はどっちかっていうとミーハーっていうか(笑)。専門的な難しい音楽が好きなわけじゃないんですよ。中学の時は、ザ・ビートルズとかザ・ベンチャーズが好きで、『BLUE LAGOON』を出すちょい前には『サタデー・ナイト・フィーバー』っていう映画がすごく好きでね。その映画の音楽はビージーズがやってて、それがきれいだったし楽しかったし」
 
――音楽の流行に対して感度が高いんですね。
 
「どうなんでしょうね。いや、ジャズも好きだし……たぶん、メロディがはっきりきれいなものが好きなんだと思う。それをミーハーって自分で言うのかもしれないですね。だからギターでも、やたらスピードが速いものとかよりもメロディがあってきれいな方がいいと思うんですよ。速いのは、一瞬は楽しいと思うけど、2時間とか聴いてたら疲れるからね(笑)。そういうのが表れているんでしょうね、きっと」
 
――『BLUE LAGOON』の曲もギターが歌う美しいメロディが印象的ですね。
 
「昔はザ・ベンチャーズとかも歌がほとんどなくてギターがメインだったしね。あとイギリスのシャドウズやバリー・ホワイトの『愛のテーマ』とかもインストで…。そういう歌なしで世界的にヒットした(メロディの)きれいな曲っていっぱいある。そもそも僕は最初歌うつもりだったんだけど、歌がヘタだからやっぱりやめてギターでなんとかならないかな?ってやってるんです(笑)」
 
――そんな理由が(笑)!
 
「そう。でも割と自己主張が強い方だから、なんとかギターで!ってね。ギターメインでやりたいんです(笑)」
 
――結果的にはギターの名曲が生まれるわけですから、歌えなくてよかったのかもしれない(笑)?
 
「そうそう(笑)。歌がうまい人はごまんといるわけじゃない? そこでトップにならないといけないからさ。歌がヘタでよかった(笑)」
 
――でも『JOLLY JIVE』には歌はなくともユニークなコーラスが入る『BAMBOO VENDER』なども収められていて、言葉としての遊び心もありますね。
 
「『BAMBOO VENDER』は、“たーけやー、さーおだけー”って歩いて竿竹を売ってる人の掛け声がおもしろいんで、それを音楽にできないかなって……。たぶん酔っ払った時に思いついたんだと思うんだけどね」
 
――飲みながら曲を考えることもあるんですか?
 
「飲み屋でティッシュとかの紙に書くんだけど、次の日に見たらわかんないし、思い出せない(笑)。だから飲みながらは難しいですね。でもアイデアは……(生まれる)」
 
――名曲『BLUE LAGOON』のアイデアはどこから?
 
「『BLUE LAGOON』は、最初歌(のある曲)を作ろうと思ってちゃんと録音したら歌の部分がダメで、もう捨てようかなって思ったんだけど、間奏だけがよかったのね。だから間奏を引きのばして曲にできないかなって作った曲」
 
――そんな秘話が! ちなみに40年経って曲に対する思いは変化するものですか?
 
「40年経つと結構忘れてることが多くて…。だって26歳が66歳になるって自分で信じられない(笑)。だからなかなか(当時を)思い出せない。1年経ちゃ細胞全部が入れ替わって別人になってるからね(笑)」
 
――失礼しました(笑)。では、毎年ライブで『BLUE LAGOON』を演奏されると思いますが、アレンジなどは変化を遂げていますか?
 
「もうね。本人は飽きちゃうのね、何百回とやってるから(笑)。だから変えることもあったし……。でも、たぶん僕がジェフ・ベックのコンサートを見に行って、高校の時に聴いた曲のアレンジが“こんなに変えちゃって”って思うほどだったら、つまんないなって思うから、自分も変えない方がいいんだろうなって。やっぱり自分が飽きてても昔どおりにやった方が、お客さんは“そうそうこれ。高校の時聴いたやつなんだよ!”ってなるんじゃないかなって思う。ほら、昔の歌を崩して歌う人が結構いるじゃない? あれ、つまんないよね(笑)」
 
――確かに(笑)。それで今度のツアーは“40年前そのまま”なんですね。
 
「そう。なるべくそのまま。40歳若返るっていうのは無理だけど、でも(『BLUE LAGOON』の)音源を聴いて、なるべく自分の完コピをするわけ。ここはこういう弾き方だったなって、今“勉強”してるんです」
 
――その“勉強”で新発見があったり?
 
「ま、昔はよく指が動いてたなって…。いや、昔も必死だったんだよね。レコーディングで10回、20回と弾くでしょ。で、一番いいヤツをOKにするわけだから。偶然できた6連符の速いフレーズとか。写真でも100枚撮って一番いいのを選ぶでしょ? でもライブはそうはいかない。26歳の時に背伸びしてやっとできたフレーズで、しかも何十回もやって一番いいヤツが音源になってるわけじだから、それを40年経ってライブでやるとなったら……。結構しんどいですよね(笑)」
 
――でも楽しみです(笑)。さてそんなツアーでは『JOLLY JIVE』の曲以外も聴けるんでしょうか?
 
「もちろん。(『JOLLY JIVE』は)8曲だから(他の曲がないと)すぐ終わっちゃう」
 
――ほかはどんな曲が聴けそうですか?
 
「例えば、全然関係ないけどイーグルスの『ホテル・カリフォルニア』のギターソロのところだけやろうかなって(笑)。ギター2人でハモるところがあるんだけど、でも俺一人だからハモりの機械で……。それと『BLUE LAGOON』の録音の2年前に、桑名正博のレコーディングのスタジオ仕事で『哀愁トゥナイト』っていう曲のギターを俺が弾いたの。で、そこから桑名君と仲よくなって一緒に沖縄遊びに行ったり…。俺が大阪で(ライブを)やった時には桑名君と妹の晴子も来て、そのあと飲み歩いてね。店にギターとマイクがあれば、そこで弾いて歌って、また次の店でもやってって(笑)。大阪ってなんておもしろいんだって思ったね。ま、まず桑名君がおもしろいんだけどね(笑)。その後、(自身が住む)軽井沢に桑名君が引っ越して来て、また一緒に飲むようになって…。そこでは奥さんと2番目の息子の錬君も住んでて、最近は錬君とよく飲むんだけど、歌がうまいし顔もイケメンだしっていうので、今回特別に昔僕がギターを弾いた曲(『哀愁トゥナイト』)を錬君が歌ってくれるという……。長野と大阪の公演だけ。長野はみんなが住んでるからっていうのがあるけど、でもそれなら“桑名の本場(出身地)”の大阪でも!って」
 
――スペシャルな夜になりそうですね。そして高中さんと言えば個性的なギターですが、今回も登場しそうですか? なかには模型の電車が走るギターもあるんですよね?
 
「いや~電車のヤツはね…(使わない)。こんな小さい(3㎝程度)電車だから客席から見えないんですよ(笑)」
 
――あら(笑)。そう言えば、サーフボードのギターもありますよね? あと今日もですが、毎回衣装もおしゃれ。
 
「あのギターは僕のアイデアなんだけど、そういうアホらしいというか誰もやんないようなことをやりたいなって。衣装は、サディスティック・ミカ・バンドにいた頃、10㎝ヒールのロンドンブーツが当たり前でラメも入っていてね。だからね、僕自身は無口で地味な性格だけど、ギターを弾く時ぐらいはさ、派手な格好の方がおもしろいかなって思うからやってるだけ(笑)」
 
――でも尖った感じがカッコいいですよね。ほかのインタビュー記事を拝見したら昔の武勇伝もたくさん載っていておもしろかったです。最近そういうミュージシャンは少ないですよね?
 
「若い人たちは、ヘビメタでステージ上ではすごく悪そうにやってても(ライブが)終わったら酒飲まないでまじめだっていうからね。でも、僕はそんな悪くない。僕の先輩たちが悪かった時代があったっていう……(笑)」
 
――“先輩が”ですね(笑)。じゃ最近は飲み歩いてないんですか?
 
「ま、飲んじゃってますけど(笑)。でもそろそろ打ち止めにしないとダメかな。だってね~、2か月に1回血液検査してるからね(笑)」
 
――でも今度の大阪公演では、桑名さんとの思い出のようにぜひライブ後も楽しんでください(笑)。
 
「はい(笑)」

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text by 服田昌子
取材協力:イシバシ楽器 梅田店



(2019年8月 7日更新)


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Profile

1953年3月27日生まれ、東京都出身。フライド・エッグやサディスティック・ミカ・バンドなどでの活動を経て1976年にソロデビュー。サンタナやリー・リトナーといった海外のビッグネームとの共演も多数なうえ、日本武道館や横浜スタジアムなどでの伝説のライブも数多い。66歳になった現在までコンスタントにリリースとツアーを積み重ね、日本のギター&インストシーンの第一線を走り続けている。


Live

SUPER LIVE 2019
“BLUE LAGOON 40th Special”

【長野公演】
▼9月1日(日)長野市芸術館 メインホール
【広島公演】
▼9月7日(土)
広島JMSアステールプラザ 大ホール
【北海道公演】
▼9月15日(日)カナモトホール
【東京公演】
▼9月28日(土)
かつしかシンフォニーヒルズ
モーツァルトホール
【福岡公演】
▼10月4日(金)
福岡国際会議場 メインホール
【群馬公演】
▼10月6日(日)太田市民会館
【宮城公演】
▼10月12日(土)SENDAI GIGS
【愛知公演】
▼10月14日(月・祝)Zepp Nagoya
【富山公演】
▼10月19日(土)富山県民会館 ホール
【東京公演】
▼10月20日(日)日比谷野外大音楽堂

Pick Up!!

【大阪公演】

チケット発売中 Pコード:153-917
▼10月22日(火・祝) 16:30
フェスティバルホール
全席指定-8250円
※3歳以上は有料。
[問]キョードーインフォメーション■0570-200-888

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