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新たな黄金期を迎えたソウル・フラワー・ユニオン
フロントマンの中川敬インタビュー&動画コメント

’17年以降は新ドラマーとして麗蘭などでプレイしてきたJah-Rahが加入し、’14年から加入したベースの阿部光一郎やコーラスのリクルマイと併せて、完全に新体制のラインナップを確立したソウル・フラワー・ユニオン。そんな現行メンバーでの初のアルバムとなった『バタフライ・アフェクツ』は、スウィンギンな8ビートにニューエスト時代を彷彿させるオルガンやアナログ・シンセの多用も際立ったロック色をストレートに強めた音で、結成25周年を経てバンドとして新たな転換点を迎えたことを示した会心作となっている。長いキャリアを経てまるでファースト・アルバムのような強度を獲得し、新たな黄金期を迎えたSFUの現在について、フロントマンの中川敬に語ってもらった。

――最新作『バタフライ・アフェクツ』は、バンドの新ドラマーとしてJah-Rahさんが加入してリズム隊が完全に新しくなり、コーラスにリクルマイさんが加わる新体制が確立されてから初のアルバムとなりました。
 
「何よりもそれが大きかったかな。で、もちろんオレは弾き語りのライブを5年前から始めて、毎週どこかで歌ってきてて。そして、’15年に3枚目、’17年に4枚目のソロ・アルバムを出して、その間に3カ月に一度のソウル・フラワー・ユニオンのライブを並行して続けているうちに、ソウルフラワーのライブの場をもっとロックな場にしたいなという気持ちが強くなってきてね。お客さんが何を望んでいるのかもある程度わかるし、みんなの人生をもっと踊らせたいなという感覚もあって。そういうタイミングで特にJah-Rahが加入したことで、’17年は“どういう感じの曲を(次のアルバムのために)書いたらコイツらが光るんやろう?”ということをずっと見定めているような1年間やってんね」
 
――なるほど。確かに’17年ごろのライブは、現行のメンバーでベストに響く音を選曲なども含めて模索しているような印象がありました。
 
「とりあえずニューエストもソウルフラワーも含めてかなりたくさんの代表曲を一緒にやってみて、結果としてわかったのは、麗蘭で10年ほど叩いてきたドラマーだけあって、やっぱりスウィングする8ビート。それが俺の考えていたベクトルとも見事に重なり合った」
 
――バンドとしての何度目かの転換点を迎えた感もあります。
 
「ずっと聴いてくれている人ならわかると思うけど、’05年の『ロロサエ・モナムール』から’14年の『アンダーグラウンド・レイルロード』まで4枚のアルバムがあって、その4作はオレの中である種の4部作というか。なんか『アンダーグラウンド~』で完結した感じもあってん。それ以前の話もすると『ワタツミ・ヤマツミ』(’94年)『エレクトロ・アジール・バップ』(’96年)『ウィンズ・フェアグラウンド』(’99年)『スクリューボール・コメディ』(’01年)も、オレの中では4作で完結した感じがあった。だから、今回のアルバムは作り始める前から新バンドのファースト・アルバムみたいなものを作ろうという気持ちになっていたし、そうなってくると自分の中でゲーム感覚で自分に課してみたいことが何個か出てきて、1つはゲスト・ミュージシャンをあまり入れないと。で、今までに2回の4部作が仮にあったとするならば、そことちょっと違った要素があるものにしたいとも思ったし、ファースト・アルバム的な作品にするには勢いが欲しいから、’18年の年始からまったくこれまでのストックなどを使わない白紙の状態から曲を書いて年内に出すというタイムスパンで作ると、かなり濃いモノが出来るんじゃないかなと。まだ曲を書き始める前の’17年12月にソングライターの中川敬ではなくプロデューサーの中川敬が勝手にそう考えて(笑)、実際にその通りになった」
 
――しかも、ソロ作を10月に出した直後の話ですから、かなりの過密ペースですよね…。
 
「年内にリリースするということは、逆算すると8月には全曲のベーシック・トラックが完成しているということやから。でも、それが出来ればかなりイケてる52歳や、みたいな感じもありつつ(笑)。だから、達成できた今はとても気持ちがいいのですよ」
 
――アルバムを聴いてみても、新体制でのファースト・アルバムという印象を強く受けました。
 
「うん。バンドの中にも新しいバンドのファースト・アルバムですよ、という感じの空気があったね」
 
――ソウルフラワーとして25周年、ニューエスト時代も含めれば33年というタイミングでこんなフレッシュな音を鳴らせるというのが、また凄いことだなと。
 
「まだインタビューの前半でこんなことを言うのも何やけど、ホントに最高傑作ができたと思ってる。もちろんロックでは、30歳前後の人間が最高傑作を作るわけ。ミック・ジャガーが29歳の時にローリング・ストーンズ『メインストリートのならず者』とか、ジョン・レノンが30歳で『ジョンの魂』とかね。そういう意味では、ソウルフラワーでは『エレクトロ・アジール・バップ』がそれに当たる作品かもしれない。でも、今回のアルバムはそれとはちょっと意味合いの違う最高傑作で、個人的にも『エレクトロ・アジール・バップ』以降のアルバムでは一番気に入っている」
 
――今回のアルバムは、ロック色が強まったのでニューエスト時代に原点回帰した、みたいに評されることも多いですが、僕はあまりそうは思わなくて…。
 
「そうやね。宣伝文とかでもニューエスト・モデルという言葉がかなり躍っているけども、実際のところみんなコレを聴いたらソウル・フラワー・ユニオンやん、今の中川やんって思うと思う」
 
――もちろんニューエスト感もあるんですが、音にも歌詞の言葉にも過去の作品に戻ったような感じは一切ないですし。
 
「ニューエストというか、結局は自分が10代の頃にいわゆるモッズ・マナーのブリティッシュ・ロックで育っているからで。一番最初はチューリップに始まって、中学生の時にビートルズが大好きになってウイングスやジョン・レノンも聴いて、次にローリング・ストーンズを好きになって、キンクスを聴き、スモール・フェイゼズを聴き、英国じゃないけどドアーズやヴェルヴェット・アンダーグラウンドを好きになって、モータウンやスタックス・ソウルを聴き、同時代のモノはジャムやストラングラーズを聴き…みたいな。ちょっと長くなったけど(笑)、10代の頃に60年代の英国ロック中心であらゆるものを順番に掘っていった流れがあって、今のメンバーとやるならこういうスウィングする8ビートがエエねんなと思いながら曲を書いていくと、面白いほど自分の中からそういう要素が出てきてね。結局は、自分の中の音楽の原風景みたいなものがどんどん出てきたのが面白かったし、だから実は今回のアルバムの曲作りはある意味頑張ってない。ホントに自分の口と手の流れに任せるように、ガンガンと曲を書いていったというか。だから、こういうモッズ・ミュージックが“オレ民謡”やねんな、と思ったね。もちろんモッズだけじゃなくて、デヴィッド・ボウイやT-レックス的な側面もあるけど、10~20代のころの原風景が一気に噴き出している感じがある。でも、原点に回帰する気持ちとかは全然なかったよね」
 
――現行のメンバーでベストな音を模索するうちにこのスタイルに行き着いたということであって、今回の中川さんのボーカルと歌詞も初期とはまったく違う世界を描いていますし。
 
「ぜんぜん別モノやね。そこももちろんオレは本人やから自分ではわかっていて、完全に『豊穣なる闇のバラッド』の次やねん、歌詞とメロディに関しては。ただ、2枚のソロがあって『バタフライ・アフェクツ』があるのは最初からわかっていたから、今回のアルバムではアコースティック・ギターは一切入れずに全部エレキ・ギターでいこうというのは考えた。今までのソウル・フラワー・ユニオンなら、もうちょっと(バンドとソロの)中間みたいな曲も入れていたと思う。でも、この7年でアコースティックなソロをもう4枚も出したことで、ある程度は自分の一側面を自己実現できてしまったので、こっちはこっちでより先鋭化できるなという気分になってね。そういうバンドとソロの棲み分けは完全にできたけど、歌詞やメロディはソロの続きになるよね、同じ人間が書いてるんやから」
 
――そのあたりの絶妙な混ざり具合もまた、今回のアルバムを特別なものにしていると思います。
 
「だから、オレ的には2010年代の中川敬を詰め込むことができた、という達成感もあるね。今回はソウルフラワーはいろんなことをやらなアカンのや、という強迫観念や色気みたいなのもなくて、とにかく’18年に書いた曲をどんどんと録っていけばイイと。まだ前作『アンダーグラウンド・レイルロード』の時は、ソウルフラワーやねんから1曲くらいチンドンっぽいリズムの曲をやりたいなみたいな企画性が残っていたけど、今回はそれがなかった。だから、全然違う種類の気持ち良さがあって、そこはニューエスト・モデル時代の『ソウル・サバイバー』とか『クロスブリード・パーク』の頃の感じに近いモノがある。いい曲かどうかだけがルールで、あとはタブーなし、みたいな」
 
――そんなロック・バンドとしての本質をストレートに前景化させ、スピード感や強度も兼ね備えた新作を完成させて、3月16日(土)にはumeda TRADにて、恒例の対バン形式での「闇鍋音楽祭2019」で大阪はタートルアイランドとの2マン公演が行われます(翌週の23日の東京公演は、亜無亜危異との共演!)。
 
「タートルアイランドとは10年くらい前に名古屋のクラブクアトロでゲストに来てもらって対バンしたことがあって、彼らが主宰する“橋の下音楽祭”にもソウル・フラワー・モノノケ・サミットとソロの弾き語りで出たことがあるけれど、今回、もちろんセッションもするよ」

text by 吉本秀純



(2019年3月14日更新)


Check

Movie Comment

Release

『バタフライ・アフェクツ』
3024円(税込)
XBCD-1052
BM tunes

《収録曲》
01. バタフライ・アフェクツ
02. この地上を愛で埋めろ
03. 最果てのバスターミナル
04. シングルハンド・キャッチ
05. 路地の鬼火
06. インシスト
07. エサに釣られるな
08. 愛の遊撃戦
09. ランタナの咲く方へ
10. 深い河の彼方から

Profile

1993年にニューエスト・モデルとメスカリン・ドライブが統合する形で結成。特に’95年の阪神・淡路大震災の被災地でソウル・フラワー・モノノケ・サミットとして慰問ライブを続ける中で生まれた『満月の夕』は、その後に数多くの音楽家たちによってカバーもされながらタイムレスに聴き継がれている。現在のメンバーは、中川敬(ボーカル、ギター、三線)、奥野真哉(キーボード)、高木克(ギター、ブズーキ他)、阿部光一郎(ベース)、Jah-Rah(ドラム)、リクルマイ(コーラス)。

ソウル・フラワー・ユニオン
オフィシャルサイト

http://www.breast.co.jp/soulflower/


Live

ソウル・フラワー・ユニオン

「闇鍋音楽祭2019」

Pick Up!!

【大阪公演】

チケット発売中 Pコード:137-329
▼3月16日(土) 19:00
umeda TRAD(前umeda AKASO)
オールスタンディング-4800円(整理番号付、ドリンク代別途要)
学割チケット-2400円(高校生以上の学生、オールスタンディング、ドリンク代別途要)
[ゲスト]TURTLE ISLAND
※中学生以下は保護者同伴に限り無料。学割チケットは要学生証。身障者に付き添いの介助者は1名まで無料(要障がい者手帳)。
[問]GREENS■06-6882-1224

【東京公演】
チケット発売中 Pコード:137-733
▼3月23日(土) 19:00
TSUTAYA O-WEST
オールスタンディング(一般)-4800円
オールスタンディング(学割)-2400円(大高生/公演当日要学生証)
[ゲスト]亜無亜危異
※ドリンク代別途必要。中学生以下は保護者同伴に限り無料。障がい者手帳をお持ちの方の付添者1名まで入場無料。
[問]ソーゴー東京■03-3405-9999


『ARABAKI ROCK FEST.19』
チケット発売中 Pコード:780-307
▼4月27日(土)・28日(日)
みちのく公園北地区 エコキャンプみちのく
2日通し券-15000円
2日通し4人券-50000円(4名同時入場)
4月27日券-8900円
4月28日券-8900円
[出演]あいみょん/赤い公園/浅井健一&THE INTERCHANGE KILLS/ACIDMAN/THE ARABAKI ROCKERS/アンテナ/iki orchestra/eastern youth/indigo la End/indischord/打首獄門同好会/ウルフルズ/Age Factory/大森靖子/男鹿ナマハゲ太鼓推進協議会(O×N×D×A)arabaki special/折坂悠太/片平里菜/勝手にしやがれ/カネコアヤノ/川内太鼓/川崎中学校吹奏楽部/KAN/9mm Parabellum Bullet/THE King ALL STARS -2019 ARABAKI MAXIMUM-/King Gnu/Creepy Nuts/go!go!vanillas/コレサワ/坂口有望/崎山蒼志/ZAZEN BOYS/佐藤タイジ&華純連/佐藤千亜妃/3人ピーズ/サンボマスター/G-FREAK FACTORY/ZIGGY/SHISHAMO/SIX LOUNGE/s**t kingz/cinema staff/SiM/SHADOWS/女王蜂/SIRUP/水曜日のカンパネラ/SCANDAL/spike shoes/関取花/ソウル・フラワー・ユニオン/曽我部恵一BAND/竹内アンナ/竹原ピストル/チャラン・ポ・ランタン/Chara/月に吠える。/つしまみれ/Dizzy Sunfist/the telephones/電気グルーヴ/TENDRE/TENDOUJI/10-FEET/東京スカパラダイスオーケストラ/堂島孝平/ドミコ/TOMOVSKY/ドレスコーズ/中村佳穂/西馬音内盆踊り/ニセ☆忌野清志郎(アラバキ公認)/人間椅子/ネクライトーキー/No title/The Birthday/BARBEE BOYS/BURNOUT SYNDROMES/the HIATUS/THE BACK HORN/Have a Nice Day!/バレーボウイズ/ハンバートハンバート/BIGMAMA/ヒトリエ/the pillows/04 Limited Sazabys/藤原美幸/PUSHIM/a flood of circle/フラワーカンパニーズ/古市コータロー/フレデリック/Base Ball Bear/THE BAWDIES/ホリエアツシ/ポルカドットスティングレイ/マカロニえんぴつ/真心ブラザーズの津軽フォーク村/mahina/みちのくプロレス/夢弦会/武藤昭平withウエノコウジ/村松徳一/ヤバイTシャツ屋さん/ヤマサキセイヤ/ユアネス/UNISON SQUARE GARDEN/LUCKY TAPES/リーガルリリー/緑黄色社会/LOW IQ 01&THE RHYTHM MAKERS/ROTTENGRAFFTY/忘れらんねえよ柴田とLEGO BIG MORLヒロキのミラクルアコースティックユニット『タカヒロキ』/他
※チケットは引換券。4/27(土)・28(日)の開場は10:00。雨天決行。小学生以下は保護者同伴に限り無料。出演者変更に伴う払戻し不可。出演者はいずれかの公演に出演。花笠ミッドナイトショー(4/27(土)22:00~予定)は2日通し券または1日両日券とキャンプサイト券(Pコード:780-308)をお持ちの方のみ参加可。公演内容に関する詳細は公式HPまで。
※2日通し券は1人3枚まで。2日通し4人券は1人1枚まで。4月27日券、4月28日券は1人4枚まで。
[問]G・I・P■022-222-9999

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中川敬

チケット発売中 Pコード:139-212
▼4月5日(金) 19:00
TOKUZO
全自由席-3500円(整理番号付・別途ドリンク代必要)
※学割チケットあり。但し、ぴあでの取扱いなし。詳細は問合せ先まで。付き添いが必要な障がい者の方に限り、介護の方1名は無料。要障がい者手帳提示。中学生以下無料(要保護者同伴)。
[問]TOKUZO■052-733-3709

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