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ちょっとノスタルジーを感じつつ、未来を考える
1stフルアルバム『BODY』を携えてライブを開催
AAAMYYYのソロ活動に迫るインタビュー

昨年からTempalayのメンバーとしても活動中のAAAMYYY(エイミー)が、カセットテープと配信でリリースしてきたEP3部作『WEEKEND EP』『MABOROSI EP』『ETCETRA EP』を経て、ついに1stフルアルバム『BODY』を2月6日にリリース。携帯のアプリを使用したチープな音色やヴィンテージ感あるシンセが醸し出す独特のサウンド、ドリーミーで浮遊感あるボーカルが発信する暗示的なワードとストーリー性。シュールで謎めいた中に、現代人の闇を突くハッとするような鋭い言葉も聞こえてくる。国内外からつながるMATTON(PAELLAS )やComputer Magicといった気鋭のフィーチャリング・アーティストにも要注目だ! ぴあ関西版WEB初登場となる今回は音楽に目覚めたきっかけから創作姿勢、思想や死生観に至るまで、柔らかく語ってもらった。

カナダに留学して、音楽制作に目覚める
 
 
――AAAMYYYさんは22歳から音楽制作をスタートしたそうですが、それまでは創作活動はしていなかったのですか?
 
「それまでは語学の勉強ばかりしていました。CAになりたいという夢が中学生の時からあったので。旅行が好きだったし、いろんな国に行けるかな~と思って(笑)」
 
――ちなみに、音楽に関して、10代の頃はどんなふうに接していたのですか?
 
「実は、そんなに音楽に興味がなかったというか…。テレビで流れているような、J-POPのチャートに載る曲ばかりを聴いていました」
 
――では、今の音楽活動を始めるきっかけは何だったのですか?
 
「大学時代にカナダに留学して、アグレッシブローラーブレードのスポーツ・コミュニティーでよく遊んでいて。そこにいる人達がクリップを撮ってフィルミングをしていたんですよ。“今日の技はこれだ”っていう感じで…。そのBGMがかっこよくて。Gorillazだったり、Tame Impala、Grimes、Electric Youthとか、たくさん音楽を教えてもらったんです」
 
――そこからご自身でも音楽制作をするように?
 
「そうですね。Mac Bookを持っていたので、ガレージバンドやアイムービーという音楽・動画を編集できるアプリですぐ具現化できたので。その動画に自分のBGMをはめたりするようになったんです。その後、カナダから帰国して、出会った女の子とユニットを始めました」
 
――最初はトラックメイカーからスタートして、歌を歌うようになったのはいつから?
 
「必然的に歌わなければいけなかったというか。そのユニットを組んだ子が、立ちドラムをしながら、カオスパッドもやっていて忙しかったので、私がシンセを弾きながら歌うという形になりました。そのユニットがとある大きなプロダクションに所属する事になって、そのころからボイストレーニングにも行くようになり、音楽を職業にしようかな~なんて思うようになったんです」
 
 
 
自分の宗教観だとか、死生観を関連付けて歌詞を書いていった
 
 
――作品を作る際に、何かテーマにしていることはありますか?
 
「このAAAMYYY名義にしたのが2017年からなんですけど。インターFMの『Tokyo Scene』という金曜夜8時放送のラジオ番組でアシスタントMCに選ばれたことがきっかけなんです。その時は“ラジオ”をテーマに、『8PM』というタイトルの作品を作ったりしていました。普段はあまり喋らないタイプというか、聞きに回るタイプなので。話していて、悶々とする場面があるというか。日常生活の中で思い立ったこととか、“これはどうなんだろう?”という疑問だとかを歌詞にして提示しています」
 
――それは今回の1stアルバム『BODY』でも?
 
「今回は作り始めたのが去年の10月頃で、その時に思っていることももちろん入ってます。それと、趣味が、Netflixを観ることなんですけど、Netflixが大好きすぎて(笑)、その全てのドラマや映画、特に“Netflix オリジナル”がほんとに大好きで。今回は割とそこからインスパイアを受けているものが多いですね」
 
――“時は2615年のβ版、陰謀まみれの政治と人々の闘争が止まらない未来都市。郊外に隠れるように佇む小さな脳科学研究所に、秘密組織が潜入した。人間らしさとは、生きるとは何なのか?”という導入文が資料に書かれていましたが。
 
「そうそうそう! これを一番最初に考えて、そのテーマに沿ってアルバムの曲を書いていきました」
 
――そういう風に作られたのは初めてですか?
 
「初めてです!」
 
――では、これはコンセプトアルバムなんですね。
 
「コンセプトアルバムですね。前回のTempalayのアルバムも、コンセプトアルバムだったので、面白いな~とずっと思ってて。自然にそうなりました」
 
――アルバムを聴いた印象として、どこかSF世界に引き込まれていくような感覚でしたが、どのような設定で、作られてるのですか?
 
「そうですね、割とSFチックな近未来感というか。『ブラックミラー』ってご存知ですか? Netflixの中にあるドラマなんですけど、それが近未来のAIとか、化学技術が発達していった先にあるものがテーマのドラマで。そういうものを見て、自分が思ったことというか。“あの時こうしていたらそんなことにはならなかったのに、そうなってしまった人間事情”だとかに、儚いな~って感想を言ったり考察をしたりしてます」
 
――今の現実や社会に対して感じていることが暗示的に発信されている?
 
「はい。全感情がそこにある。曲によってテーマがあって、例えば『被験者J』(M-3)っていうのは、Netflixの中での『マニアック』という作品からインスピレーションを受けた曲なのですが。夢と心理的な繋がりを研究する科学研究所のお話なんです。すごくシュールで面白いです」
 
――そうそうシュールな感覚も受けました。
 
「そういうシュールさをテーマにした曲とか。5曲目の『ポリシー』は、「今自分が置かれてる状況で、何か悪いことがあった時とか壁があったとしたら、こういう自分の中のポリシーでやりたい。やります。」っていうことを提示をする曲だったりして」
 
――これは文字通りAAAMYYYさんのポリシーですか?
 
「あ、はい。紆余曲折を経て、改めて振り返ったらこんな風に思いましたという。あと、リード曲の『屍を越えて行け』(M-9)は、日本人であり、ミュージシャンだという自分のアイデンティティを改めて考えた時に、宗教観だとか、死生観を関連付けて歌詞を書いていったんです。最近まで自分で無宗教だと思っていたのですが、やっぱり自分は仏教だなと。家にお仏壇があったりとか、お葬式も火葬だったり、天国を信じるとか。三途の川を渡るっていうものがやっぱり宗教になっていくのかもしれないなと改めて思ったので、“三途の川を渡る”というイメージで歌詞を書きました」
 
――へー、そうだったんですね!
 
「というのも、7曲目の『愛のため』という曲は、私に曲作りを教えてくれた同い年のミュージシャンの男の子がいたんですけど。昨年、その師匠が飛び降り自殺をしてしまって。すごい変な人なんですけど、悪い意味ではなくて、彼なりの考察があっての行動だったので」
 
――それは記事で書いてもいいことなんですか?
 
「あ、大丈夫です」
 
――それがきっかけになってできたのが『愛のため』だと?
 
「そうですね。“ゲームオーバー”というか、ゲームで死んじゃったら、もう一回15秒後じゃないと戻ってこれなーい!とか。次のステージに行くだとか、死後のステージに行くだとか、そういうゲーム感をその人の死に感じたというか。でも、“それはそれで正解なのかもしれないなぁ。”と肯定しつつ、でも私に置き換えたら、“まだこの世界は捨てられないな”という曲ですね」
 
――なるほど…。実はちょっと、誰かの死がモチーフなのかなっていうのは、全体(歌詞)を読みながら感じてたんです。それは誰の死なんだろうと。AAAMYYYさんの師匠だったんですね。とてもデリケートな部分だと思いますが、そこに悲しみは無いのですか?
 
「うん。今のところは…、無い。最初はもちろん、えっ…ってなりましたけど、理由を知ったら納得したというか。割とInstagramだとかTwitterに、過激なことを書く人だったので。最近変だな~なんて思っていたり、していたところ、そうなっていて。納得だなぁと」
 
――今回のジャケットもインパクトありますが、この魚は頭だけですね。このアイデアはどこから生まれてきたんですか?
 
「このジャケット写真と、アー写は、4曲目8曲目を作る旅をした時に、ニューヨークで出会ったフォトグラファーの人に撮ってもらったんです。その方が、たまたまこれ(魚の頭)を用意していて、これをジャケットにしたら可愛いねなんて言って撮ったんです。それがたまたま死生観がつながるものになったというか…」
 
――ちなみに、歌詞の中にも“死んだ目をした魚”という言葉が出てきますね。
 
「その時に、このジャケットを決めていたので、魚という言語を入れてみたいなと思いまして。タイトルが『BODY』なので、ちょっとおふざけが感じてもらえるだろうなと思いながら、頭なのに“BODY”っていう。私のずっと使ってるサインも“魚”なんです(笑)」
 

 
平成が終わるし、世紀末感は割と意識しました
 
 
――2019年の今年で平成も終わりますし、来年から2020年ということで、時代の変わり目に敏感になっているのか。ひとつの時代の終わりと死がリンクするし、終わっていくもの、死んでいくものへのレクイエムなのかなと感じます。
 
「確かに、平成が終わるし、世紀末感は割と意識しました。今は地震が増えたり天災も続いていて、そういう確変期というか。世の中が変わったら、人の環境も変わっちゃうんで。ちょっとノスタルジーを感じつつ、未来を考えるというか」
 
――なるほどね…。AAAMYYYさんの楽曲を聴いていると、すごく斬新なセンスも感じるけど、どこか郷愁感みたいなものも漂っていて。特に『屍を超えてゆけ』なんかは、なんとも言えない懐かしいメロディーだなと。
 
「そうですね。BメロはNHKでやっている演歌の歌謡ショーをイメージして作りました(笑)」

――そういうものも、AAAMYYYさんの中に元々あるものですか?
 
「はい、お茶の間のチャンネルの主導権は祖父母が握っていたので(笑)。美空ひばりさんや天童よしみさんとか聞いてましたね」
 
――そんな感性も含みつつ、サウンドプロダクションはとても現代的なんですね。
 
「そうですね。今回の作品と今までのEPは、携帯のアプリの音色をベースに作っていて。ビートとベースとリードを作れるアプリで。今回もほとんどそれを使っています。綺麗すぎるものがあまり好まなくなったというか。不完全さというものに美しさを感じるようなターム期に入っているようで。携帯で作ったという、ちょっとチープさも入れつつ、あまり完璧にしないというテーマというか。あと、昔の機材をできるだけ取り入れるという縛りで。Tempalayで、Prophet'08というシンセサイザーを購入しまして。歴史のある機材で、そのヴィンテージ機材の音のぶ厚さにびっくりしまして。やっぱりアナログが持つ重厚感は素晴らしいなと」
 
――それで、温かみがある音色が醸し出されているんですかね?
 
「そうですね。そこがアナログのヴィンテージ感や懐かしさにつながるのかもしれない。あと、マニアックなエフェクターをちょっと触っているので、それも懐かしい音になります」
 
 
 
考えさせる余白があるものがすごく美しいと思う
 
 
――AAAMYYYさんと今回のフィーチャリング・アーティストとはどんなつながりがあるんでしょうか? 『Z』(M-4)のComputer Magicなんかはとてもマッチしていますね。
 
「Computer Magicは見た目ではなくて中身が自分とドッペルゲンガーだなと思ったことがありまして。日本に来た時に、WEB媒体で私がインタビューをさせていただく機会があり、お互いにシンクロするものがあって。きっと曲の作り方も一緒なんだろうなって思ってたら、本当に一緒でした(笑)。JILはすごく近未来感のあるバンドサウンドの人たちで、私の友達とつながっていたんです。TempalayとかKANDYTOWNのクルー感とすごく似ていて、セッションしながら生み出していく人たちなんです。メンバーもお互いのリスペクトがひしひしと伝わるような、すごく素敵な関係性があるバンドだったので、いいなあと思いながら一緒に作りました」
 
――『EYES』に参加しているCONYPLANKTONは?
 
「TAWINGSというバンドのギター・ボーカルをやっている女の子で。とあるライブに遊びに行った時に出会ったんです。当時の私の髪の毛がオレンジで透明のふち眼鏡をかけて行ってたんですけど、CONYさんもまったく同じ容姿でした(笑)」
 
――そこでもシンクロして?
 
「はい。それで仲良くなって。TAWINGSを知ったんです。(今作に)生音のギターの音が欲しかったのと、自分以外のコーラスを入れたらちょっと面白いかなと思ったのでCONYさんを召喚しました」
 
――『ISLAND』(M-6)のMATTONさん(PAELLAS)も気になります。
 
「昔、同じところでバイトをしていたので仲が良いんです。PAELLASはスペースシャワーの同じチームでもあり、アルバムのミーティングを会社でしていたら、ひょこっとMATTONが入ってきて。一緒にやろうよっていう雰囲気になりました。その時にちょうどこの曲の土台があったので、一緒にやったら面白いかもなって思って実現したんです」
 
――それぞれ感性が惹かれ合うものがあったり、シンクロするものがある方々が参加されてるんですね。
 
「そうですね。日常的にも接する方っていうのは、自分と割と同じ視点を持っているし、そういう人が集まるところに自ずと行ってしまうので。それが集結している気がします」
 
――なるほどね。今回の1stフルアルバムは、AAAMYYYさんにとってはどんな一枚になったと思いますか?
 
「私はこういう人です!と言える名刺代わりのアルバムでもあるし、歌詞もすごく社会問題にも通じるものがあると思うので。苦しんでる方々にも響くものがあるかもしれないし。聴いた人がいいな~と思うだけじゃなくて、私はこうだなって考えるきっかけになってほしいですね」
 
――あるインタビューで、“ソロは個人の思想を伝える場”というようなAAAMYYYさんの発言を目にしたのですが、そういう自己の思想が込められているんですね?
 
「そうですね。思想がMAXです。でもあまり押し付けがましくしたくなくて。多くの人に聞いてもらいたいので、ソフトタッチなものだと思うんですけど。考えさせる余白があったりするのがすごく美しいと思うし、そんな風に思ってもらえたら嬉しいです」
 
――今の時代、曲単位で聴く人が増えてきて、アルバムという形態があまり必要とされてないようですが、やはりアルバムとしてちゃんと聴いてほしいですね?
 
「そうですね。一冊の小説を読むような気持ちで、本棚に入れておいて、目についた時に取って読めるようなものでいいというか(笑)。アルバムは紙ジャケですし」
 
――AAAMYYYさんは音楽を軸にして、そこから派生するファッションやカルチャーにも影響を与えていってくれそうな予感がします。ご自身の10年後、何か思い描いていることはありますか?
 
「10年後、37歳ぐらいなので、普通に家庭も持っていたいし、音楽はずっと続けていきたいですね。私にとって音楽というのは自己表現の場でもあるし、ふだん言えないことを言う場面でもあるので、作家さんが本を書くように、家庭を持ってもずっと音楽をやっていきたいです」
 
――これからまだまだ興味深い作品を生み出していってくれそうで楽しみです!ライブの方も気になりますが、次のライブはどのような展開を考えていますか?
 
「今回は東京と大阪のみの開催となります。ドラム、ギター、ベース、シンセサイザー、コーラスのバンド編成で、全部生演奏でやります」
 
――そのへんはTempalayの活動を通して感化されるものがあって?
 
「そうですね。バンドサウンドとDJサウンドでは体感が違うなと思って。バンドでライブをするというのはライブ感がいいなと思いましたね。音源を再現するのではなくて、アレンジも全然違うものになっているので、ライブは生楽器の壮大感を浴びて欲しいですね」
 
text by  エイミー野中



(2019年3月11日更新)


Check

Release

完全自主制作にてリリースされ市場から即消えたカセット3部作の楽曲12曲を1枚のアナログにコンパイル!
限定350枚でリリース!!

LP『WEEKEND/MABOROSI/ETCETRA』
2019年4月3日(水) 3000円(税抜)
FLAKE SOUNDS

<A-side>
01. 8PM
02. KINYOUB
03. IRONY
04. JESUS
05. MABOROSI
06. JOHN DEER

<B-side>
01. BLUEV (feat. Ryohu)
02. KAMERA (feat. TENDRE)
03. SKYSCRAPER
04. I HAVE ME (TOMMY HILFIGER Exclusive)
05. SWIM IN
06. EYES (Feat. CONY PLANKTON)

『BODY』
発売中 2315円(税別)
PECF-3222
SPACE SHOWER MUSIC

《収録曲》
01. B2615
02. GAIA
03. 被験者J
04. Z (feat. Computer Magic)
05. ポリシー
06. ISLAND (feat. MATTON)
07. 愛のため
08. All By Myself (feat. JIL)
09. 屍を越えてゆけ
10. EYES (feat. CONYPLANKTON)

Profile

エイミー…長野県出身のSSW/トラックメイカー。CAを目指しカナダに留学、帰国後22歳から音楽制作を始める。2017年からソロとしてAAAMYYY(エイミー)名義で活動を開始。2018年6月から“Tempalay”に正式加入、“KANDYTOWN”のメンバー“呂布”のゲストボーカル、TENDREのサポートシンセ、ラジオMC、モデル、DAOKOのアルバム『THANK YOU BLUE』楽曲提供、CM歌唱提供等、幅広い活動で注目を集める。2017年から2018年にかけてEP3部作「WEEKEND EP」「MABOROSI EP」「ETCETRA EP」をテープ&配信でリリース。2019年2月6日(水)に待望の 1stフルアルバム『BODY』をリリースする。

AAAMYYY オフィシャルサイト
https://spaceshowermusic.com/artist/12483693/


Live

「BODY~屍を越えてゆけ」

【東京公演】
発売中 Pコード:138-644
▼3月9日(土) 18:30
Shibuya WWW
オールスタンディング-2800円(ドリンク代別途必要)
[問]WWW■03-5458-7685

Pick Up!!

【大阪公演】

発売中 Pコード:139-132
▼3月30日(土) 18:30
CONPASS
前売り-2800円(オールスタンディング、整理番号付、ドリンク代別途要)
[共演]有
[問]CONPASS■06-6243-1666

チケット情報はこちら