――それぐらい、みんなにとってもライブでは欠かせない曲で。とは言え、今作のタイトル曲『M・S COWBOYの逆襲』(M-2)は、曲調自体は『modern strange cowboy』とはまた雰囲気が違って。タイトルは却下されてもサウンドはきっちりジャミロクワイにインスパイアされた(笑)、ダンサブルな楽曲になったのも面白いですね。
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e-ZUKA 「そうなんですよね。きーやん(=KISHOW)が最初に『インナースペース・カウボーイの逆襲』って言ったときに、“あ、ジャミロクワイか”と思ってちょっとその風味が入ったのはありますね。今作の曲調的には、今時のダンスナンバー、『modern strange cowboy』ぐらいのテンポの曲、『Imaginary song』(M-4)っていうレッド・ツェッペリンの『移民の歌』(‘70)みたいな曲(笑)、バラード、インストも2曲ぐらい入れようって決めてたんですよ。それで作っていくうちに歌詞を見てまたちょっとイメージが湧いたり。歌モノは4曲一気にデモを渡して、歌詞が最初にできたのが『M・S COWBOYの逆襲』で。その歌詞の中に、“modern strange cowboy の生還さ”っていうフレーズがあったので、“生還”と言ったら宇宙から帰ってくる『アポロ13』(‘95)的なイメージで、NASAと交信するみたいな『Overture 2009』(M-1)を入れたり」
――タイトルや歌詞やサウンドに反映されたりが、すごいフレキシブルですね。
KISHOW 「1曲1曲確かに全然毛色の違う曲だけど、GRANRODEOがこの13年を通してやってきたこと、僕とe-ZUKAさんがGRANRODEOに至る前も含めて、根底に流れてる“逆襲”というテーマを思い描いていれば、自ずと一貫していくと思ったので。歌詞に関しても、例えば“アウトサイダー”だとか、GRANRODEOの13年を結構散りばめてるようなところはあったかな」
――それこそ『modern strange cowboy』の引用もありつつ、“今を生き抜けよ”というメッセージは変わらず。いやでも、全曲すごいエネルギーですね。
e-ZUKA 「作ってるときも、これはすごいアルバムになるなと思って1人で盛り上がっちゃって。なのに、スタッフやKISHOWにデモを送っても誰からも褒められないから、最初は“俺の感覚が違うの?”とか思いましたけど(笑)。コンセプトアルバムを言い訳にするわけじゃないですけど、それに沿っていれば何でもアリな感じだったんで、すごく楽しんで作れましたよね」
KISHOW 「やっぱり今回の表題曲の『M・S COWBOYの逆襲』なんかは、本当に今までになかったテイストだから面白かったですね。しかもこれが一番コンセプチュアルだったから。“どれだけ遊べるか”とかいう点では、一番楽しかったかもしれないなぁ」
e-ZUKA 「この曲は、結構な割合で打ち込みにしようと思ってたんですけど、なかなか自分が満足できるサウンドにならなくて、生っぽくなって、結局ちょっとアシッドジャズみたいになっちゃう、みたいな(笑)。やっぱりビックリさせたいというか、“『modern strange cowboy』にインスパイアされたって言ってたのに!”って思う人もいるだろうし(笑)、“あぁ〜こういうのも好き!”っていう人もいるだろうし、そこはちょっと狙いましたね」
僕自身が“なんとなく”生きてきて、“こう!”と決めてこなかった人間なので
挑んでこなかった後ろめたさもあるし、同時に、そこから得たものもあるから
――あと、最後のどバラードの『odyssey ~そのなんとなくを知りながら~』(M-6)の歌詞が素晴らしいなと。
KISHOW 「こういうのが一番苦手というか、何かこう…大げさなメロディが来るじゃないですか?(笑)」
――だからこそ、泣かせにきてるところに、あえて泣かせる言葉をちゃんと置くというか。
KISHOW 「そう。じゃないとこの曲には負けちゃうし、これだけ真正面から大げさに来られると、こっちも多少クサくてもいいかなと思って。この曲は一番頑張りましたね」
――やっぱり人生経験がないと書けないというか響かない言葉だと思いますし、それこそKISHOWさんにしか書けない歌詞じゃないかと。曲がど真ん中ストレートだからこそ、それ相応の言葉が要りますもんね。
KISHOW 「そうですね。これを聴いて、“ブワーッ!”と泣いて、“あ〜スッキリした”ってなってくれたら(笑)。これはもう分かりやすくそう作ってますしね。何のてらいもなく、“どうぞ泣いてください!”って(笑)」
――ハードな曲で盛り上がってスッキリする方法もあれば、泣きたいときにちゃんと泣くスッキリさというか。 “でも僕はまだ迷っている 惑っている/そのなんとなくを知りながら”っていう2行は、やっぱりすごいなと。言葉にしにくい感情がちゃんと形になってる。
e-ZUKA 「そうですよね。歌録りをするときに、“じゃあ1回歌ってみようか”って歌詞を見ながら聴いてたら、もうボロボロ泣けてきて。だから、どういうつもりでこれを書いたのかが知りたい(笑)」
(一同爆笑)
e-ZUKA 「本当に僕が“アルバムの一番最後にこういう歌詞が欲しいな”と思っていたような歌詞だったんですよ。だけど、この“なんとなく”はどういう意味なのかなぁって。僕の中の“なんとなく”はあるんですけど」
KISHOW 「そういうことなんだよね。“なんとなく”ってぼかしていれば、みんなそれぞれの“なんとなく”が出てくる。っていうまぁコツなんですけど(笑)」
――ちょっとちょっと! この感動的な曲でテクニックみたいに言わないで(笑)。
KISHOW 「アハハハハ!(笑) 元々、僕自身が“なんとなく”生きてきて、“こう!”と決めてこなかった人間なので。だから、自分でも挑んでこなかった後ろめたさもあるし、同時に、そこから得たものもあるから、“なんとなく”生きることがどういうことか、僕は僕なりに感じてるんで。だからか、“そのなんとなくを知りながら”っていうフレーズがもう一番最初に“バーン!”と浮かんだんですよね。これをタイトルにしようと決めてたし、一番最後の曲の最後の一行に持ってこようって逆算して書いていった歌詞ですね」
――“そのなんとなくを知りながら”が浮かんだ時点で、もうこの曲は勝ちですよね。
KISHOW 「確かに。でも、それもやっぱり曲がないと出てこなかった言葉だから。e-ZUKAさんの仮歌とメロディを聴いて、この言葉が出てきたんで。まぁ本当にね、今まで散々やってきたコンビ芸ですよね(笑)」
(一同笑)
e-ZUKA 「あと、『Overture 2009』でちょっと宇宙的な要素を入れたから、一番最後に“odyssey”っていう言葉を使いたいなと思ったんですよ。“それでも歩くのは見果てぬ何かを求めるから”っていう歌詞もあったんで、だから、そこもコンビ芸なのかなっていう」
――他にも、“傷付いたのは生きたからなんだろう”も、すごくいいなと。“そのなんとなくを知りながら”だけでも十分キラーワードなのに、この1行も入ってるっていうのは。
KISHOW 「結構前からこのフレーズが自分の中に残ってて、いい言葉だなと思ってたんで、“やっと歌詞に使えた!”っていう。だからもう、自分の中では結構節操のない、キラーワードつなぎなオンパレードで、何だか欲張りな歌詞になっちゃったんだけど(笑)」
――まるでマウントポジションで相手が気絶してるのに殴り続けてるような(笑)。“KISHOWさん、もうダウンしてますから! ゴングなってますから!”みたいな破壊力。
(一同爆笑)
――例えば、昔はすごい夢があったけどとか、会社に入ったときはこういうことがしたかったのにとか、いろんな立場で“なんとなく”生きてきてしまうことって、良くも悪くもあると思うので。こういうメッセージをキャリアを積んできたGRANRODEOが言葉にしてくれると、やっぱりすごく響く。まだ10代20代だったら、“今からでも何とかなるじゃん!”っていうこともあると思いますけど。
e-ZUKA 「俺なんかは年齢的にも、“なんとなく、もう無理なのは分かってるんだけど…”みたいな意味にも取れますからね。そういう気持ちでこの曲を聴くと、切なくてかなり最初から泣けますよ(笑)」
(一同笑)
――年齢を重ねると涙腺が緩くなるって言いますけど、多分いろんなことが分かってくるから感情が先回りするんでしょうね。こういう状況があるかもしれない、こういう立場がいるかもしれないと想像できるから泣けるというか。
e-ZUKA 「そうそう。でも、歩く。“それでも歩くのは見果てぬ何かを求めるから”って。いい歌詞だなぁと思って」
ただただ盛り上げに行きたいと思うので、ただただ盛り上がりに来てほしい
――そして、12月には大阪城ホールでの2DAYSライブ『G13 ROCK☆SHOW』がありますけど、年末のライブに向けてはどうですか? 今年はワンマンが凱旋の2本とこれだけなので、ここまで溜めて溜めてじゃないですけど。
KISHOW 「だからドキドキですよね。最近はカラオケ屋に行く機会がめちゃくちゃ多いんですけど、心のどこかで歌を欲してるんですよね。“常に歌っていたい!”というか。だって俺、LAから帰ってきて、空港から家に戻ってすぐカラオケに行きましたからね(笑)。
――じゃあこの2日間は思う存分歌えますね。
KISHOW 「そうなればいいなぁ。そういうモチベーションでライブも“パーン!”とハネればいいなと。やっぱりGナンバーのライブは盛り上がるので」
e-ZUKA 「今年は何本かフェスにも出させてもらったんですけど、やれてもまぁ5~6曲ぐらいだし…僕なんかは内弁慶の典型なんで(笑)。だから、ワンマンはやっぱりすごく楽しみですよ」
――いやでも、城ホール2発ってなかなかできない。本当にいろんな意味で異色というか、すごいなと思います。
KISHOW 「またちょっと頑張らないとなぁって、今ちょっとハッとした! そうだよな。城ホール2日間って、よっぽどのパフォーマンスをしないと、またやらせてもらえるかどうか分からない。おかげさまで燃えてきましたよ」
e-ZUKA 「大阪城ホールは本当に好きなホールなんで、嬉しいですよね」
KISHOW 「まぁ個人的な因縁がなくはないというか。初めてGRANRODEOとして大阪城ホールでやったとき、アンコールの一番いいときにもよおしてボーカルがステージから消えるっていう(笑)。e-ZUKAさんは最初、“あれ? きーやん怒って帰っちゃったの!?”みたいに思ったらしいけど。お客さんはもちろんポカーンですよ(笑)」
――別に掘り下げるところじゃないですけど、よく途中まで歌いましたね(笑)。
KISHOW 「本当っすよ! ギリッギリのギリまでいきましたから。しかも、そのときは生放送とかも入ってて、マジでヤバかったっていう。だから今度はそうはいかないぞと。もう大阪城ホールへの逆襲ですよ!(笑)」
(一同爆笑)
――大阪城ホールについて聞いて、まっ先にそんな鉄板エピソードが出てくるのがすごい(笑)。
KISHOW 「だから、大阪城ホールと僕らって何か縁があるなって(笑)。ただ、その後も何度かイベントでは立たせてもらったけど、ワンマンをやるのは3年ぶりとかで。せっかくこういう機会をまたもらえたんで、もう怖いものなしということでね(笑)」
――それでは最後に、『G13 ROCK☆SHOW』に向けたそれぞれの心境を。
e-ZUKA 「本当に今年はワンマン少なくて、“本当はまだ発表があるんじゃないか?”とか言いながらもう12月になっちゃって(笑)。今年のワンマンは残すところ大阪だけですから、本当に’18年の締め括りの気持ちというか。ひょっとしたら今年初GRANRODEOっていう人もいると思うけど(笑)、ぜひ一緒に楽しんでもらえればと思いますね」
KISHOW 「やっぱり東の武道館、西の大阪城ホールぐらいに思っていて、武道館でやったときの感慨深さったらなかったし、いまだに大阪城ホールは特別な会場だと思ってるので。そこで我々のGナンバーライブをまたできるのは、やっぱり感慨もひとしおで。今年のワンマンライブの少なさも相まって、そこに向けて爆発力を溜めていきたいなと。ただただ盛り上げに行きたいと思うので、ただただ盛り上がりに来てほしいなと思います!」
Text by 奥“ボウイ”昌史