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“台本を超える瞬間を見たい”
ファーストアルバム『手』のリリース、
そして全国ツアー「結んで開いて」のツアー中で掴んだ手ごたえ
tetoメンバー全員インタビュー

今年3月に発売したシングル『忘れた』から半年の期間を経て、tetoが15曲入りとなる初のフルアルバム『手』を9月26日にリリース。直後には台風の影響により特別公演となってしまった千葉LOOKを皮切りに、全22本の全国ツアー「teto ツアー2018『結んで開いて』」を開催し、残すところ計4本のワンマンライブのみ。今回はアルバム制作の過程、メンバーの“人間力”、そしてツアーでの対バンを経た今の心境と手ごたえについて、小池貞利(vo&g)、山崎陸(g)、佐藤健一郎(b)、福田裕介(ds)のメンバー全員に話を聞いた。

ここまで腹割れないぞってところまで
作品にしちゃってるところが、本当にすごい(山崎)

 
――アルバム名と同タイトルの楽曲『手』が最後に収録されていて、この曲から今作の構成が固まっていったのかなと勝手に想像していたのですが…。そういうことではなく?
 
小池「アルバムタイトルと曲のタイトルの“手”は別物ですね。どちらが先とかでなく、『手』という曲ができていて、アルバムを総括すると“手”だなと思ってアルバムのタイトルにして、それが重なったというだけで。今回の15曲はどれもアルバムのために作った曲というわけでなく、結成時からどんどん作ってきた曲から選んで、自分の中にある“ファーストアルバム”のイメージにまとまったなという感じです。なので、よく間違われて“タイトルトラック”といわれることがあるんですけど、この曲は別にそういうことではないんですよ」
 
――これまで手掛けてきた作品の積み重ねが1枚に。自主制作盤『Pain Pain Pain』から、『高層ビルと人工衛星』『トリーバーチの靴』『散々愛燦燦』『Pain Pain Pain』と、ライブで披露され続けてきた曲も再録されていますね。
 
小池「単純に、当時は実力不足で素人が適当に作ったみたいな音源だったので、あっちはあっちでいいんですけど今となっては違ってきていますから再録しました。ようやく全国流通ができるというタイミングですし、曲への理解度も深まったので改めて作れたらと。最初から僕らに技術があったら、今回みたいにしっかり作りたかったです」
 

 
――やはりライブで披露してきた曲だからこそ、また他の曲とは違った思い入れもあったのではないかなと。
 
佐藤「全部にもちろん思い入れはありますが…、特にありますね。このメンバー4人で録った曲ではなかったですし、これまでライブを重ねたり4人で過ごす時間が増えるにつれ、まさに理解度が深まったところがあると思うので。言葉にするのは難しいんですけど、前とは違う心持ちで録れたので、その4曲は特に気持ちが入ったと思います」
 
――他にもこの曲は個人的に思い入れがある、という曲はありますか?
 
山崎「しいて言えば、僕がtetoというバンドを知ったきっかけでもある『トリーバーチの靴』ですね。以前から貞ちゃんは知っていたけれど、tetoってバンドとの出会いの曲なので、この曲のレコーディングに参加できたことは、他の曲と比べて少し違った意味合いで思い入れがありますね」
 
――福田さんは?
 
福田「『高層ビルと人工衛星』ですかね。ライブでかかさずと言っていいぐらいやり続けてきた曲ですし、だからこその音が出せたかなと思います」
 
――選曲や曲順というのは?
 
山崎「貞ちゃんに任せています」
 
――小池さんから「こうしよう」って話をされて決まる感じですか?
 
山崎「いや、ほんとに最後まで知らなかったですね。全て録り終えて、順番をどうするかって話も別にしていません。それは曲を作った人が、作りたいように並べるのが絶対に美しいと思っているので。だから、『こうなるんや…』とか違和感みたいなものは全くなかったですね」
 
佐藤「うん、すぐに納得できましたね」
 
――満場一致でこれに尽きると。普段から、小池さんが作詞作曲された曲について話すことはあまりないのですか?
 
山崎「ないですね」
 
小池「少し言い方は違うかもしれないですけど…、回答付きのテストを配るようなものになるので、別にあえて言う必要はないかなと思っているんですよ。もし自分が、『この曲はこういう曲だから、こういう感じで』って言っちゃうとね。もちろん自分が作っているから、自分自身の中で回答はあるんですけど、それをみんなで共有したら意味がないし。それと、そういうところで人間力も試されるんじゃないかなと思っていますから。ギターの山崎とベースの佐藤は、だいたい自分のやりたいことや意図を組んで、曲を自分で考えながら解釈してくれているので、そういう解説はしなくてもいいかなと。ただ、ドラムに困ってるんですよ、今。本当に成長しない…(笑)。あ、ドラムは上手くなってるんですよ? でも、人間力が……(笑)。まぁ、この人は天然記念物みたいなもんですから、おバカなのがよかったりするんですけどね」
 
――と、言われていますが…(笑)。
 
福田「納得するしかない(笑)。甘んじて受け入れます」
 
山崎「占いでも言われてたもんな。手相を見てもらった瞬間、『あんた変な人でしょ!』って(笑)」
 
福田「自覚はないです」
 
佐藤「それがすごいですよね」
 
――音源やライブでのtetoしか知らないので、福田さんの普段がなかなか想像できないのですが…。具体的にどういったところが天然なのでしょう? いわゆる、天才肌的な感覚で生きられるタイプではなく?
 
小池「そんなカッコいいもんじゃないですよ。俺が一番印象に残っているのは、同じ事務所のとある先輩バンドの方にすごい良くしてもらっているんですけど、同じドラムということもあって彼もいろいろと話す機会が多くて。その方に、僕らが車でライブに向かうため移動するって時にたまたま事務所の前でお会いしたら、『これからライブだね』なんて声をかけてくださったんですよね。それで、『行ってきます』と言ったら、先輩も『じゃあね。気を付けてね』って。そんな風にしてそこで別れたんですけど、その時、彼はずっとゲームしていて、なんなら手もふらず、会釈もしなかったんですよ。その時は、これは大物だなぁと(笑)」
 
福田「考えたらダメなことって分かるんですけど、その瞬間に気づけないんですよね。そういうことが多いんですよ…」
 
小池「ちょっとゴリラっぽいよねぇ。悪気ないし可愛げがあるんで、受け入れられるんですけどね」
 
――そういう意味での人間力もある意味で試されているのですね…(笑)。あえて曲の話をされないとなると、小池さんのパーソナルな部分がかなり色濃く出た歌詞を通して、初めて知ることや衝撃を受けることもあるのでは?
 
佐藤「細かい歌詞は、歌を録る時まで分からないこともあるので予想というか、『こういうことかな?』と想像をするんですけど、実際に完成した歌詞を見た時にその想像を上回ってくるので、その度に感動しています。それはバンドをやってて、面白いところでもありますね」
 
――その感動は小池さんにも伝えたり?
 
佐藤「しますね。こっそりですけど(笑)」
 
山崎「物理的に全裸になることより、自分で歌詞を書いて歌うことの方が、語弊がありますけど、よっぽど恥ずかしくてすごいことだと思うんですよね。僕は全然、外で全裸になれと言われたらなれるんですけど、貞ちゃんのようにここまで裸にはなれないですから…。それがこのアルバム、1曲目から『hadaka no osama』って曲でしょ。もうすごいですよね、ここまで言うかって曲で。さすがに、ここまで腹割れないぞってところまで作品にしちゃってるのは、本当にすごいことだと思いますね」


 
今までとは違う何かできそうな感じや、
みんなで作れそうな予感がしています(佐藤)
 
 
――リリース後すぐに、全22本の全国ツアー「結んで開いて」が始まり、いよいよラストスパートに差し掛かってきましたが、振り返ってみていかがですか? 個人的には、笑って泣けるコミックバンドの四星球とツーマンするなど、正直、意外な組み合わせもあったなと。
 
小池「例えば四星球って、スタイルは違えどやってることが自分たちとかけ離れているとは思えないんですよね。今回はそういう人たちとのツアーになっていましたね。ライブだけでなく人間的にもすごく尊敬している人達ばかりなので刺激はすごく受けましたね。知り合うきっかけはフェスとかが多いんですけど、やってることが遠くないというのは分かる気がします。巻き込む力がすごくあるバンドばかりでした。四星球との話で言えば、『僕らはみんなヒリヒリしたライブをやりたかった』って言って下さったんですけどね。それは、ライブを観ていてもすごく伝わってくるんですよ。そういう意識だとか姿勢が僕らもすごく共感できるし好きだし」
 
――緊張感だったり興奮だったりが爆発して、ひとつのライブの中でドラマが生まれて、それをみんなで共有できる。そういう点でも、共通しているかもしれませんね。
 
小池「僕はPOLYSICSとやってすごく刺激を受けました。話に上がった四星球もそうですけど、どっちのバンドにも共通していたのは、本当にやりたいことをやっているところだと思っていて。自分にできることを、純度を保ったままやってるんですよね。それは僕らのライブもそうだと思っているので、だからこそお互い信頼し合える関係になれたんじゃないかなと、勝手に思っていたりします」
 
――POLYSICSは事務所の先輩でもありますよね。最近の同世代のバンドにも、そういう共感したり刺激を受けることは?
 
小池「同世代にはあんまりそういうバンドがいないんですよ。とはいえ、僕らもほんとまだまだなので、余計なものがそぎ落とされて、純度だけが残ったバンドを観るとすごいなって思います」
 
――昨日今日の音じゃない感じとかがまた。
 
小池「そうですし、特に取り繕ってもいないし」
 
佐藤「積み上げてきたものというか、そういうところは観ていると感動しますね」
 
山崎「人そのものが音になっていますよね。どういう人かっていうのが、バンドを観れば分かるというか…。今回のツアーは、ステージにすべて表れてる人たちとの対バンばかりでしたね。別にそんなにしっかり会話とかしなくても、『この人はこういう人だ』って思っていた通りの人たちでした。そう思わせられるライブばかりで、ほんと感動しました」
 
福田「先輩とやるのは、同世代とやるのとは違いますよね。先に先輩のライブを観て、刺激を受けてから僕たちがステージに立つので、その分、緊張したりプレッシャーもあるんですけど。みんなすごく熱いライブをするので…」
 
小池「“熱いライブ”って! 俺、“熱いライブ”って言葉が一番嫌いなんですよ」
 
山崎「よく言ってるのにね(笑)」
 
小池「よく言ってるんですよ。一番、嫌だ」
 
――あはは(笑)。先輩バンドとの対バンも含めて、福田さんの中で今回のツアーで何か掴んだことや気づけたこととかありますか?
 
福田「アンコールの時、僕が最初に出て喋ることが多くなったんですけど…」
 
小池「知らねえよ…(笑)」
 
福田「最近、喋れるようになりました」
 
山崎「うそつけ!」
 
小池「人前で喋れるようになったということなんですけど、それはライブの手ごたえですか?(笑)」
 
福田「ライブじゃないか」
 
小池「こういうところなんですよね。『テンポを保ちながら、グルーヴをどんどん出せるようになってきた』とか、もっとあるじゃないですか。それを喋りがどうとか言っちゃうんですよ」
 
――だけど、福田さんはそこに今、一番手ごたえを感じてると(笑)。
 
小池「そうでもないんですよ! 本人がそう思ってるだけですから」
 
山崎「どこで手ごたえ感じてるんだよ」
 
――山崎さんはいかがですか? ツアーを経て、これから続くワンマンに向けて今、考えていることだったり。あるいは、ツアーを終えた後のバンドのイメージで思い描いていることがすでにあったりしますか?
 
山崎「んー…。これから周りの環境がどうなっていくかは、正直分かんないです。ただ、ツアーを経てバンドがメキメキよくなっている実感はすごくあるんですよね。はっきりとは分からないですけど、毎回、何かを掴んでいるような気がします。そういう話を、ザ50回転ズとのライブ後にベースの健ちゃんとしました」
 
佐藤「ライブハウスを出てね。たしかに漠然となんですけど、ライブの回数を重ねている中で、何かできそうな予感はしています。もちろん、やり続けていればそんな風に思うものかもしれないですけど、なんだか今までとは違う何かできそうな感じや、みんなで作れそうな予感はしています」
 
――何かは分からないけど、何かの輪郭が掴めたと。
 
佐藤「ぼやっとですけど。だけど今はまだ、それが何か見えていなくてもいいかなと思っています。もっとライブ重ねていってから、考えてみたいなとも思います」
 
――その何か掴んだものが、作品なのかライブなのか、いつどんな形になるのかは、その時に。
 
佐藤「その時、何にもなっていないかもしれないですけどね(笑)。とはいえ、今、何かを掴めているとは思います」
 
――tetoのライブって、ただでさえ一瞬たりとも見逃してはいけない緊迫感がすごくて。いつどのライブも、身を削って生み出した作品から伝わる覚悟とか、“今”に懸けるエネルギーにヒリヒリさせられたり。あるいは、さらけ出された人間味が自分たちを肯定してくれているようで親近感だったり温かく感じることもあるんですけど…。それがもし、その漠然とした何かを掴んでしまった時には、一体どんなライブになって、どんな気持ちになるんだろうかと。きっと想像できないぐらい、凄まじいことになるんだろなってドキドキします。
 
小池「ありがとうございます。ライブには台本を超える瞬間があって、自分はそれをやりたいし、その瞬間を自分も見せてもらいたいですね。それは意図した感動みたいな作り物より、よっぽど人の心を動かすとことがあると思うんです。とはいえ、そういう瞬間は下さいと言ってもらえるものではないと思うので、とりあえず自分たちができるところから、筋書きのないことをやり続けたいと思います」

text by 大西健斗



(2018年11月26日更新)


Check

Release

Album『手』
発売中 2600円(税抜)
UKCD-1173
UK. PROJECT

01. hadaka no osama
02. 高層ビルと人工衛星
03. トリーバーチの靴
04. 奴隷の唄
05. 市の商人たち
06. 洗脳教育
07. 種まく人
08. 散々愛燦燦
09. マーブルケイブの中へ
10. Pain Pain Pain
11. 拝啓
12. 溶けた銃口
13. 夢見心地で
14. 忘れた
15. 手

Profile

テト…2016年1月、小池貞利(vo&g)を中心に山崎陸(g)、佐藤健一郎(b)らとtetoを結成。同年10月、自主音源となるファーストEP『Pain Pain Pain』を発売(現在廃盤)。同年12月、福田裕介がドラマーとして正式加入し、現編成となる。17年6月、Helsinki Lambda Clubとのスプリットシングル『split』を発売。17年8月、ファーストミニアルバム『dystopia』を発売。その後、テレビ出演(「バズリズム02」コレはバズるぞ2018 ランキング2位)や、年末の「COUNTDOWN JAPAN 17/18」フェスへの出演を果たし、さらに注目を浴びる。同年11月から開催された<teto tour 2017「dystoipia」>は、全公演チケットが即日完売となった。18年3月、ファーストシングル『忘れた』を発売。「ROCK IN JAPAN FESTIVAL 2018」や「RUSH BALL 2018」をはじめ、全国の大型野外イベントに多数出演した。そして、9月26日にはファーストフルアルバム『手』を発売。全22本の全国ツアー、teto ツアー2018「結んで開いて」を敢行中。

teto オフィシャルサイト
http://te-to.net/


Live

teto ツアー2018「結んで開いて」

【千葉公演】
▼9月30(日)千葉LOOK ※12/27(木)に振り替え
【埼玉公演】
▼10月3日(水)北浦和KYARA
【神奈川公演】
▼10月4月(木)横浜BAYSIS
【埼玉公演】
▼10月10月(水)岡山IMAGE
【福岡公演】
▼10月11月(木)小倉WOW!
【熊本公演】
▼10月13月(土)熊本Django
【長崎公演】
▼10月14月(日)長崎Studio Do!
【京都公演】
▼10月16月(火)京都磔磔
【福島公演】
▼10月20月(土)福島out line
【岩手公演】
▼10月21月(日)盛岡Club Change
【長野公演】
▼10月25月(木)松本ALECX
【新潟公演】
▼10月27月(土)新潟CLUB RIVERST
【石川公演】
▼10月28月(日)金沢van van V4
【群馬公演】
▼11月8月(木)群馬SUNBURST
【大阪公演】
▼11月10月(土)梅田CLUB QUATTRO
【愛知公演】
▼11月11月(日)名古屋CLUB QUATTRO
【宮城公演】
▼11月15月(木)仙台enn 2nd
【北海道公演】
▼11月17月(土)札幌BESSIE HALL

【香川公演】
▼11月29日(木)TOONICE
【福岡公演】
▼12月1日(土)DRUM SON
【広島公演】
▼12月2日(日)広島・4.14
【東京公演】
▼12月7日(金)LIQUIDROOM
【千葉公演】
▼12月27日(木)千葉LOOK ※9/30(日)の振替公演


『スペースシャワー列伝
JAPAN TOUR 2019』

【福岡公演】
▼2019年2月21日(木)Fukuoka BEAT STATION
【広島公演】
▼2019年2月23日(土)広島 CLUB QUATTRO
【香川公演】
▼2019年2月24日(日)高松MONSTER
【北海道公演】
2019年2月28日(木)cube garden
【宮城公演】
▼2019年3月2日(土)仙台MACANA
【新潟公演】
▼2019年3月3日(日)GOLDEN PIGS RED STAGE
【愛知公演】
▼2019年3月5日(火)名古屋 CLUB QUATTRO
【大阪公演】
▼2019年3月6日(水)大阪 BIGCAT
【東京公演】
▼2019年3月9日(土)マイナビBLITZ赤坂

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