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「やっぱり私は歌うために生まれてきたんだなって」
『翼の折れたエンジェル』ほかヒット曲満載で贈る祭『Rock Alive』
初の大阪公演に向け、ドキドキとワクワクを信じ続けた34年を語る
中村あゆみインタビュー!

 名曲『翼の折れたエンジェル』(’85)をはじめ、ハスキーでエネルギッシュな歌声でその名を世に知らしめたロックシンガー、中村あゆみ。‘16年、生誕50周年を記念したセルフカバーベストアルバム『A BEST~Rolling50』のリリースに伴い初開催された、豪華バンドセットによるスーパーライブ『Rock Alive』は、毎年ショーアップされたステージが話題となる人気公演に。今年は“祭り”をコンセプトに東京にて8月に開催され、歴代のヒット曲はもちろん、最新シングル『風になれ~The King to the World』からカバー曲までをあのハスキーボイスで見事に歌い上げ、ダンサーを含め総勢40名を超える出演者によるド迫力のパフォーマンスで大好評を博した同公演初の大阪編が、11月24日(土)サンケイホールブリーゼにてついに開催される。大阪ではフルバンドを従えたホールでのワンマンライブは’92年以来26年ぶり(!!)というプレミアムな1日に向け、『Rock Alive』の思わぬ裏話に、活動復帰以降の心境の変化や信念、お気に入りの音楽まで、中村あゆみのこれまでとこれからを、その楽曲さながら情熱的に語ってくれた。

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カッコつけるのも大事だけど、笑顔になれる瞬間がいっぱいあった方が楽しい
 
 
――今年は、例年の中村あゆみ祭『Rock Alive』東京公演の反響を受けて、大阪でも初開催となりましたね。
 
「結婚、出産、離婚だったりいろんなことを経て、子育ても少し落ち着いて、本格的にまた音楽活動を再開しようかというときに、今の事務所の社長から“ちゃんとコンサートをした方がいい”とアドバイスをもらって。私自身も元々コンサート畑から出てきた人間だし、やっていくうちにだんだん感覚が戻ってきて。そんな中で、『Rock Alive』が’16年に始まったんです。実は、今年は裏話があって、なかなか会場が押さえられなくて、半ば諦めていたんです。そうしたら、イベンターさんから急遽“この日だけ空いていたんだけどどうする?”って連絡があって、それが8月12日だったんです。その翌日の13日は父の命日でもあったし、何だか意味合いも感じて…無事に開催することができました。その評判がすごくよかったので、“東京だけだともったいないね”という話になって。ただ、大阪・名古屋・福岡辺りの会場も、なかなか空いていないんですよね。それでも社長が諦めずに調べていたら…」
 
スタッフ「キャンセルがあった10分後に僕が今回の大阪の会場に電話をかけたみたいで。運命的な話ですね(笑)」
 
「これは絶対に大阪でもやった方がいいということになりまして。今年の8月に東京でやったときは、“祭り”がテーマだったのでファンの方も結構浴衣で来てくれたりして。大阪にもいろんな地域のお祭りがあるので、ぜひ皆さんもはっぴを着てコンサートに来てください(笑)。今回はフラメンコ、サルサ、サンバ、よさこい…世界のお祭りが登場します。ちなみに去年のテーマは“フラッシュモブ”だったんですよ。ある曲になったら客席にいたダンサーが踊り出して、お客さんもビックリっていう(笑)。今回は大阪のダンサーさんたちにも声を掛けさせてもらっています」
 
――大阪公演に向けたYouTubeのティーザー映像でも、“40人を超える出演者数”とテロップがありましたが、そういうことだったんですね!
 


「やっぱり今の時代のコンサートは、“観る喜び”と“参加できる喜び”、この辺をきちんと取り入れたものがいいのかなと。自分の中ではスタンダードナンバーをしっとり聴かせるようなことも今後はライフワークにしていきたいと思っているんですけど、1000人クラスが集まる場では、観た後に“スッキリした~!”みたいな感覚というか(笑)、ひと粒で二度三度おいしいコンサートができたらいいなって」
 
――30年を超えるキャリアでも、復帰後のコンサートの内容、向き合い方は自ずとアップデートされていますね。
 
「最初は私にもフリーズしている時期があったんですよ。そこから洋楽も含めていろんなコンサートを観に行って、今はキャパもすごく多いか少ないか、エンタテインメント性があるかじっくり聴かせるか、どちらかに振り切った方がお客さんも満足できるだろうなって、やっていく中で感じたので。例えば、40~50分ぐらいコンサートでも、その中で喜怒哀楽、起承転結をきちんと付けて満足して帰ってもらえるように今は心がけていて。復帰後は、時にはカッコつけるのも大事だけど、笑顔になれる瞬間がいっぱいあった方が楽しいじゃないって、気付かされる場面がいくつかありましたね。だからこそ、『Rock Alive』ではトークもちゃんとしたいし。50歳、60歳、70歳になっても生き残っていらっしゃる方々は、皆さんお話しも上手なんですよね。なので今回は、聴いて、観て、参加して楽しい上に、いろんな映像も出てくる(笑)。シルク・ドゥ・ソレイユとかも、エンタテインメントとしてすごいじゃないですか? 私は空中ブランコはできないけれど(笑)、視覚的にも楽しんでもらえるよう準備したいなと思っています」

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『翼の折れたエンジェル』を歌うときは
常にドキドキ、ワクワクしていたのを鮮明に覚えています
 
 
――今の年齢になって感じる音楽の素晴らしさ、歌う歓びなどはありますか?
 
「歌はずっと一緒にいてくれたものだったけど、一度離れたことで、歌う場所があるということは非常に恵まれているんだなって…すごく感謝するようになりました。若い頃なんかは調子にも乗っていましたし(笑)、歌=“生きる術”というか“武器”で、自分を主張する典型的なものだったのが、年々、私の歌を聴いて“元気になった”とか“頑張ろうと思いました”とか、そういうコメントやお手紙をもらうと、歌ってきてよかったな、やっぱり私は歌うために生まれてきたんだなって…50歳になって記念コンサートをやらせてもらったとき、本当にそう思いました。あと、大人になった今だからこそ歌える歌にチャレンジしていきたくて、スタンダードナンバーをしっとり聴かせるようなことも、今後はライフワークにしていきたいなと。元々ロッド・スチュワートがすごく好きなので、フランク・シナトラの曲をロッド・スチュワートがカバーした曲を私がカバーする、みたいな(笑)。デビューした頃は忙し過ぎてそういう楽しみ方ができなかったけど、うちの父がジャズがすごく好きだったのもあるし、そういう昔の素敵な曲をカバーをすると、今度はディナーショーとかも楽しくなってくるわけです(笑)。私と同世代のダイアナ・クラールとかも最近はよく聴いているし、ああいう歌も徐々に歌っていくぞと」
 
――ここにきて、歌うことにさらにワクワクしている感じが話していて伝わってきますね。あゆみさんの代表曲と言えば『翼の折れたエンジェル』ですが、ここまで歌い続けて改めて思うことはあります?
 
「昔、日清さんのCMに『翼の折れたエンジェル』を使っていただいたんですけど、復帰したときはキリンビールさんにまた使っていただいて。そういうこともあったので、“これはまた音楽をやっていいってことかな?”って(笑)。当時、『翼の折れたエンジェル』を歌うときは常にドキドキ、ワクワクしていたのを鮮明に覚えています。その感覚だけは信じ続けた34年間でしたね。だからヘンな癖もなるべく付けないで、いい意味で淡々と歌う。プロデューサーから“淡白に歌うことが一番人の心を打つ。君の声はそういう声だ”と言われてから、それをずっと守っていますね」
 
――この曲を歌えていることが、歌い手としての自分をチェックするリトマス試験紙のような感じもしますね。
 
「それは非常にあると思います。キーに関しても、どのアーティストも年齢と共に下がっていくものらしいんですけど、私はデビューした頃と今のところ変わっていないので。『A BEST~Rolling50』も当時のオケに今の自分の声を入れたので、“今でもなかなか頑張っているな”みたいな(笑)」
 


――『A BEST~Rolling50』のリリース時のインタビューで、今後の音楽性について目指すところを見付けたという話をされていましたが、それはいったい何なんでしょう?
 
「すごくシンプルだけど、心に触れるもの。そういう歌がこの声質には一番合うんだろうなって。たくさんコードを使うとか、転調とかはあまり要らないのかもしれない。何かそういうことを最近はすごく感じますね。どんどん余計なものが削がれて、この声だけで勝負していけるようになっていくんじゃないかと思っているんですよね」

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期待していてください。裏切りません!
 
 
――そして、6月にはプロレスラー・鈴木みのるさんのデビュー30周年を記念し、あゆみさんがかつて楽曲提供した入場曲『風になれ』('95)の新バージョンとなる、『風になれ~The King to the World』がリリースされましたね。
 
「『風になれ』は鈴木みのるくんがもう20年以上使ってくれていて、東京ドームの試合とかでも大合唱になるんですよ。坂本冬美ちゃんに提供した『アジアの海賊』('09)なんかも、彼女の『また君に恋してる』('09)共々ヒット曲になっているし、最近はまた別のある人にタンゴの曲を書いたり。自分が歌ってきたのはロックなんですけど、ボサノヴァからジャズから普段はいろんな音楽を聴くんです。今度の大阪公演には、私の親友の結構有名なフラメンコの先生が踊りに来てくれるんですけど、その彼女にも今、曲を書いていて。ライフワークの中でそういうアウトプット/インプットを、音楽で遊びながら作っていけたらなと」
 
――あゆみさんはクリープハイプも好きだと聞いて、ビックリしました(笑)。
 
「そう、大好きなの! あと、女の子のバンドで今一番注目しているのがGIRLFRIEND。『JUMP』('18)という曲は私もカバーしようかなと思ったぐらいオススメ(笑)。で、自分のラジオ番組(NACK5『中村あゆみ Rockin' mama』)にも呼んだりしてね。だからもう、上は加山雄三さんから下はGIRLFRIENDにまでお世話になっています(笑)。加山さんもそれこそプレスリーからももクロ(=ももいろクローバーZ)まで、常に新しい音楽に触れていらっしゃるし」
 
――ここまで一連のお話を聞いていたら、ただノスタルジックなだけじゃない今の中村あゆみが、今度の大阪公演では存分に楽しめそうですね。
 
「そこはもう期待していてください。裏切りません! でも、なぜそうできるようになったかと言うと、2年前に“もう一度、青春を、始めよう”っていうキャッチコピーを掲げたので。ノスタルジックな作品をやると、ファンはやっぱり喜ぶわけです。ただ、今度は変化と進化を問われるようになってきて。だから、普通の人ならやらないようなカバーも、この日はやってみようかと。そして、年齢・性別問わずウェルカムです! そういうお祭で、パーティーにしたいなって。ただ聴かせる2時間半じゃなくて、やっぱりエンタテインメント性がないとね」
 
――しかも、大阪でフルバンドを従えたホールでのワンマンライブは、何と26年ぶりということですもんね。
 
「そうなんですよ! みんなで楽しめる1日にできたらいいな。熱い夜にしましょう!!」
 
 
Text by 奥“ボウイ”昌史



(2018年10月23日更新)


Check

Release

プロレスラー鈴木みのるおなじみの
入場テーマを新バージョンでリリース

Single
『風になれ~The King to the World』
発売中 1800円
Ai songs.
Ai-5261
※オリジナルステッカー付。

<収録曲>
01. 風になれ~The King to the World
02. SUZUKI GUN ICHI-BAN
03. 風になれ~The King to the World (instrumental)

Profile

なかむら・あゆみ…‘84年、シングル『MIDNIGHT KIDS』でデビュー以後、『翼の折れたエンジェル』『ONE HEART』『BROTHER』等、数々のヒット曲をリリース。’98年以降、音楽活動を一時休止していたが、’04年、加山雄三プロデュースによるイベント『湯沢フィールド音楽祭』へのゲスト出演をきっかけに本格的に音楽活動を再開。’14年にはデビュー30周年を迎えた。’16年には50歳となる節目に、初の本格的セルフカバーベストアルバム『A BEST~Rolling 50』をリリースし、バンド編成によるスーパーライブ『Rock Alive』を初開催。以後、毎年開催されるようになる。今年の6月23日には、プロレスラー・鈴木みのるのデビュー30周年を記念し、入場テーマ曲の新バージョンとなるシングル『風になれ~The King to the World』をリリース。11月24日(土)には、『Rock Alive』初の大阪公演がサンケイホールブリーゼにて開催される。

中村あゆみ オフィシャルサイト
http://ayumi-nakamura.com/

Live

大阪ではフルバンドを従えた
ホールでのワンマンは26年ぶり!

 
【大阪公演】
『Ayumi Nakamura Super Live
「Rock Alive 2018」in 大阪』
チケット発売中 Pコード129-071
▼11月24日(土)17:00
サンケイホールブリーゼ
全席指定8800円(ドリンク付)
[メンバー]鎌田ジョージ(g)/鎌田清(ds)/
小泉信彦(key)/嶋田圭佑(b)/平子健介(sax)
キャピタルヴィレッジ■03(3478)9999
※未就学児童は入場不可。

チケット情報はこちら


Comment!!

ライター奥“ボウイ”昌史さんの
オススメコメントはコチラ!

「来ました、自分の中のレジェンド枠が。音楽を仕事にする前から聴いていた、知っていたアーティストって、やっぱり特別で。もちろん中村あゆみさんもそうで、『翼の折れたエンジェル』は言うまでもなく、『BROTHER』(‘90)とかを聴いたらMIZUNOのCM全部いい曲時代=青春を思い出します。初取材となった今回のインタビューですが、今もなお歌うのが楽しいという想いが言葉の端々からビシビシ伝わってきました。イメージと変わらぬ歌声と佇まい、そして話し声もハスキー! また、あゆみさんは子供の頃、大阪に住んでいたのもあって関西とは縁があり、今では何と大阪の小中一貫校の校歌も担当しているとか。“これがなかなかいい曲ができちゃって”というその校歌、聴いてみたい。CD出―へんかな?(笑) そして、大阪初開催となる『Rock Alive』にも、並々ならぬ熱量と準備をもって挑まれること間違いなし。フルバンドでのホールライブが26年ぶりとなれば、関西のファンは必見ですよ!」