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ニューアルバム『What The World Needs Now』は
唯一無二のボーカルワークを軸にした
濃厚なラブR&Bアルバムに!
この新作への取り組みとツアーについて
ゴスペラーズの黒沢 薫と酒井雄二にインタビュー

10月3日にニューアルバム『What The World Needs Now』をリリースしたゴスペラーズ。彼らの代表作『永遠(とわ)に』を手がけた、世界的プロデューサーのブライアン・マイケル・コックスとパトリック“ジェイ キュー”スミスと16年ぶりにタッグを組んで制作された楽曲を中心とした今作。その第一弾シングルとなったラブバラード『ヒカリ』、恍惚感あるグルーヴで引き寄せる『In This Room』をはじめ、今のゴスペラーズの攻めの姿勢を反映したロマンティック&スウィートなR&Bアルバムとなっている。来年12月に迎えるデビュー25周年に向けて前進し続ける5人。今作を携えて、10月19日から『ゴスペラーズ坂ツアー2018~2019 “What The World Needs Now”』がスタートする。今回のインタビューでは黒沢 薫と酒井雄二が新作の制作にまつわる想いや今の心境を率直に語ってくれた。


――今作は『What The World Needs Now』というタイトルも含めて、導入部分のイントロからエピローグまでコンセプチュアルな印象です。
 
酒井「タイトルでは何が足りないか、明言はしていなくて、最後にアカペラで歌って提示するという構成になっています。これは、“世界には、ハーモニーが足りない。”と、バーンと打ち上げてみた(笑)、先の意見広告との繋がりがあって…。“世界には、愛が足りない。”ぐらい言っても良かったんですけど、ゴスペラーズで言うならば、“ハーモニー”という言葉が相応しいかなと。でも、コンセプトありきで始まったアルバムではないですね。外部から良い曲を集めていく中で、次第に形が見えてきたんです」
 
――そこが前作『Soul Renaissance』とは違うところなんですね。
 
黒沢「前作は我々だけで作るというのがコンセプトでしたからね。今作は真逆の作り方になっています。その作り方からして、今までと違います。我々らしさを残しつつ、ちょっとアップデートされていくべきだと思って。今回久々に、ブライアン・マイケル・コックスとパトリック“ジェイ キュー”スミスとがっぷり四つで一緒にやることになり、そのほかにも内外のいろんなトラックメーカーやクリエイターに曲を頼んだところ、本当にいっぱい良い曲が集まって来たんです。その中で、我々らしさを考えた時に、今一番フィットするのがこの10曲だったということですね」
 
――ブライアン・マイケル・コックスとパトリック“ジェイ キュー”スミスのお二人と制作されるのは、16年ぶりになるそうですね。
 
酒井「そうです。でも、『永遠(とわ)に』の時と今回は反対の流れなんです。『永遠(とわ)に』の時は、良いバラードができて、これをアメリカのR&Bのサウンドに着せ替えるために、アトランタへ行って、一緒に仕上げていったんです。その時にコーラスの重ね方を手伝ってもらったのが“ジェイ キュー”です。今回二人から届いた曲には、すでに英語の歌詞がのっており、コーラスの青写真もあり、それにゴスペラーズは袖を通せばよかったという感じですね」
 
黒沢「プリプロダクションはかなり入念にやりました。(元の英語詞を)日本語にする作業とか、コーラスアレンジを整理したりして。僕ら自身がボーカルアレンジをすると、ある程度誰がどこをやるかっていうのを想定して作るんですけど。それが、今回はあまりないので。我々としても、この音域は初めてだなというようなこともあって。それがフレッシュさにつながっていった気がしますね。例えば、『NOTHING』(M-9)はほとんど全編ファルセットで、それを村上と僕が歌い分けてるんです。多分聴く側の印象としては、(二人が)歌い分けてるようには聞こえないかもしれないけれど。そういうやり方で歌の表情を出すっていうのは、今まであまりやったことがなかったんです。そもそも僕はハイトーン担当なので、そういう柔らかい音色が武器としてひとつ加わったというのはありますね」
 
酒井「『Sweetest Angel』(M-4 )は、今までのゴスペラーズなら、やらなかったであろうボーカルワークに挑戦していて、幅が広がっているんじゃないかなと思います。例えば、ずっと自分で作演出・監督までやってた役者さんが、今回は与えられた役をやってるうちに新しい面が出てくるみたいな、そんな気分ですね。長くやってるうちに得意なスタイルや苦手なものが固まってきちゃうんですけど、それを外の人が壊してくれるんですよ」
 
――年齢と共に落ち着いていくわけではないんですね。
 
黒沢「みんな(メンバーは)まだ落ち着いてない(笑)、まだまだ面白がりたいんだなっていうのを感じましたね。だって、今回は結構攻めてる。だから、コーラスのアレンジメントにしても、“これ、できねーな”って諦めるんじゃなくて、それを生き生きしながらやっている感じで、面白かったです。そのあたりは、学生時代に、“この曲のカバーやろう!”って盛り上がってた頃とあんまり変わんないというかね。今回に関しては、基本的に複数ボーカルで歌うことを想定したメロディーがとても多いんです。例えば、『In This Room』(M-2)なんかは一人で歌えない曲なんです。なので、結果的に適材適所でいろんな人の声が出てくるんです」
 

 
――5人それぞれのボーカル力が感じられ、厚みが違うなと感じました。
 
酒井「うちは5人で歌っていて、5人とも声が違う。クセもあります。コーラスなんて今の時代、いくらでも多重録音することができますから、一人でハーモニーをつけていくことはできるし、そういうやり方をすれば簡単に綺麗にコーラスができるんですね。それをわざわざ5人で違う声でやるというのは、手間がかかることなんです。でも、違う人間同士がコミュニケーションをとってハーモニーを付けるというのは、一人の声で多重録音するより、いい意味でゆらいでいたり、雑味があったりして。それがうまく作用すれば深みとか、厚み、広がりが生まれるはずなんですね。5人の違う声を持った人が、異口同音にひとつのことを歌う。これによって、結果的に説得力を持つというのがうちの信念ですかね」
 
――そういうやり方を貫いてきたことが大きなパワーになって、ゴスペラーズの唯一無二の存在感となっているんですね。
 
黒沢「最初は、“ただの不協和音”みたいな瞬間も数多くあったんですけどね(笑)。ボーカルグループって時間がかかるんですよね。それがこの24年間で学んだことです。毎回、しっかりやらなきゃいけないんだなと。でも、やればやっただけのことはあるんです。5人で向き合って、ちゃんとやれば、やった分だけ前進するんですよね」
 
酒井「シンガーが1人とか2人のグループのコーラスよりも、5人いた方が良いと言ってもらえるように、ちゃんとやらないといけないんですよね」
 
――ところで、“濃厚なラブR&Bアルバム”と打ち出されていますが、そこは意識されていたんですか?
 
黒沢「前作『Soul Renaissance』が90年代R&Bへのアンサーとして好評を得たので。もう一作、我々のR&Bへの返答というか、恩返しというものにしようという旗振りはあって。『Soul Renaissance』の時に、“ムーディでロマンチックが足りない”っていう話になったんです。それで、ちょっと甘めのものを増やそうよ、“スウィート・ラブ”な感じをもうちょっと出したいよねって。同時代的な音であることと、ロマンティックでスウィートな歌を歌うことはちゃんと両立するんじゃないかなと思って。結果的に自分たちにとっては手応えあるものができたんじゃないかと思っています」
 
――それを世代を超えて届けて行こうと?
 
黒沢「そこが一番共感できるところだと思うんです。もう一つは、ロマンティックな日本語の曲がちょっと減ったなと。我々が、子供の頃はもっとあったんだけど…。そういうものをもうちょっと歌いたいし、巷に流したいという思いがありますね」
 
酒井「歌謡曲とか、現実よりは少し脚色された、大人の世界を感じるような歌があったと思うんです。優れたお芝居や小説は現実よりも少しロマンティックであることができるじゃないですか。こんなことが現実で起こったらいいなという。歌だからこそ、現実よりもすごいことができるはずではないかと」
 
――等身大の歌ではなく?
 
黒沢「等身大である必要はないかなと。僕らこんな恋愛を全部してたら体壊しますよ(笑)。(聴き手の)今ある恋愛、片思いの気持ちとかをちょっと後押しできたり、スケール感を上げられたら素敵ですよね。それを面白がってほしいなっていうのはありますね」
 
――歌詞によってはちょっとキケンな毒のようなものも感じられてドキッとします。
 
酒井「ポップなだけではなく、少し複雑な感情や裏の部分を含んだ歌を情熱を込めて歌いたいなと。大人になって歌うものは、その方がやりがいがありますよね」
 
――“エモい”っていう感覚に通じるようなところもあって。
 
黒沢「エモさがある曲は間違いなくあると思いますね。10代ならではのラブヴソングも眩しくていいけど、我々の世代が歌うラブソングっていうのもそれはそれでいいもんだよって。あの時の恋愛をもう一度じゃない形で表現したいっていうのはありますね。今、現在の寄り添っているものも、角度を変えればとてもスウィートでセクシーなもんだよっていうところが表現できてるような気がしています」
 
――ずっとゴスペラーズを聴いてきた方も新たな刺激を得るような?
 
黒沢「そうですね。それは得て欲しいと思ってます。ただ、ツボは外してないと思うんで。“またR&B?”と、ちょっと心配してる人もいるかもしれないですけど、“これは大丈夫です!絶対気に入ってもらえるんで聴いてくださいと”と自信を持って言いたいですね。“ゴスペラーズってアカペラでしょ?”って言ってる人には、“ちょっと聴いて、こういうのをやってるんだよ”って言いたい気持ちもあって」
 
酒井「ゴスペラーズの名前は知ってても、聴いたことがないような若い世代の人にも耳に止まるような、スマホ上の出会いとかしてもらえたらとてもいいなと。アナログ盤も作るという試みもしてみたので、これが今までとはまた違った層にも届けばとても幸せです」
 
――来年の12月には、25周年という節目を迎えます。
 
黒沢「いろいろ計画していて、来年からはまたさらに攻めていくので。より楽しんでもらえるんじゃないかなと思ってるんですけどね」
 
――最後に、このアルバムを携えて、10月19日(金)から、来年の2月23日(土)まで、5か月に渡って開催されるロングツアーへの意気込みを聞かせてください。
 
酒井「ライブではアルバムの曲を生バンドでやるので、そこも注目して聴いてほしいですね」
 
黒沢「バンドメンバーは去年からグッと年齢層が若くなって、腕利きのミュージシャンが揃っています。もちろん、ニューアルバム『What The World Needs Now』からの曲を中心にやりますし、定番曲や、もう何年もライブで歌ってない曲の中からもピックアップするので、意外な曲もあってきっと面白いと思います」

Text by エイミー野中



(2018年10月12日更新)


Check

Release

Album『What The World Needs Now』
発売中

【完全生産限定盤(12inchアナログ盤)】
4000円(税別)
KSJL-6203

【初回生産限定盤(CD+DVD)】
3500円(税別)
KSCL-3091 ~ KSCL-3092

【通常盤(CD)】
3000円(税別)
KSCL-3093

《CD収録曲》
01. W2N2
02. In This Room
03. Right by you
04. Sweetest Angel
05. Ashes
06. Goodbye
07. for U
08. Hiding Place
09. NOTHING
10. DON'T LEAVE ME NOW
11. ヒカリ
12. epilogue

《DVD》
・「ヒカリ」-rec making ver.-
・「In This Room」-dance lecture-
・「In This Room」-dance ver.-
・「まっすぐな橋」-movie edit ver.-

Profile

ゴスペラーズ…北山陽一、村上てつや、黒沢 薫、酒井雄二、安岡 優。1991年、早稲田大学のアカペラ・サークル<Street Corner Symphony>で結成。1994年8月15日、ファイルレコードよりミニアルバム『Down To Street』をリリース。メンバーチェンジを経て、1994年12月21日、キューンミュージックよりシングル『Promise』でメジャーデビュー。2000年8月リリースのシングル『永遠(とわ)に』、10月12日リリースのアルバム『Soul Serenade』が、記憶に残るロングセールスを記録しブレイク。2001年3月7日リリースのシングル『ひとり』が、アカペラ作品としては日本音楽史上初のベスト3入りとなる。2001年6月6日にリリースされたラブ・バラードのコレクション・アルバム『Love Notes』が大ヒット。ミリオン・セールスを記録する。以降、『星屑の街』『ミモザ』など多数のヒット曲を送り出す。2004年11月17日には、デビュー10周年を記念した初のベスト・アルバム『G10』をリリース。また、他アーティストへの楽曲提供、プロデュースをはじめ、ソロ活動など多才な活動を展開。日本のヴォーカル・グループのパイオニアとして、アジア各国でも作品がリリースされている。2014 年12 月17 日には、デビュー20 周年を記念したベスト・アルバム『G20』をリリース。オリコン初登場2 位を獲得。全66公演ゴスペラーズ史上最多公演数の全都道府県ツアー「ゴスペラーズ坂ツアー2014~2015 “G20”」を大成功におさめた。2017年3月22日に、ゴスペラーズの原点であるソウルミュージック・R&Bを意識した2年6か月ぶりとなるオリジナルアルバム『Soul Renaissance』をリリース。2018年2月21日には、記念すべき50枚目のシングル『ヒカリ』をリリース。7月4日にシングル『In This Room』をリリース。10月3日にニューアルバム『What The World Needs Now』リリース。2019年12月のデビュー25周年に向けて精力的に活動中。

ゴスペラーズ オフィシャルサイト
http://www.gospellers.tv/


Live

「ゴスペラーズ坂ツアー2018~2019 “What The World Needs Now”」

【神奈川公演】
▼10月19日(金)
カルッツかわさき(川崎市スポーツ・文化総合センター)ホール
【山梨公演】
▼10月21日(日)コラニー文化ホール 大ホール
【東京公演】
▼10月24日(水)パルテノン多摩 大ホール
【栃木公演】
▼10月27日(土)宇都宮市文化会館 大ホール
【群馬公演】
▼10月28日(日)太田市民会館
【北海道公演】
▼11月2日(金)札幌文化芸術劇場hitaru
【北海道公演】
▼11月4日(日)苫小牧市民会館 大ホール
【鳥取公演】
▼11月10日(土)米子市公会堂
【岡山公演】
▼11月11日(日)岡山市民会館
【埼玉公演】
▼11月14日(水)大宮ソニックシティ 大ホール
【徳島公演】
▼11月16日(金)鳴門市文化会館
【高知公演】
▼11月18日(日)
高知県立県民文化ホール オレンジホール

Pick Up!!

【兵庫公演】

チケット発売中 Pコード:121-832
▼11月22日(木) 18:30
神戸国際会館こくさいホール
全席指定-6500円
※就学児童は有料。未就学児童は保護者1名につき1名のみ膝上鑑賞可能。但し、未就学児童もお席が必要な場合は有料。
[問]サウンドクリエーター
■06-6357-4400

Pick Up!!

【滋賀公演】

チケット発売中 Pコード:121-832
▼11月24日(土) 17:30
滋賀県立芸術劇場 びわ湖ホール 大ホール
全席指定-6500円
※就学児童は有料。未就学児童は保護者1名につき1名のみ膝上鑑賞可能。但し、未就学児童もお席が必要な場合は有料。
[問]サウンドクリエーター
■06-6357-4400

Pick Up!!

【和歌山公演】

チケット発売中 Pコード:121-832
▼11月25日(日) 17:30
和歌山市民会館 大ホール
全席指定-6500円
※就学児童は有料。未就学児童は保護者1名につき1名のみ膝上鑑賞可能。但し、未就学児童もお席が必要な場合は有料。
[問]サウンドクリエーター
■06-6357-4400

【千葉公演】
▼11月28日(水)千葉県文化会館 大ホール
【青森公演】
▼12月2日(日)
オルテンシア(ふるさと交流圏民センター) コンサートホール
【秋田公演】
▼12月4日(火)大仙市大曲市民会館
【長野公演】
▼12月8日(土)大町市文化会館 大ホール
【新潟公演】
▼12月9日(日)長岡市立劇場 大ホール
【福井公演】
▼12月14日(金)鯖江市文化センター
【岐阜公演】
▼12月16日(日)
長良川国際会議場 メインホール
【宮城公演】
▼12月21日(金)仙台サンプラザホール
【東京公演】
▼12月24日(月・休)・25日(火)
東京国際フォーラム ホールA
【静岡公演】
▼2019年1月12日(土)
沼津市民文化センター 大ホール
【愛知公演】
▼2019年1月14日(月・祝)・15日(火)
日本特殊陶業市民会館 フォレストホール
【神奈川公演】
▼2019年1月18日(金)
鎌倉芸術館 大ホール
【静岡公演】
▼2019年1月19日(土)
アクトシティ浜松 大ホール
【熊本公演】
▼2019年1月26日(土)
市民会館シアーズホーム夢ホール(熊本市民会館)
【佐賀公演】
▼2019年1月27日(日)
佐賀市文化会館 大ホール
【福岡公演】
▼2019年2月2日(土)
福岡サンパレス ホテル&ホール
【大分公演】
▼2019年2月3日(日)パトリア日田
【山口公演】
▼2019年2月9日(土)周南市文化会館
【広島公演】
▼2019年2月10日(日)広島上野学園ホール

Pick Up!!

【大阪公演】

10月27日(土)一般発売
Pコード:121-834
▼2019年2月15日(金) 18:30
▼2019年2月16日(土) 16:30
フェスティバルホール
全席指定-6500円
※発売初日は店頭での直接販売および特別電話■0570(02)9510(10:00~23:59)にて予約受付。
※就学児童は有料。未就学児童は保護者1名につき1名のみ膝上鑑賞可能。但し、未就学児童もお席が必要な場合は有料。
[問]サウンドクリエーター
■06-6357-4400

【新潟公演】
▼2019年2月22日(金)・23日(土)
苗場プリンスホテル ブリザーディウム

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