『ボロフェスタ2018』開催直前!
今年の『ボロフェスタ』の最前線をひた走る
ミノウラヒロキ、カーミタカアキ(ULTRA CUB)、
ニシケケ(Moccobond)による
ボロフェスタスタッフ3人のスペシャル座談会!
2002年、京都で産声をあげた『ボロフェスタ』。今やフェス飽和状態とされる時代にあって、その中でもその存在はどのフェスとも比べることができない特別な存在だ。出演者は超メジャーアーティストからインディーズまで、そして地元の京都はもちろん日本全国のバンドやミュージシャンが、スタッフの「とにかく今ライブが見たいアーティスト」という極シンプルな理由でブッキングされ、秋の京都に集まってくる。運営するスタッフは、学生を中心とした情熱あるボランティアたちがイベンターを介さず、手作りで作り上げ楽しまれ続けて来たフェスだ。今回、スタッフでありながらMCやマジックショーなどボロフェスタで八面六臂の活躍をみせるミノウラヒロキ(イベントスペース&居酒屋『▫︎▫︎▫︎ん家(ダレカンチ)』店主)、2018年からスタッフとして参加しているカーミタカアキ(ULTRA CUB/ vo&g)、ニシケケ(Moccobond/g&syn&vo)の3名による座談会を敢行。バンドマンとしてボロフェスタに関わること、今年のボロフェスタのテーマなど、目前に迫った『ボロフェスタ』について語ってもらった。さぁ、開催はもうすぐそこだ!
――3人それぞれ『ボロフェスタ』に関わり始めたきっかけっていうのは…?
ミノウラ「僕は2013年からスタッフとして関わり始めたんですけど、元々は京都のLive House nanoに出演していて、その時に店長の土龍さん(『ボロフェスタ』を立ち上げた主催者のひとり)に“いつか地元の淡路島でフェスがしたいんです”っていう話をしたら、“じゃあ『ボロフェスタ』手伝ってみたら?”って言っていただいて参加しました」
カーミ「僕の所属するバンドULTRA CUBはミノウラさんに声かけてもらったのがきっかけですね」
ニシケケ「私たちは、Live House nanoに出演した時、土龍さんに“ちょっとこっち来て”って呼ばれたんです。あれ、なんかやったかな…と思ってビクビクしてたら“ボロフェスタ一緒に作らへん?”って言われて。それでメンバー3人で土下座して“お願いします!”って逆にお願いしました」
ミノウラ「これまでボロフェスタは、いろんなバンドがスタッフとして関わってきていて、ここで新しいバンドと一緒にやりたいなっていうのは僕と土龍さんで話してました。で、Moccobondに関しては、nanoのライブがめっちゃよかったみたいで、気がついたら土龍さんがすでに声がけをしてると。そしてもう1組、京都のバンドの候補の中でも何かを一緒に作るっていうことに“おっしゃ!”ってなってくれるバンドはULTRA CUBしかないと思って声をかけました」
――バンドがスタッフをする場合、どういう役割を担っているんですか?
ミノウラ「もともとボロフェスタは、Limited Express(has gone?)やゆーきゃん、ロボピッチャーといった、当時京都で若手だったバンドマンたちが、自分たちの存在をアピールするにはどうしたらいいか考えた末に出来たものなんです。メジャーアーティストを呼んで、本格派のフェスとして成立させた上で、自分たちもステージにあがる。この流れは今も変わりません。それぞれスタッフとして関わったバンドは、出演もして、その裏で、ブッキングから会場の設営や、当日の運営までも関わっています」
――カーミさんとニシケケさんは、これまで『ボロフェスタ』を外から見ていたと思うんですが、どういう印象だったんですか?
カーミ「僕は2012年に大学進学で京都に来たんですけど、その年に初めて『ボロフェスタ』に遊びに行きました。とにかく楽しくて、土龍さんのように主催の人がMCをしていたり、スタッフは一生懸命だし、手作り感もすごいし、“おもしろいことしてやる”みたいなエンタメ感があって、これまで体験したことのないおもしろさがありました」
ニシケケ「私にとってはクラムボンとくるりを呼んでくれる偉大なフェスや!っていう認識ぐらいでしたけど、年末にMoccobondとして新譜を出した時に、異常に『ボロフェスタ』に出たい!って思たんです。誰の手元に届くのか全くわからないけど、誰かボロフェスタの人に届け!と思って衝動的に新譜を送りつけました(笑)」
――へー! そんな逆オファーが出演に繋がることはあるんですか?
ミノウラ「うーん…ほとんどないですねぇ。Moccobondも逆オファーを受けたから声をかけたわけでもないですし」
――ボロフェスタのスタッフは、どのタイミングで集めるんですか?
ミノウラ「毎年年明けくらいにその年の第一回目の会議をするんですが、それぐらいに一緒にフェスを作っていく主要なスタッフを募って、今年のボロフェスタはどんなフェスにしていくのかを主要メンバーで考えるっていう形をとっています。『ボロフェスタ』のスタッフは学生が多いこともあって毎年ガラリとメンバーが変わることも多いです」
ニシケケ「私たちも今年から関わって、まず、私らに大事なのは自発的な姿勢かなと。せっかく今年からスタッフとして参加するんだから、私たち(ULTRACUBとMoccobond)から仲良くなってグルーヴを出さなあかんと思ったんです」
カーミ「当日までにできることを…っていうのを考えて、まずはULTRACUBとMoccobondで
ブログを立ち上げて、まずはブログでお互いのバンドを学ぶところからスタートしました」
ニシケケ「うん。私たちが仲良くなればなるほど『ボロフェスタ』が盛り上がる構造っていうか。その他にも私は個人的にやれることを考えて、2つのことを自分に課していて、それが毎日ブログを書くことと、毎日曲をアップすることなんです」
――毎日? すごい!
ニシケケ「フェス全体のことはスタッフがみんな集まらないといけないんですけど、個人的なブログはコツコツと発信できるので。最終着地点としては、『ボロフェスタ』は京都のフェスだけど、もっとブログを使ってはみ出ていきたいっていう感じなんですよね」
カーミ「あぁ、はみ出て行きたいですね。“京都から世界へ”的な感じで」
ミノウラ「京都でやっている音楽シーンを外にもっと見せていこうとスタートしているフェスなので、いろんなメディアで“京都の京都による京都のための”みたいに紹介されていますけど、やっている本人たちは、ちゃんと京都のアーティストを見せつつ、フックアップしていきたい若いアーティストはちゃんと『ボロフェスタ』をおもしろいと思ってくれる、ここから上がっていこうっていうアーティストに広く目を向けています。あの場所から発信できる“新しいボロフェスタ”に向かいつつあるんじゃないかなと最近は感じてますね」
2018年の『ボロフェスタ』
掲げたテーマは「サーカス」!
――変化という意味でいうと、毎年スタッフが入れ替わってフェスの色もどんどん変わるっていうのも珍しいですよね。
ミノウラ「そうですね。それももちろんありますけど、今年一番大きな変化っていうのは、ULTRACUBとMoccobondがスタッフとして参加してくれたことに尽きますね」
ニシケケ「…責任重大ですよ。でもやっぱりスタッフの一番上にLivehouse nanoの店長として数々のバンドを見てきた土龍さんと音楽配信・情報サイトのOTOTOYや、過去にも数々の音楽イベントを立ち上げてきた飯田さんがいてくれるっていうのは私たちには大きいことだと思ってます」
――上に立つおふたりのすごいところ、ってどういうところだと思いますか?
ニシケケ「ふたりの絶妙なバランスですかね?…“冷静と情熱のあいだ”っていうか」
ミノウラ「あー、わかる! まさにそんな感じですね」
カーミ「完全に土龍さんが情熱っていうイメージです」
ミノウラ「飯田さんは物事を俯瞰して見つつ、人を立てて、本当にダメなところをついてくれる問題点を見つけるのが上手な人。きっと過去の経験からなせる技なんだと思います。一方の土龍さんは自分の感情を素直に出せる、喜怒哀楽のきっちりしている人なんです。それが人を動かすことに繋がっていて。ぼくがLivehouse nanoで働いていたときも、褒められたり、ときには怒られたりしてました。それが今やっているお店の糧になっていますね。そんな二人のバランス取れているのがすごいところで、これだけ長く続いてきたんだと思います」
カーミ「そんな人たちが作り上げて来たフェスに新しく参加するからには、新しい風を吹かせたいんです。いいライブをするのは当然で、この活動を通じて面白いやつって認知されたいし。それでもっと若いスタッフを巻き込んでいけたらいいですよね」
ミノウラ「うんうん。『ボロフェスタ』って本当に関わる人たちの自発性にかかっているので、例えば装飾でも“会場の象徴になるようなめちゃくちゃ大きいゴジラ作りたいねんけど”っていうのを受けて“じゃあ作ろう!”と。全てがそんなノリ。そういう部分でスタッフはみんな自発的に動いて欲しいし、それを他のスタッフがサポートしています」
ニシケケ「だからまず私たちの自発性の育成!と、開催までの短期間でガッと仲良くなって、私たちが引っ張っていけるように頑張ります」
カーミ「そうそう。今日もこれから打ち合わせなんで、ガッとね。いくと思いますよ」
ミノウラ「開催が近づいてくると自然と密になるのは間違いないですね。準備準備準備で」
ニシケケ「バンドとしての出演もあるんですが、会場の設営だったり、当日もスタッフとして動くんです」
ミノウラ「本番1週間前は装飾も作ったりとか」
カーミ「僕は“ドリンクの持ち込みダメですー”とか、扉開けたりとかする警備スタッフの一員です。他のメンバーは機材班のリーダーをやるやつもいます」
ニシケケ「私は受付なんですけど…8月に開催された『ナノボロフェスタ』で初めて受付をやりました」
ミノウラ「スタッフとして関わっているバンドが、当日も動くっていうのは、このフェスが始まった頃からずっとそうでした。毎回会議にしっかり出席して流れも把握しているし、今年の色とかもわかっているのは彼らだと思うので」
――だとすると、今年を象徴する色はどんな感じになるんでしょうか。
ミノウラ「今年はテーマがしっかりしているというか…ちょっと今までは思いつきもあったり、ふんわりしていることもあったんですけど、今年は代表の飯田さんから明確なテーマが出てきたんです」
――それはどういった?
ミノウラ「はい。今年はすごく災害の多い年で、北海道や大阪で地震があったり、台風や豪雨で生活に影響が出たり、フェスも中止になったり。それがきっかけであまり外に出なくなったら嫌だなと思って。こういう時こそ、フェスでは楽しく思いっきり笑ったり泣いたりすることを肯定しようという。そこから“サーカス”っていう言葉が出てきたんです。人々がのめり込んで笑える場を提供したいっていうのが今年の軸になっています」
――フェスとしてのテーマもあると思いますが、それぞれみなさん個人でどう取り組む、みたいなことは考えたりしますか?
カーミ「うーん。バンドとしてライブやって運営もやって、スタッフを盛り上げて、バンドのブッキングにも関わったりして、全力です」
ミノウラ「ゼロから100まで関わってます」
カーミ「今までイベントっていうのは出る側であって、作る側に回ったことがなかったんで“こんなに大変なんや…”っていうことを実感してます。ひとつのイベントへの向き合い方がすごく変わりました」
ニシケケ「うん、わかります。私も開催期間が近づくにつれて胸の高揚感が増していて、「身を削りたい」っていう気持ちになってるんです。バンド共々『ボロフェスタ』に身を捧げるつもりです」
カーミ「僕らも当日に向けて、スタジオに入る回数が尋常じゃなくなってきてます。やっぱり『ボロフェスタ』は憧れで、京都を代表するイベントだし、京都のバンドとしては絶対に出たいイベントなので気合が違います」
ミノウラ「ふたりが言うように『ボロフェスタ』ってすごいなあと思ってて、ちゃんとしてるのにこんなに自由なフェスってあるんやっていう感じなんです。きっちり作ってるのに“自由にやっていこうぜ”っていう雰囲気があるからこそ、毎年いろんなアイデアが出てくるし。自由が許されている音楽イベントだなと思ってます。それが17年続いてるのは手前味噌ですけど“すごい”の一言に尽きる。それをたくさんの人に体験してもらいたいと思いますね」
写真左から、カーミタカアキ、ミノウラヒロキ、ニシケケ
text by 桃井麻依子
(2018年10月24日更新)
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