目には見えないものをラブソングに込めて…… Baby Kiyインタビュー&動画コメント
その存在、そしてライフスタイルが若い女性から支持を集め、今やInstagramのフォロワーは27万を超える注目のシンガーソングライター・Baby Kiy。そんな彼女が、9月26日にミニアルバム『Never get enough』をリリースした。今作には会う人をとりこにするハッピーでキラキラとした笑顔とは裏腹に、せつないラブソングがずらり! そこで今回はその理由や、曲のアイデアとなる旅のことなどを包み隠さず話してもらった。
――ぴあ関西版WEB初登場ということで、少しプロフィールからお聞きしたいと思います。現在、スタイルブックを発表したりアクセサリーブランドを手がけたりと、幅広く活動をされていますが、音楽を始めたきっかけは?
「最初は中学の時にバンド活動をしていて、高校時代にはユニットを組んで歌ったりもしていました。いろいろやったんですが10代の頃には本当に音楽がやりたいのか迷った時期もあって……。でもその時にいろんな方にいろいろな機会をいただけたので、やりたいことは全部やってみよう!って、本を出したりアクセサリーを作ったり旅に出て新しい景色を見たりと、やりたいことをやったんです。そのうえで20代になって、やっぱり音楽がやりたい!と思って専門学校に通い、そのあと今の事務所に所属し、本格的に音楽にフォーカスして活動をスタートした感じです」
――今は音楽が中心の生活ですか?
「はい。でも、音楽もスタイルブックも、アクセサリーやお洋服のデザインも、全部が自分を表すツールで、軸は“自分”。そのなかでのフォーカスしているのが音楽っていう感じかな。全部がつながってます」
――では、次に『Never get enough』のことを。今作は全曲がラブソングですね。これは初めからラブソングがテーマにあったんですか?
「はい。ひと夏の女の子の恋心……出会いから別れみたいな感じで書きました」
――登場人物は共通?
「誰か特定の人がいるわけではないかな。バラバラなんですけど1枚を通して聴いた時に、いろいろな恋心が書けたらいいなっていうイメージがあって作りました」
――曲作りのヒントはどんなところから?
「映画を見て主人公の気持ちを書いたり…。例えばせつない詞を書く時でも全然自分はハッピーだったりします。恋愛がうまくいってる時でも別れの曲を書いたりもします(笑)」
――あまり実生活をもとにはしない?
「あ、でも両方ありますね。実体験で書くこともあるし。1曲のなかでも前半は実生活で後半はほかのことっていう時もあります。今回の『それでいいんだ』っていう曲は“君が好きだった 太陽が”っていう歌詞とかは、自分のことを(君として)誰かが見ているような気持ちで書いています」
――なるほど。ちなみに今回は宮古島で“一人制作合宿”のようなことをされたとか?
「(宮古島の旅を)励みにしました(笑)。ま、そこでもいろいろと……(制作に関わることもした)。旅に行くといろんなインスピレーションを受けるので、それを持ち帰って曲にする感じです。どうしてもストレスフルな毎日だと、生活感にあふれ過ぎてなかなか曲が書けないので、ちょっと現実逃避して……。普通に日常を送っていると音楽をやるスペースがなくて、頭もクリエイティブな方じゃなく、違う方の頭を使っているから、それを一回切り替えるために宮古島へ。それも、誰にも言わず一人でチケット取って行っちゃいました。“もうチケット取っちゃった!”みたいな(笑)。その時も楽曲制作期間内ではあったんですけどあまり時間はなくて。でも“行く!”って決めて、もう自分を追い詰めて……いい意味で(笑)。でもギュッと音楽に集中できた期間でした。ずっと音楽に触れていられるとモードが音楽になるから」
――旅の間は“これは曲になるな”とか思うんですか?
「あ。そういう風ではないかな。でも、文化や現地の人とのやりとりとか、言葉にならないものや目に見えないものを吸収するようにしてます。音楽も目に見えないじゃないですか。だからそういう空気や雰囲気を大事にしたいので、そのインプットはしてますね。ただ、あとから考えたらそういう風だったなって感じで、わざわざインプットしよう!って思ってるわけじゃないです。例えば“あの時はこうだったな”って思うと、あそこに行ったとか、あのアクティビティしたなとかより、まずはカラーだったり空気だったりから思い出します」
――メモしたり録音したりはするんですか?
「旅ごとにプレイリストを作ります。例えば“2016 ハワイ ウィンター”とか…。それでその時期に聴くと、実際にはないけど匂いとかを感じる。写真とかでもイメージは残るけど、音楽って全部を感じられるんですよね」
――今作でも季節や温度を感じられる詞が多いですよね。
「歌詞に時間帯とか季節とか、目に見えないものを入れるようにはしてます。“焼けた素肌 頬に触れた冷たい風”(3曲目『Time for moving on』の歌詞)ってなったら“秋なのかな?”みたいに、秋とは言わずに秋を表現するっていう感じかな…?(そういう言葉は)パッと出る時もあるし、思い出すこともあるしで、いろんな角度から集まっています」
――ちなみに、今こうやって話をしていてもInstagramなどを見ても、Baby Kiyさんはとてもハッピーなイメージなのに、収められている曲がほぼ悲しい恋の曲というのが意外です(笑)。
「せつない曲が好きです(笑)。自分で聴くのもせつない曲が多い! ハッピーな曲にはあまり興味がなくて。“私、ハッピー!”って言ってても“そうなんだ……”で終わっちゃうけど、痛みやせつなさがある曲には共感できる。“こんなにハッピーなんだよ!”って言ったとしても独りよがりだし、そこに心は持って行かれないんですよね。だから“せつなソング”ばっかです(笑)。私自身基本はポジティブだけど、センチメンタルな面もあったりして!(笑)」
――実態への反動でしょうか(笑)?
「どうなんだろう? でも、人より喜怒哀楽は激しいですね。Instagramとかにはでないですけど(笑)、表に(感情が)出ますね。なので、本当に(曲の)物語を想像しないと(声に感情が)入らない。“笑って歌って”とか言われてリテイクしたりします」
――そうなんですね。ただ確かに歌声は曲ごとに感情表現が違うんですが、全曲ともに耳なじみがよく、温度感が一定している気がします。
「あ、それは、曲を作る時に朝聴いても昼聴いても夜聴いても心地いいサウンドを目指しています! 例えば、朝、車に乗って聴いてもいいし、寝る前に聴いてもいいしっていうサウンド。あと、BGMにもなる……しゃべってる時に流れてても邪魔ではないけど、でもよく聴いたら口ずさんじゃうっていう曲にするように心がけてます。だから歌い方に限らず、“声の成分”とかも言われる(指摘される)。“もっと息多めで”とか。でも、そこがあるとないとじゃ違うんですよね。ブレスが全部きれいに切られてた時は自分でも何か違うって思う。で、戻してもらったりしました。感情を……言いたいことを言うためにする呼吸だから、それがないとこの感情がうまく伝わらないなって思って」
――緻密ですね。そう言えば、レコーディングする曲によって来ていく服を変えるとお聞きしましたが。
「メイクとかも……。あ、でも、気分のいい時だけです(笑)。もう今日はリラックスして行こう!っていう時は、ノーメイク&楽な格好で行ったりもしますね。でも気分がいい時で、今回なら『Kiss Goodbye』や『Trouble』という曲の時とかは、ちょっと強めの女の子の歌詞なので、お洋服もそういう風にすることもありました」
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――さらに今作はパッケージのデザインも手がけているんですよね。
「毎回です! 今回のイメージは、毎年行ってるオーストラリアのバイロン・ベイ。ヒッピーと音楽にあふれた街で、キラキラでトロピカルなハワイとかのビーチと違って、ちょっとビンテージな雰囲気がする海で、それが大好きで……。いろんな人がいる感じがいいなといつも思うんです」
――ファッションやスタイルブックの仕事もそういうところにリンクしているんですね。さて、最後にツアーのことも。大阪公演は11月14日(水)です。
「大阪、大好き! 温かいですよね。それに大阪は来られる機会も少ないので、ライブの短い時間でもキュッとする感じがあるし、お客さんからもそれが伝わってくる。あと、一人で来てくれてたファンの子同士で仲良くなってくれたりして、一緒に音楽を楽しんでくれてる姿を見られるのもうれしいです! Instagramは27万のフォロワーがいるんですけど、そのなかには私の音楽が好きな人、ライフスタイルが好きな人、ファッションが好きな人って、いろいろな人がいて、ライブはその人たちが音楽にフォーカスして来てくれるのもうれしい。アーティストって制作期間の方が長くて引きこもってることが多いので、ファンの子達に直接会ってコミュニケーションできる時間は貴重です」
――今回ツアーの見どころは?
「今回もステージセットもこだわります。いつもお花でも花瓶一つから、何から何まで自分で選んで持って行きます。そういうのはワンマンライブでしかできないので……。あと、曲順によって曲の聴き心地って変わるじゃないですか。だからセットリストもワンマンだからこその流れになっています。そこも楽しんでほしいです! ぜひ遊びに来てください!」
text by 服田昌子
(2018年10月26日更新)
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