結成15周年&メジャーデビュー10周年を迎えたシドが ミニアルバム『いちばん好きな場所』をリリースしツアーを開催! マオ(vo)&ゆうや(ds)インタビュー
今年結成15周年&メジャーデビュー10周年を迎えたシド。このダブル・アニバーサリーを盛り上げるように、本来は出す予定はなかったというミニアルバム『いちばん好きな場所』を作り上げ、8月22日にリリースした。収録されているのは、ライブにぴったりな[VOICE]、[reverb]、[ラバーソール]のほか、民族音楽の要素が含まれた[その未来へ]、そして核となる[いちばん好きな場所]という多彩な5曲になっている。今回、この作品が作られた経緯やツアー、そして関西の好きな場所まで、マオ(vo)とゆうや(ds)がたっぷりと話をしてくれた。
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――チケットぴあの媒体なので、9月3日から始まるツアーのことをガッツリ伺おうと思ったら各地SOLD OUTで(笑)。おめでとうございます!
2人 「ありがとうございます(笑)」
――SOLD OUTしちゃいましたが、聞いていきます(笑)。今回は29か所31公演とけっこう細かく回られるんですね。
マオ 「そうですね。この『いちばん好きな場所』っていうツアーをやるのが今回で3回目なんですけど、だいたいこれくらいの本数を回っていて。コンセプト通りといえば通りかなと」
――ライブハウスを回るこのツアーですが、2008年のインディーズラストツアーでもあった1回目は28公演、2回目だった2010年は17か所25公演だったので、3回目にしてシリーズ過去最多になっています。
マオ 「だいぶ増えましたね(笑)」
ゆうや 「ガッツリ増やしたね(笑)」
――そもそも久しぶりにこのツアーをやって、細かく回ることにしたのは?
マオ 「まずは久しぶりだっていうのが一番で。それから、昔と比べてTwitterとかでダイレクトに待ってくれている人の声が届くので、そういう人たちの気持ちが前より分かるようになった分、ちゃんと会いに行ってあげたいなってずっと思っていたんですね。今回15周年っていうタイミングが来たので、やるならここしかないなということで決めました。今年前半にツアーをやったんですけど、1年に1回しかツアーをやっちゃいけないっていう決まりもないし、今年くらいはお祭りでいいのかなって思って」
――それにしても、この本数は結成15年目にして新たな挑戦になりますよね?
ゆうや 「楽しくなりますよね。ずっとツアーで回っていると、ランナーズハイというか、そのモードに入る瞬間があるんですよね。あの感覚を久しぶりに味わえるのが楽しみです」
――このツアーでいちばん楽しみにしていることは?
マオ 「僕は……ご飯ですかね(笑)。もちろんライブは楽しみにしています。シドとシドのファンが集まってライブハウスでやれば絶対にいいライブになるのでそこは安心しているんですけど、やっぱり終わったあとのご飯とか、移動だったりとか、そういうところもこういうツアーならではかなと思うので、各地のご当地のご飯とかをけっこうずっと調べていますね。どこが美味しいか(笑)」
――ファンの方に言ったら教えてくれそうです。
マオ 「すごく情報をくれます。その地方、地方の本を送ってきてくれて、このお店が美味しいよって丸印とか付箋をつけてくれたりして、各地にコーディネーターがいる感じですね(笑)」
――それはありがたいですね(笑)。ゆうやさんはいかがですか?
ゆうや 「僕も食べたりするのが好きなんですけど、熊本とか楽しみですね。けっこうシドで行くのは久しぶりなんですけど、個人的にはたまたま知り合いから誘われたきっかけで復興支援みたいな感じで1年に1回は行かせてもらっていて。だから、久しぶりに熊本でライブができるっていうのが楽しみなところです」
――そうなんですね! ちなみにこのツアーの核になるのは、今回のミニアルバム『いちばん好きな場所』ですか?
マオ 「そうですね。セットリストはこのアルバムを軸に作っています。とは言いつつも5曲しかないですし、15周年を記念するツアーでもあるので、集大成的なツアーにしたいですね。Zeppとかを回っていた前半のツアーはコンセプトツアーだったので、シドのことをどっぷりと好きな人は楽しめたと思います。今回は細かく回らせてもらうので、『初めてシドのライブに行きます』っていう方も普通に楽しめるようなセットリストにしていきたいなと思います。ライブハウスなので照明とかセットとか、やれる範囲も限られていて、シドの原点というか、4人の自力でどこまでライブを盛り上げることができるのかっていう挑戦でもあるので、すごく楽しみですね」
――そもそも今回はなぜミニアルバムという形態になったのでしょう?
マオ 「1個前のフルアルバム『NOMAD』を作って、出して、レコードツアーを回ったんですけど、それでもまだ何か溢れ出るものがあるというか、まだまだ欲が満たされていない感じが4人ともしていて。単純にそれぞれが燃えちゃったというか(笑)。15周年はツアーをいっぱいやる年にしようっていうことだけが決まっていて、もともとミニアルバムを出す予定はまったくなかったんです。だけど、『せっかくまだ4人とも溢れ出るものがあるから、(作品を)出したほうがよくない?』ってなって。この気持ちを次のフルアルバムまで溜めておくっていうのは、なんかロックミュージシャンとして違うのかなっていう気もしてきて、結果ミニアルバムを出そうってなった感じですね」
――ということは、まずはテーマというよりも、それぞれが出したいものを作って、結果まとまったっていう感じですか?
マオ 「ツアーが決まっていたので、絶対にツアーをテーマにしようっていうのがありました。俺以外の作曲者3人、Shinji、明希、ゆうやに、『1人1曲ずつ、ツアーでやりますっていう曲を持ってきてよ』ってなって、ライブに向かって作った曲が3曲([VOICE]、[reverb]、[ラバーソール])。あとは[いちばん好きな場所]っていう核になるゆうやの曲が一番最初に決まったんですけど、それが決まってから全部走り出して、4つのピースにもう1個何かないかなってなった時に明希の[その未来へ]っていう曲が入って、この5曲になりました」
――[いちばん好きな場所]はゆうやさん作曲です。優しい感じのするバラードですが、こういう曲調にしたいっていう思惑はあったんですか?
ゆうや 「選曲会で出してから、これが核になるってあとから決まったと思うんですけど、今のシドで、マオくんがこの手のタイプのバラードを歌ったらすごくいいんじゃないかって思っていて。で、書き始めた感じではあるんですけど、コンセプトの歌詞が入ったことで、大きい曲になったなっていうのは感じていますね」
――その曲に、シドが大事にしてきたであろう言葉「いちばん好きな場所」というタイトルがついたことに関してはいかがでしたか?
ゆうや 「とっても光栄ですし、曲を作ったあとに歌詞が乗って、そこに意味がついたりするじゃないですか。でも曲を作っている時も自分なりの意味があって、っていうのがある中で、曲のイメージと歌詞のイメージというのが遠くなかったんですよね。言葉の優しさというか、あの感じがすごく近かったので、マッチしたなっていう気はしています」
――そもそも、マオさん自身はこの「いちばん好きな場所」っていうタイトルはどれかの曲につけようと考えてはいたんですか?
マオ 「いや、全部閃きというか。最初に『いちばん好きな場所』のツアーにしようっていうのがあって、次にこの曲は[いちばん好きな場所]にしようってなって、だったらアルバムも『いちばん好きな場所』にした方が分かりやすいなって。俺が常に思っているのは、ファンの人が見た時にどう思うかってことなんですけど、すごいドキっとすると思うんですね。これまで2回やってきて、最近ファンになった子でもちょっと遡れば知っているような、シドってたまにライブハウスでやっていたんだよっていう、ファンの中ではいちばん有名なシドのツアー名を曲のタイトルにすることで、みんなの中では想像が膨らんで、発売までの期間もすごい楽しんでもらえるのかな、とか。どんなに考えてもいいことしかないなって思って、このタイトルにしました」
――なるほど。そのミニアルバム『いちばん好きな場所』の資料に“改めてファンとの絆をテーマにした”とあるのですが、このテーマにしても、今回のツアーにしても、結成10周年ではなくて、この結成15周年のタイミングにしたのは?
マオ 「10周年は10周年でいろんな企画を10個やったりしたんですけど、正直、そこで改めて感じたファンとの絆だったり、俺たち4人の絆が10周年以降のほうが強まったというか。表向きにはすごく華やかな10周年で楽しかったんですけど、やっていく中でいろんな苦悩だったり大変なことも色々あって。それを4人で乗り越えたあとの15周年なので、またちょっと思い入れが違いますね」
――2016年のバンドの小休止も関係しています?
マオ 「そうですね。あそこでちょっと休ませてもらったのは、バンドにとって大事な期間だったと思います。あとやっぱりファンのみんなをその時期に心配させたっていうのもあったと思うので、15周年であの時の待っていた気持ちが全て報われて欲しいなっていうのがありますね」
――ファンにとって休止中は不安でしかないですもんね。
マオ 「自分たちの中では決まっていることがあったり、だいぶ前に武道館での復活ライブが決まっていたりしていたので、言いたくてウズウズしていました(笑)。当時でいうとソロ活動をすごく嫌がる子もいたんですけど、それってソロ活動=ネガティブなイメージが何かでついちゃっていると思うんですよね。だけど、俺はそれを結果で見てみればいいって思っていて。結果的に、あの時はちょっと嫌だったけど、また早くソロをやってくれないかなって言ってくれている子もいっぱいいるので、やった意味はあるのかなって。しっかりやってこないと、ソロはもうやらないでよってなると思うし。だからそこは結局、こっちが勇気を出してやってみないと、何事も殻は破れないのかなっていう気はしました」
――ゆうやさんも止まっている間に何か感じたことはありましたか?
ゆうや 「めちゃくちゃありますよね。ずーっと走っていたから、初めての感覚に近いくらい、冷静にいろいろ見ることができたので、すごくいい期間でしたね。それこそ、マオくんのソロも観に行ったりしていたし。よくよく考えたら、マオくんを外から見るのはめちゃくちゃ久しぶりだなって。竿の人たち(Shinji、明希)はリハとかでステージから降りて見れますけど、俺はドラムなので降りられないじゃないですか。客席側から見たことがないんで、新鮮だなって。マオくんもシドとは違うアプローチをやろうっていう感じが出ていて、そんな一面もあるんだっていうところもあったので、すごくよかったです」
――それは曲作りに反映されていたりも?
ゆうや 「かなり反映されていますね。それこそ、今のマオくんの感じだったらこんな曲、歌いだしが合うなとか。今回のやつとかもけっこうそうなんです」
――そうなんですね! [いちばん好きな場所]は発売前にYouTube ver.が公開されていますが、曲への反応はどうでした?
マオ 「シドはアルバムの最後の曲とか、セットリストの最後の曲とかをバラードで締めることが多かったんですけど、そこだけは今回も王道パターンを守っていて。ただ、『今までのバラードとはちょっと違いますね』とか『いい意味で4人の気持ちがすごい伝わってきます』っていう意見もあって。それって細かいアレンジまで突き詰めていった結果だと思っているんですよ。今のシドは4人でどれだけやれるのかっていうことに挑戦するバンドになってきていて。より歌詞とかも伝わりやすいアレンジになっているし、いろんなことが噛み合って、お客さんにそういう風に伝わっているんだと思うと、すごい嬉しいですね」
――長年やってきた分、ストレートに、シンプルに伝えたいというものにつながったのでしょうか?
マオ 「シドってけっこう早い段階でいろんな音を入れだしたりして、ロックバンド、ヴィジュアル系っていう枠から来たわりには、いろんなジャンルにいったし、いろんな楽器が入っているし、いろんなアプローチをしてきたと思うので、今は徐々にロックバンドに戻っていっている感じがします。ロックバラードだったり、[reverb]だったらアメリカンロックみたいな感じだったり。入口でやってくるものをやってきてなかったので、なんかそっちに流れていっているイメージですかね。そのうち4人で革ジャン、リーゼントになるかもしれないです(笑)」
ゆうや 「嘘でしょ(笑)」
――めっちゃ見たいですけどね(笑)。
ゆうや 「それ、笑っちゃうでしょ(笑) で、バラードでしょ? そんなことあるかよ(笑)」
マオ 「それは分からないですけど(笑)」
――あはは(笑)。こうして結成15年経っても色々なものに挑戦しようとする原動力は何なのでしょう?
ゆうや 「なんだろうね? きっとメンバー自身が誰も満足しないんでしょうね。だから色々やりたがるというか、そんな感じなんじゃないでしょうか。だから、自分たちの曲は全部その時の旬ですもんね。それこそNOMADツアーで体感したすごく気持ちのいい感じ、ロックな感じを、今回の新しいのに3人が1人ずつ考えて入れて。あれって今の旬だし。だから、いきなりボサノヴァバンドになる可能性もある(笑)」
――そっちにいきますか(笑)。
ゆうや 「わかんないです。その時の旬なんで(笑)。ただただ、自分たちが信じたその時の旬をやるっていう」
マオ 「前に出している曲たちはボサノヴァアレンジをしたら面白いと思うけどね」
ゆうや 「ナシじゃないよね。だから、これも旬が来たらそれバージョンで色々やるかも(笑)」
マオ 「こういうところから本当にやろうってなってくることもあるので」
ゆうや 「本当にあるんですよ。こういうたまたまパって言ったやつで『そうか!』ってやっちゃうんですよね」
マオ 「もし、3年後くらいにやっているのを見かけたら、本当にやっているんだって思ってください(笑)」
――楽しみにしています(笑)。では、改めてこの作品を作り上げてどんなことを感じてもらいたいとかありますか?
マオ 「なんとなく、フルアルバムほど曲がないからミニアルバムにしましたっていうイメージもなくはないと思うんですけど、これは本当に真逆のパターンで。フルアルバムを作っても、まだ全然足りませんでしたっていうものなので。自分らの中でも相当自信のある5曲が入ったものが自然と出来上がった、溢れ出たものを5曲詰め込んだ形なので、今のシドっていう部分では必ずこれは聞いておいて欲しいなと。もちろん、毎回聞いておいて欲しいんですけど、これは本当に今のシドっていうものが詰まっているので、昔から応援してくれているファンのみんなもそうだし、最近知ったっていう子もここでシドを知ってよかったなって思ってもらえるアルバムになっていると思うので、ぜひいっぱい聞いて欲しいですね。あと、5曲だと10曲、12曲の時と違ってリピートの率が倍になるので、余計に曲に入りこんだり、歌詞にすごく注目してもらったりっていうことがフルアルバムよりできるのが利点だと思うので、何回も何回も聞いてツアーに来て欲しいなと思います」
ゆうや 「本当にまさにマオくんが言ったとおりだと思うんですけど、今回のアルバムはシングル曲をグッと集めているような感じで。今のシドのこれから先のツアーに向けての意気込みだったり、勢いが入っているミニアルバムになっているので、たくさん聞いてライブに来て欲しいなと思いますね」
――それではありきたりかもしれませんが、ミニアルバムのタイトルにちなんで、関西のいちばん好きな場所を教えてください。
マオ 「俺は京都ですね。京都はこの間、NOMADツアーの時かな。1人で遊ぶ日を作って、フラフラしたりしたんですけど、すごい楽しかったですね。お寺、神社を回りまくって、いろんなものを感じて。なかなかああいう街ってないし、すごく素敵で。その時に伏見稲荷(大社)の頂上まで行ったんですけど、その手前くらいに、“おせきさん”(おせき大神)っていう喉の神様がいて。その頃には喉は快調だったんですけど、ちょっと悩んでいた時期もあったので、何かの縁だし、治してもらってありがとうございますくらいの感じで行ってみようかなって行ったんですけど、それが山登りみたいですごい楽しくて。思っていたよりすごい高いところにあったんですけど、またあそこに行ってみたいっていうのはあります」
――伏見稲荷といえば海外からの観光客の方でいっぱいじゃなかったですか?
マオ 「それが、途中まではすごい行列なんですけど、みんな疲れて諦めちゃって。鳥居や有名な場所を撮りたくて来ているから、それより上になると全然人がいなくなってきて、俺1人の時とかもあったんですよ。1人で階段をひたすら登って修行僧みたいになっていて(笑)。『うわ~、1人やん。京都で1人ってあるか?』って思いました。そこまで行ったら、色んなお守りを売ったりしているおじいちゃんがいて、ここがどういうところなのかを聞いたりして、なかなか普段できない体験ができたので、すごい好きな場所になりました」
――ゆうやさんはどうでしょう?
ゆうや 「僕は大阪の堺市です」
――堺???
ゆうや 「夜のチヌ釣りのいいポイントがあって。それをキャッチして、過去2回くらい、大阪でライブがある時にライブ日より早めに大阪入りして行ったんですよ。夜から朝までチヌ釣りをやるじゃないですか。そしたら毎週土曜日なのか、漁港のところで“とれとれ市”っていうのが始まるんですよ。テント小屋みたいなところが市場みたいになっていて、そこで魚介類とかを買って七輪みたいなのを借りて外で食えるっていうのがあって、そこで食ってからホテルに帰るっていう。過去2回あります。それで堺市が好きです」
――そういうことだったんですね(笑)。個人的には、琵琶湖あたりが上がってくるのかなと思いましたけど、あそこはバス釣りですもんね。
ゆうや 「そうですね。どっちかっていうと海釣り派なので、堺市ですよね。すごい好きです」
――お2人の関西におけるいちばん好きな場所も聞けたので、最後にメッセージをお願いします。
ゆうや 「本当にいいアルバムができて、これからツアーを回るんですけど、ありがたいことにSOLD OUTということで。関西では4か所でやるんで、自分の地元だ~!みたいな感じで来てください(笑)」
マオ 「本当に素敵な今のシドが詰まったミニアルバムができて、ツアーも回るんですけど、いつもだったら大阪に行って、京都、神戸とかだったんですけど、今回は滋賀を入れた4か所も回ることができるので、ド地元でのライブを楽しんでもらいたいですね。そして素敵な思い出をいっぱい作って、また次の“いちばん好きな場所”で会えるようにお互い頑張っていきましょう!っていうようなツアーにしたいですね」
――ちなみにシドにとってのいちばん好きな場所というと?
マオ 「ライブハウスになりますね。人気がなかった時とかもずっと育ってきたのがライブハウスで、苦い経験もありつつ好きなので。いいことだけじゃない場所が思い出になって、今はいちばん好きな場所になっているっていう形ですね」
text by 金子裕希
(2018年9月 5日更新)
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