4年ぶりのフルアルバム『ODYSSEY』を引っさげて、
『HEESEY SOLO TOUR 2018 ~HEESEY A GO! GO!』が
各地で熱い盛り上がりを見せるHEESEYインタビュー!
THE YELLOW MONKEYのベーシストとして活躍し、2013年から完全ソロ名義での活動にも力を注いできたHEESEY。5月16日にリリースされた4年ぶりのフルアルバム『ODYSSEY』では作詞作曲はもちろん、幕開けからイッキに火をつける『HALE,HEARTLY,ROCK AND ROLL』からラストの『バカ一代』まで、ロックな人生賛歌ともういうべき全10曲を自らのボーカルで痛快に聴かせる。10代からロック道を邁進し続けて、55歳を迎えた現在。「2018年の僕を表した自画像のような作品」と言い切る注目の新作やライブについて気さくに語ってくれた。
――今回のツアーが大阪からというのは何か意図してたんですか?
「いや、たまたま初日になったんですけど。“『ODYSSEY』でっせぃ~”って感じでツアーが始まるって、見事な展開だなぁと(笑)。元々、いつかソロの作品か何かで、“ODYSSEY”っていう言葉は使いたかったんですよ。“ODYSSEY”と“HEESEY”って、韻を踏んでるなと思ってたんで(笑)」
――『ODYSSEY』って重々しさも感じるタイトルですけど、ロックをベースにしつつ、曲調の振り幅は広いですね。
「ベーシストなのでいろんなリズムパターンがあるほうが楽しいなって。その方がライブもバラエティに富んで、いろんな盛り上がり方ができてカラフルな感じになるかなと。僕はマニアックな音楽も好きですけど。元々キャッチーでポップなメロディが頭の中でずっと鳴っちゃうような音楽が好きなので。通常ベーシストのソロ作品って、もうちょっとジャジーとか、テクニカルな感じや枯れていった感じになりそうだけど、そういう思考ではないし。取っつきやすくてツアーで威力を発揮する、ライブ映えする曲を揃えました」
――1曲目『HALE,HEARTLY,ROCK AND ROLL』から熱く攻め込まれる流れがすごく快感です! 最後の『バカ一代』は、ロック賛歌であると同時に人生賛歌でもあるように感じました。
「1曲目と最後は自分流のど真ん中のロッケンロールな感じにしたくて。ちょうど、55歳になったので節目ということもあり、“これからもこれで行きまっせ!”って、ちょっと自分に言い聞かせてるところと、みんなに決意表明してるところがあって。『HALE, HEARTLY, ROCK AND ROLL』っていう1曲目のタイトルは僕が勝手に作った言葉ではあるんですけど、ロックンロールに対する自分の正直な気持ち(笑)。“老いてますます盛ん”っていう意味合いの英語にロッケンロールってつけたらカッコいいかなーって。イエローモンキーのメンバーの中で、僕は一番年上なんですけど、“老いてますます盛んです”!って(笑)、90年代から自虐的に冗談で言ってたんですけど、だんだん年取るにつれて本当に面白くなってきたんで」
――HEESEYさんは、KISSに出会ってロックンロールの洗礼を受けたのが13歳の時だそうで、それ以降ずっとロック道を突き進んでるんですよね。
「そうですね(笑)。僕15歳でベースを始めたので、今年でベーシスト40周年なんですよ。最初にソロユニットを始めたのが2003年なんで、それからちょうど15年。今年に限らずなのか、数字にまつわることが多くて。自分の誕生日が4月19日で名前が洋一だし、『ODYSSEY』という曲は4分19秒で、このアルバムはトータル41分なんです! 偶然(笑)」
――もともとアルバムのコンセプトみたいなものはあったんですか?
「曲を並べてラインナップしていくときは、自分の中の色んな色見せたいなっていうのは意識しました。しっとり系な『ローレライ』(M-4)とか『レクイエム』(M-8)、『HALE, HEARTLY, ROCK AND ROLL』も『バカ一代』も早い段階にできていて、1番最後に出来たのは『道は続くよ』(M-6)で、曲のアイデアは結構昔からあったんですけど、その当時はこういう感じの曲は自分に合わないなと思ってて。10年以上前ですけど。今回、曲が出そろった時に、この曲がプラスされると、サイコーのラインナップのアルバムになるなと。“人生まだまだ途中”とか“旅の続き”とか、そういうコンセプトやテーマっていうのもあったので…」
――なるほど。“旅”にまつわる曲もありますね。
「『J! T! T! T!』(M-2)は、JOURNEY、TOUR、TRIP、TRAVELの略。日本語で“旅”っていっても、外国語だとそんなにいっぱいあるんだと。旅って、よく人生に置き換えられるけど、俺55歳で“旅”というと、どのへんを歩いてるのかな?とか。まだ全然途中だろうし…みたいに考えてて」
――ジャケットもロック・トラベラーっぽい雰囲気ですよね。
「撮影したスタジオがビンテージやアンティークものを売ってるところだったんです。旅の途中で泊まったホテルみたいなイメージで撮りましょうってなって。僕、古着とか大好きだし楽器もわりとビンテージを使うので、撮影の小道具は私物を持って行ったんです。タイトルはダジャレで(笑)、“『ヒーセカンド(HEE-2nd)』でいきたいんだよ”って言ってたんですけど、“このジャケットなんで、もっとカッコいい方向で”って言われて。パッと出てきたのが『ODYSSEY』なんです。『ODYSSEY』には“長い冒険”っていう意味もあるし、それまで考えてたことが全部繋がったなと」
――個人的に『POLKKA NO.5』(M-5)が気になったんですけど。この曲のアイデアはどこから?
「自分の中で、好きな欧米のロックにワールドミュージックをミックスするのがすごく楽しくて。前作ではレゲエとかやってたんですけど。今回はポルカのリズムが面白くて、これはライブで盛り上がるぞと。歌詞書く時も、ヨーロッパの寒い国のボロっちいロッククラブで、夜な夜な盛り上がってる設定で、色んな人を登場させたかったんです。みんなで集まってバーっとお酒でも飲んで、ガンガン盛り上がってる時の音楽がポルカだぜ!みたいな。タイトルもチェコのスペル= POLKKAにして、ヨーロッパっぽさを出してみました」
――『Instagram Sam』(M-7)は、タイトルだけ見ると、T-レックスの『Telegram Sam』を思い出しますが、セックス・ピストルズみたいなパンクっぽさも入ってますよね。
「そうですね。もちろん、T-レックスへのオマージュもありつつ、皮肉っぽい歌詞だから、テンポも速くしてパンキッシュにしたら面白いだろうなと。今のSNSに関する“あるある”なワードを沢山使っていて、思いっきり悪口も言ってるんですけど、僕もインスタグラムやツイッターもやってるから、全部僕のことなんで、みたいな(笑)」
――『レクイエム』は亡き人を思うような歌詞ですが?
「やっぱり、年齢を重ねていくと、尊敬してたり影響受けてた方が亡くなって逝くことも多いですし。身内やバンド仲間、年下でも、去っていく人に歌いたいっていう衝動があって。特定の誰かにはしてないですけど。これは絶対に歌っておきたかったですね。ここにも旅感があるんですけど、旅を終わらせちゃう人なのか、違う旅に出る人なのか。僕はまだ旅の途中だけど、長い人生の中で、去っていく人に向けて、また会おうみたいな気持ちを歌った曲ですね。歌詞のテーマ的にも「旅=人生」としながらも鎮魂歌があったり風刺があったり、全体的にはいろんなバリエーションがあって、うまくタイトルの『ODYSSEY』に結実してるかなと」
――今作『ODYSSEY』は、HEESEYさんにとって、どんな一枚になったと思いますか?
「2018年の僕を表した自画像のような作品になりましたね。イエローモンキーが再結成したことで、すごく得たものがあって。向こうは母体としてチームで結束して、ソロは好き勝手やろうと。自分のやりたいことを思いっきり追求できました。でも、次にソロ作を出すのは還暦かな(笑)。自分の意思を貫いて、バシッと結実するものでありたいので。思うがままにできるタイミングでやりたいなと思ってます。また次に向けて曲をストックして行って。自分流のワールドミュージックの続きもやりたいし。世界中の気になる音楽と自分の好きなロックを合体させるっていうのも興味ありますね。今度は、タンゴとかマンボとかにチャレンジしてみようかなと(笑)」
――ツアーに関してはどのような思いが?
「自分が観に行くライブもお祭り騒ぎみたいなのが好きなので。やっぱり、どれだけ盛り上がれるか、歌えるか、踊れるか、ライブはそれが重要ですね。観に来てくださる方にもガンガン歌ってほしいし、踊ってほしい。もちろんじっくり聴いてもらう場面もあって、いろんなバリエーションで楽しんでほしい。アルバムもライブ映えする曲が多いので。今回のツアーは以前やったことがある会場ばっかりなんですよね。最後の渋谷 la. mamaはイエローモンキーのホームグラウンドですしね。各会場で、ただいま~、帰ってきたよ~って言えるような雰囲気が倍増されるかなと」
――京都のMOJOは、6月9日で“ロックの日”ですね。
「そう、ここでも数字のマジックで(笑)」
――最後に、あえてお聞きします。HEESEYさんにとってロックとは?
「ロックはその人の生きざま、作った人やパフォーマンスする人を鏡のように映し出すような音楽なんじゃないかな。そもそも音楽ってそういうもんなんですけど、特に生きざまや思いがダイレクトに出る音楽がロックなんじゃないかな」
――違う自分を演じてるんじゃなくて、自分そのものが出てしまうと?
「そうだと思います。時には演じるところもあるでしょうけど、絶対そこに、その人自身が出やすいんじゃないですかね。僕の場合は、類は友を呼ぶじゃないですけど、ライブでも自分と似たような“愛すべきお調子者”が集まってくるんです(笑)。特に関西はそうですね。今回のツアーはそれが初日だったので、すごく良かったですね!」
text by エイミー野中
(2018年6月 1日更新)
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