今年バンド名を改名し、新しいスタートを切ったKing Gnu
音・ビジュアル共に圧倒的オリジナルセンスと完成度を誇る彼らが
新作『Tokyo Rendez-Vous』や
12/7(木)に行われる『not forget pleasure 7』について語る!
ライブハウス・CLAPPERとイベンター・夢番地がプッシュする注目アーティストを迎え開催するイベント『not forget pleasure』。これまで、ぴあ関西版WEBではこの人気イベントの主催者そして出演者にインタビューを重ねてきた。そこで今回も12月7日(木)に行われる第7回目にオープニングアクトとして登場するKing Gnuにインタビュー! その前身バンドであるSrv.Vinciとして『SXSW』出演を果たしUSツアーも成功させ、さらにKing Gnuとしても今年の『FUJI ROCK FESTIVAL』を盛り上げた実力を持つ彼らは、10月25日に1st アルバム『Tokyo Rendez-Vous』をリリースしたばかり。今後ますますその名が広く知られることになるであろうKing Gnuの4人が、今、飾ることなくトークを繰り広げる!
――皆さんは、4月にSrv.VinciからKing Gnuに改名されたんですね。
常田(g&vo)「ずっと名前は変えようと思っていたんです。それで、(自身を中心とした固定メンバーのいないSrv.Vinciに)メンバーが入りだし、固定されてきた時点でいいきっかけかなと。で、『Tokyo Rendez-Vous』という曲(1stアルバムリード曲)ができて方向性が決まって、よしこれは変えよう!って…」
――ちなみに、なぜKing Gnuに?
常田「何個か案を出して決めたんですけど。ま、群れがどんどん増えて大きくなる感じが、ロックバンド的かなと。だから(バンドも)大きくしよう!ってところ…前はもっと個人的だったのが、もっと開いた…という名前ですね」
――今の話だと改名前からアルバム『Tokyo Rendez-Vous』の制作は始まっていたんですね。
常田「そうですね。ま、改名は俺が急に言い出したことではあるんですけど、ま、このアルバムがこのメンバーになってからの一枚目…そういう意味合いでは作ってましたね」
――今作には、一つ前の作品『トーキョー・カオティック』の曲も収録されていますね。
常田「はい。新曲『Tokyo Rendez-Vous』をベースに、アルバムを組み立てているので、それに合わせるために再録したり…」
勢喜(ds&sampler)「音量のバランスとかを見つめ直したりして、『Tokyo Rendez-Vous』の雰囲気に合わせてますね」
――そんなリード曲『Tokyo Rendez-Vous』はストリート感が強いですね。
常田「ま、ブラックミュージックがみんな好きだから、そのルーツに近い感じをストレートに出す…ビートをもっと効かせるというかですね」
――その方向性に至った理由は?
常田「俺の声がベースになったかもしんないですね。(今回はメインボーカルを担当しているが)『トーキョー・カオティック』では、俺がほぼほぼ歌ってなかったんです。俺の声をガツンと出すのは、ブラックミュージックのテイストの方が合ってるから…。それと、単純に自分の好みでもある」
――前作では歌ってなかったんですね。
常田「やっぱりキレイな旋律にあまり俺の声が合わないっていう…そのジレンマみたいなのはこれで解消したというか。以前はきれいな旋律のものを自分でやろうとしてたけど、なんかあまり思うようにいかんなと…。それで(井口)理が入って歌ってくれてっていう感じ。それが1つ前の作品です」
――前作『トーキョー・カオティック』と方向性を変えつつ、その曲も収録と…。
新井(b)「『トーキョー・カオティック』は、のちのちフルアルバムに入れようね!っていうのがあって。Srv.Vinci時代の方向性とKing Gnuの方向性とすり合わせた感じです。ま、でも俺的には方向性は変わったとは思ってなくて…。え、思ってる(笑)?」
勢喜「俺は…ちょっとある(笑)」
常田「ちょっとあるよね」
新井「あ、ほんと(笑)」
井口(vo&key)「ま、時間が経つに連れてちょっと変えたいなと思う部分も出てきて。アレンジの方向とか、こっちの方がいいんじゃないか?っていうのがメンバー内にはあったんです。で、今回入れるってなったら、変えよっかって」
新井「そうだね」
常田「ま、こっちの方がみんな好きだからっていう…」
勢喜「好きなことができてないわけではないけど、もっとどうにかなるだろう!みたいな」
――突き詰めたんですね。
常田「そうですね。より楽しめるように…と」
――さてそんなアルバムですが、他にはない“独特の夜感”を感じました。
勢喜「でも、Suchmosとかも“夜感”じゃない?」
常田「Suchmosは海…“湘南感”」
――例えば他に今ならDATSさんとか“夜”を感じさせる人たちもいますが、それとも違う感じ。
井口「ま、DATSが原宿だったら、俺らは新宿じゃないでしょうか」
新井「…全然伝わらなくない(笑)?」
常田「板橋が偉そうに(笑)」
新井「それは俺も含まれるから(笑)。ここ(井口と荒井)はルームシェアしてるんで…」
勢喜「いや、住んでる所じゃなくて、音楽の話(笑)」
――原宿と新宿(笑)。でも皆さんの曲には色っぽさもありますよね。そういうのはどこから?
常田「あ~。割と井上陽水とか山下達郎とか、あの世代のあの感じは好きかもしれないですね。色気あるじゃないですか?」
勢喜「日本の古き良きポップス」
常田「昭和歌謡というか…。あと玉置浩二とか」
――でも、年齢的にそこはリアルタイムじゃないですよね。
常田「あんまり時代でモノを見ないから。YouTubeもあるし。あまり世代の差とかは感じてないですね。でも逆に今の音楽に圧倒的にないから惹かれるっていうのはあるかもしれない。あと、さっき例に上がったDATSと違うところを言うのなら、俺らはJ-POP感を排除しようとしてないというか、J-POPをやろうとしているっていうのが音楽的な違いですね。特に俺とか理とか、好み的にそう(J-POPが好き)じゃないかな。(勢喜)遊もそうか」
勢喜「歌える曲みたいな方がいいなって、バンドやるうえで。ま、バンドは必ずしも歌えなくてもいいとは思うけど」
――確かにアルバムの曲はしっかり歌詞も聴こえます。ただ、勝手にもっとアンダーグラウンドなものが好きな人たちなのかと思っていました。
常田「全然サブカルとか好きじゃないですね(笑)」
――うがった見方をしていたかも…。すみません。
勢喜「でも、ま、そう見られやすいかもしれないですね」
常田「いろんなジャンルにいろんなストロングポイントがあると思うんですけど、そういうのを混ぜちゃってるから、そう感じるのかもしれないですね。特定のジャンルじゃないストロングポイントを持って来ているから、なんか…」
勢喜「ごった煮の感じとか」
常田「どストレートではない」
――それはともすると難解になりがちで、そうならないようにするには、いろんなものを混ぜる塩梅が難しいですよね。
常田「うん。その塩梅が結構、絶妙なバンドだとは思います」
――はい。『Tokyo Rendez-Vous』、絶妙でした。その絶妙なバランスをどうやって取っているんですか?
常田「それは…センスとしか言えないですけど(笑)。ま、それこそ井上陽水の要素もあれば、ヒップホップの要素もあるっていう、それぞれの強さを集めてる感じですね」
勢喜「いいとこ取り」
常田「このメンバー編成を組む段階で、各々ストロングポイントが違うメンバーが集まってるから、例えば(新井)和輝はブラックミュージック的なアプローチが一番しっかりしてるし、遊はロック的な華があるしっていう…。だから同じ趣味の同じ方向のヤツが集まったって感じではないですね」
――では、曲によってメンバーに委ねる部分が大きかったりしますか?
常田「結構そうですね。俺がデモ作って…そのデモの作る量もとかだけど…和輝に任せた方がいいなっていうのは和輝に“全投げ”します。基本、“全投げ”が多いかな。(最終形が)見えてる曲は(自分が)提案するくらい」
新井「(投げられて)で、考えて来て、それをすり合わせて(常田)大希の思惑と違ったらそれに寄せてやってみて“もうちょっとこれはこうなんじゃない?”って…。そういう作業は結構長い時間しますね」
――なるほど。あと、詞の話になるかもと思うのですが、そこには“頑張って生きよう”的な応援ソングのような要素は当然なく…。ただ最近は“みんなを元気にしたい!”というのをモチベーションにしているミュージシャンも少なくないので、King Gnuさんのモチベーションの在りかを知りたいなと…。
常田「そういうの(元気にしたい!)はまったくないです(笑)。ま、サウンド至上主義が集まっているってことかなとは思うけど、それだけじゃいけないなって…俺はね。だから歌詞とかもやっぱ大事だなって思う。…とは、いうものの別に伝えたいことは特にない(笑)。でも言葉の言い回しとかチョイスはね、おしゃれにしたいなって。それこそ井上陽水とかスゲーかっこいい。何気ないことをセンス良く言葉にしてる。ただそれだけ…それだけでいいかなって…と思っているものの、今、別に売れてないから、それじゃいけないのかもしれない(笑)」
――メッセージ性のあることも書かなきゃいけないけど、そうもしたくないという…?
常田「ま、今んとこ、そういう歌詞を書こうと思ってないのでそういうジレンマはないけど(笑)、これで売れずに10年いったらね…ちょっと考えるよね?」
井口「“生きろ!”って(笑)?」
新井「大希が“生きろ!”って言い出したら、いよいよ売りにかかったっていう(笑)」
勢喜「身を削り出した(笑)」
常田「“俺は生きたい!”って(笑)」
勢喜「お前が生きたいんじゃん(笑)」
常田「ま、たぶんこれからもそれはない(笑)」
――ですよね(笑)。ただ、最初にヌーの群れのように大きくなって、もっと開けた名前に…という話があったので、そういうメッセージ性というような、聴く人に共感されるような部分も気になるのかな?…と。
常田「そうね。でもそういう意味では、海外のバンドでも別に『We Are The World』ばっかじゃないというか。それこそギターリフでも合唱が起こっちゃう…くだらない歌詞でもそうなるポップさがいいんじゃないかなと。ま、共有する場を作りたい、共鳴し合いたいっていうのが前提でこの名前を付けているので、基本的には少しでもたくさんの人に見てはほしいですけどね。共有できる…大合唱が起こるバンドにはなりたいです。そういう意味のKing Gnuです」
――さて、最後に間もなく出演される『not forget pleasure 7』について…。ちなみにこれまで大阪でのライブはどんな感じですか?
常田「大阪は、結構前からちょこちょこ呼ばれたりしていて…。若い学生のイベントとかね」
新井「3年ぐらい前だね」
常田「そういう縁がある」
新井「すごくいい人が多いよね、大阪」
常田「好いてくれる人が多いよね」
新井「お客さんも温かいし」
常田「うん…素直でいい子…かわいい子(笑)」
全員「(笑)」
――標語のよう(笑)。
常田「…他はないの(苦笑)?」
勢喜「あ、CLAPPERでは、前もやったね」
新井「スゲーいいライブだった!」
――そうなんですね。
井口「いい感じでしたね。あ…大阪は“え~な~”みたいなのがほしいんですよね、声援。俺の性癖だけど、“ほんま、え~で~”って言ってほしい(笑)。うれしいよね?」
常田「うん、うれしい」
井口「“頑張ってや~”とか、女の子が…」
――女子限定(笑)。
井口「そうですね。男だったら“うるせ~”とか言っちゃうかも(笑)」
――あと今回は、あらかじめ決められた恋人たちへさんとの競演です。
勢喜「俺らは胸を借りるつもりで…」
常田「(あらかじめ決められた恋人たちへは)人気、あるしね」
井口「ありがたいよね」
勢喜「個人的にはGOTOさん(ds)と仲良くしたいです。DALLJUB STEP CLUBっていうバンドもやってて、かっこいいなと思ってたんです」
常田「まずは、聴けるのが楽しみだね!」
新井「昔、対バンしたよね?」
井口「(新宿)ロフトでやってるね」
新井「でもそん時、俺ら“怒りのステージ”だったからあまり記憶が…」
勢喜「俺、あの日を境に怒ってないわ。すげー反省してる」
――いったい何が?
新井「トラブルが多くて…。(勢喜は)“怒りのドラマー”だった(笑)」
井口「(映画タイトルの)ランボーみたい(笑)」
新井「そんななか僕ら2人(新井・井口)が懸命に頑張るっていう…そういう図式のライブが昔は多かったです(笑)」
常田「確かに最近怒ってないもんね。ほんと、そういうのがなくなって良かった(笑)」
勢喜「もう2度としないと心に誓った(笑)」
――今、バンドの状態が良いってことですかね? では『not forget pleasure 7』は…?
常田「そうですね、どんどん良くなってます。『not forget pleasure 7』がいいライブになるのは間違いないです!」
text by 服田昌子
(2017年11月17日更新)
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