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“ミュージシャン・加藤和樹”としての魅力が凝縮!
“ライブありき”で作ったミニアルバム『SPICY BOX』
リリースインタビュー

ミュージカル、ストレートプレイ、声優など多彩な活躍を見せる加藤和樹。ミュージシャンとしても活躍し、2017年3月にはデビュー10周年メモリアルイヤーを締めくくる2daysライブを東京・新宿BLAZEで成功させ、6月には東名阪Zeppを含むライブツアーを完遂。そして10月8日にミニアルバム『SPICY BOX』をリリースした。2016年は四季を通じて女性目線で描いたシングル“恋の処方箋シリーズ”を展開した加藤。切ないバラードやみずみずしいポップスでつづられた楽曲とは打って変わって、『SPICY BOX』はギターサウンドを前面的に打ち出したロック色の濃い内容に。また、自ら作詞作曲を手掛けた楽曲も収録し、ここでもマルチな才能を発揮している。ライブでは、舞台作品で見せる顔とはまた異なる、 “天然”で気さくな一面でも魅了。その距離の近さでもファンを楽しませている。ライブとは加藤にとってどんな場所なのか、アルバム制作に併せて話を聞いた。

――ライブ感のあるアルバムができあがりましたね。聞くところによると、レコーディングの際もライブを意識されていたそうですね。

もちろんです。今回、本当にバンド色が強くて。ギターサウンドがメインの楽曲ばかりなので、「Myself」(M2)と「I'll be there」(M5)はライブでやっていたので、レコーディングでも全面的にライブを意識しながら歌いましたね。

――「Myself」と「I'll be there」はライブで先に披露されたんですか。

「I'll be there」はレコーディングする前に一度、アレンジ違いのものを10周年のファイナルでやっていたんです。その後に6月のZeppでリアレンジした「Myself」と「I'll be there」を歌いました。

――レコーディング後にライブでされてみて、感触はいかがでしたか?

感覚的にはもう自分の中に入っていますし、あとはお客さんをどう乗せていくかということと、お客さんがどういうノリで楽しんでくれるかなということは気になりました。やっぱり初めて聴く曲はみんな「聴きたい」という気持ちが強いので。ライブでもちゃんと聴いてくれているんだなという印象がありました。

――ライブでも早く聴きたいですね。

リリースイベントで歌わせていただくことがあるのですが、お客さからも「早くバンドで聴きたいです」という声も聞くので、僕自身も楽しみにしています。

――『SPICY BOX』のテーマは「原点回帰」ということですが、「原点回帰」を意識されたのは、10周年のファイナルを終えたからこそですか?

そうですね。そこを経てですね。去年1年は「処方箋シリーズ」でちひろさんとタッグを組んでリリースして、そういった新たな試みが今回、生きていると思うんです。「生きている」というのは、歌い方とか、心情を伝える部分、テクニカル的なことですが。最後に「to you」という楽曲が収録されていますが、バラードの時の感情の持っていき方とか。バラードを歌うことによって激しい楽曲も生きてくるという、そのバランスがすごくよくなったと思います。自分自身もそうですし、お客さんもその部分を待ってくれていたというのが大きいですね。

――ロック色の濃い楽曲はギターサウンドが目立ちます。1ファンとしてのギターサウンドの魅力を教えてください。

やっぱりテンションがグッと持ち上がるところですね。刻むところもそうだし、ソロで突き刺さるようなサウンドもそうですし、そこの部分で最も耳に瞬発的に届いてくるんですよね。レコーディングの時もそうだし、ライブでも自分でテンションを上げられるという、そこの力強さがやっぱりすごく強く出ています。あと、憧れですよね。実際に音楽を始めるとなった時、じゃあ、ギターが弾けるようになったらいいよねということでギターを買って。自分ではなかなかソロもうまく弾けないし、コードを弾くのでいっぱいいっぱいですけど、こんな演奏ができたらいいなとか、この音が弾けたらかっこいいよなとか思いますし、バンドで一緒にプレイしていても、自分も一緒にプレイしているかのようにその音に乗っかったりして、その一体感というか。「やっぱりギターはカッコいいな~」という、その気持ちは変わらないですね。

――ライブ中も隣で聞き惚れる瞬間はありますか?

ありますね、やっぱり。

――ギターサウンドもさることながら、ドラムやベースの音も耳に入ってきて。サウンド面でも加藤さんの意向が取り入れられているんですか?

ミックスの時とか、どこを聴かせるかとか、曲によって音のバランスを変えてみたりしましたね。お任せした部分では僕は歌う時はベースの音を一番聴くので、「ベースをもうちょっと聴きたいな」というオーダーとかして。どうしても埋もれがちになるところをもっと出したいとか、そういったことはお伝えしました。歌う時にリズムや音をベースで取るのは、例えば、ギターはいろんな動き方をするので、そこであんまり音を見失わないようにということで割とベースの音を上げてもらっているんです。最終的な微調整もやらせていただいて。歌を録る時もガッツリやらせてもらいました。

――そうなんですね。そして歌詞も、前3曲(「con・fu・sion~心の叫び~」「Myself」「Heart Beat」はそれぞれ作詞が違って。「Heart Beat」が加藤さんの作詞ですが、三者三様でありながら、何か一つまとまってますよね。

そうですね。結果にそうなったという感じですが、それぞれ疾走感の中にちゃんと心に刺さるメッセージがあるというのが、とても男くさくていいなと思いますね。

――作詞を手掛けた「Heart Beat」の歌詞は、ご自身より半歩先を行った内容とのことですね。

今の時代に思うことを自分なりの解釈で書いたのですが、自分の中にも突き動かされる衝動や鼓動というものがあって。ただ、それをなかなか実践できないこともあるけど、やっていかないといけない。仕事もそうだし。自分のやりたいことを形にしていく仕事だから。そういう、ものづくりにおいてもそうですね。普段生活している中でなかなかやれない人、言いたくても言えない人が方が多いと思うのですが、やり方を押し付けられたり、何かをやる前に「NO」と言われることが多くなっているので、そんな中でも自分の信念や鼓動を大事にしたい。自分のことを含めてのメッセージソングです。

――ご自身の詞に改めて鼓舞されることはありますか?

時間が経ってから歌う時とか、「この時の自分ってこう思っていたんだな」って思うことはありますね。この気持ちを忘れちゃいけないなっていつも感じます。

――「Heart Beat」は詞を書かれてから曲をつけられたんですか?

曲があっての詞ですね。自分で作るときは同時進行で作ったりもするんですけど、僕はいつも曲が先です。

――曲を聴かれた上でのイメージもあって、半歩先へという意識が沸き上がってこられたんですか?

聴いたとき、疾走感があって、さわやかな感じで。でもさわやかになりすぎない言葉選びを心掛けました。世の中の風潮とか、人の生き方、悩みも表現したいなという気持ちがあったので。ただ、そういう言葉を並び連ねるのではなく、「今の状況も分かるよ。でも、だからこそ、踏み出してみようよ」という、そういう流れは自分でも作ったつもりです。

――アーティスト活動、役者、歌手、声優と活動される中で、作詞作曲という表現は加藤さんにとってどんなものですか?

「自分」ですよね。もちろんそれが、たとえば、「I'll be there」も「to you」もそうですけど、詞は自分が演じた作品に影響を受けたというのもあるのですが、それもやっぱり自分の中から出てくるものなので、嘘偽りないものだし、その時感じた自分、その時の自分ですよね。今まで自分が生きた証が積み重なっています。

――「I'll be there」の詞を読んだとき、すぐにミュージカル『フランケンシュタイン』で演じられたアンリ(怪物)かなと思って。詞だけを読むとアンリのイメージが沸くのですが、曲がアンリのイメージとは違って。曲はどういうふうに作られたのか気になりました。

最初のオーダーでちょっとマイナー調のロックが欲しいと言われて、自分で先に曲を作っていたんです。マイナーでありつつ、ちょっと切なさもあるとなったとき、ちょうどアンリを演じていたので、その世界観はどうだろうかと思って乗っけてみたら意外と良かったんです。曲を先に作っていたので、どういう物語や詞の世界が合うのかなといろいろ悩んでいた中でのチョイスだったんですけど、結構すらすらと書けましたね。

――そういう経緯だったんですね。「to you」の方は、正直なところ最初は何かに対してのアンサーソングだと思って、処方箋シリーズのアンサーソングだと読み違えていたんです。その後、『レディ・ベス』で演じられたロビン・ブレイクがベスを思った気持ちだと知って、ああ、すごく分かると納得しました。

「to you」は結果的にそうなったんです。蓋を開けてみたら「あれ?これってロビンじゃない?」って。当初はハッピーエンドの曲にしたかったんです。でも書いてるうちに何か違うな、何か違うなって。こっちの方が合うなってできあがったものを見たら、「あれ、これロビンじゃん」って自分で突っ込むみたいな(笑)。あの時はそういうモードに入っていたんですよね。だからさっきおっしゃった「処方箋シリーズに対してのアンサーソングかもしれない」というのは別に間違っていないんですよ。自分もそのつもりでは書いてなかったし、聴く人によってはいろんな聴こえ方があっていい楽曲だと思うんです。遠くから見守ることとか、相手への感謝の気持ちとか、聴いてくれた方たちが自分の胸の中で照らし合わせる部分もあるかもしれないし。それが僕はロビンだったというだけでなんです。

――役柄が詞に影響を及ぼすことは珍しいそうで、『フランケンシュタイン』のアンリ役も、『レディ・ベス』のロビン役も、ご自身の中に強烈に沁みついているんでしょうね。

それはそうだと思います。だからこそ出てきたものだと思います。『フランケンシュタイン』はもう、自分でもびっくりするぐらい、今までやった作品の中で感じたことがないくらいずーんと来て。ハードな役だったので肉体的にもそうでしたし、なかなか…。あんなに役が抜けないことはなかなかないんですよ。でもそれぐらい、魂を込めて演じるとはこういうことなんだなって思ったんですよ。それまでの作品が手を抜いてやっているわけではないのですが、それだけ入り込まないと演じてられなかったですね。

――『フランケンシュタイン』に出演されて、そういうご経験をされて以降、表現することに変化はありましたか?

どうなんでしょうね。それって自分ではあんまり分からなくて。やることは今までどおり、役に向き合って全力でやるだけで。「芝居がうまくなったな」とか、自分では思わないですよね…。歌に関しては、トレーニングをしてるから、この音が出るようになったとかすごく明確に分かるのですが、芝居は役や作品によってがらっと変わってくるから、そこは自分では気づけないですね。人に言われて初めてそうなんだって思うことがたくさんあります。

――歌でもお芝居でも「声を出す」ということに対して意識していることはありますか?

普段はあんまり声を張ってしゃべらないのですが、歌もお芝居も、伝えたいものがあるから、そこに声に乗るという表現方法じゃないですか。多分、日常で生活している中でも「絶対これだけは聞いてほしい」とか、「これだけは言い逃しちゃいけない」というワードを立てて、そこに何かを込めるんですよね。「言霊」という言葉もそうですけど、そこに何か思いがあるから、発する言葉にも力が込められるし、人にも届くと思うんです。その力は自分が絶対的に感じていることですし、自分が音楽を始めたのも、そういう音楽の力に突き動かされたからであって。言葉に込める力を信じたいですし、それを届けていきたいというのもありますね。

――ライブだとダイレクトに伝わりますよね。

そうですね。でも、それは僕自身ももらうからなんです。お客さんの何気ない「ありがとう」とか、「おかえり」とか、「会いたかった」とか、「好き」とか、そこにちゃんと気持ちがあるんですよね、みんな。そんな気持ちをたくさんもらっているからこそ、自分は何で返せるのだろうと思った時、歌うことでしか自分は返せないと思うんです。

――ライブを拝見していて思うのですが、ライブでは何となくご自身をリセットされているように見えるんです。ライブという場所があるから、舞台もできるんじゃないかなという印象があります。ライブは加藤さんにとってのホーム、居場所だと。

それはありますね。自分の居場所だと思っているし、よく言うことなのですが、お客さんも含めてすべてを発散させる場所です。お芝居はどうしても溜まっていくんですよね。演じながらアウトプットしているようで、実は役の気持ちだったり、ミュージカルで歌う時も役としての表現をしているんですね。こういう言い方は語弊があるかもしれませんが、お芝居では自分の歌いたいようには歌えないんです。だからすごく溜まるんですよね。ライブは、そういう溜まったものを歌の力に乗せて、自分で発散できるし、だからこそより自分の歌で伝えたい思いが出てくるんです。お客さんにとってもそういう場所であってほしいし、自分たちを繋ぐかけがえのない場所がライブです。

――なるほど。では、2018年の抱負をお聞きして最後にしたいと思います。

そうですね。頑張ることってすごく大事なことですが、頑張りすぎるのも良くないなって思うわけです。無理は絶対的に良くないですし、でも時には無理をしなきゃいけないこともある。来年は、その境を自分で見極めて、頑張りすぎない程度に頑張ろうと思います。そうすることでより力が抜けるような気がするんですよね。そしたら視野も広がると思いますし。力を入れすぎるとどうしても視界も狭くなるし…。

――また今とは違う余裕が出てきそうですね。

はい。ニュートラルとまではいかないですけど、それくらいの脱力も必要かなと思うので、そこを自分で意識してやっていこうかなと思います。僕はすべての事柄において、特に初めの一歩をすごく力んだりするので、来年はそこもちょっと意識してやっていこうかなと思います。


取材・文/岩本和子




(2017年11月29日更新)


Check

●Release

MINI ALBUM
初回限定盤
TECI-1558 ¥2,778+税 ミニアルバム+DVD
通常盤
TECI-1559 ¥1,852+税 ミニアルバム
発売中

『SPICYBOX』

<収録曲>
01.con・fu・sion~心の叫び~
02.Myself
03.Heart Beat
04.君はFragile
05.I'll be there
06.to you

●Event

加藤和樹「SPICY BOX」発売記念 スペシャルイベント

▼12月3日(日)①13:00~/②15:30~(CD販売 10:00~予定)
滋賀・ピエリ守山 1F ピエリコート
(滋賀県守山市今浜町2620−5)
ミニライブ & 握手会

※ご参加には特典券が必要となります。
※観覧無料
詳細「http://www.teichiku.co.jp/artist/kato-kazuki/」

ミュージカル「レディ・ベス」

発売中 Pコード:458-858

▼11月28日(火)~12月10日(日)
梅田芸術劇場メインホール
S席-13500円
A席-9000円
B席-5000円
※全席指定・税込
[脚本/歌詞]ミヒャエル・クンツェ
[音楽/編曲]シルヴェスター・リーヴァイ
[演出/訳詞/修辞]小池修一郎
[出演]
レディ・ベス:花總まり/平野綾(Wキャスト)
ロビン・ブレイク:山崎育三郎/加藤和樹(Wキャスト)
メアリー・チューダー:未来優希/吉沢梨絵(Wキャスト)
フェリペ:平方元基/古川雄大(Wキャスト)
アン・ブーリン:和音美桜
シモン・ルナール:吉野圭吾
ガーディナー:石川禅
キャット・アシュリー:涼風真世
ロジャー・アスカム:山口祐一郎

※未就学児童は入場不可。

チケット情報はこちら

お見送りイベント開催!

ロビン&3人組が大阪でお見送り!
▼12月5日(火)18:00公演
加藤和樹・古川雄大・加藤潤一・寺元健一郎・石川新太
▼12月7日(木)13:00公演
加藤和樹・平方元基・加藤潤一・寺元健一郎・石川新太

★該当回の終演後、出演者がお見送りをする、東京公演でも大好評だったイベントが大阪でも実施決定!

ミュージカル『マタ・ハリ』

発売中 Pコード:481-179

▼2018年1月21日(日)~28日(日)
梅田芸術劇場メインホール
S席-13000円 A席-9000 B席-5000円
※全席指定・税込。
[脚本]アイヴァン・メンチェル
[作曲]フランク・ワイルドホーン
[歌詞]ジャック・マーフィー
[オリジナル編曲・オーケストレーション]ジェイソン・ホーランド
[訳詞・翻訳・演出]石丸さち子
[出演]
マタ・ハリ:柚希礼音
ラドゥー/アルマン:加藤和樹
ラドゥー:佐藤隆紀 (LE VELVETS)(Wキャスト)
アルマン:東 啓介(Wキャスト)
パンルヴェ:栗原英雄
アンナ:和音美桜
ヴォン・ビッシング:福井晶一

[問]梅田芸術劇場メインホール 06-6377-3800
※ラドゥー/アルマン役は加藤和樹が日替わりで出演。
※ピエール役 百名ヒロキは大阪公演出演なし。
※未就学児童の入場不可。

●Profile

かとうかずき●1984年10月7日生まれ、名古屋市出身。2005年ミュージカル『テニスの王子様』で脚光を浴び、2006年4月にミニアルバム『Rough Diamond」』でCDデビュー。2016年4月にアーティストデビュー10周年を迎え、1年かけて「Kazuki Kato 10thAnniversarySpecial LIVE"GIG"2016-2017」と称した企画を開催。同年7月には東京、名古屋、大阪で80曲強の全曲ライブツアー、10月には『Kk-STATION 2016』ツアーを、そして2017年3月には自信が作詞作曲した楽曲のみで構成したライブを開催するなど、音楽活動も精力的に展開している。ドラマ、映画のほか、舞台も八面六臂の活躍。2018年はミュージカル『マタ・ハリ』で幕を開け、『1789~バスティーユの恋人たち』『タイタニック』など代表作の再演が続々と決まっている。また、アニメ『カイトアンサ』(2017年.主演cv阿園魁斗)、『イケメン戦国~時をかけるが恋ははじまらない~』(2017年.cv伊達政宗)、『B-project*鼓動アンビシャス』(2016年.cv愛染健十)など声優としても引く手数多で、多ジャンルで強い存在感を示している。