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卓越したギタープレイとボーカルをもつ
シンガー・ソングライターRei
海外の大型フェスに出演するなど注目を
集め続けている彼女のルーツに迫るインタビュー

今回、ぴあ関西版WEB初登場となるRei。彼女のルーツはブルーズ。そう聞くと、条件反射で“渋い”と言ってしまいそうになるけれど、彼女がギターを演奏し歌う姿を目にしたら、その場にいる人は誰もが体を揺らしリズムに乗って踊り出すんじゃないだろうか。それほどReiの奏でるギターは軽やかで、英語も日本語も混在しながら音に乗った彼女の歌声は、表情豊かで色鮮やかだ。2015年にペトロールズの長岡亮介をプロデュースに迎えた1stミニアルバム『BLU』でデビュー。そこから数えて3枚目、3部作の最後を飾った昨年のアルバム『ORB』に続いて、7月5日(水)に4曲入りCD+MUSIC BOOKというユニークな形態の『CRY』を発売。こちらにはSOIL“PIMP”SESSIONSのみどりん(ds)や渡辺シュンスケ(Schroeder-Headz)をはじめ、Rei自身が共演を熱望していたプレイヤーが多数集結している。日本国内はもちろん、海外でも大型フェスに出演するなど注目を集め続けているReiに、ニューヨークで暮らした幼少期の頃の話や、帰国後に日本語で歌詞を書く上でぶつかった壁。ルーツから今に至る想いなどを語ってもらった。

――Reiさんがギターを始めたのは4歳の頃ですか。
 
「当時はニューヨークに住んでいて、たまたまテレビでギターを弾く女性を見て、“私もあのおもちゃが欲しい”と親におねだりしてギターを買ってもらいました。家の近くにあったクラシックギターの教室に通いながら、その頃幼稚園と小学校が一貫になった学校に通っていたので、そこではビッグバンドでマイルス・ディヴィスとかデューク・エリントンのジャズブルーズを弾いていました。クラシックは譜面通りに演奏する音楽ですが、ビッグバンドではアドリブでも演奏することをその時に初めて知って。クラシックとは全然違うところがすごく新鮮でした」
 
――学校やギター教室で、周りにも楽器を演奏する友達がたくさんいたんですね。
 
「そうですね。そのぐらいの年齢から楽器を始めるのは特に珍しいことではなかったし、アメリカには小学校低学年まで住んでいたんですが、楽器も弾くし、ポケモンカードが流行れば普段はみんなとポケモンカードで遊んだりもして(笑)。自分の中では、ギターを弾くことは、公園で遊んだりポケモンカードで遊ぶこととそんなに変わらないというか。なので、“将来は音楽を職業にするぞ”とか小難しく考えることもなく、子供心に“このままずっと、ギターを弾いて歌っていたいな”というふうに思っていました」
 
――日本に帰国してからも引き続きクラシックギターを?
 
「帰国後インターナショナルスクールに通いはじめて、しばらくはクラシックギターに専念してたんですが、同級生でドラムを叩いている子に誘われて、もう1人キーボードの子と3人でバンドを組んだんです。それをきっかけに、レッド・ツェッペリンやザ・フー、ジェームス・ブラウン、モンキーズからシンプル・プランまで、いろんな音楽を幅広く聴くようになってカバーもしました。ドラムの子のお父様がサウンドエンジニアをされていて、いろんな音楽を教えてもらいながらスタジオでプリプロダクションをしてデモCDをレコーディングしたこともありました」
 
――すごい! その頃すでに自分たちの作品をレコーディングしたんですね。
 
「いえいえ(笑)。作品と呼べるようなものではなかったのですが、レコーディングスタジオに入ってアレンジをみんなで考えたり、レコーディングの一連の流れを経験させてもらえたことは今の自分に活きているなぁと思います。その後、大阪や京都のライブハウスで演奏する活動をはじめました。学校では自分のオリジナルを作ってバンドで演奏して、学校外では大人達に混ざって憂歌団の島田和夫さん(ds)やウエスト・ロード・ブルース・バンドの皆さん、妹尾隆一郎さん(ブルースハープ)には特にお世話になりました。いろんなことを教えてもらい、時にはからかわれたりもして、酸いも甘いも知ることができました(笑)」
 
――周囲から冷やかされた時などに、“私が、ジャンッてギターを弾いて歌うことでみんなを黙らせてやる”みたいな気持ちもあったりしました?
 
「どうでしょう?(笑)。ただ、ステージでプロのミュージシャンの方達とセッションをする中で、“音楽ってコミュニケーションツールなんだな”ということを学んだんです。その日初めて会った人でも、“キーはEで”、“シャッフルで”とかそれだけを決めて一緒に演奏することもあったのですが、音楽があると先輩後輩も関係ないしキャリアも飛び越えられる魔法があるから、一緒に演奏をすることで話をする以上にその人のプレイからいろんな気持ちや思いが演奏を通して伝わってくる。お客さんに対しても同じですが、音楽って片道切符的な表現ツールではなくて、会話をしたりコミュニケーションするためのものでもあるんだなって、その時に発見しました」
 
――Reiさんをとらえたブルーズの魅力というのはそういうところなんでしょうか?
 
「そうですね。ブルーズというジャンルに関していえば、ロックやポップス、ジャズといろいろある中でも自由度が高い音楽だと思います。3コード、12小節という基本形があって、その枠組みがとてもシンプルなだけにミュージシャンの力量も試されるし、演奏するミュージシャンの人となりも如実に音に表れるような気がして。自分が音楽をやる上では、ロックとかポップスとか特定のジャンルにこだわる気持ちはなくて、ただ自分が演奏していて気持ちのいい音楽をやりたいと思っているんです。それって、突き詰めて考えていくと自分がブルーズから学んだイデオロギーで。定義や理論を細かく分析しながら音楽を学ぶ楽しさもあるけど、それが音楽の根源かというとそうではなくて。音楽を聴いて気持ちいい、聴けば体が動き出すとか、そういうプリミティブな反応や感覚こそが音楽の楽しみ方の根本であり、それさえあれば難しいことは必要ないんじゃないかなって」
 
――1stアルバム『BLU』はペトロールズの長岡亮介さんがプロデュースされていましたね。
 
「長岡さんはギタリストとしても尊敬しているのですが、プロデュースをお願いしたいと思った一番の決め手は、長岡さんの歌詞とメロディーの操り方にとても魅力を感じたからなんですね。例えば“愛”という言葉の“あ”と“い”にひとつずつ音程をあてるんじゃなく、一音程に対して“愛”と歌う。そういう日本語とメロディーのバランスが独特だなと感じていて。私自身、歌詞を書く上で日本語と英語の扱い方に悩んでいた時期でもあったので、インスピレーションとかアイディアの交換ができたらいいなと思ったところもあって」
 
――Reiさんの歌詞も英語と日本語がミックスされていて、それが聴いていてとても心地よいです。最初にReiさんが歌詞を書き始めたのはいつ頃でしたか?
 
「帰国して最初に3ピースのバンドを組んだ時に、カバーと一緒にオリジナル曲もやっていたので、その時に書き始めました。それ以前に4小節とか8小節ぐらいの曲を書いたこともあったんですが、3分間ぐらいのちゃんとした形の曲を初めて書いたのはそのバンドを組んだ時で、その頃はまだ歌詞はほぼ英語ばかりで。帰国してからしばらくの間は、ちゃんとした日本語が話せない時期があって。かといって英語が完璧かというとそうでもなくて、日本語も英語も中途半端だということが自分のコンプレックスでもありました。自分の感情を言語化できないというか、思っていることを居心地のいい形で表現するのがとても難しくて」
 
――最新アルバムの『ORB』に収録されていた『COCOA』の歌詞の、“おしくらまんじゅうの満員電車 桃の花が咲く窓の外に気づかない”のところは、狭く窮屈な世界にいながらも一瞬、広い世界へ跳んで行けるような気がして。同じく『Pay Day』の歌詞は海外の青春文学を読むようで、“君の隠れた意地悪なトコにも触れたい”とか何気ない一節にとても魅力を感じました。
 
「そう感じていただけてうれしいです。日本語の歌詞を書くことで悩んでいた時期に呉田軽穂さんや阿久悠さん、松本隆さんの歌詞に出会って、すごくのめり込んで読んでいたんです。その時に日本語の、特に歌の詞になっている日本語の美しさに気付かされました。それに、歌詞を書くということは、普通に会話をするのとは全然違う魅力があるなって。それからは歌詞を書くことが楽しく思えてきたんです。言葉の意味を重視することもあれば、特に意味はないけど音感だけで気持ちいい歌詞があってもいいし、同じワードを連呼している曲、たとえばニルヴァーナの『スメルズ・ライク・ティーン・スピリット』みたいに、“hello”を何回も繰り返しているだけなのにひとつずつの“hello”の意味が違って聴こえるものもあって。そうやって考えていくうちに“もっと日本語で歌いたい”と思うようになって、日本語で歌うためには日本で活動したいという気持ちが強くなりました。インターナショナルスクールに通っていたこともあって、周りの友人は海外の大学を目指している人も多かったし、自分もずっと海外で音楽活動をしたいと思っていたんですけど、日本語の歌詞の世界を自分が知ったことによって、日本で歌を歌いたいという気持ちが生まれてきました」
 
――1stをプロデュースされた長岡亮介さんとは、音楽のルーツ的なところでも通じ合うところが多かったのでは?
 
「長岡さんはカントリー、ブルーグラスがお好きで、2人とも古い音楽も大好きなところは近かったと思います。ただ、ペトロールズの音楽はとても新しいし、長岡さんがプロデュースなどで携わっている音楽からも、新しさとともに普遍的な音楽の力みたいなものを強く感じます」
 
――Reiさんのこれまでの3枚のアルバムも、細かく聴いていけば1曲1曲いろんなタイプの曲がありますが、どれも新しさもあってポップで気持ちよくて。乱暴な言い方かもしれませんが、ひとことで表すなら“ポップな音楽”ということになるのかなぁって。
 
「自分でも、そういうボーダーレスな音楽がいいなと思うんです。CDショップに行って好きなものを探す時の目安としてジャンルという線はあってもいいと思うんですけど音楽自体に色分けは必要ないと思っているから、自分自身も偏見も先入観もなく越境できたらいいなって」
 
――5年後、10年後にこういうことやってみたいという目標はありますか?
 
「いつか、シェアスタジアムでライブをやりたい。アメリカにいた頃に(シェアスタジアムへ)野球を観に行ったことはあるんですけど、1965年にあったビートルズのシェアスタジアムでのライブ映像を見るたびに“私もいつかここでやりたい”と思う。去年は海外で演奏させてもらう機会も多かったんですが、中には音響面で環境が整っていない場所もいくつかあったんです。そういう時に痛感したのが、音が悪くてもたとえギターを弾く指が動いていなかったとしても、伝わる時はちゃんと聴く人に伝わるんです。とてつもなく広い野球場でも、ライブハウスでも、その場所を満たすのは素晴らしいスピーカーでもとても高価な楽器でもなく、その人自身が内面に持っている力が会場の一番後ろにいる人のところまで音楽を届ける。そういうことなんだろうなぁって。自分もスタジアムを満たせるぐらい、広い会場の一番後ろにいる人にまで届くだけの人間力を持ちたいですし、そういう力のある音楽をやりたい。同時に、ライブハウスで指の動きまで見える距離で聴く人にも、心から喜んで楽しんでもらえる音楽を届けたいです」
 
――7月5日(水)にCDとMUSIC BOOKがセットになった『CRY』をリリースし、そちらを携えたツアーの大阪公演が7月16日(日)に梅田Shangri-laであります。どんなツアーになりそうですか?
 
「シングルをリリースするのは今回が初めてでその新曲を届けるツアーでもあるし、1st『BLU』(2015年)から『UNO』(2015年)、『ORB』(2016年)のアルバム3部作を終えて自分の中で新しい音楽の季節が始まるタイミングでもあるので、どんな景色をお客さんと共有できるのか自分でも楽しみです。関西は地元でもあるし、ほかの土地よりもお客さん達の反応がダイレクトで、いい演奏をした時は声を上げてくれてまるで一緒に演奏してるかのように聴いてくれるところがいいですよね。海外のノリに近いのかな。初めてライブを聴きに来てくれる人にも楽しんでもらえるよういい演奏をしますので、ぜひ遊びに来てください!」



(2017年6月15日更新)


Check

Release

音楽愛に溢れたMUSIC BOOKとCD
新作EPが発売!

EP
『CRY』
【CD+MUSIC BOOK】
7月5日(水)発売 2000円(税込)
Reiny/AWDR/LR2
DDCB-12403

<収録曲>
01. Tumblin’
02. MOSHI MOSHI
03. Tōfu Blues
04. Don’t Wanna Kill My Soul

Profile

レイ…’93年生まれ、兵庫県出身。ニューヨークで過ごした幼少期にギターに出会い、4歳でクラシックギターをはじめ5歳でブルーズに出会う。帰国後は、友人と組んだバンドでジャズやロック、ポップスなどジャンルを問わず幅広い音楽に親しみながら、ライブハウスで演奏を始める。’15年2月にペトロールズの長岡亮介プロデュースによる1stミニアルバム『BLU』発売。『FUJI ROCK FESTIVAL』や『RISING SUN ROCK FESTIVAL』などに出演し卓越したギタープレイが話題を呼ぶ。同年11月にセルフプロデュースによる2ndミニアルバム『UNO』リリース。’16年3月にはインドネシアのジャカルタで開催された『JAVA JAZZ Festival 2016』、テキサスで開催された『SXSW Music Festival 2016』に出演。同年9月にデビューからの3部作の最終章となるミニアルバム『ORB』を発売。7月5日にCD+MUSIC BOOKという形態で初のシングル『CRY』をリリース。MUSIC BOOKはRei自身がすべてのデザイン、編集を担当。収録曲の歌詞や楽譜、使用機材の記録や書き下ろしのアートワークに加え撮りおろし写真も収載した32ページの大作になっている。7月8日(土)にはアーケイド・ファイアやフェニックスらが出演し、フランスで3日間に渡って開催される音楽フェスティバル『Les Eurockeennes』に出演が決定。7月14日(金)渋谷WWWXを皮切りに東名阪ツアー『CRY BABY TOUR 2017』開催。7月16日(日)大阪Shangri-la、7月19日(水)名古屋CLUB UPSET。この夏は『FUJI ROCK FESTIVAL』『SUMMER SONIC』はじめ数々の音楽フェス、イベントへの出演も決定している。


Live

Pick Up!!

【大阪公演】

チケット発売中 Pコード:328-108
▼7月16日(日) 18:00
Shangri-La
オールスタンディング-3500円(ドリンク代別途要)
※小学生以上は有料、未就学児童は無料(大人1名につき子供1名まで同時入場可)。
[問]サウンドクリエーター
■06-6357-4400

【愛知公演】
チケット発売中 Pコード:328-738
▼7月19日(水) 19:30
池下CLUB UPSET
前売-3500円(別途ドリンク代必要)
[問]ジェイルハウス■052-936-6041

【東京公演】
チケット発売中 Pコード:329-122
▼7月14日(金) 19:30
WWW X
オールスタンディング-3500円(ドリンク代別途必要)
[問]ホットスタッフ・プロモーション
■03-5720-9999

チケット情報はこちら


Rei オフィシャルサイト