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「一緒にこのホールを楽しみながら、大事に育てていければ」
日本センチュリー交響楽団のシンフォニーの調べとともに
豊中市立文化芸術センターのグランドオープンを飾る!
谷村新司インタビュー

 今年10月のプレオープンを経て、いよいよ来年1月8日(日)にグランドオープンする豊中市立文化芸術センター。その日を皮切りに1年にわたり行われるオープニングシリーズの幕開けを飾るのが、谷村新司と日本センチュリー交響楽団の豪華コラボレーションによる1日限りのスペシャルライブ、『TANIMURA CLASSIC』だ。そこで、大阪府内の地産地消の木々が張り巡らされた美しいホールの門出について、街のホールでコンサートをする意義、オーケストラとの共演の醍醐味や当日の見どころなど、記念すべきグランドオープンに向けて、谷村新司にインタビューを敢行。同ホールの真新しいバックヤードで語ってくれた彼の言葉の1つ1つには、40年を超える音楽家としての経験とプライド、いまだ失われぬ音楽への愛とユーモア、そして何より、新しい出会いへの好奇心に満ちていた――。

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初めて豊中市立文化芸術センターで生の音を聴かれる人たちは
結構な衝撃と感動があるんじゃないかなぁと
 
 
――内覧会で弦楽カルテットが演奏しているところを実際に観られてどうでした?
 
「他にあまりないホールの造りで、幾何学的な模様の生木が音に繊細な影響を及ぼすのだろうなぁと思っていたんですけど、音が出た瞬間、バランスがすごくいいのでちょっと驚きましたね。あれだけ響いているのは特別な設計をされたのだろうなぁと。今日はカルテットでしたけど、何十人というメンバーで音を出すとそれが増幅されるので、かなりの迫力が出そうな感じがしました。これは他にない特徴を持ったいいホールになると思いますね」
 
――谷村さんはツアーで全国を廻られていますが、各地の街のホールでコンサートをする意義であったり、その際に意識していることはありますか?
 
「“旅をしながら歌を届ける”のが44年間続いてきた自分のルーティーンなので、コンサート数が多いときは旅が生活のメインになって、合間に自宅に戻るみたいな感じなんですけど(笑)、初めて訪れる街には1日前に入るようにして、その街を歩いて、街の匂いとか、歩いている人のスピードを感じるんです。東京とか大阪で暮らしていると、やっぱり歩くのが速いんですよ。そこで“あれ? 自分だけ何でこんなに急いでいるんだろう?”って気付くんですよね。そういう街それぞれのテンポ感があって、それを感じながら当日ステージに上がると、その地元と同じテンポ感で入っていける。トークのスピードもね。それは心掛けていますね」
 
――MCでも“昨日この辺をウロウロして…”とか話したり?
 
「そうそう! “え!? 商店街を歩いてはったんですか?”みたいに言われてね(笑)。もう普通にその辺にいるので(笑)」
 
――大きな街のコンサートに出向く楽しみももちろんありますが、“自分の街に来てくれた”という体験は、特に思い出深いものになるのかなと。
 
「自分の街に来てくれたということで、思い立って観に来てくださる方って結構多いんですよね。そういう方に限って“初めて生で聴きました”とか、“今まで想像していたものと全く違った”とか、そういう感想をくださることが多いので。特に多感な時期にそういう音に触れることは、実はすごく大事なことだと思いますね。初めて豊中市立文化芸術センターで生の音を聴かれる人たちは、結構な衝撃と感動があるんじゃないかなぁと」
 
――谷村さん自身、豊中に縁や思い出はあったりしますか?
 
「うちの舞台監督がホールから歩いてすぐのところに住んでいて、“気持ちはうちのホールですわ!”みたいなことを嬉しそうに言っていました(笑)。だから1月にやるときは、彼は起きてすぐにでもホールに入れますよ(笑)」

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オーケストラとやるときは、揺れながら、たゆたいながら
 
 
――今回のコンサートは日本センチュリー交響楽団との共演ですが、谷村さんは80年代後半から海外のオーケストラとのコラボレーションにも積極的に挑戦されていましたね。
 
「コンサートの究極の形って、例えばピアノ1本で歌うと言葉がバーッ!と突き刺さってくるようなアカペラと、たくさんの生の音に包まれるシンフォニーだと思うんです。オーケストラと共演し始めた頃は、“頑張らないと”という意識も強かったんですけど、1~2回とやっていくと、シンフォニーの音に身を委ねながら、心地よく乗っかって歌うぐらいの方が、アンサンブルがよくなることに気付いて。バンド編成のときは必ず縦のリズムを身体の中に入れながらやるんですけど、オーケストラとやるときは、揺れながら、たゆたいながら、みたいな、何だか楽な感じ(笑)」
 
――また普通のコンサートとは違う心地よさが。
 
「ありますね。やっている方がそうなので、聴いてくださる方も、今までとは違う心地よさがあると思います」
 
――そういう意味では、新しいホールで、通常のバンド編成とは異なる醍醐味のあるオーケストラとのコンサートとなると、その当日だけの特別な感動が生まれそうですね。
 
「もう間違いなくいい日になるだろうと、今日確信が持てました。あと、日本の交響楽団の方ってバリバリのクラシックな印象を持っていたら、コンサートが終わった瞬間に“実はアリスを聴いていました”とか、皆さんが言いに来るんですよ(笑)。“もうちょっとはよ言い~な!”みたいな感じで、今回も和気あいあいとやれるんじゃないかな(笑)」
 
――谷村さんの40年を超えるアーティスト活動の中で、谷村さんの音楽を聴いてポップスを志した方もいるでしょうし、クラシック畑の方も聴いているとなると、音楽人生にまた新たな彩りが生まれているようで嬉しいですね。
 
「そうですね。改めてジャンルで壁を作らない方がいいんだなと思いましたね。そこには“いい音楽”と“よくない音楽”しかない。だから、聴く人にとって“いい音楽”と思ってもらえるようなものでありたいと、ずっと思い続けていますね。海外のオーケストラともいろんな経験をしてきましたけど、ロックだとかフォークだとかクラシックだとか言っていても、一緒に音を奏でて歌った瞬間に、ジャンルなんか一瞬でふっ飛ぶんですよ。“気持ちいいね。今、すごくよかったね”とか、そういう感覚が全てなんです。“理由のない感動”みたいなものかな。鳥肌がダーッと立ってきたりとか、聴いてくださる方にそういう体験をしてもらえるとすごく嬉しいですね」

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全ての“初めて”を一緒に体験できるのはこの日しかない
 
 
――今回のコンサートで豊中市立文化芸術センターはグランドオープンとなるわけですが、谷村さんは新しいホールの幕開けを飾る経験も何度かされていますね。
 
「かつて加山雄三さんに、“谷村くんも年齢的にもキャリア的にもオープニングとエンディングの依頼が増え始めるよ”と言われたんですけど、まさにそんな感じになってきていて。ホールを閉じるときは、“ありがとう”の気持ちを客席の方と一緒にホールに向かって歌うんですけど、オープニングの場合は、ホールと一緒に客席に向かって歌うというか。オープニングをやらせてもらうときは全てが初めてなので、いろんな驚きとか感動を自分でも感じながらやれる。それはすごく幸せなことだと思います」
 
――いろんな磁場や想いを背負って、最初の音を鳴らすと。
 
「もちろん。特にこのホールは木が多いので、人の想いとか拍手の音を吸い込むんです。それが時を経て積み重なって、ホール独特の音が育っていく。これからこのホールが、どんな想いを吸い込んでいってくれるのか、すごく楽しみで。だから始まりは、“これから一緒に歩んで行きましょう”と、晴れ晴れとした気持ちでやれると思います」
 
――最後に、グランドオープンに向けて、コンサートを楽しみにしている方へメッセージをいただければ。
 
「ホールを作るということは“形を作る”だけではなくて、そこで音楽と出会う人たちの想いがどんどん膨らんでいく、“場所作り”でもあるんです。年を重ねるごとに思い出でいっぱいになっていく場所を作られたのはとても素敵だと思いますし、そのオープニングをやらせていただくにあたり、全ての“初めて”を一緒に体験できるのはこの日しかないんです。だから1回目というのはやっぱり特別で、その瞬間をぜひ皆さんと共有できればいいなと。一緒にこのホールを楽しみながら、大事に育てていければと思います」
 
 
Text by 奥“ボウイ”昌史
Photo by 福田静良



(2016年12月26日更新)


Check

Release

デビュー45周年に向け自ら選曲!
ソロとアリスのベストがリリース

Best Album
『谷村新司・ザ・ベスト
~陽はまた昇る~』
発売中 2484円
ユニバーサル
UPCY-7183
※ブックレット+ギターコード付

<収録曲>
01. 面影
02. 蜩
03. 海猫
04. 砂の道
05. 引き潮
06. この空の下
07. 煙草のけむり
08. 冬の嵐
09. 琥珀の夢
10. シェナンド -河に捧ぐ
11. 黒い鷲
12. ぬくもり
13. 喝采 -想い出のライト-
14. 真夜中のカーニバル
15. 陽はまた昇る
16. ラスト・ソング -最後のライト-

Best Album
『アリス・ザ・ベスト
~遠くで汽笛を聞きながら』
発売中 2484円
ユニバーサル
UPCY-7182
※ブックレット+ギターコード付

<収録曲>
01. 冬の稲妻
02. チャンピオン
03. 今はもうだれも
04. 涙の誓い
05. ジョニーの子守唄
06. 夢去りし街角
07. 青春時代
08. 帰らざる日々
09. 遠くで汽笛を聞きながら
10. さらば青春の時
11. 五年目の手紙
12. 秋止符
13. 走っておいで恋人よ
14. 街路樹は知っていた
15. 地図にない町
16. 誰もいない

Profile

たにむら・しんじ…48年12月11日生まれ、大阪府出身。’71年、堀内孝雄、矢沢透とアリスを結成、’72年、『走っておいで恋人よ』でデビュー。以降、『冬の稲妻』(‘77)『チャンピオン』(‘78)等数多くのヒット曲を出し、ソロアーティストとしても『いい日旅立ち』(‘78)『昴』(‘80)『サライ』(‘92)など、日本のスタンダードナンバーとも言える曲を世に送り出す。’88年からの3年間は、ロンドン交響楽団、国立パリ・オペラ座交響楽団、ウィーン交響楽団プロジェクトと共演。’81年のアリスの北京コンサートを皮切りに、中国及びアジアでの活動をライフワークとして続け、’04年には上海音楽学院常任教授に就任。現在は上海音楽学院名誉教授、東京音楽大学の客員教授として、音楽を志す若者の育成に尽力している。’15年、春の紫綬褒章を受章。今年の11月2日には『谷村新司・ザ・ベスト ~陽はまた昇る~』、同14日には『アリス・ザ・ベスト ~遠くで汽笛を聞きながら』をリリース。

谷村新司 オフィシャルサイト
http://www.tanimura.com/

Live

豊中市立文化芸術センターに続いて
ライフワークの『ココロの学校』も

Pick Up!!

【大阪公演】

『谷村新司45周年スペシャル
「TANIMURA CLASSIC
with 日本センチュリー交響楽団』
Thank you, Sold Out!!
▼1月8日(日)15:00
豊中市立文化芸術センター 大ホール
全席指定10000円
[共演]飯森範親(指揮)/
日本センチュリー交響楽団
豊中市立文化芸術センター■06(6864)5000
※未就学児童は入場不可。

 
【岐阜公演】
『谷村新司 トーク&ライブキャラバン
 ココロの学校』
チケット発売中 Pコード309-947
▼2月12日(日)17:00
バロー文化ホール 大ホール
一般6000円
バロー文化ホール■0572(23)2600
※託児、小中学生券、車イス席あり。但し、ぴあでの取扱いなし。詳細は問合せ先まで。未就学児童は入場不可。

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チケット情報はこちら


【愛知公演】
『谷村新司 トーク&ライブキャラバン
 ココロの学校』
一般発売12月18日(日)
Pコード315-304
▼3月20日(月・祝)15:30
一宮市民会館
一般6000円
一宮市民会館■0586(71)2021
※未就学児童は入場不可。

チケットの購入はコチラ!
チケット情報はこちら


Comment!!

ぴあ関西版WEB音楽担当
奥“ボウイ”昌史からのオススメ!

「まさか谷村新司さんにインタビューするようになるとは…と自分のことながら他人事に思えるくらいの国民的アーティストに取材をして感じたのは、やっぱりキャリアが続くのには理由があって、それが会話の端々からビシビシ伝わってくる。“大物”とか“御大”と称される方々が総じて意外と話しやすいのは、これはもう全員に共通する“謙虚さ”があるから。楽しかったなぁ。谷村さんが、結局は“ここ”なんだと自分の胸をポンと叩く仕草をされたとき、何だかいろんな答え合わせをさせてもらったような気がした、貴重な時間でした。ウィキペディアを見たら実は同郷、おかんに言っても伝わる(笑)偉大な歌い手は、何だか音楽の神様が人間の姿を借りているようでもあって。豊中に生まれた新しいホールに、きっと命を吹き込んでくれることでしょう」