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大阪発の日本語パワーポップバンド・ナードマグネットが
キャリア初のアルバム『CRAZY,STUPID,LOVE』を遂にリリース!
遅咲きの花・須田(vo&g)が語る
地元大阪ツアーファイナル直前インタビュー

 今、ジワジワきている大阪発の日本語パワーポップバンド、ナードマグネット。彼らは5月に待望の1stフルアルバム『CRAZY, STUPID, LOVE』を発表し、現在リリースツアーを開催中だ。そんな多忙な中、バンドを代表し須田亮太(vo&g)が取材に駆け付けてくれた。サラリーマンとの2足のわらじで、年間約100本ものライブを行うそのモチベーションとは? そして最新作に込められたものとは? バンドのこと、音楽のことを、たっぷり語ってもらった。



世界に向かって開いていきたい気持ちで曲を作ってます


――まずはバンドの話から。’06年に結成して現体制になったのが’12年。この間、バンドの活動は?

「結成直後の根拠のない自信みたいなものはあって(笑)。CDも作ってライブもやってたんですけど、いかんせん方向性が定まってなかった。曲はできるけど、まとまらないという。それは僕が結構いろんな音楽を聴くタイプで、あれもこれもしたい!ってなってたのと、昔は暗くて尖っていて…死にそうな顔で歌ってるみたいな(笑)。ニルヴァーナとか邦楽ならArt-Schoolに影響されたりして、暗いテイストも多かったから。でも、よく対バンしてた大阪のバンドが、和製WEEZERみたいなことをしてたのを見て、“すげーいいな! 俺だってWEEZER好きや!”って、WEEZER感のある曲を作ってみたんですよ。それが今回のアルバムに入っている『ルーザー』(M-6)なんですけど、評判がよくて。それでもっとポップに! と思ってできたのが、『アフタースクール』(M-5)。この2曲でで応募した2つのコンテストも決勝までいけたし、ガッと変わりましたね。ポップな方向に振り切れて、自信もついた。それでこの路線でいこうと思ったときに、ギターが抜けることになって。それが'12年の春。前のギタリストは本当にめちゃ才能があるんですけど、アクも強いというか(笑)。そのザ・ギタリストっていうカラーに、僕もちょっと遠慮したり…。でもメンバーが変わるなら心機一転、やりたいことしようって、今の感じの曲ができるようになったんです」
 
――現在、その根暗な部分は?
 
「今はそこから世界に向かって開いていきたい気持ちで曲を作ってますね。僕らのライブを観た人に、“ハッピーで楽しかった!”ってよく言われるんですけど、実際詞を見たらそんなことはないんです。ちゃんと根暗な部分は残ってます(笑)。根暗な人間が必死でポップになろうとしている様が楽曲に出てます」
 
――そうやってポップに世界へ向かって開こうとしたきっかけは?
 
「多分、働き出したのが大きいですね。大学生のときは社会不適合でも問題ないじゃないですか。でも就職するとそうもいかなくて、しかも僕、最初は営業やったんですよ。本当に大変。世間知らずだったのを、厳しい上司に1年目でボコボコにされたんです(笑)。これじゃいかん、ちゃんと人とコミュケーションを取らないといけないと、ちょっとずつ人間性がオープンになっていったんです。働き出して、メンバーが変わって、初めて出たライブハウスの店長さんに、“須田くんて、そんなナードな感じせーへんよね。話したらすごく明るいよね”って言われるぐらい。でも、実はそんなことないんです…という(笑)。あと、対バンと喋ってたら、メンバーに“須田くんってそんなタイプやったっけ?”とも言われました。ハハハ」
 
――ナードな面とオープンな面のバランスをうまく取ることができたんですね。
 
「平日は『フルメタル・ジャケット』('87)っていう映画のハートマン軍曹みたいな上司にボコボコにされているだけに、週末にハリが出たというか(笑)。“やっぱり音楽を続けたい!”ってなったんです。そこからだんだん曲もいいと言ってもらえるようになったし、音楽に対するモチベーションも上がっていった。その頃は、鬼軍曹が厳しいから週末はバンド楽しもうって、純粋に楽しかった時期ですね」
 
――そして今も働きながら音楽活動をしているわけですが、ライブの数がかなり多いですね。大変では?
 
「でも、ペースは掴めたなって思います。僕、入社して3年半は福井県にいて、毎週末、車で3時間かけて福井から大阪に通ってたんで。それもたいがい地獄やったんですけど(笑)。その後、大阪に転勤になって営業から事務に変わって、帰りの時間も早くなったから8時くらいやったらライブできるかなって、試しに平日にライブしてみたら、できると分かって3年半のフラストレーションが爆発。ライブが激増して月10本とかになりました(笑)」

 



自分を笑い飛ばすユーモアみたいなものを持ってる人たちが
パワーポップをやってる


――次は1stフルアルバムの話へ。名刺代わりの1枚だけに、いろいろと考えられたと思いますが。
 
「いろいろあるんですけど、まず1stフルアルバムは10曲入りというのはずっと前から決めていて。それはもちろん、WEEZER(のアルバム)と同様にということなんですけど、最近レコード集めにハマっていたこともあって、A面、B面と分けられるように作りました。5曲5曲で分けて、ひっくり返して(6曲目)『ルーザー』から始まるという感じ。アルバム自体は、先に『C.S.L.』(M-2)ができていて。この曲に“CRAZY, STUPID, LOVE”というフレーズが出てくるんですけど、それは『ラブ・アゲイン』('11)という映画の原題で、それがすごく気に入っていて。自分の作った曲を並べてみると本当にその通り(のクレイジーでマヌケな恋愛の曲)で、アルバムのタイトルにしっくりくるなと思ったし、そこに合うような曲だけを(収録したい)となりましたね」
 
――軸になった『C.S.L.』をはじめ、残念な恋愛模様が詞になった曲が並びます。
 
「そういう映画も好きやし、そういう曲も好きなんですよ。それこそWEEZER。学生時代に聴いて、ロックバンドがこんなことを歌ってもいいんだって衝撃を受けたんですよね。Motion City Soundtrackっていうバンドも好きで、それもそういう感じなんです。そういう(ダメな)自分を笑い飛ばすユーモアみたいなものを持ってる人たちが、パワーポップをやってる。そして、自分の人生も情けないなっていうのもあって…(笑)。だから曲を聴いた人から、“どれくらい自分のことですか?”ってよく質問されるんです。ま、ノンフィクションもフィクションもあります。ただ、1曲1曲、僕が歌いたいことを表現すると、僕が聴いてきた音楽を表現するとこうなるんです」
 
――曲は全体を通して90~00年代の懐かしさがあって、奇をてらった感じはなく王道パワーポップなイメージです。
 
「はい。自分の中でも王道はこれなんですけど、実はこれって、今の王道じゃないじゃないですか。だから、“分かる分かる!”って年上の方はすごく懐かしがってくれるんですよ。“ここでマシュー・スウィートを入れてるんだね!”とか。でも、今のシーンにない音だから、若い子が聴くと新鮮みたい。それがおもしろいなって思います。そして、お客さんの年齢層がすごく幅広いんですよ。親子連れでライブも来れます!」
 

音楽や文化って継承されていくもんだと思ってる


――そんなかつての名パワーポップがてんこ盛りなわけですが、単にそれらのマネというわけでもないですよね。
 
「懐かしいと言われるのはすごく嬉しいです。マネではないと言われるのも嬉しいですけど、実は僕、意図的にマネしてるんです。もろにフレーズを引用したり、本当に分かる人なら、すぐ気が付くくらいのことをめちゃくちゃしてるんです。しかも、全部日本語でそれをやったから、“あのクソパクリバンド!”って、怒る人がおるんちゃうか? って思ったんですけど、あまりいなかった(笑)。ただ、WEEZERの大ファンの人が、“ナードマグネットぶっ飛ばしたい”っていうようなツイートをしてたのを1回だけ見ました。でも、それはもう、ありがとうございます! です(笑)」
 
――ルーツを探るのを楽しむことは以前からあるとは思いますが、そこにかける熱量がすごいですね。
 
「僕ね、“あそこのフレーズってアレやん!”って言われたいんです。気付いてほしい。ヒップホップのサンプリングみたいなもん。僕は、音楽や文化って継承されていくもんだと思ってて。それは実際、僕も学生時代に聴いてた日本のバンドから、その人たちが聴いてきた洋楽を知って聴くようになって、それにハマっていったから。夢中にさせてくれたバンドは、自分の知らない世界をどんどん教えてくれた人たちなんです。例えば、峯田さん(銀杏BOYZ)も、音楽やマンガや映画から、いろんな引用をするじゃないですか。いろんなものをぶち込んでる。そういう元ネタを探すのが楽しかったんですよね。あと木下理樹さん(Art-School)とかも。自分が“これはあれだったんた!” って気付いたときの楽しさで音楽を聴いてたから、自分もそういう存在にならなきゃって。だから見つけてほしいんですよ。僕がWEEZERとかMotion City Soundtrackを聴いて感じたことを感じてほしいです」
 
――やはりそこにかける情熱がすさまじい。そこまで思うのはなぜですか?
 
「やっぱり、今はそういうバンドが少ないと思うからですね。音楽の話を、“あのアルバムって最高だよね!”っていうような話を、いつまでもしていたいんです。でも、そういうことがあまりできない人たちもいて、それが悲しいんです。業界的な話…あそこのレーベルはとか、あのバンドはもうあそこが付いてるからとか、そういう話じゃなくて、もうちょっと音楽の話をしようよ! って。だから、僕はリスナー目線なのかもしれないです」
 
――では最後に、今作のリリースツアーの話も。5月から始まり、すでに約30本は終えていますね。
 
「もう、数えてないですね。数えると具合が悪くなるんで(笑)。やり過ぎました!」
 
――ここまでの感想は?
 
「どんどんお客さんの熱が上がってる気がします。もう、(お客さんが歌っていて、自分が)歌わんでもいいやん! ぐらいの感じ(笑)。純粋に曲がみんなに届いたのかなって思います」
 
――残すところは東阪で、最終日は大阪です。ファイナルに向けて、そして今後の展望を聞かせてください!
 
「ファイナルに関しては、アルバムを聴いた感じで思い思いの楽しみ方をしてほしい。めっちゃライブで歌いたい、踊りたいっていうなら、そうしてくれればいいし、私はしっぽり聴いていたいわって人は、一歩下がって聴いてくれればいい。それぞれ自分の楽しみ方をしてほしいですね。そして今後は、さっき話した、継承するような、バトンをもらって渡すみたいな活動をしたいと思ってて…過去の自分が観たらグッとくるようなライブも決まっていたりもします。同じテーマを持った音源も考えてるんで、発表まで気長に待っといてください!」
 

Text by 服田昌子
 




(2016年10月18日更新)


Check

Release

はたから見ればバカみたいな恋愛の歌
10曲が詰まった1stフルアルバム!

Album
『CRAZY,STUPID,LOVE』
発売中 2000円(税別)
THISTIME RECORDS
TTPC-0004

<収録曲>
01. ぼくたちの失敗
02. C.S.L.
03. TRAGICOMEDY
04. チェイシング・エイミー
05. アフタースクール
06. ルーザー
07. YOU & I
08. BOTTLE ROCKET
09. Mixtape
10. イマジナリーフレンド

Profile

ナードマグネット…写真左より、秀村拓哉(ds)、前川知子(b)、須田亮太(vo&g)、 藤井亮輔(g)。'06年春結成、メンバーの脱退を経て'12年11月に藤井亮輔が加入、現在に至る。これまでに2枚のミニアルバムと1枚のシングルを発表。大阪を中心にマイペースなライブ活動を続けているが、'11年12月に音楽コンテスト『eo music try 2011』で決勝進出、'12年4月にキューンミュージック主催のオーディションにて4000組の中から最終10組に選ばれるなど、少しずつ注目を浴び始めている日本語パワーポップバンド。 今年5月11日に初のフルアルバム『CRAZY,STUPID,LOVE』をリリース。これからの活動が期待される大阪期待の遅咲きの花。

ナードマグネット オフィシャルサイト
http://nerd-magnet.com/

Live

いよいよリリースツアーも
東京・大阪公演を残すのみ!

 
【東京公演】
1st フルアルバム
『CRAZY, STUPID, LOVE』発売記念
「さよなら20代ツアー東京編
ツアーファイナル」
チケット発売中 Pコード303-867
▼10月23日(日) 19:00
LIVE HOUSE FEVER
スタンディング2500円
[ゲスト]フレンズ/ラブリーサマーちゃん
エイティーフィールド■03(5712)5227

Pick Up!!

【大阪公演】

1st フルアルバム
『CRAZY, STUPID, LOVE』発売記念
「さよなら20代ツアー大阪編
ツアーファイナル」
チケット発売中 Pコード303-616
▼10月29日(土)19:00
Shangri-La
オールスタンディング2500円
[ゲスト]愛はズボーン/DOTAMA
GREENS■06(6882)1224

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愛はズボーン主催のサーキットほか
各地のイベントにも出演!

Pick Up!!

【大阪公演】

愛はズボーン presents 『アメ村天国』
チケット発売中 Pコード309-685
▼11月12日(土)昼12:00
心斎橋アメリカ村周辺ライブハウス5会場
自由3800円
[出演]愛はズボーン/Age Factory/THE BOSSS/THE BOY MEETS GIRLS/CHAI/コンテンポラリーな生活/Creepy Nuts/DENIMS/deronderonderon/ドミコ/DOTAMA/フィッシュライフ/ギャーギャーズ/ハラフロムヘル/Helsinki Lambda Club/神頼みレコード/LADY FLASH/THEラブ人間/ナードマグネット/岡崎体育/ONIGAWARA/パノラマパナマタウン/プププランド/THEロック大臣ズ/SPARK!!SOUND!!SHOW!!/Tempalay/TENDOUJI/Walkings/忘れらんねえよ/花柄ランタン/マッシュ/ミヤモトアツシ/たかはしほのか
GREENS■06(6882)1224

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【京都公演】
『ボロフェスタ2016』
チケット発売中 Pコード301-979
▼10月30日(日)11:55(昼の部)
KBSホール
前売4800円
[出演]銀杏BOYZ(弾語り)/女王蜂/POLYSICS/天才バンド/グッドモーニングアメリカ/eastern youth/Limited Express(has gone?)/Have a Nice Day!/BiSH/生ハムと焼うどん/忘れらんねえよ/MOROHA/ワンダフルボーイズ/THE FULL TEENZ/渡辺シュンスケ/チプルソ/-傷だらけのB-BOY-/manchester school/Doit Science/yonige/愛はズボーン/ビバ☆シェリー/FUCKER/ナードマグネット/nim/加藤隆生/ミノウラヒロキ・マジックショー
Live House nano■075(254)1930

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【愛知公演】
『Circuit 世界の砂場から ’16』
チケット発売中 Pコード307-433
▼11月20日(日)11:30
アポロベイス/Live&Lounge Vio/
ハートランド/parlwr
スタンディング3800円
[出演]砂場/それでも世界が続くなら/Analogfish/macico/スロウハイツと太陽/odol/ame full orchestra/3markets[ ]/パンパンの塔/Theキャンプ/toitoitoi/ナードマグネット/muuka/Half time Old/the quiet room/camisole/Sentimental boys/中村佳穂/Mona Monica/FINLANDS/百長/ベランダ/パスワードの人/近藤康平/THEハブ人間/tonetone/シンガロンパレード/MILKBAR/ハルラモネル/ひろたうた/HoSoVoSo/音の旅crew/原田茶飯事/チーナ/わたなべよしくに/Calmine/しょうにゅうどう/テト・ペッテンソン
アポロベイス■052(261)5308

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