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「この先一生、このアルバムを持って音楽活動をしていく」
3rdアルバム『Colors & Scale』をリリースし
まもなく10/22(土)心斎橋Pangeaにてライブを行う
KONCOSの古川太一(key&vo)インタビュー

元Riddim Saunterの佐藤寛(vo,g)と古川太一(key,vo)が、Riddim解散の翌年、2012年に結成したKONCOS。これまで『ピアノフォルテ』(2012年)、『街十色』(2014年)の2枚のアルバムとシングルやアナログ、カセットテープをリリース。そして、『旅するコンコス』と題しこれまで47都道府県ツアー、日本全国100か所ツアーを敢行。文字通り、全国津々浦々まで自分たちの足で自分たちの音を届ける旅を続けてきた。インタビューで古川が話している通り、約10か月で100か所をめぐった過酷ともいえるツアーを通じて彼らが得たのは、全国各地で彼らを待ち、迎える人達との強くて熱い絆とともに、リズム楽器の重要性、そしてライブハウスへの回帰。3枚目となる新作『Colors & Scale』は、そういったものたちすべてを抱きしめ、決着をつけ、偉大なる前進の一歩に転換したといえる大充実にして号泣必至&至福の一作だ。再生ボタンを押した途端、ドープな声とスクラッチが耳に飛び込んでくる『Palette』(M-1)から、ハウスミュージックの創始者である故フランキー・ナックルズのカバー『Whistle Song』(M-15)まで、どの1曲、どの1小節、どの一瞬だけを掬い上げてもKONCOSというバンドの持つ熱が確かに伝わってくる。このアルバムを機に、同じ帯広出身で約2年間サポートドラムを務めてきた紺野清志が正式に加入。バンド誕生から4年目にしてまた変化の季節を迎えたKONCOSのここまでの歴史を古川太一のガイドでひも解きつつ、実は関西に縁の深い新作について、目前に迫ったリリースツアーの大阪公演について、彼らが音楽という旅に出る理由についてなど、じっくりと語ってもらった。

——KONCOSの印象と言うと、やはり『旅するコンコス』というツアータイトルの通り、旅をしてずっとライブをされている印象が強いです。
 
「そうっすね。よく言われます。KONCOSが始まった頃は、僕もピアノが弾けなかったし寛(佐藤寛)も人前で歌うのは初めてで、本当にゼロからのスタートだったから、“とにかく楽器を練習して、人前に立つ”っていうテーマもあったんですね。ライブとなれば人前に立つわけだし、演奏を上達させたいならライブをやるのが一番だしって感じで、とにかくライブを重ねていきましたね。よく考えたら人前でマイクを持つこと自体、KONCOSを組むまでやったことがなかったですね(笑)」
 
——太一さんは、リディムが解散してからすぐにドラムから鍵盤に変わったんですか?
 
「そうですね。リディムの頃から寛と2人で曲を作ってはいたんですけど、何かのマネじゃなく自分たちのオリジナルと呼べるものを作りたくて、そのために曲の作り方の基本的なところを自分の中に叩き込みたかったんですね。自分たちの好きなアーティストの曲のコード進行を分析することを寛と2人でやり始めたのが1st『ピアノフォルテ』が出るちょっと前で、その頃はトッド・ラングレンとかポール・ウィリアムス、ロジャー・ニコルスあたりの転調をいっぱい使ったポップスに一番興味があって。そういうものを作りたくて、いろんな楽曲の分析をしたいんだけど、ドラムだけじゃ分析しきれなくて限界を感じていて。作詞作曲をもっと極めるために一度ドラムを離れて鍵盤になりました。歌詞もリディムは英語だったけど、KONCOSの歌詞は日本語にして。そこからKONCOSが始まったんですね」
 
——『ピアノフォルテ』、いいアルバムですよね。
 
「ありがとうございます。今聴いてみると、リディムの頃の作曲方法に一番近いんですよね。歌とかの表現は全然できてないけど、リディムの時の気持ちが残っている中でアップデートされたバージョンというか」
 
——今のKONCOSとは、また違いますか?
 
「違いますね。次の2nd『街十色』では、リディムの頃に限界を感じていた作曲方法をちょっとだけ飛び越えられてるんですけど、2枚目の頃はほかの音を入れないでピアノと歌だけにしようってこだわりもあったんですね。何もかもそぎ落として本当に必要なものだけを残したら、人間はどうなるんだろう?と考えて、そしたらあのアルバムになって。翌年2014年に100か所ツアーに出てみて、リズム楽器の重要性を感じて結局、ドラムに戻ってくるんですよね。自分でもライブをやりながら、ドラムとベースの必要性を何となく感じてはいたんですけど、結構もがいていた時期もあって。それが2ndのあたりですね。ただ、曲は僕たちの目指すオリジナルなもの、“自分たちの曲”といえるものが出来てきている手応えみたいなものはありました。けど、そこで足りないなと感じていたのが、ドラムだったりライブハウス感、パーティー感みたいなもので。自分達もそれが好きだし、KONCOSにはそれが必要だなって」
 
——100か所ツアーでもカフェやイベントスペースなどいろんな場所でライブをやられていますが、ライブハウスという場所は特別ですか?
 
「やっぱ特別なものでしたね。ちょっと離れてみて、改めてわかりました。KONCOSを始めてピアノを弾き始めて、いろんなところでライブをやろうと決めて本当にいろんな場所でやって。それも経験として素晴らしかったんですけど、そこでやっぱりライブハウスの良さに気づいて。それは、ライブハウスで出会うバンド、ハコを中心に集まる人の大事さも含めてですね」
 
——太一さんも寛さんも以前のバンドでライブハウスやホールでのライブを経験されているわけですが、改めて振り出しに戻った感じといえますか?
 
「振り出しというか、ゼロですね。ゼロにしたかったんですね。何となくドラムを叩いて、そのまま活動を続けることも出来るんですけど、それだと“作曲をしたい”というところには向かわない。僕は、自分の作った曲を自分で弾いて歌えるようになりたかったんですね。自分たちが本当に好きなもの、好きな感じ、オリジナルを作りたかった。リディムは英語詞だったけど、日本でやっていくには日本語で勝負しないと、という気持ちもあったし、もうみんなの前で全裸になるぐらいの覚悟がないとここから先は続けられないなって。それからKONCOSが始まって3年経って、去年新たにドラムが加わってまたバンドがゼロからのスタートになるっていう(笑)」
 
——(笑)。
 
「結局ドラムが必要だな、と。一緒にやってみたら、今までの曲も全然雰囲気が違うものになって、“やっぱこうだよな”って思いました。100か所ツアーを経て、吹っ切れたっていうのもあるのかもしれないです。清志(紺野清志、dr)は帯広で高校1年生の時からの付き合いで、同じライブハウスにも出ていたんですよ。これまで2年近くサポートで叩いてくれてたんですけど、僕がもともとドラマーだから、“ドラマーを加入させる”って考えがあまりなかったんですね(笑)。今時メンバーを入れてわざわざバンドにするなんて、面倒くさいことをよくやるなとは思うし、もっと他にもやりかたはあるんでしょうけどね。サポートメンバーとしてやり続けることもできるんですけど、バンドという形じゃないとできない表現のほうを僕らは選んだんですね。上手く言えないんですけど」
 
——そういった中で、今回のアルバム『Colors & Scale』の制作はどんなふうに始まったんですか?
 
「たまたま、去年の秋に京都METROであったライブでエンジニアをやってくれた荻野(荻野真也)さんの音がすごくよくて、“荻野さんのスタジオで録りたい”ということからこのアルバムが始まったんですね。それが去年の10月、11月ぐらいで、それから京都のスタジオに通って。ホーンも、関西のライブに参加してくれたSpecial Favorite Musicや三田村管打団?のメンバーが吹いてくれて。曲はもうどれもずっとライブでやっていたし、もともと“ライブでやれるようになってから録音しよう”というのは決めてたんです。その頃はまだレーベルも決まってなかったんだけど、曲だけはちゃんと作ってライブでやっていこうと。ライブさえ続けていれば、先はあるだろうと」
 
——まさに旅するバンド、転がり続けるバンドですね。
 
「ですね。今回のアルバムはそれの集大成でもあり、初めて僕らを知る人に対しても、3人編成になってバンドとして1からフレッシュに見せられるものにもなれてると思う。中途半端な作品を残しても意味ないし、今っぽい音とか流行りの音楽じゃなく、本当に自分たちにしか作れないオリジナルなものが出来たと思っています」
 
——YouTubeにもライブ音源が幾つか上がっていますが、小さな画面で見ていてもその場にいるぐらいの熱を感じます。アルバムを聴いていても、ノスタルジーみたいなものと無性に掻き立てられるものの両方を感じて。どの曲からも、“今すぐ出ていこう”、“とどまっていないでどんどん行こう”と言われているような熱さと勢いを感じます。
 
「たぶん、人に会ってるからでしょうね。100か所ツアーがあったことも大きかったと思います。これまでの人生でこんなに人に会ったことなんてないと思うぐらい、日本全国のいろんな街の人と会って話して、密にやりとりをして。それが大きいんじゃないかな。寛と100か所ライブを回った経験というよりも、人と会ってることのパワーが半端ないんだと思う。今回のアルバムでは公開録音もさせてもらってて、『Songbird』(M-11)は録音した京都のお店の名前をタイトルにしていて、他に『Magic Hour』(M-2)、『Flower』(M-12)、『月待つ島まで(2016Version)』(M-13)にもみんなの声が入ってるんですけど、参加しているみんなのパワー、僕ら以外のパワーが詰まってる気がする。そういうふうに作りたかったんですよね」
 
——音楽って、誰にも会わず部屋に閉じこもっていても生まれるのかもしれませんが、そうやって人と会う中で生まれるものなんですかね。
 
「そうですね。こもって生まれる音楽も最高だし大好きなんですけど、自分の気持ちが今向かっているのは外で、そっちに振り切れたんでしょうね。前までのKONCOSは、曲を研究するんだという名目で寛と2人でずっとスタジオにこもってた。そこから離れて、全国を回って、ライブハウスに帰ってきて、改めて外に向かってやれるようになった気がします」
 
——『Camera Obscura』(M-7)の歌詞は、“パノラマ”“無彩色”“ある”“ない”など、一個一個カットアップした言葉が並んでいるようでいて、その中の“なにもない”って言葉がとても強く響いて、ハッとしました。
 
「そう。歌詞は全部、寛が書いてるんですけど、今回のアルバムでは明らかに次の段階に行けた感じがありますね。日本語の表現、歌詞とメロディーの当てはめ方も含めて、他にはないオリジナルな形にできた手ごたえを感じてもいて。『Colors & Scale』(=色彩と音階の世界)というタイトルの通り、最初にコード進行から色をイメージして、その関係性を表現したいという話は最初からしていたんですね。後は、転調における情景の見え方とか。そういうのを感覚で表現するんじゃなくて、コード進行をちゃんと作り込んでデザインした上で、曲を作りたかった。それがたぶんKONCOSの源流というか、元の部分なんですね。特徴的でオリジナルなコード進行で、情景を最初からちゃんとコントロールした曲。それを、ジャケットも含め色彩と音階と曲順とで表現する。そういうアルバムをずっと作りたかったんです。ジャケットの絵は僕が描いたんですけど、そういったものも含めて音もビジュアルも全部が一緒に飛び込んできた時に見えるものというのをやりたかったんですね。『Camera Obscura』の歌詞は、モノクロ=白と黒の世界というテーマが最初にあって、それを日本語で表現しようと作ったんですけど、寛から歌詞が送られてきた時に“これはオリジナルだな”と思いました。この曲に限らず、僕ら以外からは出てこないものが表現できたなって」
 
——『Citrus』(M-3)も、“会いたい”という言葉が聴こえた瞬間にパッと世界が変わって。
 
「そうそうそう。日本語がいい意味で作用してるのかなって。日本語の意味があまりにもはっきり分かり過ぎると、また違ったふうに聴こえるのかもしれないけど、何となく色合いを共有してるとコード感と歌詞の日本語の世界観が上手くハマってくるんだなって。それは僕も新鮮だったし、寛の歌詞に“おぉ、そう来るか!”みたいなのもあって。おもしろかったですね」
 
——色彩と音階というテーマも含め、話だけを聞くと一見、机上のやりとりで曲が作られているように思う人もいるかもしれませんが、そこに音楽としてバンドの熱量が加わった時の化学反応がものすごくて。
 
「そうかもしれないですね。今までと違うのは、僕らが演奏してる時にお客さんが歌っていることが分かるんですよ。例えば『月待つ島まで』(M-13)の“ゆうらんせん かもめとんだ ぼくらまた会いたいなって思った”って歌詞にしても、言ってることそのまんまの意味しかない歌詞じゃないですか?(笑)。歌ってくれてるみんなも、ただ歌詞を歌ってるんじゃなくて、歌いながら言葉の意味をちゃんと分かってくれていて、それが僕らにもちゃんと伝わってくる。ライブが盛り上がっていても、人前で歌うのとかって、実はちょっと恥ずかしかったりもしますよね?(笑)。僕もそうだったから分かるんですけど、でもそれを超えたライブをした時の熱量は本当に凄くて、伝わり方も今までになかった伝わり方をしてるなっていうのが分かるんですよね。最初の頃は日本語でやるコンプレックスも感じたりしてたけど、ライブでお客さんの熱量も獲り込んで曲をやれていることが新しいと思えるんですよね」
 
——自分もいろんなライブに行っていて、必ずしも手を上げるわけじゃないし一緒に歌うわけじゃないんですが、『月待つ島まで』を聴いていると、一緒に参加したくなります。歌詞の“ピアノを ひきながら 声にならなくて”、“僕らはまた会いたくなって メロディだけをのこす”は、47都道府県ツアーや100か所ツアーで全国を回って各地に歌を残してきているKONCOSそのものだなぁと。バンドのテーマ曲のようで。
 
「そうそうそう。この曲は2ndに入ってるから100か所ツアーよりも前にできていたんですよ。この曲に関しては今回で3回目のレコーディングになるんですが、その分強度が違うというか、この曲がずっと残っているのは意味があるんだなと思います。“ライブで歌うことで曲が育つ”ってよくいうけど、本当にそうなんですね。この曲に全国各地で得たものや出会った人たちのパワーが詰まってるというか、それまで100か所も回ったこともなかったし、曲がどう変化していくかも知らなかったけど、実際にやってみて、全然違うものになるんだなぁって分かりました。僕らの曲はラジオやテレビみたいな電波にはまったく乗ってないんですけど、僕らが行った街、僕らが歩いてきたところでは、異常に強度を増してて。僕ら、めちゃくちゃリアルにアンダーグラウンドなんですよね(笑)」
 
——まさに、自分たちの足で自分たちの音楽を届けにいった。
 
「だから責任は重いというか、この曲を一緒に歌ったヤツの前でカッコ悪いことは絶対に出来ないし。そう思うとライブがどんどんストイックになっていったりして、“ダサいことは出来ねぇ”っていう謎の使命感みたいなものを感じて(笑)。全国各地で会う仲間がいて、そういうみんなに“うぃっす、ちょっとライブやりに来ました~”みたいにやってる場合じゃなくて。確実に前よりもいいライブをしなきゃだめだし、そう思うと必然的に熱量も上がりますよね。各地で迎えてくれたみんなに対しての感謝もあるし」


KONCOS "Parallel World" (Official Video)

 
 
——『Parallel World』(M-5)のミュージックビデオも切迫してくるものがあって。この曲を鳴らすんだ、という使命感みたいなものが画面からほとばしってくるようで。
 
「あの曲に関しては、オリジナルな音楽が出来たなと思ってるんです。ディスコやファンクとかのブラックミュージックのルーツがありながら、自分たちの解釈ができていて、ストリートの感覚にも落とし込めてる。MVに関しては、結局僕らはライブしか出来なくて、それ以外のことには興味はなくて、今自分たちが何をやりたいかといったらライブしかしたくないんですね。最初に“MVを撮りましょうか”って言われた時に、撮るのは撮るんだけど、どうしたらいいかなって考えた時に、スタジオでガンガンに演奏してるところを撮るか、ライブを撮る以外に考えられなくて。ディレクターの土屋恭平さんはこれまでもライブを撮ってらっしゃる方で、ライブしてる人間をそのままストイックに撮ってくれる方なんです。僕もすごく共感を持っていたので、恭平さんにお願いしてそれをMVにしようと」
 
——曲の持つ熱量とも相まって、忘れられない映像になりました。
 
「ただ演奏してるだけなんですけどね(笑)」
 
——その、ただ演奏しているだけの姿が、これほどのものを訴えかけてくるんだっていう。
 
「ライブハウスでライブを撮っている恭平さんの感覚と編集の力と、僕らも腹くくって、“俺達にはこれしかねぇんだぞ”っていうのがあるんでしょうね。いいも悪いもそれしかできないし、30代で子供もいる男2人がカッコつけてやってる場合じゃなくて(笑)。どう見られたいとか、MVだからって何か装飾して演技するとかはテンション的に無理で、自分たちが演奏するもので勝負したい。だから、あのMVは全裸みたいなものですね(笑)。無修正で、僕らのそのまんまで」
 
——先鋭的にも感じました。尖ってるだけじゃなく、新しさもあって。
 
「そっすね。それがないととは思いますね。リハが終わった後に、みんなでコンビニの前で安酒飲んでる感じとかね。そういうのって結構重要で、バンドマン同士で缶ビール呑んでる中で生まれる会話とか、安い居酒屋での会話とか、焼酎呑んですぐ酔っぱらったり、クラブに行って真っ暗な中で踊ったり。いいことだけではないし、おいしいものだけを食べてるわけでもない、そこの感覚も含めていろんな感覚を研ぎ澄ませたいんですね」
 
——先鋭さとか張り詰めたストイックさももちろんですが、KONCOSが持つ強度の中には、たくさんの人が入って来れるだけの包容力や温かさもあるように思います。
 
「そういうことを伝えるにはたぶん、中途半端ではできないんでしょうね。100か所ツアーを終えて、ライブハウスでやるようになってから特にそんな気がしてます。ライブハウスは、ステージと客席はちゃんと別になっていて、そこは同じになっちゃだめなんだと思う。こっちは演奏する側としてやらなきゃダメなことがあって、ちゃんとした音も出さなきゃいけないし、伝えなきゃいけない音もある。それは結構重要で、下北沢のShelterにしても梅田のShangri-laもエンジニアさんも照明さんもプロだし、そういうところでの表現の仕方を目指したい。そういう場で見るライブが自分でも感動するし、一つ一つちゃんと聞こえた時の音の感じとか、そこに対しての感動の仕方ってやっぱり違うから。100か所ツアーは寛と2人でやったけど、それを終えてからのライブでは若いバンドと一緒にやる機会が多くて、すごく影響も受けましたね。京都のnanoでモグラさんの組んでくれる対バンや、セカロイ(SECOND ROYAL RECORDS)の15周年ライブも一緒だったHomecomingsやTHE FULL TEENZとかshe saidとか、観てるとカッコいいバンドが本当に多くて、そういうヤツらと対等に嘘がないようにやれるにはどうしたらいいのかなというのは常に考えてましたね」
 
——ライブハウスに行くと、おもしろいバンドがいっぱいいるんですよね。
 
「そう。東京でもそうなんですよ。今、ライブハウスで対バンするバンドにはすごく影響を受けてるし、アンダーグラウンドでめちゃめちゃおもしろいことが増えてて。リディムも最初の頃は、対バンとかで知り合ったバンドと仲良くなっていろんなものに刺激を受けてたんで、それに戻った感じですかね。“あ、これだった”って思い出したところもあって」
 
——リディムが出てきた時に、先輩バンドは“めっちゃいいバンドが出てきた”と思ったはずで、それがぐるっと回って今太一さんが後輩たちに対して同じようなことを感じているんでしょうか。
 
「そうなんですかねぇ。今、対バンで誘ってもらったバンドが、よく考えると10歳下だったりして。そういうみんなと普通に一緒にライブしたり、呑んだりできててよかったなと思います。カジヒデキさんとかチャーベ(松田岳二)さんとかが僕より10歳とか12歳上なんですけど、一緒にいると会話の差もないし感覚が変わらないんですよね。それってバンドのいいところだなって。こうやってぐるぐる続くんでしょうね。僕らもめっちゃ遠回りして、そういうところに帰って来れてすげぇうれしいなぁって」
 
——遠回り(笑)。
 
「けど、その遠回りがなかったら気付かなったと思う。ライブハウスに行くと、“バカばっかりいるなぁ”って思う(笑)。そういう、ライブハウスに集まる人が最高だ、というのに気づけたのも良かったなぁって」
 
——太一さんは昔からDJもやられていてクラブカルチャーにも精通していますが、ライブハウスとクラブのノリは違いますか?
 
「自分では特に意識しないでずっと両方のシーンにいますけど、クラブとライブハウスは融合しなくてもいいと思う。バンドがクラブの音楽シーンに寄っていかなくても自然に融合していくし、すでに融合しているシーンもあるし、意識しないでいいんじゃないかなって。昔はそこを融合させようと思ってたけど、セカロイのイベントみたいにパンクのバンドとヒップホップのDJが一緒にやってる現場もある。バンドって、どこかで振り切んないとつまんなくなっちゃうし、本当におもしろいシーンはそういうことを声高に言わなくてもつながるんじゃないかなって。京都のMETROとか、心斎橋のpangeaとか、関西のシーンはそれが自然にできてると思いますね。京都と大阪で毛色は違うけどお互いにリスペクトし合って、インディーが活動できるフォーマットがあるのがすげえぇなって。仙台のCLUB SHAFT、福岡のKieth Flackもそうで、ライブハウスとクラブの垣根がなくみんなめちゃくちゃ遊べるところなんですよね」
 
——アルバムの最後でフランキー・ナックルズの『Whistle Song』をカバーされていて、太一さんらしいなと思いました。
 
「ロックバンドがハウスの曲をカバーするってね(笑)。実はフランキー・ナックルズが亡くなった時にちょうどツアーが始まる時で、寛と2人でカバーしようって。2人だけしかいないのに(笑)。この曲はチャーベさんもDJでかけ続けてきたクラシックだし、そういう音楽の系譜みたいなものも重要で。ルーツでいえば、1曲目の『Palette』のイントロで僕がスクラッチしてるのは、札幌の先輩のB.I.G. JOEさんのレコードの声を使わせてもらっているんですね。僕らの帯広の先輩が、JOEさんを含む札幌のヒップホップ・グループ、MIC JACK PRODUCTIONの一員で、リスペクトを込めてJOEさんの声をスクラッチしていて。このアルバムにはヒップホップが好きだってことや自分のルーツも盛り込んでいるんですけど、それはなぜかといえば、僕らは1曲ヒットチューンを作ってそれを大量消費していくバンドじゃない。たぶん、この先一生このアルバムを持って音楽活動を続けていくわけだから、自分たちの思い入れのあるものだけで作った作品にしたかったんですね。そういうところはこだわりました。嘘があるものだと、この先の人生、持っていけないんですよね」
 
——たとえば1年に1枚アルバムをリリースするとか、いろんな活動の仕方がありますが、KONCOSは今後どんなふうに進んでく予定ですか?
 
「やっぱりライブが一番おもしろいんですね。次の新曲ももうライブでやってるんですけど、常に現場にワクワク感を与えられる活動ができたら。今の一番の目標は、東京でやってるライブの動員を増やして、全国各地で僕らが一緒にやってきたカッコいいバンドをガンガン東京に呼びたい。で、一緒にライブがしたい。いいバンドが本当にたくさんいるんですよ! でもそれをやるには東京で人気が出ないとやれないから(笑)、このアルバムでちょっとずつでも広がっていけたら。それで、ちゃんとお金が入ることも重要で。2500円のライブだったら、それだけのもの、それ以上のものを見せるために必死で練習する。」
 
——さっき、“いいことばかりじゃない”とも言われてましたが、生きていれば楽しいことばかりじゃないし、そういう良い意味でのヒリヒリする感じもアルバムにはあって、何かに立ち向かっていたりケンカ売ってる音でもありますね。
 
「そういう“怒り”もこのアルバムには入ってるんですよね。一聴すると楽しいものになってるんですけど、何か分かんないけど、常に納得できないことがあって怒ってる。そういう男たちが全国各地でどんどん集まってきて、みんなで肩を組んで酒を呑んで。そういう出会いが各地であったんですね。そういうアルバムです(笑)。秋のツアーで、全国のライブハウスでそういう思いでこぶしを上げる男たちがいたら最高ですね。こっちも全裸で臨むので、見る側も全裸でぶつかってきてほしいです(笑)」
 
——そういう素晴らしいアルバムが関西での出会いをきっかけに作られたのもうれしいです。10月22日(土)Pangeaでのライブ、楽しみにしています。
 
「その日はアルバムを録ってくれた荻野さんがエンジニアを務めてくれるので、みんな楽しみに来てください! それと関西は、東京とか他の土地にはない独自のいい音が鳴っていると思うんですよ。僕自身もそれに触れるのをずっと楽しみにしてるので、これからもオリジナルな音をぜひお願いします!」

text by 梶原有紀子



(2016年10月19日更新)


Check

Release

Album
『Colors & Scale』
発売中 2500円(税別)
AWDR/LR2
DDCB-12091

〈収録曲〉
01. Palette
02. Magic Hour(Album Version)
03. Citrus
04. Baby
05. Parallel World
06. Blue Period
07. Camera Obscur?a
08. Lesson
09. Merci
10. Colors & Scale
11. Songbird
12. Flower
13. 月待つ島まで(2016 Version)
14. Outro
15. The Whistle Song


Profile

コンコス…写真左から古川太一(key&vo)、佐藤寛(g&vo)、紺野清志(dr)。東京都世田谷区在住の3人組。Riddim Saunter解散後、ファッションブランドALLEGEの2012 AW COLLECTIONの音楽製作をきっかけに古川と佐藤の2人で活動をスタート。2012年6月にALLEGE 2012 AW COLLECTIONのためのインストゥルメンタル集『目黒川と阿武隈川と札内川との関係性』をカセットテープにてリリース。‘12年10月に1stアルバム『ピアノフォルテ』をCD、LP+CDにてリリース。同年11月より『旅するコンコス ~みんなのまちとぼくらのおんがく~』と題し、全国47都道府県48箇所に及ぶツアーを敢行。‘14年3月発売の2ndアルバム『街十色』のリリースツアー『旅するコンコス ~まちといろ 100のいろ~』では日本101箇所でのライブツアーを、自分たちによるブッキングで成功させる。昨年、同じ帯広出身でこれまでサポートドラムを務めてきた紺野清志が加入し3人編成となる。今年5月に発売したシングル『Magic Hour』は、バンドとつながりのある限定店舗とライブ会場でのみ販売。大阪ではFLAKE RECORDS、京都はSecond Royal Records、神戸のBO TAMBOURiN CAFEなどで販売中。3人編成となって初のアルバムとなった最新作『Colors & Scale』は7月20日発売。このアルバムを携えたリリースツアーが9月16日の東京 下北沢SHELTERよりスタート。大阪公演は10月22日(土)心斎橋Pangea。

KONCOS オフィシャルサイト
http://koncos.net/


Live

Pick Up!!

【大阪公演】

チケット発売中 Pコード305-614
▼10月22日(土)17:30
LIVE HOUSE Pangea
オールスタンディング3000円
[共演]Homecomings/bed/やまも
[DJ]DAWA/TANK
LIVE HOUSE Pangea■06-4708-0061

チケット情報はこちら

【愛知公演】
▼10月23日(日)17:30
名古屋CLUB ROCK'N'ROLL

【東京公演】
▼10月30日(日)17:30
新代田FEVER

★対バン情報!★

【長野公演】
group_inou
『PUT release tour』

チケット発売中 Pコード305-627
▼11月12日(土)19:00
松本ALECX
スタンディング3500円
[共演]KONCOS
ALECX■0263-38-0050

チケット情報はこちら


【宮城公演】
LEARNERS

チケット発売中 Pコード314-157
▼11月27日(日)18:00
PARK SQUARE
オールスタンディング3500円
[共演]KONCOS/FRONTIER BACKYARD
G・I・P■022-222-9999

チケット情報はこちら

Comment!!

ライター梶原有紀子さんからの
オススメコメントはこちら!

「KONCOSの『虹色レインボー』や『きつねのくに』『Parallel World』『Flower』を聴いた時の、踊りたいのか泣きたいのか、嬉しくて奮い立つのか、負の感情なのか正の感情なのかひとことではとても言い表せないけれど、確実に心が揺り動かされているあの感じ。カーティス・メイフィールドやギル・スコット・ヘロン、レディオヘッドやアリシア・キーズを聴いた時のその感じとほぼ同じ。揺り動かされて、弾け飛んで、やがて解放されて、わだかまりも何もなくなったら、またまっさらな自分の状態でそれらの音楽に飛び込みたい。生身の音楽は、生身の人間と同じようにしなやかで、生身の人間とは違ってどんな聴き手も受け入れる。古川太一はインタビューで、“この先一生、このアルバムを持って音楽活動をしていく”と話していたけれど、自分もこの先当分長く『Colors & Scale』を聴き続けるんだと思う」